THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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富山と神戸でモビリティデザイン講座に出ます

芸術の秋ということで、各所でアートやデザインに関する催し物が開かれていますが、私も以前告知したものに加え、富山と神戸で開催されるイベントに参加することになりました。今回はそのお知らせをさせていただきます。

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ひとつは11月6日から12月27日まで開催されているとやまD'DAYS2019の中で、11月20日にイノベーション講座を持たせていただきます。富山は2011年に「富山から拡がる交通革命」という本を書いた土地であり、自分の中ではまずモビリティ改革を思い浮かべますが、昔からものづくりで定評があり、近年はデザインにも力を入れています。今回のD'DAYSではその強みを生かして、テクノロジーとデザインの融合による社会変革の可能性を探っていくことをテーマに掲げています。



私の講座のテーマは「モビリティデザインもコト+モノへ」。気づいた方がいるかもしれませんが、ひと月前にこのブログで紹介した、今年度のグッドデザイン賞の審査結果について書いたブログのタイトルそのものです。あのとき書いた内容がベースになりますが、グッドデザイン賞に限らず、さまざまなモビリティデザインを見てきた者として、テーマにあるような近年の変化を中心にお話しするつもりです。場所は富山県高岡市にある富山県総合デザインセンターで、入場は無料です。

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もうひとつは11月22日から12月8日まで、神戸市のデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)で開催されるグッドデザイン神戸展です。神戸は昔から洗練された街として国内外の多くの人に知られていますが、近年さらに都市の資源や魅力をデザインの視点で見つめなおし磨きをかけることで魅力と活力を創出し、くらしの豊かさを創造するべく、都市戦略「デザイン都市・神戸」に取り組んでおり、その一環としてこのイベントを開催しています。



名前で想像できるとおり、私も審査委員を務めているグッドデザイン賞の、東京以外で唯一の展示会でもあります。この中で11月23日、グッドデザイン連続講座のトップバッターとして、「コミュニティを育むモビリティのデザイン」というテーマで、今年度グッドデザイン賞でグッドフォーカス賞を受賞したアイシン精機株式会社イノベーションセンター部長の加藤博巳氏とともに登壇します。こちらも参加は無料です。

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2つの講座はいずれも、このブログの中で紹介しているウェブサイトからの事前申し込みが必要となります。なお以前も紹介したように、11月16日には静岡県浜松市の静岡文化芸術大学の公開講座にも出ます。こちらはヤマハ発動機デザイン本部長の長屋明浩氏が出演することになり、それぞれのプレゼンテーションのあとトークセッションも行う予定となっています。こちらも入場無料ですので、興味のある方は下のリンクより申し込んでください。



1週間のあいだに3つの地域で、モビリティのデザインについて話をすることになったわけで、普段なかなかお会いすることができない方々と触れ合える貴重な機会と期待しています、多くの方々と現地でお会いできることを楽しみにしております。よろしくお願いいたします。 

羽田空港の車いす自動運転試験を見る

車いすの自動運転。一昔前までは想像すらしなかった技術が、国内で相次いでテストを始めています。10月9日から11月28日まで、ANA(全日空)とパナソニックが成田空港で自動追従電動車いすの実証実験を始めたのに続き、羽田空港では11月2日と3日、JAL(日本航空)とWHILLによる試験走行が行われています。後者に取材に行ったので、その模様を報告しつつ、車いすの自動化について記していきます。

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2つの実証実験は、電動車いすの自動化という点では共通していますが、内容はやや違います。前者はターミナルでの国際線から国際線への乗り継ぎ客に提供するもので、自動追従と書いたように、高速道路上で実証実験を進めている大型トラックの自動追従走行に似たものです。後者はターミナルで保安検査場通過後の利用者に電動車いすを貸し出し、搭乗口まで行って役目を終えると自動で貸し出し位置に戻ってくるというものです。
 
空港ターミナルは移動距離が長いことが多く、JALによれば羽田空港第一ターミナルは全長約800mで、利用者の約半数は長距離移動ができないそうです。つまり日常生活で車いすを使っていない人でも、空港ターミナルでは車いすが欲しいという人が多いのです。こうした利用者の移動を助けるとともに、電動化によって介助者を不要とすることで精神的なストレスフリーを実現。合わせて空港管理者にとってのコスト削減を狙うために、今回の試験を行ったそうです。成田空港の場合も状況は似ていると想像しています。

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今回取材したWHILLの自動運転車いすは、左右のアームレストの先に1組ずつのステレオカメラを使用しており、座席にはシートベルトが付いていました。車いすの直前約1m以内で歩行者が横切ったりすると、アームレスト先端のステレオカメラ周囲のインジケーターが青から赤に変わり停止。左側のアームレストに装着されているモニターにも緊急停止という表示が出ます。

行きは通常の電動車いすとして移動します。ここを自動としなかったのは自由な移動を提供するためとのことです。今回の試験走行中は地上係員などがついていくことになっていました。最高速度は電動車いすの制限速度である時速6kmの半分になる時速3kmで、羽田空港第一ターミナルは出発と到着の利用者が混在することを考慮して、ゆっくりに設定したそうです。

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利用者が搭乗口近くで降りた後の自動運転は、オペレーターがタッチパネルを押すと動き出し、所定のルートを通って貸し出し場所まで自動で戻ります。今日は土曜日ということで空港利用者が多く、最初は人の多さに戸惑っていたようでしたが、状況が把握できると動き出し、人の手を一切借りずに貸し出し場所まで帰っていきました。

本格サービスは成田空港・羽田空港ともに2020年度を目指しているそうです。一方WHILLでは羽田以外にオランダのアムステルダム・スキポール、英国ロンドン・ヒースロー、米国ダラス・フォートワースなどでも同様のサービス導入を進めているそうで、空港以外では病院や美術館、遊園地などで同様の展開を目指しているとのことでした。

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ちなみに成田空港で使用するのはパナソニックとWHILLが共同開発した「WHEEL NEXT」とDoogが開発した「Garoo」で、羽田空港ではWHILLが独自開発した自動運転車いすを使います。いずれも日本製であり、世界屈指の高齢化社会である我が国が、車いすの自動化でも最先端にあることが分かりました。日本ならではのおもてなしをハイテクによって世界にアピールできる分野でもあり、今後の展開に期待を抱きました。

東京モーターショーの挑戦

10月24日から11月4日まで開催される第46回東京モーターショーが、これまでのモーターショーといろいろな面で違っているというニュースを目にした人は多いでしょう。開催に先駆けてプレスデーに足を運び、会場内外で多くの関係者と意見を交換したひとりとして、「小型・電動」にフォーカスして概要を紹介するとともに感想を記します。 

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2017年に世界の自動車関連イベントの調査を行なった経験から、同年と今年の主なモーターショーの入場者数を比較すると、米国デトロイトは80万人から77万人、スイス・ジュネーブは65万人から60万人、中国・上海は101万人から99万人、ドイツ・フランクフルトは81万人から56万人、偶数年開催のフランス・パリは2016年の125万人が昨年は107万人と、上海を含めた全会場で減少になっています。

東京も2015年の81万人から2017年は77万人と、フランクフルトやパリほどではないにせよ入場者数を減らしています。現状維持では今後、減少が続いていくのは十分に予想できることで、米国のCES(家電見本市)やSXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)のように、違った盛り上げ方を考えても良いのではないかと思いつつ会場に踏み入れたところ、随所に改革の姿勢が見えたので好感を抱きました。

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来年東京オリンピック・パラリンピックが開催される関係で、今回は会場として使ってきた東京ビッグサイトの一部が使えないので、代わりに1.5kmほど離れたトヨタ自動車のショールームMEGA WEBおよび隣接した特設展示棟を使い、有明エリアと青海エリアの2拠点展開としています。両エリアの連絡はシャトルバスだけでなく、遊歩道を活用したオープンロードと呼ばれる道を、電動キックボードやパーソナルモビリティなどで移動可能。超小型モビリティの試乗もできます。

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これらはいずれも多くの人にとって初めて触れるモビリティであるはずで、乗り味や走り味に新鮮な印象を受けるのではないでしょうか。この体験を通してひとりでも多くの人が電動キックボードやパーソナルモビリティ、超小型モビリティをラストマイルの足として評価し、それが我が国での本格導入につながっていくことを望んでいます。

青海エリアのMEGA WEBを入場無料としたことも特徴です。しかもFUTURE EXPOと名付けたこのスペースは、自動車だけでなく電気や通信など多様な業界が集結しており、モビリティ専業の会社からは生まれないような提案が並んでいました。移動者のみならず、移動を提供する自動車メーカーの人たちにも新鮮に映ったのではないでしょうか。

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自動車会社の展示では、メーカーごとに異なるビジョンを示していたことが新鮮でした。たとえば電動車両では「クルマは展示しない」というポリシーでモビリティサービスに注力したトヨタ自動車、人間が操ることを大事にしたヤマハ発動機、ブランドとしてのデザインとエンジニアリングを貫いたマツダなど、変革の時代に対して多彩な回答を用意しており、日本の自動車業界が多様性に富んでいるという事実を再認識しました。

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このうちヤマハのコンセプトビークルやブースなどのデザインを指揮した同社デザイン本部長の長屋明浩氏が、以前紹介した静岡文化芸術大学での私の公開講座(11月16日)にゲストとして参加していただけることになりました。「これからのモビリティ」というテーマで、地元メーカーのデザインのトップとして、モーターショーとは違う話題を出していただけるのではないかと期待しています。ご興味のある方は足をお運びください。

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もっとも移動という面では、前回は展示棟の脇にあった会場間連絡シャトルバス乗り場が展示棟から離れた路線バス乗り場のさらに奥になったうえに、会場の脇を走る新交通システムゆりかもめとの連携がないなど、不満に感じる部分もありました。モビリティは人の移動のしやすさという意味ですから、自動車業界の方々も公共交通の存在意義を理解し、競争よりも共創の精神で快適な移動を提供してほしいと思いました。



ところで東京モーターショーでは、美術館や博物館などと同じようにガイドツアーが用意されています。ガイドを担当するのは私も所属している日本自動車ジャーナリスト協会のメンバーで、上記オフィシャルサイトから申し込みできます。これからモーターショーに出かけるという方、利用してみてはいかがでしょうか。
ギャラリー
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