THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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タクシー改革は東京ばかり

今週月曜日から東京(23区+武蔵野・三鷹市)のタクシーで新しいサービスの実証実験が始まりました。これまでは目的地に着くまで分からなかった運賃を事前に確定する「事前確定運賃サービス」です。参加するのは日本交通、国際自動車、大和自動車交通、第一交通産業の4グループに属する44社で、10月6日まで行われるそうです。

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サービスの詳細についてはウェブサイト「citrus」で記事を書いているので参照していただきたいのですが、東京のタクシーで大掛かりな改革が実施導入されるのは今年3度目です。まず1月、このブログでも紹介した昨年の実証実験の結果を受けて初乗り運賃が410円に引き下げられた後、3月には日本交通での子会社ジャパンタクシーが目的地に着く前に自動的に運賃が支払われる「ジャパンタクシー・ウォレット」というサービスを導入しています。

ここまで読んできて気付いた人もいるでしょう。3つの改革はすべて東京についての話です。初乗り運賃引き下げは名古屋地区などでも実施していますが、最後に紹介したジャパンタクシー・ウォレットはジャパンと名乗るにもかかわらず、ウェブサイトを見ると東京23区および武蔵野・三鷹市で運行しているタブレット搭載済の日本交通車両のみとなっています。さらに最初に紹介した事前確定運賃サービスは3000円以上でなければ適用できないという条件付きです。

一連の改革内容を見ながら、今の日本のタクシーは大都市でしか満足なサービスを提供できないのではないかという気持ちを新たにしました。しかも初乗り運賃引き下げ以外の2つの改革は、ウーバーなどのライドシェアでは当たり前になっている内容です。それを「新しいサービス」と称して紹介するガラパゴス的思考に驚かされます。

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citrusの記事=https://citrus-net.jp/article/34714

日本でもすでに過疎化と高齢化に悩む地方ではライドシェアの導入が始まっています。このブログでは京都府京丹後市でのサービス開始に続き、北海道中頓別町でもウーバーのシステムを用いての実証実験が始まったことをお伝えしました。その後中頓別では今年4月から運賃の徴収を始めており、関係者によればこれ以外の地域での導入の計画も進んでいるそうです。

一時期に比べれば表には出さなくなりましたが、タクシー業界がライドシェアを敵視している状況は変わりません。しかし前述したように新しいサービスは東京に限られています。タクシー業界では新しいサービスがやがて全国展開されていくと匂わせているようですが、大都市のモビリティサービスが地方に適応できなくなっていることは、鉄道やバスを見ても明らかです。

今の日本のタクシーに必要なのは、小手先の改革ではなく抜本的な改革です。とりわけ地方では、鉄道などで導入されている上下分離方式などの公的支援に加え、ライドシェアでおなじみの住民による相互輸送を取り入れていかないと、早々に立ち行かなくなっていくのではないでしょうか。
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タクシー車両に目を向けると、数年前から導入している日産自動車のユニバーサルタクシー(NV200)に続き、トヨタ自動車からも新型車が登場する予定です。車いす利用者にも対応したユニバーサルタクシーは、高齢者比率が高い地方でこそ有効です。しかし地方のタクシー会社が高価な新型車を導入する余裕があるか疑問です。以前書いたバスの車両改革に似た構図を連想します。

利用者不在の不毛な争いにいますぐ終止符を打ち、真の意味で住民の側を向いた改革を進めてもらうよう要望します。

自動運転のレベル分けは正しいか

日本福祉のまちづくり学会で交流のある方から自動運転の勉強会の案内をいただいたので、昨日参加してきました。交通関係の研究者や事業者など約20名が集まる中で、国の自動運転関連の検討会で重要なポジションを務め、自動車メーカー技術者との交流も深い大学の先生の講義を拝聴した後、意見交換を行いました。

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個人的にもっとも印象に残ったのは、自動車技術者の間では最近、自動運転レベル3をスルーし、ダイレクトにレベル4を目指す考えが主流になりつつあるということでした。

自動運転のレベルについては下の表を見ていただきたいのですが、わが国では米国SAE(ソサエティ・オブ・オートモーティブ・エンジニアズ)という団体の指標を参考にしており、レベル0から5まで6段階に分かれています。現在市販化されている運転支援システムはレベル2で、レベル3になると人間の代わりにAI (人工知能)が運転を担当することが大きな違いになります。

しかしその上のレベル4では、領域を限定するとはいえAIがすべての運転を担当するのに対し、レベル3はAIが運転を代わってほしいと要請した際には人間が代行する義務があります。裏を返せばAIの運転技術が完璧ではないことを示しています。一方で人間の役割も、基本はAIに任せつつAIが要請した際には運転を担当するというファジーな内容です。

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日本学術会議のウェブサイト=http://www.scj.go.jp

この問題を解消するためのステップとして、車両側はレベル4の水準を達成しつつ、それをまず人間が運転し、AIに任せても問題がないという結論が出た暁に初めて移行するという手法があるようです。つまりレベル2の範囲を広げる代わりにレベル3はスキップし、直接レベル4に到達するというものです。

そもそもSAEの自動運転レベル分けは、自動車メーカーを基準として作られたものです。先月ソフトバンク・グループのSBドライブなどが東京で実験走行を行った仏ナビヤ・アルマ(写真)や、DeNAが日本各地で走行を重ねているイージーマイルEZ10は、ペダルもハンドルもなく、当初からレベル4としてカテゴライズされています。自動車メーカーのロジックでは判断できない動きが生まれているのです。

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SAEが制定した自動運転のレベル分けは、現在の私たちが自動運転の性能を理解するうえでは有効でしょう。しかしそれは過去の経験に基づいて制定されたものであり、未来永劫遵守すべきものではありません。ルールは時代の要請によって柔軟に変えていくべきものであり、それは自動運転においても当てはまります。つまり絶対的なものではありません。

そもそも自動運転は交通事故を減らすとともに、すべての人に安全快適な移動を提供するために生まれた技術です。レベル3相当の技術を他に先駆けて市販化することは、企業成長の論理では重要かもしれませんが、前述したように曖昧な基準を曖昧な説明のまま販売することの危険性を孕んでいます。その点で車両側の技術をレベル4相当まで高めたうえで人間からAIへの移行を進めていくという解釈は、説得力のあるものでした。

交通と政治の関係

このブログでも何度か紹介した栃木県宇都宮市・芳賀町のLRT計画(以下宇都宮LRT)について、鉄道ジャーナル9月号に記事を掲載させていただきました。5年前からこの地に何度か通い、さまざまな関係者に話を伺いつつ沿線となる地域を訪ね歩いた記録をまとめたものです。
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宇都宮LRTのこれまでの道のりは雑誌にくわしく書いたので、ご興味のある方は読んでいただきたいのですが、 2012年の宇都宮市長選挙で現職の佐藤栄一氏が、以前から計画にあったLRT導入を争点に掲げて大差で三選。まず宇都宮駅東側の優先整備と芳賀町への延伸、公設型上下分離方式の導入を決めました。

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ところがその直後から反対派の声が目立つようになりました。当初は260億円としていた宇都宮駅東側の整備費が450億円以上に増大したことを問題視したのです。昨年の市長選でも佐藤氏は当選したものの、LRT反対を訴えた対立候補との票差は僅差と呼べる状況になっていました。

自治体の首長を決める選挙で交通が争点になることは良くあります。それ自体は問題ではありません。しかし昨年の選挙では、対立候補がLRT整備費用1000億円という数字を掲げました。実際には宇都宮駅西側を含めても整備費は700億円以内で収まり、すべてが宇都宮市の支出ではありません。一方対立候補のウェブサイトに1000億円の内訳についての説明はなく、「一説には」という表現に留めていました。

1000億円というインパクトのある数字が効いたとも言えますが、逆に現職側がLRTのメリットをしっかり説明しなかったことも辛勝につながったと見ています。

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そもそも宇都宮LRTは市の東部や芳賀町などに展開する工業地帯への通勤輸送として計画されました。当初の予定ルート図を見れば一目瞭然です。当時の宇都宮市の関係者は、通勤輸送だけで黒字になると説明し、沿線への公共施設誘致や住宅整備などには言及していませんでした。これでは多くの市民の支持はもちろん、興味も得られないはずです。

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しかし昨年から風向きが変わり始めました。ウェブサイトにLRTを説明するパンフレットや動画を相次いでアップし、6月に現地を訪れた際には県庁でLRTのオープンハウスを開催していました。市長選での辛勝を受けて、工業団地への通勤輸送から市民のための路線へ考えを改めたのでしょう。最新の予定ルート図から工業団地が消えていることでも、それは伝わってきます。

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宇都宮LRTは政治に揺り動かされつつ、結果的にはその揺れによって、市民路線という好ましい方向に絞り込まれつつあると感じています。交通と政治は密接な関係にあることを、今回の事例は教えてくれました。しかしそこに党利党略を持ち込むべきではないと考えます。すべての人に安全快適な移動を提供すること。これが交通分野における政治の使命だと思っています。
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