THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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乗合タクシーの将来に期待する

大都市圏ではあまり目にしない、地方で良く見る乗り物のひとつに乗合タクシーがあります。今年1月、石川県輪島市に行く際にこれを利用しました。輪島へは能登空港からアクセスしたのですが、羽田空港を朝出発する便の到着時間が9:50なのに対し、金沢からの高速バスは9:30、通常の路線バスは9:51発と、接続を考慮していないダイヤ設定なので、乗合タクシーを選びました。

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能登空港の乗合タクシー「ふるさとタクシー」は電話またはインターネットで、前日の17時までに予約が必要です。空港のウェブサイトでもこの乗合タクシーは紹介していますが、調べないまま空港に到着した人は、次の路線バスまで長時間待たされることになるかもしれません。もう少し柔軟な対応を期待したいところです。

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興味深いことに、運賃は欧州の都市交通のようにゾーン制となっていました。輪島市中心部までは900円で、路線バスの590円より高くなりますが、距離は17.2kmなので通常のタクシーでは5000円以上掛かることになり、それより割安です。途中で降りる乗客がいなかったこともあり、所要時間は30分ほどでした。

このふるさとタクシー、運賃収入だけで経営が成り立っているわけではなく、国土交通省および石川県からの支援を受けています。これは多くの地方公共交通に該当することです。このブログで何度か書いてきたように、地方都市の公共交通を運賃収入だけで経営するのは無理があります。欧米は税金や補助金を前提にした運営が一般的であり、ふるさとタクシーが非難されるべきではないと思います。

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乗合タクシーは日本独自の乗り物ではなく、海外でも多く目にします。公共交通が発達していない都市や空港で見ることができます。米国の空港ではエアポートシャトルという名前で一般的な交通手段になっており、空港の到着ロビーでも予約できます。一方タイにはソンテウと呼ばれる乗合タクシーがあります。運転手に直接行き先を告げ、写真のようにピックアップの荷台に乗るスタイルです。

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これに近いサービスとしてライドシェアがありますが、ライドシェアは自分が乗り場に行く必要がなく、逆に車両が自分の元に迎えに来るという違いがあります。しかしライドシェア最大手のウーバーは最近、決められた乗り場に行ってもらうことにより、さらに割安な料金で移動できる「エクスプレスプール」を始めました。アプリの操作は既存のウーバーと同じであり、使い勝手の点で一日の長があります。

このように乗合タクシーは過疎化が進む地方のための乗り物ではないと考えます。東京都内でタクシー相乗りの実証実験が始まったことでも分かるように、タクシーの進化系のひとつだと思います。それだけに気になるのは既存のマイクロバスなどの流用が多いことです。ユニバーサル性を考えれば床が低くステップなしで乗れる車両が欲しいところです。同時にコネクテッド機能を充実させれば、さらに便利な乗り物になるでしょう。

バイク人気復活の兆しは本当か

春は時節柄、二輪車の話題が多くなります。3月は大阪と東京でモーターサイクルショー、4月は日本自動車輸入組合(JAIA)の二輪車試乗会が開催され、新型車もいくつか発表されました。さらに今月は日本自動車工業会(JAMA)の市場動向調査が乗用車・軽自動車ともども公開されました。そこで最新バイク事情をデータとともに紹介することにします。

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まずはJAMAが発表した最近5年間の販売台数からお見せします。バイクの販売台数は減り続けていると多くの人が考えているかもしれませんが、昨年度はこのように反転しています。50cc以下の原付一種は減少が続き、51〜125ccの原付二種も少し減らしている反面、126〜250ccの軽二輪と251cc以上の小型二輪は5年間で最高の数字をマークしていることが分かります。

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日本自動車工業会のウェブサイト http://release.jama.or.jp/sys/

日本には本田技研工業(ホンダ)、ヤマハ発動機、スズキ、川崎重工業(カワサキ)の4メーカーがありますが、軽二輪では前年度比でホンダが149%、スズキは実に169%を記録しています。スズキは写真の「ジクサー」などライバルより安価な車種をいくつか送り出したことが効いているようです。小型2輪はカワサキの136%が目立ちます。かつての名車「Z1」を彷彿とさせる「Z900RS」が原動力となっているようです。

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なお小型二輪は趣味性の高いカテゴリーということもあり、全体の約3分の1が輸入車になっています。JAIAの発表によれば、昨年度は全体では横ばいでしたが、ブランド別では400cc以下の手頃なサイズと価格の車種が充実しているBMWやKTMなどが伸びています。

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日本自動車輸入組合のウェブサイト http://www.jaia-jp.org

ユーザーはバイクのどんな部分に魅力を感じているのでしょうか。2017年度二輪車市場動向調査によると、 原付を含めた購入理由として多く挙がったのは、「身軽に動ける」「移動の時間が短縮できる」「自転車より楽」「燃費が良い」などでした。以前このブログで取り上げた機動性が経済性ともども評価されているようです。

最近モデルチェンジしたホンダのスクーター「PCX」の開発担当者に聞いたところ、自動車の2台所有が難しい世帯で、車検のない軽二輪や任意保険を自動車保険の特約で賄える原付二種を所有する家庭が増えているそうです。二輪車は自動車取得税と車庫証明が不要で、自動車税や自動車重量税が四輪乗用車より大幅に安いことをメリットと感じているのでしょう。

一方二輪車に乗って困る点については、出先での駐車場不足が挙げられますが、2013年度の調査と比べると全国で47%から30%、東京23区で76%から53%と減少しています。レンタルバイクの利用者が多いのも最近の傾向で、理由としては「さまざまな車種やモデルに乗る機会」を魅力と考える人が多く、10〜20代については「購入はできないが乗りたい」とする人も目立ち、レンタル後には40%のユーザーが「買いたい」「買ったほうがいい」と思うそうです。

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今後の動きとしては、原付一種から二種への移行があるでしょう。50ccを主力としているのは世界中でも日本ぐらいで、以前ここで報告したようにホンダとヤマハは協業を決定。3月にモデルチェンジしたヤマハのスクーター「ビーノ」はホンダ「ジョルノ」と基本設計を共有し、ホンダの工場で作られます。

一方原付二種については、AT車の教習所での技能教習を最短3日間から2日間に短縮し、取得を容易にする検討を進めています。警察庁では5月8日までこの件についてパブリックコメントを実施しているので、興味のある方は意見をお寄せください。この動きに合わせるように、今後原付二種の新型車の発表がいくつか予定されており、前述したPCXはハイブリッド仕様や電動仕様を準備しているようです。

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警察庁のウェブサイト https://www.npa.go.jp

PCXの全長は1925mm、全幅は745mmで、路上占有面積は軽自動車の3分の1以下です。原付二種仕様のカタログ燃費は50km/Lを超えており、四輪車を圧倒します。狭い日本に合った移動手段のひとつだと認識しています。今後も原付一種の販売台数は減るでしょうが、原付二種以上はかつてとは異なり、国も免許制度や駐車場整備などで後押しの姿勢を見せています。多くの人が二輪車のモビリティとしての魅力に気づくことを期待しています。

サンフランシスコはケーブルカーだけじゃない

先週に続き米国を取り上げます。今回はニューヨークの前に訪れたカリフォルニア州サンフランシスコです。サンフランシスコの乗り物と言えばまずケーブルカーを思い出すでしょう。1873年に開通した、現存する世界最古のケーブルカーであり、坂の多い港町を象徴する存在になっています。しかしサンフランシスコの公共交通はケーブルカーだけではありません。

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ケーブルカーはMuniの愛称で知られるサンフランシスコ市交通局が運行していますが、Muniはこれ以外にメトロ、ストリートカー、バス、トロリーバスも走らせています。メトロは昔からある路面電車をベースとして、都心部を地下化するとともに郊外への路線延伸をしたもので、車両は日本や欧州のLRTで使われているものに似ています。米国で生まれたLRTという言葉の語源、ライトレールという呼び名を実感できる交通手段です。

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ストリートカーはメトロが地下化したマーケット・ストリート上の線路を活用しており、レトロな車両が走っています。ケーブルカーに近い位置づけかもしれません。同じ場所には市内各方面へ向かうトロリーバスやバスも走行しており、停留場も共用していました。欧州でもよく見られる手法ですが、乗り場が集約されていて便利に感じました。

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鉄道としてはこのほか、サンフランシスコ国際空港やサンフランシスコ湾岸のオークランド、リッチモンドなどを結ぶBART(ベイエリア高速鉄道)、シリコンバレーのマウンテンビュー、サンタクララ、サンノゼ方面に伸びるカルトレインがあります。これらはMuniとは別組織ですが、クリッパーカードという共通カードがあれば乗ることができます。

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サンフランシスコにはニューヨークやポートランド同様、自転車シェアリングもあります。特筆すべきは自動車会社のフォードが運営していることです。ニューヨークなどで自転車シェアリングを手掛けるモティベート社からサービスを受け継いだもので、2017年にフォード・ゴー・バイクの名前でサービスを開始。サンフランシスコのほかサンノゼなど5都市で7000台が稼働しています。

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サンフランシスコ湾岸の都市の間にはフェリーも運行しています。フェリーターミナルに到着した船を見ていると、歩行者に混じって自転車を押す人も目立ちました。訪れた日が比較的温暖だったためもありますが、米国の中では自転車利用が多い都市という印象を受けました。

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サンフランシスコは半島の上にある都市で、川に囲まれたニューヨークのマンハッタン同様、周辺からアクセスする道路は渋滞に悩まされているようです。これが公共交通重視のまちづくりにつながったのでしょう。さらに周辺にIT企業が集結している関係で、歴史ある街なのに若さを感じます。これが昔ながらのケーブルカーとフォードの自転車サービスが同居するシーンを作り出しているのかもしれません。
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