THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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移動者急減にどう対応するか

最初の写真は今週の平日18時頃、東京のJR山手線東京駅近くの車内の様子です。昨年までと比べると、驚くほど乗客が減っています。山手線に限ったことではなく日本全国、いや世界各地でこのような状況になっているでしょう。これに対応して飛行機や新幹線は減便を始めており、事務所の近くを走るバスは臨時ダイヤで運行するようになりました。観光客だけでなく、日常的な移動も激減していることを痛感します。

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ただ首都圏について言えば、もともと朝夕の通勤ラッシュが他の地域より激しかったうえに、昨年の台風上陸時は、計画運休が発表されているにもかかわらず多くの通勤者が運転再開を待って長蛇の列を作るなど、会社に行くことこそ重要と考える人が多く見られました。そのため東京五輪パラリンピックを前にして、リモートワークやフレックスタイムが奨励されていたという経緯もあります。

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そんな状況が新型コロナウィルスの流行で変わりつつあります。もちろん導入できない会社や職種もありますが、これまでさまざまな理由を挙げてリモートワークやフレックスタイムを拒んできた会社が、一転して受け入れはじめている現状は悪いことではないでしょう。またバスについては東京都内でも運転士不足が問題になっており、臨時ダイヤ導入はこの点も関係していると考えています。

しかしながら交通事業者にとっては収入減につながるのもたしかです。欧州ではすでに人員削減を決めた航空会社もあります。日本でもこの状況が長期に渡れば、同様の動きが出てくることは十分に予想されますし、事業者の体力によって差が出てくることも考えられます。

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そこで思い出すのはやはり、欧米のように公共交通を税金や補助金主体で運営する手法です。たとえばフランスの場合、交通事業者の収入に占める運賃の割合は2割ほどで、残りは税金や補助金です。多くを占めるのは交通負担金(交通税)と呼ばれるもので、沿線の事業所から従業員の給与総額に応じて徴収しているので、リモートワークも影響ないことになります。地域で交通を支える姿勢が伝わってくる制度です。

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今回の新型コロナウィルス流行によって、多くの企業がそれまで取り組んでいなかったリモートワークやフレックスタイムの導入に踏み切りました。同様にして公共交通も、公が支える方向への改革を進めても良いのではないかと思い始めています。ピンチをチャンスに変えることもまた大切と考えます。

超小型モビリティ 日仏の思想の違い

毎年春に開催されるジュネーブモーターショーが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止になったことは前回触れました。ここで公開予定だった新型車の多くはオンラインで公開されましたが、その中で自動車業界のみならず、モビリティ分野の人々も注目している車種があります。昨年自動車づくりを始めて100周年を迎えたフランスのシトロエンが発表した電気自動車「アミ(Ami)」です。

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シトロエンは1960〜70年代の小型車にこの名前を使ったあと、昨年のジュネーブモーターショーでアミワン・コンセプトと名付けたプロトタイプを発表しており、今回発表したアミは量産型になります。全長2.41m、全幅1.39mというコンパクトサイズ、車体前後や左右のドアを共通としたデザイン、ボディをグレーのみとしてアクセントカラーで個性を演出するコーディネートなど、見た目も個性的ですが、超小型モビリティのカテゴリーに属することも注目です。

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欧州の超小型モビリティにはL6eとL7eがあります。L1e〜L5eは2輪車や3輪車となっているので、2/3輪車の延長と考えているようです。軽自動車ベースの認定制度とした日本とは考え方が大きく違います。最高出力や最高速度はL7eが上ですが、代わりに45km/h以下、6kW以下のL6eは運転免許不要で、フランスでは14歳以上、それ以外の多くの欧州諸国でも16歳から運転可能です。アミもこのL6eなので多くの人がドライブできるようになっています。

シェアリング、長期レンタル、購入の3つの乗り方が選べることも画期的です。カーシェアの料金は1分あたり0.26ユーロで、レンタルは最初に2,644ユーロを払うと、その後は月19.99ユーロで利用できる定額制です。販売価格も6,000ユーロからと安価です。申し込みはすべてオンラインで、家電量販店で実車を見たりテストドライブしたりできるそうです。

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実は日本でも超小型モビリティについて動きがあります。昨年秋の東京モーターショーでは複数の企業がコンセプトカーを出展しましたが、その前から国土交通省では新しいルールについて検討を進め、今年2月に公表しました。概要はウェブサイトに出ており、明日までではありますがパブリックコメントを受け付けています。



資料によれば、全長2.5m、全幅1.3m、全高2mを超えない、最高速度60km/h以下の軽自動車について、前面衝突は衝突速度を40km/hとし、横滑り防止装置を義務付けることで側面衝突基準を適用しないなどとあります。これまでは衝突時の乗員保護や歩行者保護などについて、構造要件を満たしていれば衝突試験が免除されていたので、ルール改定によって公道を走れなくなる車両が出てきそうです。欧州のL6e/L7eも衝突試験がないので、シトロエン・アミが日本の道を走るのは難しいと予想しています。

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既存の自動車に近い性能を与えようとする日本と、多くの人に移動の自由を提供しようとするフランス。同じ超小型モビリティでここまで考え方の違いがあることに驚かされましたが、シトロエン・アミは3種類の乗り方を用意したことを含めて、移動をもっと自由にしていきたいという思想が一貫しています。そのあたりが多くのモビリティ関係者に評価されているのではないかと思っています。

カフェはまちづくりに欠かせない

新型コロナウィルスの感染拡大が止まりません。モビリティ分野では毎年この時期に行われるジュネーブモーターショーが開催3日前になって突然中止になるなど、世界的に混乱が続いています。そんな状況下ではありますが今週、週刊東洋経済と東洋経済オンラインにカフェの記事を書いたので、今週はこのテーマを選びました。

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モビリティやまちづくりが専門の人間がなぜカフェの記事を書いたのか。それはカフェが人の移動に不可欠な存在であり、まちづくりの一部だと考えているからです。先週触れた「歩いて暮らせる街」という表現にあるように、都市内では乗り物を降りて徒歩移動となることが多く、歩き疲れれば当然休憩したくなるし、その街で他人と待ち合わせることもあるでしょう。さらに移動途中に仕事をこなしたい場合もあります。そんなときにまず思い浮かぶのがカフェです。

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カフェはたしかに飲み物を提供する場でもありますが、同時に時間と場所を提供する場でもあります。カフェ文化が発達した都市のひとつであるフランスのパリでは、「一杯のコーヒーで何時間粘れるか」というフレーズさえあります。なので飲み物や食べ物の味はもちろん、店のデザインや雰囲気など、長い間心地よく過ごせる空間も大事で、これもモビリティやまちづくりに通じる部分だと感じています。





そのためにはやはり、個性的な独立店は重要な存在ですし、チェーン店であってもその土地に合ったデザインが欲しいところです。写真で紹介するのはスイスのシオン、米国ポートランド、我が国の東京新宿と富山のカフェです。いずれも周囲の風景や都市のキャラクターに配慮しつつ個性を表現したつくりで、街の名脇役と言える存在感を放っていました。

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さらに言えばこの4つのカフェは、公共交通で簡単にアクセスできます。シオンは無人運転シャトル、ポートランドではライトレールが背後に映っていることがお分かりでしょう。富山のカフェがある公園は富山駅から自転車をシェアして数分、新宿は駅西口からすぐの場所にあります。逆にマイカー移動なら車内でコーヒーを飲めますし打ち合わせもできるので、カフェの存在感は薄くなります。公共交通にとって大切なパートナーでもあるのです。

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今は世界各地で外出を控える状況にあり、カフェに積極的に足を運ぶような雰囲気ではなく、営業する側は大変な状況であることが想像できます。だからこそ感染が収束したら、またひんぱんに利用していきたいと考えているところです。またこれからモビリティやまちづくりに関わる人には、ぜひカフェの存在も頭に入れていただきたいと思っています。