THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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ひさびさの講演、前橋で行います

日本で新型コロナウィルスの感染者が確認されてから1年が経過しました。多くの方が生活や仕事などに影響を受けたことでしょう。私も例外ではなく、とりわけ多くの方にひとつの場所に集まっていただき開催する講演、フォーラム、セミナーはキャンセルとなったり、オンラインイベントに切り替わったりということの繰り返しでした。

しかしながらウィズコロナに対応した新しい形でのイベント実施も各所で模索されています。そのひとつが、群馬県の前橋市まちづくり公社主催で年に2回行われている「まちづくり講演会」で、3月11日に第5回を開催することになりました。その場でひさしぶりに、みなさまの前でお話させていただく機会をいただきました。

まちづくり講演会チラシ

テーマはパンフレットにあるとおり「MaaSで地域は変われるか」です。コロナ禍で移動そのものが制限を受ける中、MaaSも一段落と思っている人も多いかと思います。たしかにテレワークの普及で移動者が激減した大都市、インバウンド需要が皆無に近くなった観光分野については当てはまりますが、地方においてはむしろ逆ではないかと考えています。

地方は第一次・第二次産業の比率が高くテレワークが難しいという事情もあり、移動者はさほど減っていません。しかも高齢化社会の中で運転免許返納は進んでおり、マイカーに代わる移動手段の確保は急務です。さらに東京から脱出し、地方に移住する人が現実に増えており、受け皿となる地方都市にとって安全で便利な移動を提供することが重要になっています。

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また移動そのものを制限するという感染初期から、現在は経済活動との両立という観点から、感染に気を付けながら移動するという段階に入っており、公共交通や商業施設などの混雑状況を利用者に伝えて移動の分散化を促すという、新しい役目もMaaSには加わりつつあります。

こうした状況は自分自身も感じているところで、各地の地方型MaaSの最新状況をオンラインで収集するとともに、感染に気を付けながら現地に足を運んでもいます。このあと自動運転バスの実証実験を行う前橋にも事前視察に行きます。講演会ではこうした事例を取り上げながら、ウィズコロナ、アフターコロナでの地域社会にはどのようなモビリティサービスが必要かを紹介したいと考えています。

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申し込み方法などはこちらをご覧ください→https://www.maebashi-cc.or.jp/machinaka/

今回の講演会は、感染拡大防止の観点から、会場定員は40名に限定し、それ以外に100名の方がオンラインで参加していただく形を取っています。もちろん今後、感染状況に応じて開催手法を見直す可能性はあります。そのためにも感染拡大が抑えられ、参加を希望する方々と直接お会いすることができればとと願っているところです。 

コロナ禍での二輪車人気に思う

毎年1月は前年の統計がいろいろ発表されます。それを見ると、新型コロナウイルス感染拡大でモビリティシーンにもさまざまな変化が訪れたことを実感します。そのひとつに、二輪車の増加が挙げられます。東京の道を見ていても目にすることが増えたと感じていますが、数字にもそれは現れています。

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日本自動車工業会、日本自動車販売協会連合会、全日本軽自動車協会連合会が発表した2020年の新車販売台数を前年と比べると、軽自動車を除く乗用車は87.8%、軽乗用車は90.0%なのに対し、軽二輪車(125〜250cc)は127.5%、小型二輪車(251cc以上)は101.4%と伸びています。原付(原動機付自転車)の出荷台数は一種(〜50cc)が92.7%、二種(51〜125cc)が96.5%でともに減っていますが、自動車に比べると落ち込み幅は小さくなっています。

コロナ禍でパーソナルモビリティの需要が高まったことは各所で報じられていますが、自動車は車両価格や維持費が高く、すぐに買えるような乗り物ではありません。それに比べれば二輪車は敷居が低く、速達性は自転車はもちろん自動車より上です。軽二輪がとりわけ人気なのは、車検がないのに高速道路に乗れるカテゴリーであるうえに、魅力的な新型車が登場したことが大きいでしょう。

感染防止という観点でも二輪車は有利です。そもそも密室ではありませんし、シールド付きヘルメットはフェイスシールドに近い効果があります。フルフェイスのヘルメットならマスクに近い状況ではないでしょうか。さらに二人乗りの場合は前後に座り、会話にはインカムなどを使うため、自動車より安全と言えます。

とはいえ二輪車にはネガティブな要素もあります。それが表に出たのが昨年の交通事故統計です。警察庁の発表によれば、2020年の交通事故死者数は2,839人で、前年より376人少なく、統計開始から初めて3,000人を下回りました。しかし都道府県別で見ると、前年より増えた地域がいくつかあります。特に目立つのは東京都で、22人も増えて155人になり、ひさしぶりにワースト1になりました。

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警視庁のウェブサイト = https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/about_mpd/jokyo_tokei/tokei_jokyo/index.html

そこで警視庁の統計で死者が大きく増えている項目を見ると、歩行中が10人、自動二輪車運転中が8人、原付運転中が4人プラスとなっていました。歩行中の事故死者が増えたのは、テレワークでいつもとは違う場所を歩く人が増えたためと想像します。原付を含む二輪車運転中の犠牲者が増加したのも、コロナ対策で二輪車で移動する機会が増えた人が多かったからではないかと推測しています。

ではどうすればいいのでしょうか。長年ライダーとして過ごしてきた自分の意見は、まず不要不急の外出は避けることです。現在は病床が逼迫している地域もあるのでなおさらです。また二輪車は天候に大きく左右されます。タイヤの接地面積が小さいので、雨の日はもちろん、同じ道でも路面やタイヤが冷えているとグリップ力が落ちます。横断歩道などのペイント、マンホールの蓋を含め、注意して運転することが大事です。

体がむき出しなので、天候にも左右されます。寒い時期はどうしても体が冷え、動きが悪くなりがちです。昔と比べると今は耐寒性に優れたウェアが多く出ているので、そういうものを身につけ、車体にスクリーンやガードなどを追加すれば、快適性はかなりアップするはずで、それが安全性にもつながると思っています。そして機会があればライディングスクールで自分の技術を見直すこともお勧めします。

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以前にも書きましたが、日本は世界有数の二輪車生産国でありながら、欧州やアジアと比べると普及は今ひとつです。たしかにリスクもありますが、機動性に優れ、操る楽しさが満喫できるだけでなく、環境対策や渋滞緩和にも貢献するうえに、モビリティで重要になる「自由」をもっとも満喫できる乗り物のひとつです。コロナを機にこの世界を知った方々は、安全に留意しつつ、魅力的な移動手段を体験していってほしいと思います。

東京とパリで進む「道路から広場へ」の流れ

今週18日、東京都心の京橋から銀座を経由して汐留に至る全長2kmの東京高速道路、通称KK線について、東京都が2年前から進めてきた検討会で、自動車専用から歩行者中心に転換し、緑豊かな公共空間とすべきという提言を踏まえ、今年度中に方針をとりまとめ、具体化に向けて進めていくことになったという報道がありました。

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この少し前にはフランスのパリで、シャンゼリゼ通り1.9kmの歩行者ゾーンを広げてテラスカフェや専用のサイクルレーンも用意し、車道を片側2車線に縮小する2019年提案の計画に、アンヌ・イダルゴ市長がゴーサインを出したというニュースが流れました。これには両端にあるコンコルド広場、凱旋門があるエトワール広場も含まれます。 つまり日仏の首都で歩行者中心の道づくりが進むことになります。

Bas des Champs Élysées bird view ©PCA-STREAM
Comité Champs-Elyséesのウェブサイト =
https://www.comite-champs-elysees.com/le-comite-champs-elysees-salue-la-decision-de-la-mairie-de-paris-de-transformer-lensemble-de-lavenue-des-champs-elysees/

KK線はかなり前にこのブログでも取り上げました。第2次世界大戦後の銀座の復興と渋滞緩和のため、銀座周辺の外堀と京橋川、汐留川を埋め立てて高架道路を建設したもので、道路下を地上2階、地下1階の商業施設としてテナント料を徴収し、通行料無料としていることが特徴です。両端で首都高速道路の都心環状線と接続し、銀座の北端で八重洲線が分岐しています。

首都高速では都市景観の観点から、日本橋付近の都心環状線を地下に移す計画が進んでおり、八重洲線はKK線の旧京橋川部分の地下を進んで都心環状線に合流する計画です。計画が実現すると、通行量が大幅に減少すると予想されることから、今後についていくつかの方向性を検討した結果、「Tokyo Sky Corridor(空中回廊)」として緑豊かな公共空間を目指すことになったそうです。

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東京都都市整備局のウェブサイト = https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bunyabetsu/kotsu_butsuryu/kk_arikata.html

一方パリのイダルゴ市長は2014年の当選以来、都市の道路を自動車中心から歩行者と自転車を優先したモデルに変えることを提唱し、セーヌ川沿いの道路の一部を公園に転換するなどしてきました。コロナ禍であってもこの流れは変わらず、2024年までに最大650kmの一時的・恒久的な自転車専用レーンを設置する計画を発表しました。

もっともパリではそれ以前から、歩行者中心の政策を推進してきたことも確かです。 そのひとつがクレ・ヴェルト・ルネ=デュモン(coulée verte René-Dumont)です。1969年に廃止された鉄道の線路跡を20年後に線状公園に仕立てたもので、レンガ造りの高架橋の下はレストランやショップが並んでいます。ニューヨークの貨物線跡を公園に転換した通称ハイラインは、ここを参考に作られたと言われています。 

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しかしKK線のような高架道路の転換例は異例です。高いところから銀座の街並みを眺め、適度に休みを取りながら京橋から汐留まで歩いて行けるとなれば、東京の新名所になることは確実でしょう。ただし全長2kmなのでパーソナルモビリティの用意があればありがたいですし、下で販売している飲食物が上で味わえるような仕組みを作っても喜ばれるのではないかと思います。

最初に書いたように、KK線が走る場所は昔は水路でした。水路が道路に変わり、移動や物流の主役が船から自動車に変わったことになりますが、それが歩行者のための広場になるというのは、シャンゼリゼの歩行者ゾーン拡大ともども、新たなフェーズに入ったと感じます。以前紹介した国土交通省の「2040年、道路の景色が変わる」もそうでしたが、先進技術を駆使して効率性や安全性を「進化」させつつ、人々の交流の場に「回帰」させる道づくりが、これからの主流になりそうな気がします。