THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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台風対策としてモビリティができること

台風19号が日本に上陸して1週間経ちました。被害に遭われた方々には、この場を借りてお見舞いを申し上げます。それにしても去年の21号といい、今年の15号といい、最近強烈な勢力のまま日本列島を直撃する大型台風が目立ちます。その理由として多く目にするのが、日本列島周辺の海水温上昇です。

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国土交通省国土地理院のウェブサイト = https://www.gsi.go.jp/BOUSAI/R1.taihuu19gou.html

昔は多くの台風は日本列島に近づくと勢力が衰え、偏西風に流されて東寄りに進路を変えていくことが多かったと記憶しています。海水温が高いので勢力が衰えず、勢力が衰えないので偏西風に流されず、日本列島を直撃することが多くなったそうです。これまで日本は海面上昇や氷河の消滅など、海外に見られるような明確な温暖化の影響はほとんどありませんでした。しかし最近の台風を考えると、やはり温暖化が影響していると思っています。

温室効果ガスの代表格であるCO2は、国土交通省によれば我が国の運輸部門の排出量は産業部門に続いて多く、17.9%となっています。このうちバスやタクシー、二輪車を含めた自動車の比率は86.2%に上ります。これまでも自動車メーカーは温暖化対策に熱心に取り組んできましたが、さらなる対策が必要となりそうです。それとともにモーダルシフト、つまり自動車から他の輸送方法への転換を積極的に考えていく必要があると思いました。
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国土交通省のウェブサイト = https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000007.html

最近欧州で使われるようになった言葉のひとつに「Flygskam(フリュグスカム)」というスウェーデン語があります。日本では「飛び恥」などと訳されているようですが、世界的に気候変動が目立つ中、CO2を多く排出する飛行機の利用を恥じ、なるべく環境に優しい鉄道を多用しようと訴える運動です。ただしこうした動きは最近始まったわけではなく、欧州ではかなり前からありました。

たとえばフランスでは、高速鉄道TGVがオイルショックの影響でガスタービンカーから電車に切り替えた経緯もあって、当初から環境に優しい乗り物と位置づけられ、鉄道も飛行機も国営事業者ということもあり、多くの国内航空路線がTGVに転換。国内エアラインのAir Interは消滅しました。ドイツなどでも同様の取り組みを行っています。高速鉄道が国際空港に乗り入れる例も欧州では多く、陸と空で争うのではなく、協力によって高効率な移動を提供しようとしていることがわかります。

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もちろん飛行機が環境対策を怠ってきたわけはなく、日本でも最近就航したエアバスの最新鋭機A350では、従来の飛行機よりCO2排出量、燃費、運航コストの25%削減を実践したそうです。しかし同様の取り組みはもちろん他の輸送機器でも行っており、たとえばJR東日本のCO2排出量はハイブリッド気動車や蓄電池式電車などの投入により、全国平均の約6割に過ぎないうえに、使用電力の23%は自社の水力発電で賄っているとのことです。

Delivery of Japan Airlines’ first A350 XWB-2

今回の台風では北陸新幹線が大きな被害を受けたことが話題になりましたが、JR東日本による復旧作業が進み、25日から運転を再開すると発表しました。関係者の努力には頭が下がります。現在は羽田と富山・小松空港を結ぶ航空便の機材大型化などで対応しているそうで、こちらもありがたい配慮ですが、欧州の動きに照らして考えれば、運転再開後は新幹線を選ぶのが一般的になりそうです。

それよりも気になるのは、我が国では長距離移動の多くが高速バスによって賄われているという現状です。上のグラフにあるように、バスは飛行機よりはCO2排出量が少ないですが、鉄道に比べればはるかに多いうえに、安全性も鉄道のほうが上だからです。

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鉄道だけを残して飛行機やバスを廃止せよというつもりはありません。可能な限り多様な選択肢を用意することも大事です。ただ日本人は移動において、速さや安さを必要以上に優先しがちだと思っています。多くの人々が台風被害を受けた今、災害対応という意味を込めて、いま一度環境に優しい移動を考え直してみてはいかがでしょうか。同時に新幹線については単なる高速移動体ではなく、飛行機や高速バスに匹敵する付加価値を盛り込み、速さ以外でも積極的に選びたくなる内容となることを望みます。

モビリティデザインもモノ+コトへ

ひさびさにグッドデザイン賞を取り上げます。審査委員を務めさせていただいている2019年度グッドデザイン賞およびグッドデザイン・ベスト100が10月2日に発表されました。私たちが担当するモビリティユニットからは48対象がグッドデザイン賞を受賞し、うち5つがベスト100に入りました。

具体的には、フィンランドのSensible 4と良品計画が共同開発した自動運転バス「GACHA」、 西武鉄道の特急車両「Laview」、瀬戸内海汽船のカーフェリー「シーパセオ」、フィンランドMaaS GlobalのMaaSプラットフォーム「Whim」、アイシン精機とスギ薬局が提供するデマンドバス「チョイソコ」となります。

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5件中2件にフィンランドが関わっており、今のモビリティシーンでこの北欧の国が重要な位置を占めていることを教えられるとともに、ものづくりではなくサービス分野から2件選ばれていることも目を引きます。
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Whimは何度か紹介しているのでチョイソコについて説明すると、愛知県豊明市で展開する高齢者はじめ交通弱者のためのデマンド交通で、親しみやすい名称や電話申し込みという手段に高齢者への配慮を感じる一方、走行経路はデジタル技術を活用して最適ルートを選び、停留所に登録された薬局や医療機関、金融機関などがスポンサーとして運営を支えるというパッケージであり、今後全国展開を予定しています。

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やはり以前取り上げたGACHAも、乗務員がいない無人運転シャトルであり、移動販売なども想定しているので、アプリなどによるサービスは必須になります。Laviewとシーパセオは純粋な乗り物としての受賞ですが、前者は大きな窓や優しさを感じる内装、後者は多様な過ごし方ができるゾーン分けなど、スピードなどの機能面より移動の心地よさを重視しており、モノだけでなくコトにもこだわったと言えます。

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この傾向は今年始まったことではなく、2013年度にはタクシー配車アプリ、2015年度には道の駅、2017年度には全国路線バス情報などがありました。モビリティ=ものづくりと捉える人も多いですが、近年は他の分野同様、ものづくりだけでは問題解決できない事例が多くなっています。そのためにサービスやビジネスの分野まで含めてデザインすることが重要になっているという流れを認識しました。



今年度のグッドデザイン賞の結果は、10月31日から11月4日まで東京ミッドタウンで開催される「2019年度グッドデザイン賞受賞展」で見ることができます。初日の31日には金賞などの特別賞が発表されるとともに、審査委員・受賞者・来場者の投票でグッドデザイン大賞が決まります。入場無料なので、ご興味のある方は足を運んでみてください。

電動キックボードを自由に乗るために

海外では自由に走れるのに日本では法律上認められない乗り物やモビリティサービスはいくつかあります。米国発祥の電動キックボードのシェアリングはそのひとつです。ちなみに米国ではこの乗り物をe-scooterと呼ぶことが多いですが、日本で電動スクーターというと二輪車のスクーターの電動版を指すことが多いので、ここでは電動キックボードという呼び方をします。

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厳密には日本でも電動キックボードのシェアリングは存在します。そのひとつが、さいたま市や千葉市で展開しているWINDです。写真は埼玉高速鉄道の浦和美園駅に配備してあるものです。他の多くの国の電動キックボードと異なるのは、原付のナンバープレートや灯火類がつき、ヘルメットが袋に入って用意してあることです。つまり日本では原付扱いとなるのです。もちろん運転免許は必要になりますし、交差点での二段階右折などのルールも適用されることになります。

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訪れたのは平日の日中ということもあり、借りる人は見られませんでした。原付免許を持っている人はそれなりにいると思いますが、ヘルメット装着には抵抗を感じる人が多いのではないでしょうか。実際、ヘルメットが不要な電動アシスト自転車が普及したことで、原付の販売台数が大幅に減少していることはご存じのとおりです。 

海外では電動キックボードは厳格な規制がなく、自由に借りて乗ることができます。その結果歩行者と接触したり、車両が無造作に放置されたりという問題が出ており、パリでは歩道での走行を禁止するルールが作られたりしています。これに限らず海外は、まずは挑戦し、問題があれば修正するというプロセスが多いと感じています。一方日本は既存のカテゴリに当てはめようとし、無理なら許可しないという方針が目立ちます。成功の賞賛より失敗の非難を重視する今の風潮とリンクしているような気がします。

少し前のブログで紹介したように、今週は京都府のけいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)で開催された「ネクストモビリティExpo2019」に参加してきました。この席で、以前から「小さな交通」に取り組んできた建築家・都市構想家で東京大学名誉教授の大野秀敏先生が興味深い提案をしました。道路を時速6kmまで、20kmまで、それ以上という3つの車線に分け、それぞれに該当する乗り物を走らせるというプランです。

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このうち歩行者や電動車いすなどが通行する6kmゾーンと、自転車や電動キックボードなどが走る20kmゾーンは一定の幅を確保するとしており、道幅が狭くなればそれ以上のゾーンが消え、自動車も20km制限になるという内容でした。車両の速度制御については、現在販売している自動車の運転支援システムにも、道路標識を読み取って走行速度を制御する仕組みが実現しているので、難しい話ではないはずです。路上の監視カメラでチェックする方式もあるでしょう。

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ネクストモビリティExpo2019の会場では、「オムニライド」と呼ばれる独創的なパーソナルモビリティの体験試乗もできました。自動車や鉄道に比べれば規制が緩いこのカテゴリーは、創造性にあふれた新しい乗り物が次々に出ています。もちろん電動キックボードもそのひとつです。こうした車両をひとつひとつ認可するか否かを検討していくという、我が国の今の体制は果たして正しいのか。もう一度多くの人が考えてほしいところです。
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