THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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徒歩通勤を始めて分かったこと

新型肺炎の感染防止のためにどうすべきか。自分が選んだ行動のひとつが歩くことでした。それまで週1回のペースでジムに通っていたのですが、人が密集しているうえにマスクをするような場所ではないので、しばらく行くのを控えることにしました。でもそのままでは運動不足になりそうなので、片道約2.5kmある自宅の事務所の間の移動を、自転車よりも運動量の多い徒歩に切り替えたのです。

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自宅と事務所を結ぶルートとしては、バスも通る表通りと、昔ながらの商店街を貫いていく狭い道があります。所要時間は自転車ならどちらも15分、バスは停留所までのアクセスを含めて25分、徒歩は40分ぐらいで、個人的な感覚では遅いとは思いませんでした。これが徒歩通勤に踏み切った理由のひとつですが、実践してみるといろいろ発見がありました。

まずは見える景色の違いです。自転車は自動車に比べればゆっくり移動しますが、自分で運転してるので前方を常に確認しなければならず、周囲の風景を認識できるかという点ではバスのほうが上です。それが徒歩になると一変します。もちろん歩行中も前方確認は必要ですが、そもそもスピードが4分の1ぐらいなので、余裕がたっぷりあるのです。おかげで商店街の店先に並んでいる商品が価格を含めてわかるぐらいです。

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また自転車は、一度止まると再び走り出すのにそれなりのエネルギーが必要です。信号無視の自転車が減らないのは、もちろんいけないことですが、そのあたりが原因のひとつかもしれません。それに比べると自分の感覚として、歩きはじめるのにエネルギーはほとんど必要としません。なので路地の奥にある店に寄り道し、買い物をしたりするようにもなりました。

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これまでは鉄道駅やバス停留所まで最寄駅から目的地まで離れている場合などに、必要に迫られて歩くというパターンが多かったので、徒歩にはネガなイメージを持っていました。しかし最初から徒歩で移動と決めていると、それは散歩やハイキングに近いもので、仕方なく歩いているという気分にはなりません。これは新しい発見でした。

自宅から取材や打ち合わせ先に直行・直帰する場合も多く、急いでいるときもあるので、毎日徒歩移動しているわけではありませんが、移動の種類がひとつ増えたという感覚になったのは事実です。新型肺炎の感染は多くが乗り物や病院など密室の中で発生しているようなので、徒歩移動は感染を遠ざける手段のひとつにもなるのではないでしょうか。

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歩いて暮らせるまちづくりというと、マイカーに頼らない、公共交通を活用した生活を指すことが多いですが、表現のとおり、鉄道やバスを降りて歩くことが大事であることがわかりました。沿道の店を利用することが多くなり、それがまちの賑わいにつながると実感したからです。同じ距離を時間をかけて移動する分、同じ距離から得られる情報の多さは圧倒的です。今後も時間を見つけて徒歩移動を組み込んでいきたいと思っているところです。

左利きとモビリティの関係

JR東日本が2月1日、新宿駅に新型自動改札機を導入しました。先日、新宿駅を使う機会があったので利用してみました。写真のようにタッチする部分が傾いているのが特徴で、近い将来MaaSアプリなどのQRコードにも対応するそうです。使いやすさを考慮した結果角度をつけたとのことで、小柄な方や車いす利用者にとってはありがたい配置かもしれません。

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ただ自分自身は、すごく使いやすくなったとは感じませんでした。理由はすぐに分かりました。左利きだからです。感覚に秀でた左側にあれば優劣が判断できたかもしれませんが、そもそも右手で自動改札機にタッチすることは不便だと感じていたので、その気持ちを覆すほどのメリットは感じなかったのです。

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左利きはスポーツの分野では重宝されることもあります。それゆえかバッティングセンターやゴルフ練習場は左用打席を用意しています。文房具の一部には左利き用があり、事務所にはハサミなどがあります。鉄道の改札口も、係員がいた時は両側の乗客をさばいていたこともあり、定期券は見せるだけでした。自動改札になって左利きのデメリットを感じるようになっています。

自動車では日本の左側通行・右ハンドルは右利きに向いていると感じています。運転席のドアを開けるのは右手ですし、ひんぱんに使うウインカーレバーはステアリング右側です。マニュアル車のシフトレバーやインパネ中央のオーディオなどは左手操作ですが、有料道路や駐車場の料金支払いのほうが遠いので大変です。こちらも自動化で不便になったと感じています。逆に右側通行・左ハンドルの欧州大陸などではとても楽に感じます。

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左利きの比率は多くの国で10%ぐらいと言われています。にもかかわらず交通分野の自動化ゲートが右利き専用であることに不満を述べる人はほとんどいません。左利きは昔から存在しており、日本では右利きに直す、海外では両利きにするという習慣があったためもありますが、左手を使えば同等の動作はできるので障害者ではないし、10分の1しかいないので多数派を尊重しようという気持ちが自分にはあります。

パリトラム1のコピー

とはいえユニバーサルデザインという観点から言えば、利き手・利き足を問わない使いやすさが理想です。自動車の分野では、ETCや事前支払いなどでゲートの支払いは大幅に減少しています。鉄道は欧州のLRTなどで導入する信用乗車方式なら、端末がドア左右や車内の手すりなどにあるので、利き手の左右で不便に感じたりはしません。さらに少し前にこのブログで紹介した顔認証なら、利き手・利き足は関係ありません。顔認証はその点でも望ましいと思っています。

タクシーアプリ統合より大切なこと

タクシー配車アプリの「JapanTaxi」と「MOV」が統合するという発表が、JapanTaxiの親会社である日本交通ホールディングスとMOVを運営するDeNA(ディー・エヌ・エー)から今週なされました。統合日は4月1日で、新会社は両社が共同筆頭株主となり、社名も新しくするそうです。今回の統合により、配車可能な車両数は約10万台となる予定です。

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JapanTaxiは全国をカバーする展開と7万台と言われる提携台数を強みとしていますが、車内に設置したタブレット付属カメラを用いた性別判定機能について、個人情報保護委員会より指導を受けたこともあります。MOVはAI技術や無料タクシーなどの企画力が長けていますが、ソフトバンクとの合弁会社で進出した中国「DiDi(滴滴出行)」、ソニーが東京都内のタクシー会社と運営している「S.RIDE」との競争が激しくなっています。このあたりについては昨年末に公開した記事にコメントを寄せています。



JapanTaxiを使用した経験では、大都市では対応車両が一部なので流しをつかまえたほうが早かったり、地方では配車のみで行き先設定や決済ができなかったりという不満も持っており、インターネットでも同様の書き込みを目にします。その点米国で何度か利用したライドシェアのUberは、配車を手配するとほぼ数分で到著し、行き先設定や料金決済を事前に行えるうえに、運転技術も日本の一部のタクシードライバーより上で、とても使い勝手の良いサービスだと実感しています。

今回の統合は、タクシー事業者母体とIT企業母体という、得意分野が異なるサービスの組み合わせであり、それぞれの短所を相手の長所が埋め合わせる、好ましい組み合わせだと思っていますが、個人的に望みたいのはやはり、タクシーとライドシェアが共存する社会の実現です。

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おりしも国土交通省は7日、地域の移動手段の確保・充実のため、地方公共団体主導で公共交通サービスを改善し、輸送資源の効率的な活用を目的とした「持続可能な運送サービスの提供の確保に資する取組を推進するための地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定したと発表しました。

くわしくは国土交通省のウェブサイトを見ていただきたいですが、概要として挙げた項目には、地方公共団体による「地域公共交通計画」作成、維持困難なバス路線の多様な選択肢によるサービス継続、鉄道バスにおける貨客混載手続きの円滑化などとともに、過疎地の市町村などが行う自家用有償旅客運送の実施の円滑化が明文化されています。



自家用有償旅客運送とは、名称のとおりマイカーでドライバーが料金をもらって客を運ぶことで、ライドシェアに限りなく近いものです。日本ではタクシー業界がライドシェアに強硬に反対しているのでこの言葉を使っているのかもしれませんが、かつては自家用有償旅客運送という言葉さえ反発を受けたそうで、今はそうでないことを祈りますが、それがこの制度の普及を阻んできた理由のひとつではないかという気がしています。

大都市であろうと地方であろうと、移動者数は時間帯によって大きく変動します。鉄道なら編成の両数を変えることでも対処できますが、 バスは相応の運転士を確保しなければなりません。乗車定員が少ないタクシーはなおさら台数調整が必須です。しかし前述のように地方では絶対的にドライバーが不足しています。必要に応じて移動をサポートするライドシェアを認めたほうが、臨機応変な移動を提供できるのではないでしょうか。

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米国では写真のように、趣味的な車種に乗るドライバーが空いた時間にUberなどで移動をサポートしています。地方の移動確保のためにこうした体制が必要であることは、政府が昨年3月に公表した未来投資会議でも言及しており、その方針が今回の法律案に発展したと認識しています。新会社はぜひ、地方の移動を率先してサポートする姿勢を示してほしいものです。