THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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モーターショーに見たWHILLの革新

第45回東京モーターショーが始まりました。私はひと足お先にプレスデーに行き、いくつか速報記事も書きましたが、ここでは個人的に印象に残った展示をひとつ紹介します。このブログでは会社設立直後から何度も登場してきたパーソナルモビリティのWHILL(ウィル)です。

WHILLは2年前の東京モーターショーにも出展していました。そのときはブースの中に坂道や砂利道を作り、デビューしたばかりのモデルAの走破性の高さをアピールしていました。今年はスタイリッシュなデザインを受け継ぎながら分割式とすることで自動車のトランクに格納可能になり、価格を大幅に抑えたモデルCが登場したので、この新型で同じような体験ができるだろうと予想していました。しかし実際はそれ以上の展開が待ち受けていました。

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スマートフォンを使って遠隔操作を行ったり、高性能レーザーセンサーを装着することで自動ブレーキを実現したり、利用者の運転診断を行って運転支援に役立てたりと、AIとパーソナルモビリティの融合を体感できる場に進化していたのです。

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WHILLは日本では電動車いすにカテゴライズされます。電動車いすは法律上は歩行者扱いになるので、単独事故は交通事故にカウントされないことも多いようですが、高齢者や身障者の利用者が多いこともあり、操作ミスによる事故が増えているそうです。自動車以上に自動化や運転支援が必要な分野です。WHILLはこうした現状にいち早く反応し、パナソニック、NTT、早稲田大学といった組織と共同で、明日のパーソナルモビリティの姿を追求しているのです。

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すでに羽田空港ではパナソニックと共同で、歩行が困難な利用者がスマートフォンで設定するだけで、空港入口から搭乗口まで自動で運んでくれるという実証実験を行なっています。今回の東京モーターショーでの公開は、より多くの人にこうした先進的な取り組みを知ってもらう最良の場だと思います。

自動車の自動運転を体感するには相応の場所が必要です。でもWHILLならビッグサイトの中で同様の体験ができます。1000万円クラスの高級自動運転車とは対照的に、移動弱者のためのソリューションであることにも好感を抱いています。ひとりでも多くの人が西館4階に足を運び、日本のモビリティベンチャーの実力とパーソナルモビリティの近未来を体感してほしいと思っています。

関空のデザイン 高評価の理由

今年は海外に行く機会が多く、初めて利用する空港も数多くありました。そのひとつに関西国際空港(関空)がありました。東京在住の人間にとっては縁が薄い空港ですが、今回は目的地までの直行便が取れなかったので、以前から興味があったここでの乗り継ぎを選びました。

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関西国際空港のウェブサイト=http://www.kansai-airport.or.jp

関空の第1ターミナルは、パリのポンピドゥーセンターをリチャード・ロジャースとともに設計したレンゾ・ピアノが創設し、後に小田急電鉄ロマンスカーを手掛けた岡部憲明氏が代表を務めたレンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップ・ジャパンが担当しました。世界初の人工島による海上空港ということもあり、20世紀を代表する土木事業に贈られる「Monuments of Millennium」の10大プロジェクトに選ばれるなど、数々の賞に輝いています。

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帰国後、気になって岡部氏の著作を読むことで、この建築に秘められたさまざまな事実を知りました。そのひとつが、翼を休めるグライダーを思わせる優美な外観です。本館も柔らかい曲線を描く屋根で覆われており、重厚感や威圧感とは無縁の姿を見せています。

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1960年代に作られた空港は独創的な設計が多かったのに対し、1970年代以降はジャンボジェット(ボーイング747)の登場などに伴う大量輸送に対応するため、都市のビルを思わせる機能重視の空港が多くなりました。鉄道ターミナルにも同じことが言えますが、飛行機は空を舞う乗り物であり、重厚さを追求しがちな鉄道ターミナルとは一線を画す、軽快で優美なものにしたいという考えがあったそうです。

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通常は横方向に分けて配置する国内線と国際線のターミナルを、本館の上下にまとめた点も特徴です。1階が国際線到着、2階が国内線出発・到着、3階が出入国手続きとレストラン・売店、4階が国際線出発となっています。私は羽田から国内線で到着し、国際線に乗り継いだので、最初は他の空港との動線の違いに戸惑いましたが、今思い返すと、ここまで移動距離の短い乗り継ぎは珍しいと思いました。

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常識にとらわれず理想を追求した設計思想は、間接照明の反射板を兼ねた本館4階天井の白い空調ダクトなど、あらゆる部分に込められています。サイン(表示板や案内図)が整理されているのも日本では珍しく、2階からアクセスする鉄道はJR西日本が青、南海電鉄が赤と色分けしてあるのでひと目で見分けがつき、バスやタクシーは4階が降車場、1階が乗り場と国際線ゲートに合わせてありました。

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人工島ならではの地盤沈下、国際線増加と国内線減少への対策、大阪国際空港(伊丹)や神戸空港との連携など、関空を取り巻く課題はいくつもありますが、世界に誇れる日本の交通インフラのひとつとして、いつまでもその姿と機能を保っていてほしいと思いますし、ひとりでも多くの日本人にこの建築の良さを理解してもらえればと考えています。

スイスで自動運転社会を体験

1か月前に自動運転の本を出したことは、このブログでも紹介させていただきましたが、実はあの本を出すにあたって、ひとつだけ心残りがありました。本を書く前に見ておきたかった現場があったからです。スイス南東部の都市シオンで2016年6月から始まっていた自動運転バスの運行がそれです。

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シオンで使われているのは、日本でも7月にソフトバンクグループのSBドライブなどが東京で実験走行を行った仏ナビヤ社のアルマです。しかし日本では他の通行を制限した公園内の道路を走ったのに対し、シオンでは旧市街の公道を歩行者や他の自動車に混じって運行しているとのことで、本当なら一般人を乗せて公道を走る初の自動運転車になるからです。

書籍の発売と前後して訪れたその模様については、東洋経済オンラインの記事にもまとめたので(動画もあります)、気になる方はお読みいただければ幸いですが、そこでは書かなかった感想として、本のタイトルにも掲げた「自動運転社会」を知るのに、シオンはとても良い場であると思いました。

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東洋経済オンラインの記事=http://toyokeizai.net/articles/-/190889

他の多くの国と同じように、スイスも運転者がいない無人運転での公道走行は認められず、シオンを走るアルマには2人のオペレーターが乗り、ひとりはゲームのコントローラーのような端末を持っていました。しかしその端末を操作したのは最初に発車した時だけで、それ以外は車幅ギリギリの狭い道を抜け、路地を曲がり、歩行者がいれば徐行や停止を行いながらスムーズに進んでいきました。

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その代わり道路には停留所だけでなく、自動運転バスが走ることを伝える道路標識が追加され、観光案内所にはパンフレットが置かれていました。おそらく市の広報紙にも明記してあり、日本よりも政治に関心が高い欧州ですから、多くの住民はそれを知っていたでしょう。LRTと同じように、まちづくりの一環としてのモビリティという姿勢が、導入や走行をスムーズに進めるうえで重要だと教えられました。

日本では交通を遮断した道路で実証実験を行う車両を、歩行者や自転車、他の自動車といっしょに走らせるのは危険だと思う人もいるでしょう。しかし自動運転の実用化において、公道での混合交通はいつかは通る道です。この課題を前に、本来は無人運転でも走るレベル4相当の車両を、あえてオペレーターを乗せたレベル3に格下げすることで公道走行を実現したシオンの手法には賛同したいと思います。

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シオンの自動運転バスは月曜日を除く毎日午後走っており、誰でも無料で乗れます。多くの日本人にとって、山に囲まれたこのスイスの小都市に足を運ぶのは容易ではないでしょう。しかし自動運転に興味を持つ人であれば、この現場を体感して損はないと思います。自動運転社会はどうあるべきか、を考えるうえで多くのヒントが詰まっていると感じています。
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