THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

講演・調査・執筆などのご依頼はこちらからお願いいたします→info@mobilicity.co.jp

空港アクセス鉄道を考える

今年2月、国内の2つの空港に乗り入れるアクセス鉄道についてのニュースが立て続けにありました。東京の羽田空港と熊本空港で、羽田はJR東日本が計画していた「羽田空港アクセス線構想」の一部ルートを対象に、東京都環境影響評価条例に基づく環境影響評価手続きの実施に向けた準備を進めることが発表され、熊本は県知事が、県を中心に設立する第3セクターが整備し、JR九州が費用の一部を負担すると発表しました。運行はJR九州が担当することになるでしょう。

IMG_7085

羽田空港は、現在はJR東日本グループの一員である東京モノレールが京浜急行とともに乗り入れており、リムジンバスが首都圏各地に向けて走っています。JRは貨物線を活用することで羽田空港と山手線東側および西側、りんかい線を結び、宇都宮線や高崎線、常磐線などにも乗り入れることで、リムジンバス並みの広範囲のアクセスを改善しようと考えているようです。

スクリーンショット 2019-03-09 18.40.20

現状でも羽田は交通環境は恵まれている感じもしますが、モノレールは浜松町発着というのがネックです。大阪伊丹空港に乗り入れる大阪モノレールが延伸を発表しているのとは対照的です。一方リムジンバスは、首都高速道路の山手トンネルが開通したこともあって、新宿からでは鉄道より早く着きますが、渋滞によって時間どおりに行けなかったり、乗車定員が少ないので次の便に回されたりすることがあり、鉄道の安定性を実感することが何度かあります。

羽田空港アクセス線が開通すると、東京モノレールの命運が気になるところです。京浜急行についても品川方面のルートは競合になるでしょう。ただ羽田は利用者数が多いので、万一のためも考えて複数のルートを用意しておくことも大切と考えます。ちなみに自分は、リムジンバスは国内線、モノレールと京浜急行は国際線ターミナルから回っていくので、その違いも考えて選びます。マイカーは渋滞に加え駐車場の混雑もあり時間が読めないのでほとんど使いません。

IMG_2492

一方の熊本空港は市電の延伸やモノレールの新設などが検討されてきたようですが、その中で空港の北側を走るJR豊肥本線から線路を伸ばす案に落ち着いたようで、最新情報では懸案に上がっていた3ルートのうち、三里木駅からのルートが有力になっています。滑走路をくぐる必要がないうえに、熊本県民総合運動公園や運転免許試験場の近くを通過するので、空港利用者以外の需要も取り込めることが理由のようです。
スクリーンショット 2019-03-09 18.43.09

ただし熊本空港は現状では国内線・国際線合わせて1日平均で約40便にすぎません。自分が利用したことがある空港で発着数が同等なのは、国内では広島や北九州、海外ではエストニアのタリン、オーストリアのザルツブルク、フランスのボルドーなどですが、鉄道が乗り入れていたのはタリンだけで、しかもライトレール(トラム)でした。

IMG_4907

熊本県知事はアクセス鉄道の列車は豊肥本線に乗り入れないと明らかにしており、JR熊本駅は中心市街地から離れているので、空港から街の中心まで二度の乗り換えが必要になります。整備費用が少なく都心に直行する市電の延伸のほうが、利用者にとっては楽ではないかという気がします。現状ではオーバースペックという印象は否めず、飽和状態にある福岡空港を肩代わりする形での国際線充実など、空港側の改革も必須ではないかと思っています。

イオン撤退騒動が投げかけたもの

以前からメディアで話題になっていた、佐賀県上峰町にある大型商業施設「イオン上峰ショッピングセンター」が一昨日閉店しました。運営会社のイオン九州が2018年5月の取締役会で、2月28日の閉店を決定していました。現地に行ったことはありませんが、この件は以前から気になって調べたりもしていたので、閉店を機に感じたことを綴りたいと思います。

aeon1

同店は1995年に「上峰サティ」としてオープン。当時は佐賀県のみならず福岡県南部や長崎県を含めても最大級の商業施設だったそうです。場所は佐賀市と福岡県久留米市のほぼ中間で、マイカーを使って広範囲から訪れてもらうことを狙ったようです。当初はその狙いが成功し、レストラン街や映画館も設置するショッピングセンターに成長しました。

しかし1998年、大規模小売店舗が事実上の規制緩和となり、目の前にオープンしたドラッグストアをはじめ、周辺に相次いで商業施設が作られました。このうち佐賀市、唐津市、筑紫野市のショッピングセンターはイオン系列でした。中でも佐賀大和店および筑紫野店は、レストランや映画館を含めた総合商業施設になっていました。対照的に上峰店は映画館やレストラン街が閉鎖されるなど衰退していったそうです。

商機のある場所に力を注ぎ、そうでない場所は撤退を含めた見直しを行う。ビジネスとしては当然の結論かもしれません。しかしそこからは地元とのつながりが見えてこないのも事実です。ついでに言えば、営業を続けていても利益の多くは大都市にある会社本部に流れ、地元に落ちるお金が限られることは、地場の商店との違いになります。

高度経済成長時代、郊外に建てた一軒家からマイカーで直行でき、そこへ行けば何でも揃うショッピングセンターは、生活のパートナーとして理想だったかもしれません。しかしその結果、多くの地域で町の中心にあった商店街が廃れたうえに、近年はインターネットショッピングの普及でショッピングセンターも苦境に陥っています。買い物をする場所そのものが失われつつあり、しかも住民は高齢化で運転免許を返納する人が増えているというのが実情です。

aeon2
イオン上峰ショッピングセンターのウェブサイト = http://kamimine.aeonkyushu.com

昨年の閉店決定を受けて記者会見した上峰町長は「イオンがあるからこの町に転居してきた人も多い」と発言するなど、ショックは大きかったようです。町はイオン九州に対して土地や建物の無償譲渡を求め、合意しました。町では跡地を含めた中心市街地の再開発を行う予定で、そこにはイオンも関わっていくようです。いずれにせよショッピングセンターに生活機能をおまかせするような姿勢は変えていかなくてはならないでしょう。

上峰町には鉄道駅がないので、佐賀市と久留米市および鳥栖市を結ぶバスを交通の軸と考え、行政施設や病院を跡地に集結させ、デマンドバスやライドシェアで周辺の移動を担うというシーンが思い浮かびます。あのイオンが無償譲渡で撤退したことから悲観的に見る人もいるようですが、個人的にはここまで有名になったことを逆に生かし、各方面からの知見を集めて、同様の立場に置かれた地方の再開発のモデルになっていってほしいと思っています。

自動運転バスを進化させる古くて新しい技術

先月と今月、立て続けに実証中の自動運転バスに乗りました。1月は岩手県陸前高田市のJR東日本大船渡線BRT専用道、2月は東京都多摩市の多摩ニュータウン内公道という、ともに高齢化という悩みを抱えている場所でした。なお前者については現在販売中の鉄道専門誌「鉄道ジャーナル」で記事を掲載しています。

IMG_1625

この2つの実証には共通点がありました。先進モビリティが自動運転化した小型バスであることと、愛知製鋼が開発した磁気マーカシステムを使用していたことです。磁気マーカはGPSの役目を担うもので、トンネルや街路樹などによってGPSが受信できない場所でバスの位置を特定し、センサーや遠隔監視との併用で設定したルートを正確に走行するものです。

IMG_1575

磁気マーカは最近生まれた技術ではなく、20世紀末に日米で高速道路での自動運転の実験に使われ、2005年の愛・地球博ではトヨタ自動車が開発したIMTS(Intelligent Multimode Transit System)が磁気誘導式鉄道として運行されました。しかし当時はコストや性能面に問題があり、その後の自動運転はインフラ設備を使わない自律型が主流になりました。

ところが愛知製鋼の技術者に聞いたところ、磁気を感知するセンサーの性能が上がり、安価なマーカを使えるようになったというブレークスルーがあったそうで、実証に投入できるようになったそうです。今回は狭い道でのすれ違いやバス停への正着制御もこなしており、大船渡線BRTでは専用道が雪に覆われるシーンもありましたが、自動運転バスは正常に走行していました。 

IMG_7519

一方多摩ニュータウンでは遠隔監視による車内アナウンスも行なっており、走行中に係員が車内を歩き始めると注意放送が流れました。運転士の労力軽減に効果を発揮するのはもちろん、将来無人運転になった際にも役立つでしょう。終点のスーパーマーケットでアンケート回収と引き換えに割引券を渡し買い物をしてもらう試みも、地域活性化のアイデアとして好感を抱きました。

IMG_7536

大船渡線BRTは報道陣のみの公開でしたが、多摩ニュータウンは1日12便を8日間、一般の方を乗せて走っており、自動運転の体験者を増やす点でも効果があったと考えています。立場は違えど高齢化に悩む地域であることは共通であり、現実感のある実証でもありました。以前書いたように、東京23区内でも運転士不足などでバス廃止減便が始まっています。技術の進化によって自動運転移動サービスが少しずつ現実に近こうとしている姿は、後押しをしたくなるものでした。
ギャラリー
  • ウーバーアプリを活用した地域交通の今
  • ウーバーアプリを活用した地域交通の今
  • ウーバーアプリを活用した地域交通の今
  • ウーバーアプリを活用した地域交通の今
  • ウーバーアプリを活用した地域交通の今
  • MaaSの独自解釈を危惧する
  • MaaSの独自解釈を危惧する
  • MaaSの独自解釈を危惧する
  • MaaSの独自解釈を危惧する