THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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経産省モビリティ展示試乗会に参加して

今週は経済産業省が主催した「多様なモビリティの普及促進のための展示・試乗会」に参加してきました。報道関係者向けなどではなく、あくまで一般向けの会で、ウェブサイトで情報を知ったので一般人として申し込み、経済産業省中庭の駐車場に用意された会場に向かいました。

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なぜ経産省がこのような場を設けたのか。6月18日に政府が開いた「昨今の事故情勢を踏まえた交通安全対策に関する関係閣僚会議」が大きいでしょう。このブログでも一部を取り上げた痛ましい事故を受けての国の動きの一環ではないかと考えています。

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この会議で世耕経産大臣は、安全運転サポート車の普及、新たなモビリティサービスや自動運転の社会実装、多様なモビリティの普及促進などに取り組んでいきたいとし、高齢者の移動を伴う日常生活を免許の自主返納後も含めて着実に支えていくためには、移動に関する多様な選択肢を用意することが重要と発言しています。ここでいう多様な選択肢を知ってもらうことが会の目的だったと想像しています。

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上が当日参加した車両です。プチモーターショーと呼びたくなる状況だったことがおわかりでしょう。当日お会いした自動車メーカーの担当者も、「こんなに多様な車両が一同に会する場は経験がない」と話していました。しかも表に書いてあるとおり、ほとんどが試乗可能でした。多くのモビリティの乗り味をその場でチェックできるという点では、モーターショー以上だったかもしれません。

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さらに当日は、当初のプログラムにはなかった世耕大臣が飛び入り参加し、超小型モビリティや電動車いすなど数台を試乗しながら開発者と意見を交わすという光景も見られました。モビリティを知るには実際に使ってみるのがいちばんであることは、私もジャーナリストとしての業務で感じていることであり、大臣の行動には共感を抱きました。

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これまで触れたことのない車両をいくつか試し、会場を訪れた他の方が乗る様子を見ながら思ったのは、日本はスモールモビリティにおける先進国のひとつであるということです。ハードウェアがこれだけ充実しているわけですから、あとはソフトウェア、つまり多くの人が使いやすいルールを確立し、インフラを整備すれば、モビリティの多様性は少しずつ浸透していくのではないかと感じました。

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今年秋に開催される東京モーターショーでも、このような場を設けてほしいものです。次回のモーターショーは、会場としてきた東京ビッグサイトの一部が東京五輪パラリンピック関連で使えない関係で、お台場地域のいくつかの施設を用いた分散開催となるそうです。会場間の移動などにこのようなモビリティを活用できれば、これまでと違ったモーターショーの楽しみが提供できるのではないでしょうか。

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数年前にトヨタ自動車の超小型モビリティ「i-ROAD」に1カ月乗った経験から言えば 、この種の乗り物は子供を筆頭に、想像以上に多くの人が注目してくれます。社会課題に真摯に向き合っているのもこうした乗り物たちです。日本の得意分野であるスモールモビリティ、今回の経産省の展示試乗会がきっかけとなって、普及が進んでいくことを期待します。

自動車以外の交通事故を通して見えること

交通事故というと多くの人は自動車事故を想像しますが、鉄道や選択、飛行機の事故もまた交通事故です。 今月21日に閣議決定され、公表されたばかりの令和元年版交通安全白書には、自動車以外の交通事故についてもデータを紹介しているので、今回はこのテーマを取り上げます。ただし航空事故は年間10〜30件と少ないので、鉄道と船舶について記します。

まず鉄道交通における運転事故は、長期的には減少傾向にあり、昨年は676件で前年比1.5%減でした。死者数は273人で前年比4.9%減、乗客の死者数はゼロでした。ちなみに運転事故とは、列車衝突・脱線・火災事故のほか、踏切障害・道路障害・人身障害・物損事故のことを言います。

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ただし踏切事故は、踏切保安設備の整備などで長期的には減少傾向にあるものの、昨年は247件で前年比4.2%増でした。死者数は97人で前年比4.0%減ですが、負傷者数を含めると前年を上回っています。また人身障害事故のうちホームから転落あるいはホーム上で列車と接触して死傷する事故(ホーム事故)は,昨年は191件で前年比7.3%増<死者数は36人で20.0%増でした。

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令和元年版交通安全白書のウェブサイト = https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/index-t.html

日本の鉄道の踏切の数は少しずつ減っており、一方でホームドアは増えています。にもかかわらず事故数や死者数が横ばいなのです。ホーム事故の6〜7割は自殺と言われますが、近年は我が国の自殺者数は減少傾向です。踏切事故では遮断機や警報機を備えた踏切での事故率が多いという統計もあります。

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次に船舶事故の隻数を見ると、1976〜80年度の平均では3232隻だったのが、昨年は2178隻と約3割減少。海難事故による死者・行方不明者の数は同時期と比べ8割以上減った50人となっています。ただし船舶種類別で見ると、漁船や貨物船などの事故隻数が減少傾向なのに対し、プレジャーボートは増加傾向で、近年は漁船を上回って最多となっています。また発生状況では、漁船では衝突が最多なのに対し、プレジャーボートは機関故障や舵障害などの運行不能が多くなっています。

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鉄道事故と船舶事故の統計を見て思い浮かぶのは、利用者のマナーです。以前に比べれば隻数が減少しているプレジャーボートの事故が増えているのは、運航のための知識・技能の不足した運航者が増加しているためではないかと交通安全白書では記しています。鉄道における踏切事故やホーム事故の状況も、個々の利用者がどれだけ安全な移動を心がけているかを示しているのではないでしょうか。

立体交差や地下化による踏切の廃止、ホームドアの設置などによって、事故を減らしていくことは大切ですが、インフラが対策するから利用者は漫然としていて良いというわけではありません。これは自動車交通にも言えることですが、安全は人と乗り物がいっしょに作り上げていくものであることを、忘れてはいけないと思っています。

日本のMaaSは実証実験を脱するか

今週18日、国土交通省と経済産業省が今年4月に始めた「スマートモビリティチャレンジ」について、具体的な支援対象地域・事業が発表されました。昨年から両省では独自に、MaaSに代表されるIoT・AI活用による新しいモビリティサービスの研究会や懇談会を開催していたのですが、テーマが近いことから2019年4月に両省合同で新プロジェクトを開始。このほど支援対象を選定したものです。

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スマートモビリティチャレンジのウェブサイト = https://www.mobilitychallenge.go.jp

選ばれたのは合計28の地域・事業で、経産省が採択したパイロット地域分析事業が13、国交省が採択した新モビリティサービス推進事業が19で、それぞれのうち4つは両省採択事業となっています。我が国は欧州に比べるとMaaSの取り組みは遅れていると言われていますが、両省が動き始めてからわずか1年後に、省庁の枠を超えたプロジェクトを共同で形にしたことは注目に値します。

ただこれで欧州に並んだと考えるのは早計です。いずれも実証実験だからです。本格サービスを導入する前に実験を行うのは大切ですが、我が国のモビリティシーンでは過去にも、国や自治体の支援を受けてさまざまな実証実験を行なったものの、本格導入に結びつかなかった例がいくつもあります。

理由のひとつに、我が国ではモビリティをビジネスとして見る人が多いことがあります。特にMaaSをはじめとする新しいモビリティサービスについては、新規ビジネスとして取り組む企業が多くあります。ビジネス視点で見れば、需要のある場所に投資を行い、需要が減れば供給を打ち切るという判断が自然です。だから本格サービスに移行する前に終了となる実証実験があるのでしょう。

ヘルシンキのトラム

ここで何度も書いてきたことですが、欧米ではモビリティは社会サービスのひとつであり、税金や補助金を主体とした運営がなされています。なので赤字だからすぐに減便廃止という判断になることはあまり目にしません。MaaSを生んだフィンランドは、大都市への人口集中による交通問題解消という社会目的のために10年かけてこの概念を練り上げたもので、お金儲けのために始めた事業ではありません。

スマートモビリティチャレンジの支援対象になった地域・事業に取り組む自治体や企業は、目先の損得に左右されず、長い目でモビリティサービスの理想像を追求していってほしいと思います。そして国はその挑戦を実のあるものとするためにも、欧米のようなモビリティは公が支える体制への移行を進めていくべきではないかと考えています。
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