THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

講演・調査・執筆などのご依頼はこちらからお願いいたします→info@mobilicity.co.jp

ちょっと変わった「自動運転本」出しました

久しぶりに本を出すことになりました。写真でお分かりのとおり自動運転に関する書籍で、4年前の超小型モビリティの本と同じ秀和システムから、来週火曜日9月12日に発売となります。すでにAmazonなどでは予約を受け付けています。価格は1500円(税抜き)です。

IMG_7757
 
自動運転に関する書籍は多く出されていますが、本書はタイトルにもあるとおり、自動運転の導入によって社会はどうなるか?にフォーカスを当てている点が、やや違うのではないかと思っています。 歴史や技術の解説もしていますが、単なる技術書や経営書ではなく、もっと広い視野での「自動運転社会」を想像しながら、専門的にならず分かりやすく書いたつもりです。

IMG_2733

国内外の数多くの自動運転・無人運転に接してきた結果思ったのは、自動運転にはソーシャルとマーケティングの2つの側面があることです。個人的にはその中で、ソーシャル面を大事にすべきという結論に至りました。よって本書では自動車メーカーの自動運転とIT企業などが主導する無人運転車に同じ比重を置いています。どちらが勝つかではなくどちらも選べることが、安全快適な社会を作るからです。
IMG_7753

もうひとつ、自動運転の基礎技術はほぼ確立しており、そろそろ「どう作るか」から「どう使うか」に考えをシフトすべきと感じています。世界各地で普及しているライドシェアが、10年前に登場したスマートフォン前提のサービスであることを思い出してみてください。自動運転をより便利なものとするためには、ソフト面の発展が大切であると考えています。

このように一風変わった自動運転本ですが、気になった方はぜひお求めいただければと思っています。よろしくお願いいたします。

トロリーバスは過去の遺物なのか

北アルプスを貫いて富山県と長野県を結ぶ観光ルート、立山黒部アルペンルートのうち、富山県の黒部ダムと長野県の扇沢を結ぶ関西電力運行の関電トンネルトロリーバスが2018年で運行を終了し、電動バスに切り替わるというニュースが入ってきました。日本でトロリーバスが走っているのは同じ立山黒部アルペンルートの立山トンネルとここだけです。そのひとつが消滅するということになります。

IMG_1587

日本ではかつて多くの都市にトロリーバスが走っていましたが、現在は2系統だけ。そのひとつが消えるわけで、絶滅危惧種扱いしている人もいるようです。ところが海外ではしばしば見ることができます。筆者はそのうちフランスのリヨンとスイスのローザンヌで乗ったことがあります。ともに内陸にある坂が多い街です。ディーゼルバスでは登り坂での排気ガスが気になり、しかも内陸ゆえそのガスが留まりやすいので好ましくないと考えているようです。

リヨンのトロリーバス

立山黒部アルペンルートも坂道が多いうえに、走行ルートの多くがトンネルなので、排気ガスを出さないトロリーバスを導入したそうです。しかしトロリーバスは電車と同じように架線が必要。長いトンネルの中の架線の保守点検は大変であると想像できます。加えて電気自動車に使うバッテリーが進化したことで、架線に頼る必要がなくなったことも大きいでしょう。

IMG_7873

そしてもうひとつ、日本でトロリーバスを走らせるには厄介な法律があります。車体まわりはどう見てもバスなのに鉄道扱いになることです。海外では同じ道をトロリーバスとディーゼルバスが交互に走るようなシーンをよく見かけますが、日本では鉄道とバス、2種類の申請をしなければならないことになります。信号システムなども別になります。 

実は電動バスも、最新型はNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)や東芝インフラシステムズなどがマレーシアで走らせはじめた車両のように、屋上から集電装置を伸ばして充電を行う、トロリーバスのような方式が多くなっています。乗務員がプラグを差したり抜いたりする必要がなく、路面から床下に電気を流すより安全です。黒部のバスにもこの方式が導入されるという噂があります。

20170902
東芝インフラシステムズのウェブサイト=https://www.toshiba.co.jp/cs/

一方スウェーデンでは大型トラックの電動化に向けて、高速道路の車線上に架線を張り、トロリーバスのように上から集電することで長距離走行を可能とする技術の研究開発が進んでいます。充電が必要な一定区間だけ設置するなら、整備費用もそれほどかさまずに済みそうです。

electrified-highway_100558031_l

トロリーバスをバスの仲間としておけば、スウェーデンのように架線を張ることで、同じ集電装置で走行中も充電できるはずであり、バッテリー容量を抑えることが可能となります。以前このブログで紹介した、JR東日本烏山線を走る蓄電池駆動電車に似た方式です。バスの電動化を進めるためにも、そろそろルールを変えて良いのではないかと思っています。

EV戦略は都市と地方を分けるべき

フランス、イギリス、中国、インド…。世界各国で、将来的にガソリン/ディーゼルエンジン自動車の走行を禁止するという発表が行われています。昨年の世界の自動車販売台数は約8400万台。そのうち中国と欧州を合わせると約半分を占めるわけですから、かなりの割合になります。

こうしたニュースを受けて一部のメディアは、かつて欧州がハイブリッド車対抗でディーゼル車攻勢を仕掛けたときのように、欧州対日本、EV(電気自動車)対エンジン車という二者択一の構図を作り出し、日本は世界の流れに取り残さていると警鐘を鳴らしています。

IMG_5561

たしかに最近のパリや上海の大気の状況は、たまに訪れる人間でさえも気になるレベルにあります。それを受けてでしょうか、パリでは電気自動車を見る機会が急激に増えました。すでにパリでは古いエンジン車の乗り入れを禁止しています。現状を考えれば妥当な判断だと思っています。

IMG_5548

しかしその考えをいきなり国全体に広げる決定には疑問を抱いています。今年6月にパリとともに訪れたル・マン(人口約14万人/パリは約222万人)では、大気汚染は気にならず、交通渋滞も目立ちませんでした。近年訪れたフランスの多くの地方都市について同じことが言えます。

もし国家単位での大気汚染が問題になっているなら、交通分野ではトラックやバス、さらに航空機や船舶の排出ガスをやり玉に挙げてもおかしくありませんが、そういう声はほとんど聞こえてきません。大都市と地方の状況の違いを含めて考えれば、環境に優しい国であることをアピールすることで国としてのプレゼンスを上げるための決定であり、政策というより戦略に近いと考えます。

今後世界的に都市部への人口集中はさらに進むと、多くの専門家が予想しています。生産の場としての地方と消費の場としての都市を分けたほうが多くの面で好ましい結果を生むからでしょう。これは電気をはじめとするエネルギーについても言えます。そして移動の面でも、都市と地方とでは異なる思考が必要になってきています。

IMG_6015

鉄道の世界では日本でも欧州でも、輸送量が多い大都市周辺は電車、輸送量が少ない地方は気動車(ディーゼルカー)という使い分けが一般的になっています。日本は電化こそ近代化という考えが根強いようですが、電車は環境には優しいもののインフラ整備には費用がかかるものであり、都市と地方の事情に見合った判断だと考えています。

IMG_6007

自動車においても同様の判断が理想であると思います。どこまでが都市でどこからが地方かという判断は議論の余地がありますが、環境問題が深刻で人口集中も顕著な大都市はEV普及を進め、過疎化によりインフラ整備が難しい地方はエンジン車を残すのが望ましいのではないでしょうか。その枠内で地方の中心市街地は自動車の乗り入れを制限するなど、状況に応じて細かい規制を実施すべきだと思います。

モビリティの世界は、昔から鉄道対自動車、自動車対自転車などのように、二者択一に置いて優劣を決めたがります。しかし多くの人は、新しい選択肢が生まれたと好意的に受け取っているはずです。EVとエンジン車にも同じ関係が当てはまります。2つの自動車は、ハイブリッド車とディーゼル車の関係と同じように、得意分野が異なります。古い新しいで決めるべき問題ではないと考えます。
ギャラリー
  • 関空のデザイン 高評価の理由
  • 関空のデザイン 高評価の理由
  • 関空のデザイン 高評価の理由
  • 関空のデザイン 高評価の理由
  • 関空のデザイン 高評価の理由
  • 関空のデザイン 高評価の理由
  • スイスで自動運転社会を体験
  • スイスで自動運転社会を体験
  • スイスで自動運転社会を体験