THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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地方型MaaSが試される2019年

2019年最初のブログになります。本年もよろしくお願いいたします。今回は以前ここでも紹介した、昨年末に開催された「地域交通と情報技術〜MaaS・ライドシェア・自動運転と地域交通計画〜」というテーマのセミナーについて記します。当日はこのブログを見ている方々も何名か参加していただきました。この場を借りてお礼を申し上げます。

ルーラルMaaS概念図

この日は第一部がフィンランドのMaaSについて、私も登壇した第二部はMaaS・ライドシェア・自動運転と地域交通計画についてプレゼンテーションを行いました。フィンランドのMaaSについては以前も紹介したので割愛させていただくとして、第二部についてひとことで紹介すると、以前のブログで予想したとおり地方視点、生活者視点の内容になりました。

アーバンMaaS概念図

上の2つの図版はフィンランド交通・通信省での勉強会で見せていただいたものです。2枚目の都市型MaaSでは複数の交通をシームレスにつなぎ合わせることがポイントなのに対し、1枚目の地方型MaaSは多様な移動や物流を単一の交通で賄うことが重要としていました。フィンランドでは前者はヘルシンキのWhim(ウィム)が具現化したのに対し、後者については決定的な回答は出ていないとのことでした。

一方日本では、以前のブログで紹介したように貨客混載という取り組みがあります。2015年のヤマト運輸と岩手県北交通による「ヒトものバス」が最初で、その後鉄道やタクシーにも波及しており、異なる物流事業者の混載も実現しています。こうした多種多様な需要をMaaSによりシームレスに1台につなげる仕組みを確立すれば、世界に先駆けた地方型MaaSの提案になるのではないかと考えています。

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ヤマト運輸のウェブサイト = http://www.kuronekoyamato.co.jp

こうした取り組みはビジネス視点では難しいでしょう。儲けが見込めないからです。一方で今回のセミナーでは、地方交通は多くが自治体の補助により運行されているので、自治体主導によるMaaSは実現しやすいのではないかという意見が出ました。個人的にもそのような動きが出てくることを期待します。そのためには路面電車整備時に用意されるような「MaaS補助金」が必要になってくるかもしれません。

当日、私は自動運転とMaaSの関係について話しました。自動運転は自家用車よりも公共交通、特に交通量が少なく運行経路が限られる地方交通で導入しやすいという意見が多くなっています。しかし現在実証実験中の無人運転車が実用化されると、乗務員に行き先を聞いたり、両替を依頼したりという行為はできなくなります。MaaSによる事前の経路探索や運賃決済が必須になってくるのです。

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日本は世界最先端の高齢化国家であり、 運転免許返納者も増加しています。一方で若年層を中心に大都市への一極集中が進んでおり、地方の過疎化もまた加速しています。運転手不足も深刻です。我が国の交通でまず手をつけるべきは地方であると、多くの人が認識しているでしょう。その解決策のひとつとして、地方型MaaSをどう導入していくか。今年のモビリティシーンにおけるテーマのひとつだと考えています。

グリーンスローモビリティ・アズ・ア・サービスへの期待

2018年の自分のモビリティ分野の活動を振り返ってみると、2つのキーワードが思い浮かびました。ひとつは6月に国土交通省が提案したGSM(グリーンスローモビリティ)、もうひとつは9月にフィンランドの首都ヘルシンキで説明を受けるとともに議論を重ねたMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)です。

その前段階として、1月には石川県輪島市の電動カートを使った一部自動運転による移動サービスを体験しました。5か月後にこれがGSMの代表例として紹介されるとは思いませんでしたが、そこではさらに、群馬県桐生市などで走行している低速電動バスeCOMも取り上げていたので、機会を見つけて桐生に足を運びました。

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10月には愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンを訪れ、かつてニュータウンとして開発された街こそGSMが必要であると痛感し、11月には横浜市金沢区の電動カート実証実験を見に行って、坂の多い街での電動車両の有効性を教えられました。GSMが必要とされる舞台は予想以上に多いことを思い知らされました。

ところでGSMで使われる乗り物は、電動カートにしても低速電動バスにしても、横の窓を持たずエアコンがないなどシンプルな構造です。実はこれがタイトルでMaaSと結びつけた理由です。

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従来の考え方では、安全装備や快適装備は上級の乗り物ほど充実しており、それを理由にして利用者に上級の乗り物を選んでもらうというヒエラルキーが存在してました。しかしMaaSはすべてのモビリティをシームレスにつないで快適な移動を提供する概念であり、MaaSのもとでは自転車、鉄道、バス、タクシーなど、すべての乗り物が平等となります。

GSMで使われる乗り物もMaaSに組み込まれれば、既存の鉄道やバス、タクシーと同等の移動手段として活用が期待できます。そうなれば車両価格や維持費の安さはメリットになり、自動運転に積極的に取り組んでいることは、運転手不足や高齢化などの問題解決で有利になるでしょう。

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GSMは大都市ではなく、郊外や農村などでの移動手段として期待されているようです。一方のMaaSはビジネス視点で考えるとどうしても需要の多い大都市偏重になりがちです。フィンランドやヘルシンキのように、国や自治体が主導してMaaSを考え、そこにGSMを結びつけることで、シンプルかつエコな移動環境を構築し、地方の移動問題解決につなげていくことを期待しています。

*次回は2019年1月5日公開予定です。

軽トラ市の三段活用

軽トラックの荷台を店舗に見立て、運んできた地場産の新鮮野菜などを対面販売する特設の朝市、軽トラ市。先月、栃木県宇都宮市のオリオン通りで第5回全国軽トラ市が開催されたので覗いてきました。東洋経済オンラインで記事にしているので、気になる方は見ていただきたいですが、自分自身、軽トラ市を実際に見たのは初めてであり、いろいろ感心する部分がありました。

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東洋経済オンラインの記事 = https://toyokeizai.net/articles/-/253995

軽トラはもともと荷物を積んで運ぶための乗り物です。その荷台を店舗に仕立て、60台以上を一列に並べて商店街を作ったシーンにまず圧倒されました。軽トラの荷台が買い物に最適な高さであることにも気づきました。自作の棚でディスプレイを工夫したり、アルミでボックスを作ったり、楽しみながら店を営んでいることも伝わってきました。

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現在はさまざまな形態の移動販売車を目にしますが、多くは販売専用に設計された車両で、それ以外の用途に使うのは難しそうです。しかし軽トラ市に参加した車両は、終わったら残った商品やディスプレイを積んで帰り、翌日からは本来の作業に従事することができます。本業に支障を与えず、新たな役目を持たせているわけで、2005年に最初に軽トラ市を開催した岩手県雫石町の人々の発想に感心しました。

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しかも軽トラ市は地方のにぎわいを創出しています。宇都宮市は人口50万人以上の県庁所在地ですが、以前、平日昼間に訪れたオリオン通りは閑散としていました。それだけに集客力には驚きました。軽トラのみならず、両側に並ぶ商店を覗く人も多く見られました。一方の参加者は軽トラの機動力を活かし、県外からのエントリーも目につきました。過疎化に悩む地域こそ効果が大きいのではないかと感じています。

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気になるのは軽トラ所有者の高齢化と後継者不足です。農村部に共通する悩みですが、軽トラは運転という行為が加わるので、よりシビアな問題になります。ただ生産者と消費者が直接顔を合わせて買い物をすることも軽トラ市の魅力であり、無人運転車ではこの雰囲気は表現できないでしょう。近年は若者がフリーマーケット的に趣味の品物を販売する例も増えているそうなので、今のにぎわいを保ったまま世代交代していってほしいと思っています。
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