THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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外堀から埋めていくUberの日本戦略

今週木曜日、ライドシェアという新しい移動のかたちを生み出したUberが、UberEATS(ウーバーイーツ)という名前のフードデリバリーサービスを始めました。

前日に行われた発表会の模様を記事にしたので、くわしくはそちらをご覧いただきたいのですが、従来の多くの同業者と異なるのは、デリバリースタッフやシェフは雇わず、飲食店と配達員、ユーザーの三者をつなぐアプリケーションの提供という形態を取るところは、配車アプリと似ています。

UberEATS1

UberEATSは、海外ではサンフランシスコやパリ、ロンドンなど7カ国・33都市ですでに提供しており、東京のために考案されたビジネスではありません。しかし東京でのUberEATS導入は、他の都市とはやや違う意味が込められていると感じています。

このブログでも触れてきたとおり、我が国でのUberはタクシー業界の反発を受けています。2014年に東京でスタートしたハイエンド向け配車サービスはスムーズに導入されましたが、一般のドライバーが一般ユーザーを運ぶ、Uberの核となるサービスは、たびたび導入が見送られました。

Presentation
日経テクノロジーオンラインの記事=http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/093004326/?rt=nocnt

そこでUberは、人ではなく食を運ぶUberEATSを東京に導入することで、一般の人々が移動や物流を支えることのメリットを、モビリティとは別の視点から投げかけることで、多くの人にアピールしていきたいと考えたのではないでしょうか。

ライドシェアでも着実な歩みを進めています。5月にサービスを始めた京都府京丹後市に続き、先週末には北海道中頓別町でも「なかとんべつライドシェア」と名付けた、ボランティア町民ドライバーの自家用車を利用した実証実験が始まりました。人口わずか1800人という北国の小さな町で移動を確保するために、不可欠なサービスだと町が判断したようです。

なかとんべつライドシェア
中頓別町のウェブサイト=http://www.town.nakatombetsu.hokkaido.jp

Uberが良くてタクシーが悪いという主張ではありません。都市のモビリティは自転車、公共交通、そして自動車など、複数の交通が共存することで新たな可能性を生み出すことが理想です。どれが大事かを決めるのは事業者ではなく、ユーザーである市民であるはずです。

Uberが中央突破ではなく、外堀から埋めていくような慎重な導入を進めている様子を目にして、そこまでしなければ認められない日本のモビリティシーンの閉鎖性を残念に思います。まずは同じ土俵に立たせることこそ重要ではないでしょうか。

女川のまち力

 2週間前のこのブログで、昨年春から走りはじめた、JR東日本仙台駅と石巻駅を結ぶ「仙石東北ライン」について書きました。実はあのときの目的地は石巻ではなく、そこから石巻線に乗り換えて終点の女川駅に向かいました。女川駅もまた、昨年春に駅舎が高台に移設されて復活し、周辺のまちづくりも着々と進んでいるのでチェックしに行ったのです。仙石東北ラインと合わせて記事にもまとめたので、そちらもご参照ください。

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東洋経済オンラインの記事=http://toyokeizai.net/articles/-/137147

女川駅は、町の中心部もろとも津波で流されたので、駅は内陸側に200m移動し、7〜9m嵩上げされた土地の上に構築されました。ウミネコが羽ばたく様子をイメージした駅舎は、紙管を用いた仮設住宅や避難所間仕切りなど、災害支援建築で国際的な評価を受けている建築家、坂茂氏が設計。改札口を出ると、眼前には緩く下るプロムナードが伸び、両脇には商業施設が並び、遠くには海が望めます。

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プロムナードの両脇には、昨年12月にオープンした商業施設「シーパルピア」があります。地元の特産品を提供する商店やレストランのほか、石巻市の段ボール加工会社「今野梱包(こんのこんぽう)」のテナントもあり、「ダンボルギーニ」が展示されています。いちばん奥の海沿いの地域は、公園として整備されるそうですが、女川交番の建物は震災遺構として残される予定です。

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個人的に印象に残ったのは、海から離れた高台に街並みを移設したり、巨大な堤防を築いたりする被災地もある中、女川は甚大な被害を出した海と向き合い、歩んでいく道を選んだことです。自然の前には人間は無力であるという前提に立ったうえで、その自然と共存していく。海辺のまちとしての好ましいありかたを見ることができました。

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しかもスロープしたプロムナードの中程にある「まちなか交流館」には、会議室や音楽スタジオといった町民のための設備以外に、復興の内容をパネルなどで紹介したスペースがあります。東日本大震災は、被害地域があまりにも広範だったので、個々の都市の復興状況をチェックすることが困難です。しかしここに来れば、女川の5年間の歩みが手に取るように分かります。多くの人に見てほしい展示です。

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女川町には原子力発電所があり、国や県から交付金が支給されています。しかしそれが復興の原動力であるとは思えませんでした。素晴らしい景観に生まれ変わった駅前広場からも、シーパルピアやまちなか交流館で働く人々からも、町の力を感じたからです。町の人たちが主役となって復興を進めつつあることが、この場所にいるだけで伝わってきました。

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そんな女川にうれしいニュースがありました。8月から仙石東北ラインが延長運転するようになったのです。仙石東北ラインは、交流電化の東北本線と直流電化の仙石線を直通運転することから、ディーゼルハイブリッド車を導入しました。その機能を生かす形で、非電化の石巻線への乗り入れが実現したのです。現在は1往復だけですが、需要があれば増便も期待できるでしょう。復興の後押しになることを期待します。

無料即配願望が招く物流危機

モビリティとは本来、人の移動のしやすさを表す言葉で、物流は含まれないかもしれませんが、今日はその物流にスポットを当てます。

21世紀になって急激に増えた物流に、インターネットショッピングで購入した商品の配送があります。私も利用者のひとりですが、最近、気になることがあります。送料無料、スピード配送をセールスポイントとする販売業者が目立つことです。有名なのはアマゾンですが、それ以外にも家電量販店など、さまざまな業種がサービス競争を繰り広げています。

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*写真はイメージです

日本の物流システムは以前から、指定した時間に確実に届くことが世界的に評価されており、それを武器とした海外進出も盛んです。しかし販売業者主導による最近の無料競争、スピード競争は度が過ぎると感じています。

特にスピードは、その地域を移動している人なら、おおよその計算はできます。インターネットで注文してから数時間で荷物が届くというサービスは、誰かに無理を強いているはずです。しかもそれを無料としたり、定額制として使い放題にしている業者もあります。運送業者にしわ寄せが行っていることを懸念します。
 
このテーマを取り上げた理由のひとつとして、東京を走る事業用軽商用車の数が急に増えたことがあります。慢性的なドライバー不足と合わせて考えれば、過酷な労働状況が想像できます。もうひとつは、いままで正確だった配送に遅れが生じる例を体験しつつあることです。日本的物流システムの限界を見せつけられている印象を抱いています。

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*写真はイメージです
 
旅客鉄道や高速バスでは、度を超えたスピードや低運賃の追求が大惨事を招いた例がいくつもあります。トラックでも今年、山陽自動車道のトンネル多重事故で、運送業者の過剰労働が問題となりました。宅配のトラックは車両が小型で低速で走行するので、大事故には至りにくいですが、現状を見る限り、サービスそのものが限界にきているのではないかという気がしています。

ではこういう状況を改善するにはどうすべきでしょうか。ひとりひとりが、物流には相応の時間とコストが必要であると認識し、明らかに過剰なスピードや低価格をアピールするサービスは使わないという意志表示をすることでしょう。バスと違って運んでいるのはモノですが、それを操っているのは人間であり、度を超えたサービス追求は当然ながら事故に結びつくことを忘れてはいけないと思います。
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