THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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i-ROADの未来を語り合った週末

先週末、このブログでも何度か紹介してきた、トヨタ自動車の超小型モビリティ「i-ROAD」を使った「OPEN ROAD PROJECT」のパイロットミーティングが開催されました。昨年7月にスタートしたプロジェクトが1周年を迎えたのを機に、第1〜8期の試乗パイロットとトヨタの関係者が集まり、これまでの活動を振り返りながら、今後のi-ROADについて意見交換をしました。第2期パイロットの私も参加してきました。

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OPEN ROAD PROJECTについてもう一度簡単に説明しておくと、都市生活者に自由な移動を提供するために、i-ROADというプロダクトだけでなく、駐車場やアプリなどのサービスを含めて、新しい移動体験の開発に取り組むプロジェクトです。

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会場に着くと、すでにパイロットとその家族たちで賑わっていました。自分のような自動車業界に関わる人はごく少数で、多彩なライフスタイルの方々が集まっていました。こうした方々に1か月間、市販前の車両を貸し出し、いっしょに開発に参加してもらうという方法を考え、実践したトヨタの度量の大きさには改めて驚かされます。

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専用アプリが次々に増えていったことにも感心しました。第2期では駐車場検索や充電状況確認だけでしたが、その後アクセルやリーンに合わせてスピーカーから流れる音が変わっていく「SOUND-X」、回生ブレーキによる充電状況を水のようなグラフィックで表現した「Streaming Blue」などが追加されていました。第2期ではフロントパネルだけだったカスタムパーツは、他にドリンクホルダーも存在していました。

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2人乗り仕様に戻ることもできました。第3期から渋谷区、第7期から世田谷区で走り始めており、専用アプリも用意しています。外観はナンバープレートが軽自動車用になり、車体前後に逆三角形の識別マークが追加されたことが目立ちます。乗り味はひとり乗りと変わりません。ただ現在の超小型モビリティ認定制度では、地域内での走行に限定されており、渋谷区の人は渋谷区内しか走れません。本格的な普及にはやはり独自のカテゴリーが必要だと痛感しました。

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会場には、i-ROADが自宅にやってきたらどう使いたいか、i-ROADにどんなサービスや機能があったら良いか、という質問の答えを自由に書き込めるコーナーもありました。 オープンカーの開発、こたつの用意、レースの開催など、柔軟な発想が楽しかったです。子供の書き込みが多かったのも印象的で、「大人になったらi-ROADを買いたいです」という具体的な要望も出ていました。未来のドライバーたちがこの乗り物にとても興味を寄せていることが分かりました。

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トヨタでは今後も、OPEN ROAD PROJECTのようなチャレンジを続けていきたいそうです。東京やグルノーブルでのシェアリングサービス「Ha:mo」を含めて考えれば、日本でもっとも超小型モビリティの普及を真剣に考えている会社と考えて良いでしょう。トヨタの次の一手に注目したいと思っています。

DeNA無人運転バスの真の意味

7月7日、以前から自動運転の研究開発に関わっていたIT企業DeNA(ディー・エヌ・エー)が、新たな動きを起こしました。千葉市の豊砂公園内で8月から運行を始める交通システムに、フランスのベンチャー企業EasyMile(イージーマイル)が開発した12人乗りの無人運転電動小型バス「EZ10」を使うと発表したのです。さらにDeNAは翌日、NTTドコモや福岡市と共同で、2016年度下半期から九州大学構内での無人運転実証実験も行うことも公表。こちらにもEZ10を用いるそうです。

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DeNAのウェブサイト=http://dena.com/jp/

日本の多くの人にとって、EasyMileという社名を聞くのは初めてであり、信頼性に不安を抱く人もいるでしょう。同社の背景にある膨大なプロジェクトを、多くのメディアが伝えていないからです。このブログでは何度も触れてきたその点について、あらためて紹介していきます。 

EasyMileは、EU(欧州連合)が研究開発の枠組みとして用意した助成金付きフレームワーク・プログラムを活用し、2012年から4年の予定で進めるプログラム、CityMobil2の中でデビューしました。前身にあたるCityMobil1は2006年から5年間行われたので、約10年のキャリアを持つことになります。このCityMobil2には、欧州内の公的機関・大学・企業など45の組織が参加しており、これまで10カ所以上で無人運転の実証実験を成功させてきました。

当初車両を提供したのは、フランスのベンチャー企業Robosoft(ロボソフト)とNavya(ナヴヤ)でした。その後Robosoftは、かつてF1に参戦し、現在は超小型モビリティのメーカーとなっているLigier(リジェ)と共同で新会社を設立しました。これがEasyMileです。つまり多くの自動車メーカーの自動運転プロジェクトに劣らぬ経験の持ち主なのです。

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実証実験のひとつとして、3月にフランスのニース近郊で行われた実証実験は、このブログでも紹介しました。CityMobil2が今年で終了となることを尋ねると、今後はEasyMile自身が他社と共同で、無人運転バスの実用化に向けた歩みを進めていくと語っていました。今回のDeNAとの共同実験も、その一環となります。

また少し前のブログでは、スイスのシオンで、CityMobil2のメンバーであるEPEL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)からスピンアウトしたITベンチャー、BestMile(EasyMileとは別会社です)がNavyaの無人運転小型バスARMAを使い、公道での実証実験を始めたとお伝えしました。その後同社のスタッフに訊ねたところ、法規の関係で完全な無人ではなく、専任のオペレーターが乗っているものの、一般の人々を乗せ15分に1回の割で運行しているとのことです。

つまりどちらも、EUがバックアップする大規模な研究開発プロジェクトから生まれた子供たちなのです。自動車メーカーとは違い、車両の販売は想定せず、タクシーやバス、シェアでの運用を考えており、既存の公共交通と組み合わせて、社名が示すようにラストマイルの移動を提供するつもりとのことです。約20km/hという運行速度は、重大な暴走事故を起こす危険性を薄めています。それでも高齢者や車いす利用者、ベビーカーの親子たちにとっては、ありがたい移動手段になるはずです。

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EasyMileのウェブサイト=http://easymile.com

このブログでCityMobil2を取り上げたのは昨年10月。その後いくつかのメディアや講演などで紹介し、社会貢献を第一に考えた思想の先進性を伝えてきました。今年3月にはプロジェクトに関わる人々との接触もありました。そこにDeNAという日本の企業が加わったことは喜ばしいことです。公道での運行にはまだステップを踏む必要はありますが、年々増えつつある移動困難者のためにも、早めの実用化を希望します。

BRT=連節バスではない

少し前のブログでご紹介したように、今日は「横浜にLRTを走らせる会」が毎年夏に開催している「LRTフォーラム」で講演をさせていただきました。テーマは以前触れたように「道路は人のために 交通は街のために」でしたが、最後のほうで、最近LRTを語る際に比較対象として登場することが多いBRTにも触れました。

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BRTとはBus Rapid Transitの略で、バス高速輸送システムと訳されるのが一般的です。専用レーンを確保するなどして、定時性を高めるところに最大の目的があります。しかし日本のBRTを見てみると、連節バスの導入がBRTであると勘違いしている自治体があるようです。BRTがBus Rensetsu Transit(連節バス輸送システム)の略であるかのような解釈です。

連節バスは通常のバスより速く走れるわけではありません。乗車定員は多く、乗降口も多くなるので、乗り降りのスピードは速くなるような気がしますが、現在のように運転手が1か所で料金収受を行う方式だと、乗客が多い分時間が掛かることになります。定時性確保のためには専用レーンの整備が不可欠であり、それが無理ならBRTと名乗るのは控えてほしいと考えます。

たとえばパリでは、2000年からバスレーン「モビリアン(Mobilien)」の整備を進めています。写真のように一部は自転車レーンと共用しています。定時性確保のほか,、排気ガス削減という環境対策も込められており、バスの所要時間は平均で25%切り詰めることができたそうです。車両は通常のバスと共用であり、BRTという言葉こそ使っていませんが、実態は日本の一部のBRTよりもBRTに近い内容です。

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最初の写真は同じフランスのルーアンを走るBRT(旧塗装)で、専用レーンを用意するだけでなく、運転席上にカメラを装着し、停留所付近で自動操縦を行い、車両と停留所の隙間をLRT並みに狭め、車いすやベビーカーがそのまま乗り降りできるユニバーサル性能をも実現しています。公共交通に賭けるフランスの本気を感じるシステムです。

日本の自治体の中には、LRTを走らせるには車道の幅を減らさなければならず、渋滞を助長するので及び腰というところが見られますが、本物のBRTでもそれは同じことです。費用が膨大になるからLRTを諦め、渋滞が発生するからBRTも諦め、という消極的な考え方で、真の交通改革ができるのでしょうか。整備費用を抑えることも公共交通にとっては大切ですが、利用者にとって快適な移動手段を提供することはもっと大切であると考えます。
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