THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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高齢ドライバーと郊外型ショッピングセンターの関係

報道が過熱気味という感もありますが、連日のように高齢ドライバーによる事故がニュースになっています。そんな中インターネットメディアのcitrus(シトラス)から、郊外型ショッピングモールについての記事の依頼を受けたので、流通最大手のイオングループが展開するショッピングセンター、イオンモールを例に挙げ、高齢ドライバーとの関係を書きました。

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 citrusの記事=http://citrus-net.jp/article/10045

高齢ドライバーがステアリングを握り続ける理由はいろいろあります。個人的には記事にも書いたように、多くの高齢者が運転免許を取ったのは高度経済成長期であり、高速道路の開通、モータースポーツの盛り上がりなどもあって、クルマに対する憧れが特に強い世代であることが大きいと考えています。

もうひとつ、この時代の庶民の目標だったのがマイホームです。都心の職場から遠く離れ、駅から徒歩圏内でなくても、庭付き一戸建てに住むことがステイタスでした。もちろん車庫には愛車がありました。マイホームだけあって、多くの人はそこを終の住処とします。郊外に住み、クルマで移動する生活を続けながら、歳を重ねていく人が多いようです。

こうしたライフスタイルを支えてきたのがイオンモールなどの郊外型のショッピングセンターです。広大な郊外の空き地に広い駐車場を構え、レストランや銀行、医療施設などを併設しているので、中心部へ行く必要がなくなり、クルマ中心の生活が加速していきます。駅と店舗を結ぶ専用バスを運行している店舗も多くありますが、ほとんどの利用者は鉄道とバスを乗り継ぐのが面倒と感じるでしょう。

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ところがこのイオンモールが最近になって、駅の近くに相次いで店舗をオープンさせています。イオングループの経営状況が芳しくなく、なかでも総合スーパー事業が不振であることから、いままでと異なる分野への進出を考えたのかもしれません。

自治体としてはこの流れを好機と捉えるべきでしょう。市役所や病院などの公共施設も移設して、駅を中心とした街づくりを進めれば、クルマ中心の移動を公共交通に転換させる転機になるからです。もちろんこれだけで高齢ドライバーの問題が解決するとは思っていませんが、郊外型ショッピングモールの代表格が駅前に進出という事実は、移動を変えるきっかけになる可能性があると考えています。

モーダルシフト推進の動きに注目

国土交通省は先月25日、今年10月に一部が改正された「物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)」に基づく総合効率化計画として、複数の事業者が連携してトラック輸送から鉄軌道あるいは海上輸送に転換することで物流の効率化を図る、いわゆるモーダルシフトの取り組み計画3件を認定・支援すると発表しました。

国土交通省や環境省では数年前から、モーダルシフトを推進する事業を支援してきました。しかし改正物流総合効率化法でモーダルシフトの取り組みが認定されるのは、これが初めてとのことです。

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国土交通省のウェブサイトには、11年前に制定された従来の物流総合効率化法との対照表もあります。そこで目に付くのは、「流通業務に必要な労働力の確保に支障が生じつつある」「効率性の高い輸送手段の選択」「中小企業の連携または共同化」という言葉であり、それを受けて対象とする運送事業として自動車の他に鉄軌道と船舶が加わっていることです。

慢性的なドライバー不足の中、インターネットショッピングの急増によって、物流業界が過酷な労働環境に置かれていることは、以前このブログで書きました。同省のプレスリリースでも、「トラックドライバーの約3割が50歳以上であるとともに、ネット通販の進展等による小口貨物の増加に伴い、トラックの積載率が5割を切っており…」という記述があります。また自動車よりも鉄道や船のほうが、輸送量あたりのCO2排出量が少ないことは、ここで改めて説明するまでもないでしょう。

トラックドライバー年齢
輸送機関別CO2比較
国土交通省のウェブサイト=http://www.mlit.go.jp/index.html

直接の原因がトラックドライバーの労働問題にあるとはいえ、遅まきながら我が国がモーダルシフトに本腰を入れ始めつつあることは歓迎すべき動きです。だからこそ気になるのは、北海道の鉄道網の一部が存続の危機にあることです。モーダルシフトという観点でも、幹線鉄道の維持は必然であると思っています。

路上駐車の「枠」と「帯」

自動車業界関係者と都市交通について話をすると、必ずと言っていいほど出てくるのが駐車場の話題です。今週も某欧州メーカーの研究開発者と意見交換をした際に、「日本は路上駐車ができない」旨の発言をしていました。

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日本も昔に比べれば、パーキングメーターなどを使い路上駐車できる場所は増えていると実感しています。ただし道路は駐車する場所であると考える欧州と、そうではないと考える日本では、根本的な違いがあるのも事実です。もちろん欧州流を全面的に支持するわけではなく、景観面では日本の考え方のほうが好ましいと思いますが、それ以前に路上駐車の方法に大きな違いがあるのも事実です。

これについては、近年日本で広まりつつある「パークシェア」サービスなど、駐車場を取り巻く新しい動きとともに、「価格.com」のコラムで記しているので、ご興味がある方はご覧いただきたいと思います。

日本の路上駐車スペースは1台ごとの枠になっています。しかし欧州は1台ごとの区切りがありません。複数のクルマが共有する帯になっています。パリへ行くと、道路の脇に駐車車両がビッシリ並んでいる光景を目にします。どうやって出し入れするのか疑問に思うほどです。こういう場面では言うまでもなく小型車が有利です。トヨタi-ROADや日産ニューモビリティコンセプトなどの超小型モビリティなら、縦方向に停めることもできます。

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価格.comのコラム=https://mag.kakaku.com/car/?id=4739

言うまでもないことですが、環境対策には小さい自動車のほうが有利です。一部のメーカーは、車体の軽量化やエンジンの小排気量化が環境対策であるとアピールしていますが、たとえば全長5mの車体を4mにすれば、20mの道路に収まる車の数が4台から5台に増えるわけで、渋滞緩和、ひいては環境対策に結び付きます。小さい自動車の優位性は動きません。

環境問題を真剣に考えるなら、小さい自動車によりメリットをもたらす社会が理想でしょう。欧州の路上駐車は生まれながらにしてその素質を備えていると言えます。日本は軽自動車や超小型モビリティなど、小型車作りを得意としているわけですから、それを生かせるインフラ作りを進めてほしいところです。
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