THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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復興を後押しするハイブリッドトレイン

ひさびさに東日本大震災の被災地に向かいました。昨年、JR東日本石巻線終点の女川駅が内陸に移設されて営業を再開し、仙台と石巻を結ぶ仙石線も一部区間を内陸の高台に移設することで全線の運転を再開。同時にこの区間の所要時間を短縮した「仙石東北ライン」が走り始めるなど、明るいニュースがいくつかあったので、チェックしたいと思ったからです。

仙台駅停車中

今回は仙台駅からまず仙石東北ラインに乗りました。仙石線は、途中塩竈市や松島町で東北本線と併走します。ここを線路で結び、仙台からここまでは速達性に勝る東北本線を走ることで、所要時間短縮を実現した列車です。東北本線は交流、仙石線は直流と、電化の方式が違うので、連絡線は電化せず、同じJR東日本の小海線で走っているディーゼル・ハイブリッド車両の技術を用いた新型車を投入しています。

私が利用したのは日曜日の午後。席はほとんど埋まっていました。仙石東北ラインはすべて快速扱いで、停車駅は2パターンあり、それ以外に1往復の特別快速があります。乗ったのは東北本線内各駅停車の快速で、同線内のみの利用者もけっこういました。ディーゼルカーでありながら加減速性能は同じ線路を走る電車に遜色なく、多くの利用者は電車と同じ感覚で乗っているようでした。

塩釜駅を過ぎてしばらくすると、右側に仙石線の線路が近づいてきます。しばらく並走した後、列車は約300mの連絡線を、かなり速度を落として通過し、一旦停止。その後仙石線に乗り入れ、松島町の高城町駅に停車します。このあたりは松島湾の近くを走りますが、しばらく進むと海岸線に別れを告げ、真新しい高架橋に入りました。ここからが高台移転の区間です。

野蒜駅舎

野蒜駅前造成地

次の快速停車駅である東松島市の野蒜駅で降りてみました。真新しい駅前広場の周辺はいまだ造成中で、家は一軒もありません。駅の跨線橋からは旧野蒜駅周辺が望めますが、保存が決まったホームは残っているものの、周囲の家はほとんど津波で流されたうえに、多くの地域が津波防災区域に指定されていることもあり、更地が目立っていました。震災から5年半。復興はまだ道半ばであることを痛感しました。

再び列車に乗って終点の石巻に向かいます。震災直後、バスで仙台から2時間以上掛かった経験があるだけに、通常の快速でも約1時間で行けることはありがいと思いました。駅周辺は、閉店したデパートの建物を活用した市役所の隣に、旧北上川河口近くにあって津波で被害を受けた市立病院が移転していました。歩いて暮らせるコンパクトなまちづくりを目指した再生計画が進みつつあるようでした。

仙石東北ライン車内

東日本大震災の被災地は、多くが人口減少に悩んでいます。その中で東松島市と石巻市では、手法は異なれど、鉄道駅を中心とした復興まちづくりを進めていました。人口減少に歯止めを掛け、復興まちづくりを成功に導くために、野蒜から約30分、石巻から約1時間で大都市仙台に行ける仙石東北ラインは、重要な役目を担っていることが分かりました。

自動運転先進国シンガポール

先月25日、シンガポールで、世界初の自動運転タクシーが試験サービスを開始したというニュースがありました。MIT(マサチューセッツ工科大学)出身の研究者2名によって設立されたnuTonomy(ヌートノミー)という会社が運用しており、同社が開発した専用アプリで呼び出して乗ることができるそうです。

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今はまだ実験段階なので、技術者が同乗して非常時の停止操作などを行い、一部地区での運行に限られ、利用者についてもあらかじめ選ばれた住民に限定しているそうですが、2年後には正式サービスを目指しているそうです。

一般人が乗って公道を走る自動運転の実験は、近年各所で行われています。このブログでも今年6月、スイスのシオンという都市で、BestMile開発のソフトウェアを用いたNavyaのARMAという無人運転小型バスが運行を始めたことを紹介しました。

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なのでnuTonomyは、世界初の一般人が乗れる自動運転車ではないのですが、自由に走行ルートを選べるタクシーであることと、ルノーZOEや三菱i-MiEVといった市販の電気自動車を起用したことは画期的です。そしてもうひとつ、自動運転の普及に積極的なシンガポールの姿勢も見逃せません。

最新の自動運転状況についてはこちらでも紹介しています=https://mag.kakaku.com/car/?id=4465

先月千葉市で実験走行を行ったEasyMileの無人運転小型バスEZ10もシンガポールで走っています。アジアでの展開はシンガポールが初とのことです。公道ではなく、Gardens by the Bayという公園内の移動ではありますが、昨年12月の試験走行の結果が良好だったことから、現在もAUTO RIDERの名前でサービスを提供しています。

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シンガポールはまた、日本では新交通システムと呼ばれることが多いAGT(オートメーテッド・ガイドウェイ・トランジット) の導入も積極的です。こちらも無人運転で、三菱重工業が開発した車両が、市街地や空港を走っています。このように、自動運転モビリティの導入に積極的な都市国家なのです。

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自動運転の実用化にとって大切なのは、テクノロジーとインフラ、双方が連携しながら迅速な決断を行ない、導入に結びつけていくことだと思っています。もちろんその前提として安全確保が大前提ではありますが、ITベンチャーとシンガポールという、ともに若くて活力のある集団のコラボは、最適な組み合わせではないかと思いました。自動運転の将来を語るうえで、外せない動きになりそうです。

公共交通が休まず走り続けるために

東京の都営地下鉄の駅などに、最近こんなポスターが貼ってあります。都営交通105周年を記念して、これまで以上に都営交通のことを知ってもらうべく、今月から始まった新たな情報発信プロジェクト、「PROJECT TOEI(プロジェクト トエイ)」の一環として用意されたポスターの1枚です。

1923年9月1日に発生した関東大震災で、東京市電(現・都電)は779両が焼失するという大きな被害を受けましたが、懸命な復旧作業を行い、震災からわずか5日後の9月6日に運転を再開。11日間の無料運転を実施し、復興の手助けをしたとのことです。写真は震災直後の上野公園付近で、車両には大小さまざまな紙が貼り付けてあります。市電の車両は伝言板としても使われていたようです。

都営ポスター

「PROJECT TOEI」のウェブサイトでも見ることができます=http://project-toei.jp

人にとってはショッキングに思える写真をあえて使った勇気と、そこに記された「終戦の日も。震災の日も。休まず走り続けています。」という明快なメッセージは、終戦記念日から防災の日にかけてという時期に貼り出されたこともあり、多くの人に強烈な印象を残したのではないでしょうか。

しかしすべての公共交通が迅速に復活できるわけではありません。2009年の台風で被害を受けたJR東海の名松線は、不通区間をバスに転換したいというJR側に対し、沿線自治体が山林や河川の整備を行うことを持ちかけ、今年3月ようやく運行を再開しました。でもこれは幸運な例であり、宮崎県の高千穂鉄道のように、災害が原因で廃止に追い込まれた公共交通もいくつかあります。

災害による被害から運転再開までの時間は、被害の内容だけでなく、利用者数や経営体力などによっても左右されるようです。しかし個々の利用者にとっては、同じ公共交通です。大都市と地方で復旧に差が生まれることは好ましくありません。タクシーをテーマとした前回も書きましたが、大都市と地方で異なる仕組みを用意することが、災害時の安定した復旧にもつながるのではないでしょうか。

バスタ
*写真はイメージです

そこには利用者の理解も必要です。たとえば高速バスでは「もっと安く」という声を聞くことがありますが、安全性や信頼性を考えれば、適正料金があって然るべきでしょう。度を超えて安価な料金は、安全性や信頼性をレベルダウンさせるだけでなく、災害からの復旧にも大きく影響するはずです。

公共交通はその字面が示しているように、学校や図書館と同じ公共物です。みんなで支えるものです。もちろん国や自治体や事業者も、日々努力を続けていますが、私たち利用者も安全快適な運行のためにはどうあるべきかを、考えていく必要があると思っています。
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