THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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新幹線の安定感を物流に生かしたい

今週は北海道や東北・北陸で12月としては記録的な大雪となり、関越自動車道で長時間の立ち往生が発生するなど、交通も大きな影響を受けました。大雪の原因として、この時期としては強い寒気が上空に流れ込んだことに加え、日本海の海水温度が平年より1〜2度高いことも挙げられています。水温が高いので海水が蒸発しやすくなり、雪雲が発達したとのことです。

海水温度の上昇は、昨年夏に台風が勢力を弱めないまま相次いで日本列島に上陸し、大きな被害をもたらした原因のひとつでもあったことを思い出します。日本政府は10月、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目標に掲げました。この発表については賛否両論ありますが、いままで以上に異常気象が頻発している以上、1人ひとりが地球に優しい生活を心がけることが大切だと改めて思いました。

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そんな中で運転を続けていたのが新幹線です。このブログを書いている19日夜も、上越新幹線や北陸新幹線をはじめ全線が時刻通りに運行しています。在来線で長年大雪の影響を受けてきた経験を生かし、人・車両・インフラのすべてにおいて最大限の対策を行ってきたことが効果を発揮しているのでしょう。

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高速道路もインフラについては新幹線並みの設備が可能かもしれません。しかしドライバーや車両の冬装備は各自に任されています。特にトラックは空荷の状態では接地力が確保できないのでスタッドレスタイヤだけでは駆動力が不足気味で、チェーンを装着しないと発進や登坂ができない場合がありますが、関越自動車道の関越トンネル内はチェーン禁止となっていることから、万全な対策をせずに走っているドライバーがいると想像しています。こうした状況では新幹線並みの運行は到底無理でしょう。

新幹線が新型コロナウィルスの影響を受け、乗車率が低迷していることは以前も紹介しました。あのときは個室を提案しましたが、物流を担当してはどうかとも思っています。日本の物流におけるトラックの分担率はなんと91%(トンベース)。今回のような立ち往生が発生すると、物流のほとんどがストップしてしまいます。しかも立ち往生の間エンジンは回し続けており、環境面でも好ましくありません。それなら速くて正確な新幹線に物流の一部を担ってはどうかと考えるのが自然ではないでしょうか。

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そう思った理由のひとつはJR東日本が昨日、来年3月のダイヤ改正に関連して、現在唯一の2階建て新幹線であるE4系を来年秋までに引退させると発表したからです。最高速度が他の形式より劣ることなどを理由に挙げているそうですが、貨物列車であればさしたる欠点とはならず、大きな車内空間は貨物輸送に適したパッケージングになり得ると思っています。

もちろん旅客から貨物への転換に際しては車両の改造だけでなくインフラの整備も行う必要がありますが、新規に車両を開発するよりはコストが抑えられるはずです。物流の安定化はもちろん、モーダルシフトとして環境対策にも寄与するでしょう。トラック1本足打法と言える現在の日本の物流体制の改革案のひとつとして提案したいと思います。

鉄道の電化と自動車の電動化の違い

先週のブログで取り上げた自動車の電動化という言葉を聞いて、個人的に思い出すのが鉄道の電化です。ただし似ているのは字面だけで、鉄道の電化の場合は線路に架線などを張って、電車や電気機関車の運行を可能にすることを言います。車両とインフラの両方に関係する言葉であるわけで、家庭の電化とも意味が異なります。

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電化路線を走る車両がすべて電車あるいは電気機関車になるわけではありません。たとえばJR東日本東北本線の仙台と仙石線石巻あるいは石巻線女川を結ぶ仙石東北ラインは、東北本線が交流電化、仙石線が直流電化で、両線をつなぐ短絡線は電化していないため、ディーゼルハイブリッド方式の車両が架線の下を走っています。

逆に電化していない路線を電車が走ることもあります。同じJR東日本では宇都宮と烏山を結ぶ烏山線がそのひとつで、バッテリーに蓄えた電気で走る、電気自動車のような方式の車両が走っています。充電は両端の駅、および宇都宮周辺の東北本線乗り入れ区間で行なっています。

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海外ではこのようなハイテク車両は珍しいですが、電化しているのにディーゼルカーやディーゼル機関車が走る例は多くあります。フランスのグルノーブルからリヨンへの移動は、全線電化していたにもかかわらずディーゼルカーでした。さらに列車の本数が少ないローカル線では、費用対効果が薄いこともあり電化しません。これは日本も共通です。電化が進んでいて非電化が遅れているとは一概に言えません。

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つまり鉄道の場合、国や自治体の政策として電化が推進される場合もありますが、架線を張るか否か、電車を走らせるか否かは、多くが事業者の判断です。コストが見合わない場合は非電化やディーゼルカーという選択をし、非電化であっても沿線の環境対策が必要であればバッテリー電車などを導入しています。前回のブログで、自動車の電動化は利用者や事業者など使う側の判断を尊重すべきと書いたのは、こうした鉄道の状況を知っていたからでもあります。

ただ鉄道が自動車より、はるかに環境負荷が低いことは頭に入れておく必要があります。国土交通省の2018年度のデータでは、ひとり1kmあたりのCO2排出量は乗用車133gに対し、鉄道はわずか18gにすぎません。これはディーゼルカーなども含めた数字です。しかもJR東日本は自前の発電所を2つ持っており、運行に使う電力の約6割、首都圏に限れば約9割の電力を賄っています。うちひとつは再生可能エネルギーとして扱われる水力発電所です。

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国家や企業の戦略的な部分も大きいエンジン車販売禁止を強行するより、移動の一部を鉄道に切り替えるほうが、手軽に温暖化対策できることを改めて認識します。特に大都市周辺に住んでいる人たちにとっては鉄道イコール電車なわけですから、各自が日々の移動に鉄道を積極的に組み込めば、それだけで電動化になります。電車移動の比率が高まれば、電気自動車に乗り換えるより、結果的にはエコになるかもしれません。

エンジン車禁止の流れをどう考えるか

欧米を中心に目立っている「◯◯年からエンジン車禁止」の流れ。日本でも地球温暖化対策の一環として、2030年代半ばにガソリン/ディーゼルエンジンだけで走る自動車(ここでは以下エンジン車と書きます)について事実上、国内での新車販売を禁止する動きがあるという報道がありました。今回はこのテーマに触れます。

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この種のニュースでよく使われるのが「電動化」という表現です。自分の記憶ではこの表現はスウェーデンのボルボカーズ(商用車のボルボとは別会社)が使いはじめたと記憶しています。これは全車を電気自動車にすることではなく、マイルドハイブリッドを含めたハイブリッド車も電動化になります。しかし当初はマスコミでさえ電動化=電気自動車化と誤解する人がおり、いまなお同じような解釈をしている人がいるようなので注意が必要です。

日本はトヨタ自動車を筆頭にハイブリッドカーを数多く市場化してきており、電気自動車についても日産自動車がリーディングカンパニーのひとつになっています。マイルドハイブリッドについては軽自動車でも採用車種があるほどです。なので今回、2030年代中盤にエンジンだけで走る自動車の新車販売を禁止するというルールになっても、さほど困らないのではないかという気がしています。

ではなぜ欧米は電動化戦略を推進しているのか。2つの理由があると考えています。ひとつはゲームチェンジを画策していることです。欧州の自動車業界は、日本製ハイブリッド車の人気を快く思わず、クリーンディーゼル車で対抗する姿勢を明確にしましたが、フォルクスワーゲンの不正行為が明るみに出たことで、戦略の見直しを余儀なくされました。そこで新たにターゲットに据えたのが電動化であると理解しています。

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https://www.swissinfo.ch/jpn/進む氷河の融解_消えゆくスイスの氷河-2018年の異常気象で更に縮小/44490606

もうひとつは温暖化の影響が日本以上に深刻であることです。我が国でも近年、異常気象が頻発していますが、欧州ではアルプスの氷河減少やヴェネツィアの浸水など、より明確な形で影響が出ています。さらにコロナ禍での対応にも違いがあります。日本は一度現状に戻してから改革を始めようという考えが主流なのに対し、海外はコロナ禍を改革の好機と捉えているというマインドが目立ちます。このあたりは民族性の違いもあるので、どちらが良いと決めつけることはできません。

モビリティ、つまり移動のしやすさは移動する人、乗り物を走らせる人の判断が第一であり、企業や国家の戦略を押し付けるべきではないと考えています。ただ都市内の移動でエンジン車が効率面でも環境面でも好ましくないのは自分の経験からも明らかであり、このブログでも何度か提案したように、自動車についても使い分ける時期に来ているのではないかと思っています。

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新幹線と路面電車の車両はデザインもメカニズムも明らかに違います。それと同じように、都市内の移動は電気自動車のシェアリングをメインとして、郊外や地方に出かけるときにマイカーに乗るような使い分けが好ましいのではないでしょうか。将来的には前者は自動運転のシェアカーになっていくでしょう。ドアtoドアの魅力は手放すことになりますが、自ら操る楽しさはそのほうが満喫できると考えています。