THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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気になりませんか?タクシーのマナー

今回は新型コロナウイルス関連の話題から少し離れて、日頃から気になっていることを書きます。それはタクシーについてです。このブログでタクシーについての話題というと、多くは今後の日本の地域交通で必要不可欠になるであろう地域が移動を支える仕組み、つまり自家用有償旅客運送を含めたライドシェアに異を唱え続ける態度に関するものでしたが、今回は違った部分にスポットを当てます。

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上の写真を見ていただければ今回の趣旨が想像できるのではないかと思います。横断歩道の直前でタクシーが乗客を降ろしたことがわかります。道路のルールである道路交通法では交差点や横断歩道から前後5m以内、バス停留所の前後10m以内などは駐停車禁止となっており、これはマイカーだけでなくタクシーにも当てはまるので道交法違反になります。こうした事例をしばしば目にします。

このような事例が頻発する理由は2つあると考えています。ひとつはタクシーの利用者にあります。日本の義務教育では交通安全を学ぶ科目がありません。任意の交通安全教育はやっているところが多いですが、ほとんどは歩行者や自転車目線であり、道路や車両全般についてのルールは多くが運転免許を取得する際に初めて教わることになります。つまり免許を取らない人は道路のルールをあまり知らずに道路を使っていることになります。

海外の例としてフランスを挙げると、フランスでは義務教育に交通安全の科目が用意されており、小学校と中学校でそれぞれの段階の交通安全証明書というものが発行されます。中学校の交通安全証明書がないと運転免許が取得できないそうです。フランスでは14歳から超小型モビリティに運転免許なしで乗ることができますが、実際はこの交通安全証明書を取得していることが前提になっているようです。

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さらにフランスの交通安全協会と自動車メーカーのルノーが運営する財団では共同で交通安全のウェブサイト「ROAD4US」を立ち上げており、歩行者から運転者まで道路を利用するすべての人が簡単に交通安全を学べるよう、シンプルかつアクセシブルなイラストを用意。教育者や団体などが無料でダウンロードし自由に使用可能となっています。交通安全に年齢や文化、教育レベルは関係ないというメッセージが伝わってきます。

運転免許の有無を問わず交通安全教育を行う仕組みが整っていれば、冒頭の写真のように横断歩道の近くで乗り降りしようとする乗客はいなくなるはずですし、仮にそのような要望を出す乗客がいたとしても、その人は交通違反を幇助しようとしていることになるので、運転手の判断で安全運転を優先した乗せ方、降ろし方をしても問題はないと予想しています。

タクシーの運転手にも課題はあると考えています。写真は反対側に利用者を見つけてUターンしたものの曲がりきれず、切り返しをしているシーンです。最初からUターンを考えていれば十分転回可能な道幅です。これに限らず突然速度や進路を変えるタクシーが多く、同じ道路利用者として肝を冷やしたことが何度もあります。自身と乗客のことだけでなく道路全体を見て運転に努めてほしいものです。
 
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最近は日本でもウーバーに範を取ったタクシー配車アプリの導入が進んでいます。出発地と目的地をあらかじめ設定するこうしたアプリが一般的になれば、利用者を乗せたり降ろしたりするために突然速度や進路を変えることは少なくなりそうです。ただ日本はモビリティ分野に限らず、デジタル化に消極的な層が一定数おり、こうした層への配慮のために進化が滞りがちであるのは歯痒いところです。

マイクロモビリティ自由化の前に

2週間前にこのブログでも取り上げたセグウェイ生産終了のニュースは多くの人の注目を集めたようで、私のもとにもテレビの取材やウェブメディアの執筆依頼などがありました。自分の考えはあのとき書いたとおりで、走れる場所がないから普及しなかったというよりも価格の高さ、ユニバーサル性能の低さ、電動キックボードの普及が大きく関係したと思っています。

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もちろん日本は現在、電動キックボードは原動機付自動車(原付)登録であり、車両は保安基準を満たし、利用者は運転免許証を携帯しヘルメットを着用する場合に限り公道走行が認められ、走行場所も車道に限定されています。免許もヘルメットも不要で、主に自転車道を走行することになっている欧米とは大きく違います。厳しい状況に置かれている点はセグウェイと同じです。

ただセグウェイと違うのは、以前取り上げたように、国のサンドボックス制度に認定され、実証実験で得られた情報やデータを用いて規制の見直しにつなげていく動きがあることです。さらに先月開催された自由民主党MaaS議連(モビリティと交通の新時代を創る議員の会)のマイクロモビリティPTでは、国内電動キックボード事業者などで構成されるマイクロモビリティ推進協議会の各社同席のもと、普及に向けた規制緩和などについての提言案が議論されました。

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この場では電動キックボードが、ラストワンマイル問題を解決する手段だけでなく、新型コロナウイルス感染拡大予防にも有効と指摘しています。それを踏まえたうえで欧米並みの普及を目指すべく、関係省庁が連携して早期に規制緩和を実現すること、シェアリングに関しては今年秋頃より自転車道や自転車レーンを含めた公道で走行できるよう特例措置を講じること、国家戦略特別区域法に基づく特例措置について来年前半を目途に結論を得ることなどを求めています。

都市部での「三密」を避ける交通手段として、マイクロモビリティの選択肢が増えるのは良いことであり、賛同するところではありますが、それには日本の道路のルール、とりわけ自転車を含めたマイクロモビリティについての部分を根底から変えないといけないとも思っています。

ウェブメディア「FORZA STYLE」でも書かせていただきましたが、1970年の道路構造令改正で自転車道とともに自転車歩行者道(自歩道)が制定されたことが大きいと思っています。自転車は馬車や人力車などと同じ軽車両なので、道路交通法では原則として車道左端を走るというルールがありながら、歩道も通行可能とするダブルスタンダードになったのです。しかも自歩道については歩行者同様、道路のどちら側を通行するかという規定はありません。



最近になって歩道での歩行者と自転車の接触事故が目立つようになったことを受けて、警察庁は2007年、「自転車安全五則」を発表しました。通行場所については車道が原則・歩道は例外とし、車道は左側を通行、歩道は歩行者優先で車道寄りを通行するように定めました。ただ歩道を通行して良い例外として掲げた項目がかなり多く、実質的に今までとさほど変わらぬ状況であると感じています。

これでは勝手気ままな通行をする自転車が出てきてもしかたがないと感じますし、自転車道やレーンの整備が進まず、警察の取り締まりが甘いのも、この状況が関係しているのではないかと思っています。現在の議論から察するに、電動キックボードも軽車両に含まれると予想します。今の自転車のルールをそのまま適用すると、かなりの混乱が生じることは目に見えています。

自歩道の標識

混乱を避けるにはどうするか。自歩道が誤りだったと認めて廃止していくとともに、自転車道や自転車レーンを軽車道、マイクロモビリティレーンなどと呼び名を変えたうえで、積極的に整備していくべきでしょう。幸い国土交通省は前回紹介した「2040年、道路の景色が変わる」で、小型モビリティやモビリティサービスにも言及しています。コロナ禍は社会を変える絶好の機会と言われています。それは道路も例外ではないと思っています。

国交省「道路未来図」をどう見るか

国土交通省が6月18日、新型コロナウイルスに対応するための、当面の道路施策をまとめて発表しました。しばらく続くウィズコロナと、その後のアフターコロナの時期に分けて項目を列記しています。このうちウィズコロナ対策は、このブログで取り上げた飲食店の路上営業緩和、自転車通勤通学の促進とともに、混雑が問題になっている高速道路サービスエリア・パーキングエリアの大型車用駐車スペースの拡充を行なっていくそうです。

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注目すべきはアフターコロナの時期を見据えた発表で、道路政策ビジョン「2040年、道路の景色が変わる」を提言したことです。気候変動、人口減少、デジタル化、そしてポストコロナの新しい生活様式などの課題に対し、道路政策によって実現を目指す2040年の日本社会の姿と政策の方向性を提案したものです。国交省のウェブサイトに特設ページがありますので、興味のある方はご覧ください。

まず目に入るのはソフトなタッチのイラストで、プロジェクト中止に追い込まれたグーグルのグループ会社が手がけた「サイドウォーク・トロント(Sidewalk Tronto)」や、トヨタ自動車が静岡県裾野市の自動車工場跡地に計画している「ウーブン・シティ(Woven City)」に近い感じも受けますが、民間企業ではなく日本の行政機関が作成したページとしては、爽やかな色使いを含めて画期的です。


 

中身も意欲的で、道路政策の原点は「人々の幸せの実現」と定義し、効率性や安全性の向上、環境問題解決などはデジタル技術を活用して道路を「進化」させつつ、道路は本来子どもが遊び、井戸端会議を行うなど人々の交流の場
だったことから、コミュニケーション空間に「回帰」させるというテーマも掲げています。こうした内容をこういう時期に公開できたというタイミングの良さも感じます。

国の提言で幸せという言葉や回帰というテーマが出たことも目を引きます。たしかにモビリティシーンでも、21世紀になって環境や健康を大切に考えた結果、自転車や路面電車が見直されている事例があります。将来像のひとつには「公園のような道路に人が溢れる」というフレーズもあり、幸せや回帰という言葉を使って人間にとって過ごしやすい場所を目指しているところに共感しました。

先週末にはこの提言をテーマに、「道路の新ビジョンを味わってみる会」というフォーラムがオンラインで開催され、作成に携わった国交省職員も出席しました。2040年としたのは、このプロジェクトに関わる中堅職員が現役中に実現したいという思いが込められているそうですが、若手とベテランの連携、道路局と他の局の連携も積極的に行いながらまとめていったそうです。

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いずれにしても国交省の提言としては画期的な内容であり、イラストを多用したこともあって理解しやすい内容だと感じています。さらに言えばこれば国が出した指針でもあり、まちづくりに取り組む人たちにとって後押しになる内容だと思います。だからこそ都市や地方がどう動くか興味があります。

国内のモビリティ先進事例はここでもいろいろ紹介してきましたが、一方で放置状態という地域があることも事実です。なによりも大切なのは、個々の自治体がアフターコロナまで見据えたまちづくりに目覚め、まちづくりに興味のある地元の住民や専門家などの意見を参考にしながら、実現へ向けて動き出すことではないでしょうか。



なお国交省ではポストコロナの新しい生活様式や社会経済を支えるため、「ポストコロナの道路施策」について検討を進めるに際し、企業や大学などを対象に「ポストコロナの道路の取り組み」についての提案を募集しています。募集期間は7月17日(金)までです。提案をお持ちの企業や大学などは応募してみてはいかがでしょうか。