THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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なぜフランスはモビリティ改革を進めるのか

前回に続きフランスでの話を書きます。今回の舞台はグルノーブル。1968年冬期五輪の舞台にもなった、フランス南東部の都市です。ここではトヨタ自動車とフランス電力公社、グルノーブル都市圏などが共同で実証実験中の、超小型モビリティを用いたカーシェアリング「Cité Lib by Ha:mo(シテリブbyハーモ)」を視察してきました。

シテリブbyハーモについては「第3の自動運転車」同様、「日経テクノロジーオンライン」に記事を書いています。ハーモは国内でも展開例はありますが、グルノーブルのそれはトヨタ主導ではなく地元の電力公社や都市圏などとコンソーシアムを組んでおり、大学で学生相手に講習会を行うなど利用促進のためのプロモーションも積極的で、欧州で超小型モビリティの規格が確立していることを生かし、先鋭的な取り組みを進めていることが理解できました。

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日経テクノロジーオンラインの記事(要登録)=http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/040401408/?ST=eleizing

グルノーブルには他にも環境対応型モビリティがあります。LRTはもちろん、サイクルシェアリングも用意しています。自転車レーンの整備も進んでおり、歩道が広く確保されているのも印象的でした。多くの道にゾーン30が導入され、前回紹介したように、自動車の速度低下をもたらすハンプも各所に設置しています。 現市長が移動に自転車を使用するなど、環境対策に熱心であることが推進力になっているようです。 しかしグルノーブルの交通改革はこれで終わりではないことを、関係者に教えられました。

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フランスは昨年6月、大気汚染防止のためのプラン、Villes respirables en 5 ans(5年で呼吸ができる都市へ)を発表しました。都市圏ごとに2020年までの環境政策を考えてもらい、優秀なプランに100万ユーロを出して改革を実行してもらうというものです。提案は9月初めに締め切られ 同月末に20が選ばれました。グルノーブル都市圏も入っています。さらに同時期に制定されたZCR(交通規制ゾーン)については、東部のストラスブール都市圏とともに、グルノーブル都市圏が他に先駆けて導入するなど、推進役的存在として認められています。
 
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国の資料に、グルノーブル都市圏の改革概要が紹介されていました。注目すべきは、他の分野に先駆けてモビリティ関連が記されており、内容の約半分を占めていることです。グルノーブル地域圏で排出されたNOxの59%、PM2.5の16%は交通が原因だそうですから、当然かもしれません。
 
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つまり今のフランスでは、環境対策を推し進めるためにコンペまで行っており、そこでもっとも大事とされているのはモビリティ改革であるということです。一方日本では、環境対応型モビリティを入れる際にも、赤字にならないかがもっとも重要な議論となります。モビリティを見る目に、ここまで大きな差があるのです。我が国で環境対応型モビリティを育むには、なによりもこの部分を変えていくことが大事ではないかという思いに至りました。

新年度を機に望みたいこと

新年度が始まりました。いままでとは違う道を使って職場や学校へ行くことになった人もいることでしょう。そこで思い出したのが、先月ヨーロッパに行ったときに、あちこちで見かけた写真の仕掛けです。横断歩道そのものや手前の路面を盛り上げることで、自動車の減速を促すものです。ハンプ(hump)という呼び名が一般的です。

日本でも住宅地の中の生活道路に設置している例を見かけますが、ヨーロッパでは都市内の至る場所で目にできます。写真は1枚目がフランスのニース中央駅前通り、2枚目は同じフランスのグルノーブルで、公園やロープウェイ乗り場が近くにある川沿いの道です。いずれもひんぱんに自動車が通る道ですが、ハンプを設置して減速を促しています。

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なぜ日本ではハンプがあまり使われないのか、ヨーロッパの都市の光景を見るたびに不思議に思います。スポーツ施設でのゴミ拾いなどに代表される、日本人の他を思いやる気持ちは海外でも知られるところですが、歩行者という交通弱者への思いやりは、大きく遅れを取っていると言わざるを得ないからです。

特に通学者に対しては、2012年4月に京都府や千葉県などで立て続けに死亡事故が発生したにもかかわらず、多くはスクールゾーンの点検やゾーン30の導入など、マナーを促すレベルの改善に留まっています。その後も事故は起こっているわけですから、海外で実績のあるハンプの導入など、より効果的な対策が必要となっていることは明らかです。

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強者にあたるのは自動車だけではありません。今週とある自転車利用者のブログで、「夜道の歩行者はライトを使ってほしい」という投稿があり話題になりました。接触しそうになったら自転車が減速するのが筋であるはずなのに、歩行者にも責任の一端があるという意見を、驚くことに一部の自転車利用者は支持しているようです。

新生活をスタートした人たちは、慣れない道を使っています。いつもより事故の可能性が高いということです。今の日本は残念ながら、こうした弱者に対する思いやりが失われつつあり、ハンプなどの強制処置の導入も止むなしと考えます。しかし本音を言えば、道路を使うひとりひとりが気をつければ、それで済むことなのです。

「第3の自動運転車」は社会貢献を目指す

2週間前のブログでは南仏ニースのLRTを紹介しましたが、この地を訪れた目的は他にもありました。本ブログで何度か紹介している、EU(欧州共同体)がサポートする自動運転プロジェクト「シティモビル2」の実証実験の取材で、欧州のシリコンバレーと言われるニース近郊のソフィア・アンティポリスに足を運んだのです。

概要については「日経テクノロジーオンライン」に記事を書いていますので、そちらを参照していただきたいのですが、関係者の話によれば、実証実験に使われる車両イージーマイル「EZ10」が、今年中に日本上陸を果たす予定です。そこで現地でシティモビル2およびイージーマイルの関係者に聞いた話をもとに、日本のモビリティシーンにおけるEZ10の役割について考えました。

実証実験風景
日経テクノロジーオンラインの記事(要登録)=http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/032501257/

記事ではシティモビル2、イージーマイルおよびEZ10について、「第3の自動運転車」という表現を使いました。現状の自動運転業界は、IT企業グーグルと既存の自動車メーカーの対決という構図ですが、シティモビル2やEZ10はどちらにも属しません。グーグルや自動車メーカーのように特定の企業が主導する形態ではなく、複数の団体がコンソーシアムを組んでプロジェクトを進めていることや、パーソナルユースではなく公共交通的な用途を目指していることが理由です。

イージーマイルという社名には、ラスト1マイルを快適に移動できるようにという想いが込められており、既存の公共交通との連携を前提としていることが分かります。さらにEZ10は、箱型の12人乗りという構造で分かるように、バスやタクシー的な使い方を想定しています。ソフィア・アンティポリスの実証実験では、約1kmのルートに5か所の停留所を設けています。ソフィア・アンティポリスを走るEZ10はもちろん、停留所の近くで車線変更を行った後、指定位置に停車し、客扱いを行っています。

停留所
イージーマイルのウェブサイト=http://easymile.com/

自動運転を欲する理由はさまざまです。その中で、我が国において重視すべきことだと考えるのが、過疎地で暮らす高齢者の移動です。自動車メーカーが研究開発を続けている自動運転車は、高速道路での運転支援から発展したものですが、こうした移動は鉄道などで転換することが可能です。しかし過疎地では鉄道やバスが廃止された地域も多く、自転車は体力的に乗るのが困難であり、移動手段そのものがないという人がいます。

現在、世界各地で実験が進められている自動運転車の中で、こうした問題の解決にもっとも有効な1台が、今回取材したEZ10ではないかと思っています。関係者の言葉からも、社会貢献という意志が明確に感じられました。そして最初に書いたように、イージーマイルは日本の某企業と交渉を進めており、EZ10は今年中に我が国に上陸する予定です。現在の自動車が目的に応じて細分化されているように、自動運転車も目的に応じた使い分けが望まれます。1日も早い導入を期待しています。
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