THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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パリらしさが推進する電動化

2か月ぶりにフランスを訪れました。今回は1週間パリに滞在したので、この街の最新交通事情をいろいろ観察することができました。そこで気付いたことのひとつが、電気自動車(EV)が増えていたことでした。日産リーフやルノーZOEなど、一般向けに市販されているEVも見ることができましたが、それ以外の車両も電動化が進んでいました。

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このブログで何度も紹介しているEVシェアリング、オートリブの車両ブルーカーは当然のように走り回っており、赤い車体の商用版ユーティリブ(utilib')も見るようになりました。また水色の広告車両にも何度か出会いました。大型トラックが排気ガスを出しながら渋谷や銀座を流す日本の広告車両に比べ、はるかにスマートかつクリーンであることは言うまでもありません。

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日本のコミュニティバスに相当するトラヴェルス(Traverse)にも電動バスが導入されています。ブルーカーと同じボロレが製作した車両の他、イタリアのブレダ・メナリーニ・バス(写真)など数車種が使われているようです。パリ交通公団では約9割を占めるディーゼルエンジン・バスを2025年までに全廃し、8割を電動バスに置き換えるBus2025計画を進めており、大型バスの電動化も実施される予定です。

近年のパリが積極的な環境政策を打ち出していることは、このブログでも多くの道路への30km/h規制導入、2020年ディーゼルエンジン自動車乗り入れ禁止などで紹介してきました。さらに今年の7月1日からは平日の8時から20時まで、1996年以前の乗用車、1997年9月以前の商用車などの走行が禁止されます。EVの増加はこの政策も関係しているのでしょう。

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パリ市のウェブサイトはこちら(仏語)http://www.paris.fr/actualites/lutte-contre-la-pollution-une-nouvelle-etape-le-1er-juillet-3612

一連の政策を見て感じるのは、市長の決定力と説得力です。パリでサイクルシェアリングのヴェリブが大規模に展開できたのも、フランスの多くの都市で次々にLRTが開業しているのも、リーダーの力によるところが大きいでしょう。日本の多くの自治体で環境対応型モビリティの導入が進まない理由のひとつに、この点が関係しているのではないかと思っています。

そしてもうひとつ、パリは伝統的に革新を好む都市でもあります。100年以上前に石造りの街に鉄骨のエッフェル塔が建てられたときも、30年近く前にルーヴル美術館にガラスのピラミッドが作られたときも、賛否両論が巻き起こりました。それを実現した背景に、パリは常に革新的であれという文化的な空気を感じるのです。7月からの旧い車両の走行禁止も、こうした空気が関係しているような気がします。 

高速道路の制限速度引き上げに賛成の理由

今年3月、警察庁が従来100km/hだった日本の高速道路の制限速度を120km/hに引き上げるというニュースが報じられ、賛否両論が巻き起こっています。私は先月、価格.comマガジンでこのテーマについてコラムを書きましたが、テレビ朝日系列で毎週日曜日に放送されている「ビートたけしのTVタックル」でも29日の放送で取り上げることとなり、ゲストとして出演することになったので、あらためて自分の考えを記すことにしました。

新東名高速b
価格.comマガジンのコラム=https://mag.kakaku.com/car/?id=4032

私は120km/hへの引き上げに賛成します。理由は、自分を含めて現在の自動車とドライバーの能力を考えると、120〜130km/hでの走行に問題はなく、現に欧米の多くの国の制限速度がこのあたりに集中しているからです。その中にはオランダやデンマークのように、21世紀になってから引き上げを行った国もあります。しかも警察庁の資料によれば、デンマークでは110km/hから130km/hへの引き上げで、むしろ事故が減ったそうです。

なぜ事故が減ったのか。デンマークの場合、以前から多くのクルマが130km/hで走っていた、つまり実勢速度でした。一方で制限速度を遵守する車両もいます。制限速度を実勢速度に合わせることで、2つの流れがひとつになって追い越しが少なくなり、事故が減ったと想像できます。また大型トラックの制限速度は多くの国で100km/h未満となっています。乗用車との速度差が大きくなればトラックの追い越しも減り、事故防止に貢献するのではないかと想像しています。

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日本でも一般道路については、警察庁が2009年に新たな速度規制基準を発表し、これまで40〜60km/hだった制限速度を、生活道路は30km/h(ゾーン30)に引き下げる一方、自動車の通行機能を重視した構造の道路では70〜80km/hに引き上げました。しかしその後、事故は増えていません。警察庁ではこの結果も踏まえ、高速道路の制限速度引き上げに踏み切ったのではないかと思っています。
 
ただしドイツの高速道路アウトバーンの一部で実施している速度無制限には賛同できません。昔は他国でも速度制限がなかったそうですが、事故の増加や環境問題の深刻化、航空機や高速鉄道の発達を考え、速度制限を導入しました。ドイツでも環境問題を重視する人々は速度制限の導入を訴えていますが、自動車業界は高速性能をアピールできるというメリットを重視して反対を続けています。いずれにせよアウトバーンはガラパゴスだと考えるべきでしょう。

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注意してほしいのは、すべての自動車がいつどこでも120km/hを維持する必要はないことです。写真のように、アウトバーンでもカーブが続く道では100km/h以下の制限速度を掲げています。筆者が海外の高速道路で走る機会が多いフランスのオートルートでは、晴天時は130km/h、雨天時は110km/hという表示を見掛けます。
 
そもそも自動車は、そのときの状況に合わせてドライバーが速度を調節して運転するものです。日本のドライバーはこの意識が希薄だと思っています。だから登校時の子供の列にクルマが突っ込んで死傷者を出すなど、歩行者や自転車利用者が亡くなる交通事故が多いのでしょう。120km/hへの制限速度引き上げを機に、すべてのドライバーが自分の運転技能を引き上げていく状況に切り替わってほしいと願っています。

待ったなしの超小型モビリティ

昨日、東京・原宿で、rimOnO(リモノ)という名前の超小型モビリティの発表会がありました。経済産業省出身の伊藤慎介氏と、トヨタ自動車出身の根津孝太氏が2014年に設立した会社で、ネーミングには「乗り物からNOをなくした」という意味が込められています。私はグッドデザイン賞の審査委員で2年間、根津氏とご一緒したこともあり、発表会に参加してきました。 

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この日発表されたのはプロトタイプで、着せ替え可能な布製ボディ、回転式の運転席、交換可能なカセット式バッテリー、速度に合わせてテンポやトーンを変えるBGMなど、斬新な仕掛けが盛り込まれています。可愛い系のデザインは、人に近い存在、小さく優しい乗り物であることを表現したもので、軽量樹脂素材を活用して車両重量200kg以下、満充電での航続距離50kmを目標とするそうです。
 
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大人2名あるいは大人1名+子供2名という乗車定員は、国土交通省が軽自動車をベースとした特例として一定の地域で運用を認める「超小型モビリティ認定制度」、45km/hという最高速度は欧州の超小型モビリティ規格L6eに準じています。三井化学や帝人フロンティアなど有名企業をパートナーとしたコラボレーション能力も評価できるものです。

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しかしながら、ひとつ問題があります。2013年4月にスタートした「超小型モビリティ認定制度」は、今年3月で実証実験期間が終了し、4月以降も認定制度をしばらく続けて様子を見るという方針を表明したのです。 

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ひと足先に茨城県つくば市で実証実験をスタートしたパーソナルモビリティは、昨年から全国展開が可能となり、東京・二子玉川などでの実証実験が始まっています。なぜ超小型モビリティの歩みが遅いのか、不思議に思うほどです。 

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rimOnOでは来年に市販モデルの発売を目指しつつ、日本版L6eの導入を要望していきたいとしています。同様の考えは、超小型モビリティを手掛ける他の企業も抱いているはずです。それなら大手・ベンチャーの別を問わず、一致団結して国への本格制度導入を働きかけてほしいものです。日本で超小型モビリティが普及するか、今が正念場だと感じています。
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