THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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榮久庵憲司会長のこと

今週火曜日、去る2月8日にこの世を去った故榮久庵憲司GKデザイングループ会長の本葬儀が、東京の増上寺大殿で、GKデザイングループの社葬として行われました。当日は晴天に恵まれたこともあり、1000名以上の会葬者の方々が参列しました。私も故人のご冥福をお祈りしてきました。

会長はGKデザイングループのトップをはじめ、さまざまな要職を務めてきました。そのひとつに、日本デザイン機構会長がありました。私は10年ほど前に同機構に入ったことで、会長をはじめ、デザイン界で要職にある方々とつながりを持つことができ、教えを請うことができました。それまでデザインとは関わりを持たなかった自分にとって、貴重な時間だったと今でも思っています。

SR400

GKデザイングループはモビリティ分野のモノやコトも数多くデザインしてきました。その中で個人的に思い入れがある車両として、モーターサイクルのヤマハSR400と、鉄道車両のJR東日本253系があります。

SR400は二度、愛機にしました。若かりし頃、レーサーレプリカと呼ばれるスーパースポーツの車種が溢れていた中でこれを選んだのは、レーサーレプリカとは対照的に、過剰を廃し、モーターサイクルの本質を研ぎ澄ませ、それを美しくまとめた姿に惹かれたのではないかと思っています。その後35年以上にわたり現役を務めていられるのは、基本を忘れない造形の成果と言えるでしょう。

成田エクスプレス用車両として開発された253系は、海外旅行者を主役に据えた日本初の鉄道車両でした。従来の特急車両とは一線を画した、機能的な作りには潔ささえ感じました。さらに白と赤を基調とした塗装は、公式アナウンスにはありませんでしたが、ナショナルカラーをモチーフにしたものだと考え、高く評価していました。成田空港に行く際には好んでこの車両を使っていました。

NEX253

両車に共通するのは、人間と道具との関わりを、美しく形にしていることではないかと思います。それはGKが生み出した他のモノやコトにも通じることです。作り手が心を込めた道具であれば、使い手は道具を通してその心を感じ、良い関係を築くことができる。そんな関係を、さまざまな実例で教えられました。その結果、いままで以上に真剣にモノを選び、じっくり付き合うことを心掛けるようになりました。

最後に直接お会いしたのは、昨年9月のコンパッソ・ドーロ国際功労賞受賞記念講演会でした。その後12月には、広島県立美術館で開催された「榮久庵憲司の世界展」で、一連の作品を通して考えに触れることができました。日本に工業デザインという分野を確立したその人と、日本デザイン機構という団体を通じて関係を持つことができたことは、素晴らしい経験でした。その経験を生かし、日本ではまだまだ過小評価されている工業デザインという分野の発展に、少しでも貢献できればと思っているところです。

自動運転をどう操るか

今週、千葉大学で、フィンランドにあるアールト大学の学生を交えてのワークショップがありました。テーマはFuture of Automobility。月曜日に5組の混成グループを結成し、ゲストを招いてのブリーフィング&トークセッションを行ったあと、研究をスタートし、金曜日に最終発表を行うというスケジュールでした。私もゲストのひとりとして、Automobility and Societyというテーマで話をしました。

最終発表は、5組中3組が自動運転を前提としていました。しかし無機質な移動ではなく、情報デバイス(その中にはドローンも含まれます)を融合させ、自分たちの気持ちを直感的に移動に結び付けていくという世界を描いていました。残りの2組も運転をゲーム感覚で考え、楽しもうという趣旨でした。自動運転が一般的になり、操縦の楽しみがなくなっても、パーソナルなモビリティならではの移動の喜びは表現できるというメッセージはとても参考になりました。

しかしながら、彼らの考えのベースにある自動運転の方向性はさまざまです。最近感じるのは、ソーシャル型とマーケティング型、2つの大きな流れがあるのではないかということです。

グーグルカー

今回のワークショップで他の方が触れていましたが、アメリカのIT企業グーグルの自動運転車は、交通事故をゼロにすることが開発の出発点であり、YouTubeのムービーでは高齢者や子供、目の不自由な人を乗せるなど、すべての人が自由に移動できることをアピールしています。つまりソーシャル型の代表と言えます。

AudiA8

一方、今週の記者会見で自動運転車を数年内に発売すると表明したドイツの自動車会社アウディは、上級車種を用い、高速・長距離の自動運転が可能であることをアピールしています。搭載を予定する車種は最上級のA8だそうです。自動運転を付加価値と位置づけた考え方で、マーケティング型に当てはまるでしょう。

1982年にフランスで公布されたLOTI(国内交通の方向付けの法律)は、誰でも・いつでも・どこにでも、簡単・快適・安価に、環境負荷をかけずに移動できるという「交通権」を、世界で初めて定義したことから、モビリティを考えるうえで重要な法律のひとつになっています。日本で一昨年成立した交通政策基本法にも大きな影響を与えました。

この考え方にフィットする自動運転車が前者であることは、説明するまでもないでしょう。学生たちが研究のベースに据えたのも、ソーシャル型だと予想します。あらゆる人が自由に使えてこそ、自由な発想が生まれる。それがより良い社会を作り出すのではないかと考えています。

WHILLの飛躍は続く

このブログで何度も紹介しているスタイリッシュなパーソナルモビリティWHILL Model Aが、東京・六本木のホテル、グランドハイアット東京と、長野県の会員制リゾート、ビッグウィーク軽井沢に導入されることになりました。WHILLでは今後も、2014年9月に発売したModel Aを、一般向けの販売と並行して、商業施設などへの展開を進めていくとのことです。

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 私がWHILLの存在を初めて知ったのは、4年前の東京モーターショーでした。翌年1月、現在CEOを務める杉江理氏にお会いし、紹介記事をメディアに掲載しました。「100m先のコンビニに行くのをあきらめる」という車いすユーザーの言葉に衝撃を受け、身障者や高齢者などが自慢でき、健常者も乗りたくなるパーソナルモビリティを作りたいという言葉に共感を抱きました。

そのときはまだ、モーターショーに出展したコンセプトモデル(写真下)が完成して間もない段階で、会社設立前のことでした。ところがその後、上に書いたように、わずか3年足らずで市販化に漕ぎ着け、有名宿泊施設への導入を実現したのです。

人より少しだけ近くから、一連のストーリーを眺めてきた自分にとっては、モビリティに関わる日本のベンチャーユニットが、たった4年で確固たる地位を築きつつあることに、自信と勇気をもらいました。日本のものづくりが依然として世界に伍していけることを教えられました。しかもWHILLの中心にいるのは30代の若者です。この国の将来を考えるうえでも明るい話題ではないでしょうか。

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すでにWHILLは、日本を代表するモビリティのベンチャービジネスユニットの地位にあると言って良いでしょう。挑戦者から牽引者へと、ポジションが変わりつつあるような気がします。今後もこの勢いを持続してもらい、ぜひとも2020年の東京パラリンピックの開会式に、WHILLの最新モデルで日本選手が会場に入ってくるシーンを実現してもらいたいと考えています。
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