THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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ひたちなか海浜鉄道の基本性能

ゴールデンウィークを利用して、茨城県ひたちなか市を観光してきました。那珂湊のおさかな市場やネモフィラが満開の国営ひたち海浜公園に行ってきました。日帰りで時間がなく、現地は大渋滞という情報を聞いていたので、JR常磐線とひたちなか海浜鉄道を使って往復しました。いろいろな意味で正解でした。

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時間に正確に移動できたことはとにかくありがたかったです。那珂湊駅から市場へは、徒歩では約10分ですが、車列はほとんど動いていませんでした。おそらく1時間は掛かったでしょう。その後向かった海浜公園でも、駐車場への入場で1〜2時間待ちと言われる中、駅からの無料バスは別ルートで公園に入るので5分ほどで着きました。その利便性を知る人も多いようで、車内は予想を上回るにぎわいでした。

海浜鉄道では、公園の入場料付き一日乗車券を販売していて、市場や公園の周遊を1100円でこなせます。この日の行程では500円ほどお得でした。これなら次回も鉄道で行こうという気になります。さらに那珂湊駅にはネコもいます。以前訪れた和歌山電鐵の「たま」を思わせる存在で、「おさむ」と「ミニさむ」がいます。残念ながら会うことはできませんでしたが、宣伝役として各所で活躍していました。

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*来週末の17日(日曜日)には開業7周年記念祭が開催されるそうです。

でも個人的に感心したのはこれらの観光振興策より、鉄道としての基本性能でした。まずは地方鉄道としては乗り心地が良いこと。車両は旧国鉄で使われたタイプと新製車を併用していますが、どちらも揺れが少ないのです。線路を敷いている路盤の管理状況が良いのでしょう。今後、海浜鉄道ではJR東海で使われていたクーラー付きの車両を、旧国鉄型の代わりに導入する予定で、さらなる快適性が期待できそうです。

昨年は新駅も開業しました。那珂湊駅のひとつ手前にある高田の鉄橋駅です。近くに新興住宅地や商業施設があることに配慮したもので、半世紀ぶりの新駅だそうです。さらに現在はバスで連絡している終点の阿字ケ浦駅から公園まで、延伸の計画もあるそうです。実現すればさらに快適に公園に行けるでしょう。

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ローカル私鉄というと乗ること自体がイベントになりがちですが、ひたちなか海浜鉄道は自然に利用できました。一日乗車券や駅ネコで観光客にアピールしつつ、新駅設置や車両更新など、鉄道としての基本性能を着実に高めているからでしょう。自動車から鉄道へのシフトを呼びかけても、受け手となる鉄道が貧弱では話になりません。でもひたちなか海浜鉄道にはその資格があると感じました。

臨海BRTはなぜ虎ノ門発着なのか

今週火曜日、東京都都市整備局が、2020年東京オリンピック・パラリンピック(以下オリパラ)を見据えた都心と臨海副都心を結ぶBRT(以下臨海BRT)の基本計画を公表しました。以前からこの地域では中央区がBRT導入構想を打ち出していましたが、東京都もこの地域の交通需要の増加に迅速かつ柔軟に対処できるのはBRTであると考え、昨年11月に「都心と臨海副都心とを結ぶBRT協議会」を立ち上げ、議論を重ねてきました。その結果、今回の発表に至ったものです。

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*東京都の報道発表=http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2015/04/70p4s200.htm

計画を見て気付いたのは、都心側の起点が銀座や東京駅ではなく、虎ノ門ヒルズになっていることです。需要がより多く見込まれる銀座・東京駅方面のルートは今後検討とのことです。BRTは主として環状2号線(外堀通りを含む)を走る予定で、虎ノ門ヒルズはこの道路上にあります。さらにこの場所には東京メトロ日比谷線の新駅ができる予定です。しかし銀座や東京駅と比べればターミナルとして弱く、東京駅方面の開業が遅れた場合のポテンシャルに不安が残ります。

ちなみに臨海BRT協議会のメンバーには、関連省庁や自治体などとともに、森ビルとUR都市機構も名を連ねています。

また東京都に限らず、日本ではBRTの定義として、連節バス、ICカードシステム、道路改良等により、路面電車/LRTと比較して遜色のない輸送力と機能を有し、かつ柔軟性を兼ね備えたバスによる都市交通システムと、複合的な要素で定義することが多いのですが、BRTのRはラピッドであり、なによりも正確性が重要です。そのためにはバス専用/優先レーンを用意することが不可欠です。

臨海BRTには燃料電池バスの運行が予定されています。日本の先進技術を披露するためには好ましい選択です。しかし我が国は同時に、鉄道の正確さでも有名です。多くの外国人がBRTにも同様のサービスを求めるのではないでしょうか。

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日本は欧米に比べると、バス専用/優先レーンの設置に及び腰ですが、写真の名古屋市のようにしっかり機能している例もあり、不可能ではありません。今回の発表では、専用/優先レーンの設定や公共車両優先システムの導入を検討とあるだけで、具体的な計画はありませんが、環状2号線の新設区間であれば導入は可能でしょう。技術面だけでなく運行面でも、世界に自慢できるBRTを目指してほしいものです。

ベンチャー育成に必要なこと

先週土曜日、電動2輪車「zecOO(ゼクー)」の試乗会が、千葉県船橋市でありました。2011年の東京デザイナーズウィークにプロトタイプが初出展されたあと、電動車両の肝となるバッテリーとモーターの調達に苦労したそうですが、その問題もクリアし、市販に漕ぎ着けました。手作りということもあり、生産台数は49台限定で、価格は888万円ですが、すでに1台売れたそうで、海外からの問い合わせも絶えないそうです。

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車両の解説や試乗記はこちら=http://autoc-one.jp/report/2162102/

コンセプトとデザインを手掛けたznug design(ツナグ デザイン)の根津孝太さんは、 2014年度グッドデザイン賞審査委員をともに務めた間柄でもあるので、試乗会当日もいろいろ話をしました。そのなかで彼が強調していたことのひとつは、「市販してこそ意味がある」という言葉でした。同感です。そして10年ほど前に発表された、同じ電動のある自動車のことを思い出しました。

その電気自動車とは、慶應義塾大学電気自動車研究室が製作した「Eliica(エリーカ)」です。日本のベンチャーユニットの生まれであること、独創的なデザインを持つこと、ガソリンエンジンの超高性能車に匹敵するパフォーマンスを備えることなど、この2台には似ている点が数多くあります。市販を目指したこともまた共通しています。

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Eliicaもまた市販を目指しており、購入希望者も少なからずいたと言われています。しかし日本で生産する新型車に義務づけられる衝突試験をパスできず、断念したいう話を聞きました。zecOOは、それを理由に2輪車としたわけではありませんが、衝突試験はなく、保安基準など他のハードルをクリアし、市販が実現しました。さらにこのブログでも紹介した電動車いす「WHILL Model A」や「テラモーターズ」の電動3輪車など、海外市場にまず挑戦するというプロセスを選ぶ企業もあります。

日本にはzecOOやEliicaなどを製品化できる優れた技術力と、独創性あふれるデザイン力があります。信頼性や安全性を考えて基準や規制を強化することも重要でしょう。しかし国際競争という視点に立って、国内のものづくり育成を考えるなら、少なくとも他の先進国並みに基準を緩和すべき時期にきているのではないかと、2台の革新的な電動モビリティを比較しながら思ったのでした。
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