THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

講演・調査・執筆などのご依頼はこちらからお願いいたします→info@mobilicity.co.jp

日本の駐車場はどうなるのか?

タイムズ駐車場やカーシェアリングのタイムズカープラスなどを運営するパーク24が、東京大学大学院理工学系研究科と共同で、「次世代都市交通のための空間マネジメント」についての共同研究を始めています。今日、現時点での成果を踏まえたフォーラムが東京大学で開催されたので出席してきました。結論から先に言えば、プロジェクトがスタートしたばかりであることが、各所から感じられる内容でした。

times

たとえば都市内の駐車場について、大学や国土交通省はコンパクトシティ推進のためにも大規模集約化が望ましいと提案したのに対し、パーク24側はドライバーの利便性を考えると小規模分散型は捨てがたいと、意見の隔たりが見られました。

現在の日本はドライバーにとってかなり恵まれている状況であり、とりわけ都市内においては、大規模集約型に移行していくべきではないかと思いました。この日公表されたパーク24のデータによると、東京23区内の駐車場だけで皇居に近い面積を占有しているそうです。その一部を公園や広場などに転用できれば、さらに魅力的な都市になるでしょう。

IMG_1847

そのためには都市内の車両を減らすことも必要であり、解決策のひとつとしてカーシェアリングがありますが、複数の方がさまざまな理由を挙げて、我が国では課題が多いという意見を表明していました。欠点を深刻に考えすぎて実施に移せないという日本人の悪癖が、この業界にもはびこっているように感じられました。

一例を挙げると、借りた場所と別の場所に返せるワンウェイ型があります。時間帯によって一定の駐車場に車両が集中してしまう片寄りが指摘されましたが、欧州各所でワンウェイ型の実例を見た経験から言えば、片寄りは常識です。ワンウェイ型にすることで使い勝手が圧倒的に向上することは明らかであり、実行力を期待したいところです。

自家用車とカーシェアリングを直接比較する考え方も疑問を持ちました。以前からこのブログで書いているように、カーシェアリングは公共交通の一種です。公共交通はさまざまな乗り物を組み合わせての移動が前提であり、カーシェアリングと鉄道、バス、サイクルシェアリングなどとセットで自家用車での移動と比較すべきではないでしょうか。

IMG_1821

このプロジェクトでは、パーク24が駐車場運営などで蓄積したデータを活用し、利便性の高い交通インフラサービスの構築、交通渋滞の緩和や街の活性化といった地域社会への貢献を進めたいとしています。データの活用がうまく行けば、グーグルのように自動車界を揺るがす存在になる可能性もあります。個人的にはそこまでのレベルを期待するものであり、一層の進展を期待したいところです。

榮久庵憲司会長のこと

今週火曜日、去る2月8日にこの世を去った故榮久庵憲司GKデザイングループ会長の本葬儀が、東京の増上寺大殿で、GKデザイングループの社葬として行われました。当日は晴天に恵まれたこともあり、1000名以上の会葬者の方々が参列しました。私も故人のご冥福をお祈りしてきました。

会長はGKデザイングループのトップをはじめ、さまざまな要職を務めてきました。そのひとつに、日本デザイン機構会長がありました。私は10年ほど前に同機構に入ったことで、会長をはじめ、デザイン界で要職にある方々とつながりを持つことができ、教えを請うことができました。それまでデザインとは関わりを持たなかった自分にとって、貴重な時間だったと今でも思っています。

SR400

GKデザイングループはモビリティ分野のモノやコトも数多くデザインしてきました。その中で個人的に思い入れがある車両として、モーターサイクルのヤマハSR400と、鉄道車両のJR東日本253系があります。

SR400は二度、愛機にしました。若かりし頃、レーサーレプリカと呼ばれるスーパースポーツの車種が溢れていた中でこれを選んだのは、レーサーレプリカとは対照的に、過剰を廃し、モーターサイクルの本質を研ぎ澄ませ、それを美しくまとめた姿に惹かれたのではないかと思っています。その後35年以上にわたり現役を務めていられるのは、基本を忘れない造形の成果と言えるでしょう。

成田エクスプレス用車両として開発された253系は、海外旅行者を主役に据えた日本初の鉄道車両でした。従来の特急車両とは一線を画した、機能的な作りには潔ささえ感じました。さらに白と赤を基調とした塗装は、公式アナウンスにはありませんでしたが、ナショナルカラーをモチーフにしたものだと考え、高く評価していました。成田空港に行く際には好んでこの車両を使っていました。

NEX253

両車に共通するのは、人間と道具との関わりを、美しく形にしていることではないかと思います。それはGKが生み出した他のモノやコトにも通じることです。作り手が心を込めた道具であれば、使い手は道具を通してその心を感じ、良い関係を築くことができる。そんな関係を、さまざまな実例で教えられました。その結果、いままで以上に真剣にモノを選び、じっくり付き合うことを心掛けるようになりました。

最後に直接お会いしたのは、昨年9月のコンパッソ・ドーロ国際功労賞受賞記念講演会でした。その後12月には、広島県立美術館で開催された「榮久庵憲司の世界展」で、一連の作品を通して考えに触れることができました。日本に工業デザインという分野を確立したその人と、日本デザイン機構という団体を通じて関係を持つことができたことは、素晴らしい経験でした。その経験を生かし、日本ではまだまだ過小評価されている工業デザインという分野の発展に、少しでも貢献できればと思っているところです。

自動運転をどう操るか

今週、千葉大学で、フィンランドにあるアールト大学の学生を交えてのワークショップがありました。テーマはFuture of Automobility。月曜日に5組の混成グループを結成し、ゲストを招いてのブリーフィング&トークセッションを行ったあと、研究をスタートし、金曜日に最終発表を行うというスケジュールでした。私もゲストのひとりとして、Automobility and Societyというテーマで話をしました。

最終発表は、5組中3組が自動運転を前提としていました。しかし無機質な移動ではなく、情報デバイス(その中にはドローンも含まれます)を融合させ、自分たちの気持ちを直感的に移動に結び付けていくという世界を描いていました。残りの2組も運転をゲーム感覚で考え、楽しもうという趣旨でした。自動運転が一般的になり、操縦の楽しみがなくなっても、パーソナルなモビリティならではの移動の喜びは表現できるというメッセージはとても参考になりました。

しかしながら、彼らの考えのベースにある自動運転の方向性はさまざまです。最近感じるのは、ソーシャル型とマーケティング型、2つの大きな流れがあるのではないかということです。

グーグルカー

今回のワークショップで他の方が触れていましたが、アメリカのIT企業グーグルの自動運転車は、交通事故をゼロにすることが開発の出発点であり、YouTubeのムービーでは高齢者や子供、目の不自由な人を乗せるなど、すべての人が自由に移動できることをアピールしています。つまりソーシャル型の代表と言えます。

AudiA8

一方、今週の記者会見で自動運転車を数年内に発売すると表明したドイツの自動車会社アウディは、上級車種を用い、高速・長距離の自動運転が可能であることをアピールしています。搭載を予定する車種は最上級のA8だそうです。自動運転を付加価値と位置づけた考え方で、マーケティング型に当てはまるでしょう。

1982年にフランスで公布されたLOTI(国内交通の方向付けの法律)は、誰でも・いつでも・どこにでも、簡単・快適・安価に、環境負荷をかけずに移動できるという「交通権」を、世界で初めて定義したことから、モビリティを考えるうえで重要な法律のひとつになっています。日本で一昨年成立した交通政策基本法にも大きな影響を与えました。

この考え方にフィットする自動運転車が前者であることは、説明するまでもないでしょう。学生たちが研究のベースに据えたのも、ソーシャル型だと予想します。あらゆる人が自由に使えてこそ、自由な発想が生まれる。それがより良い社会を作り出すのではないかと考えています。
ギャラリー
  • 関空のデザイン 高評価の理由
  • 関空のデザイン 高評価の理由
  • 関空のデザイン 高評価の理由
  • 関空のデザイン 高評価の理由
  • 関空のデザイン 高評価の理由
  • 関空のデザイン 高評価の理由
  • スイスで自動運転社会を体験
  • スイスで自動運転社会を体験
  • スイスで自動運転社会を体験