THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

講演・調査・執筆などのご依頼はこちらからお願いいたします→info@mobilicity.co.jp

ウィラーの鉄道参入に注目

2015年度がスタートしました。モビリティの世界でも新体制となった事業者がいくつかあります。そのひとつが京都府と兵庫県を走る京都丹後鉄道(丹鉄)です。

この路線は3月31日までは、第3セクターの北近畿タンゴ鉄道が運行していました。しかし地方鉄道の例に漏れず、経営は芳しくありませんでした。そこで京都府や兵庫県など出資者は、施設保有と車両運行を分ける上下分離方式の導入を決定。後者の公募を行った結果、高速バス事業で有名なウィラーグループが選ばれ、4月から新会社ウィラートレインズのもとで丹鉄の運行が始まったのです。施設の保有はいままでどおり北近畿タンゴ鉄道です。

willer

ウィラーグループはバス事業の規制緩和に合わせて都市間ツアーバスに参入し、インターネット予約システムなどが評判を呼び、業界大手に躍進しました。しかし都市間ツアーバスは価格重視、安全軽視の傾向が問題視され、関越自動車道での大惨事を引き起こした結果、高速乗合バスに一本化されました。こうした経緯からウィラーグループの経営方針に不安を抱く人もいます。

しかし鉄道事業はバス事業に比べて認可のハードルが高いうえに、JR北海道の例を見るまでもなく、経営状況が安全性に影響する傾向にあることを考えれば、経営に余力がある企業の参入はプラスになるという見方もできます。さらにウィラーが得意とするIT技術は、過疎地域でこそ効力を発揮します。またバスや旅行部門のウェブサイトは、多彩なキャンペーンで利用者にアピールしています。こうした柔軟な発想も地方鉄道に必要でしょう。

京都丹後鉄道

モビリティの世界が大きな転換点に差し掛かっていることは、多くの人が認めるところです。ゆえに異業種参入も盛んであり、自動車業界にはテスラに続いてグーグルが名乗りを上げ、アップルも参入するという噂があります。新規組と既存組が互いを刺激しながら、次世代にふさわしいシステムやサービスを生み出していくのが理想だと考えます。とりわけ地方鉄道のように存亡の危機にある業界は、異業種参入による活性化こそ待ち望まれていたものではないでしょうか。

すでに一部の駅名を公共施設や観光地にちなんだ名称に変更するなど、改革は始まっています。1月のプレスリリースでは、レンタサイクルや超小型モビリティの導入を考え、グループの施設を沿線に移転して雇用創出を狙い、教育機関と連携してモビリティやまちづくり分野の人材育成を図るなど、さまざまな構想を発表しています。今後どのような展開になるか、現時点で予想することはできませんが、個人的には異業種参入ならではの斬新な鉄道経営による地方活性化を期待しています。

日本の駐車場はどうなるのか?

タイムズ駐車場やカーシェアリングのタイムズカープラスなどを運営するパーク24が、東京大学大学院理工学系研究科と共同で、「次世代都市交通のための空間マネジメント」についての共同研究を始めています。今日、現時点での成果を踏まえたフォーラムが東京大学で開催されたので出席してきました。結論から先に言えば、プロジェクトがスタートしたばかりであることが、各所から感じられる内容でした。

times

たとえば都市内の駐車場について、大学や国土交通省はコンパクトシティ推進のためにも大規模集約化が望ましいと提案したのに対し、パーク24側はドライバーの利便性を考えると小規模分散型は捨てがたいと、意見の隔たりが見られました。

現在の日本はドライバーにとってかなり恵まれている状況であり、とりわけ都市内においては、大規模集約型に移行していくべきではないかと思いました。この日公表されたパーク24のデータによると、東京23区内の駐車場だけで皇居に近い面積を占有しているそうです。その一部を公園や広場などに転用できれば、さらに魅力的な都市になるでしょう。

IMG_1847

そのためには都市内の車両を減らすことも必要であり、解決策のひとつとしてカーシェアリングがありますが、複数の方がさまざまな理由を挙げて、我が国では課題が多いという意見を表明していました。欠点を深刻に考えすぎて実施に移せないという日本人の悪癖が、この業界にもはびこっているように感じられました。

一例を挙げると、借りた場所と別の場所に返せるワンウェイ型があります。時間帯によって一定の駐車場に車両が集中してしまう片寄りが指摘されましたが、欧州各所でワンウェイ型の実例を見た経験から言えば、片寄りは常識です。ワンウェイ型にすることで使い勝手が圧倒的に向上することは明らかであり、実行力を期待したいところです。

自家用車とカーシェアリングを直接比較する考え方も疑問を持ちました。以前からこのブログで書いているように、カーシェアリングは公共交通の一種です。公共交通はさまざまな乗り物を組み合わせての移動が前提であり、カーシェアリングと鉄道、バス、サイクルシェアリングなどとセットで自家用車での移動と比較すべきではないでしょうか。

IMG_1821

このプロジェクトでは、パーク24が駐車場運営などで蓄積したデータを活用し、利便性の高い交通インフラサービスの構築、交通渋滞の緩和や街の活性化といった地域社会への貢献を進めたいとしています。データの活用がうまく行けば、グーグルのように自動車界を揺るがす存在になる可能性もあります。個人的にはそこまでのレベルを期待するものであり、一層の進展を期待したいところです。

榮久庵憲司会長のこと

今週火曜日、去る2月8日にこの世を去った故榮久庵憲司GKデザイングループ会長の本葬儀が、東京の増上寺大殿で、GKデザイングループの社葬として行われました。当日は晴天に恵まれたこともあり、1000名以上の会葬者の方々が参列しました。私も故人のご冥福をお祈りしてきました。

会長はGKデザイングループのトップをはじめ、さまざまな要職を務めてきました。そのひとつに、日本デザイン機構会長がありました。私は10年ほど前に同機構に入ったことで、会長をはじめ、デザイン界で要職にある方々とつながりを持つことができ、教えを請うことができました。それまでデザインとは関わりを持たなかった自分にとって、貴重な時間だったと今でも思っています。

SR400

GKデザイングループはモビリティ分野のモノやコトも数多くデザインしてきました。その中で個人的に思い入れがある車両として、モーターサイクルのヤマハSR400と、鉄道車両のJR東日本253系があります。

SR400は二度、愛機にしました。若かりし頃、レーサーレプリカと呼ばれるスーパースポーツの車種が溢れていた中でこれを選んだのは、レーサーレプリカとは対照的に、過剰を廃し、モーターサイクルの本質を研ぎ澄ませ、それを美しくまとめた姿に惹かれたのではないかと思っています。その後35年以上にわたり現役を務めていられるのは、基本を忘れない造形の成果と言えるでしょう。

成田エクスプレス用車両として開発された253系は、海外旅行者を主役に据えた日本初の鉄道車両でした。従来の特急車両とは一線を画した、機能的な作りには潔ささえ感じました。さらに白と赤を基調とした塗装は、公式アナウンスにはありませんでしたが、ナショナルカラーをモチーフにしたものだと考え、高く評価していました。成田空港に行く際には好んでこの車両を使っていました。

NEX253

両車に共通するのは、人間と道具との関わりを、美しく形にしていることではないかと思います。それはGKが生み出した他のモノやコトにも通じることです。作り手が心を込めた道具であれば、使い手は道具を通してその心を感じ、良い関係を築くことができる。そんな関係を、さまざまな実例で教えられました。その結果、いままで以上に真剣にモノを選び、じっくり付き合うことを心掛けるようになりました。

最後に直接お会いしたのは、昨年9月のコンパッソ・ドーロ国際功労賞受賞記念講演会でした。その後12月には、広島県立美術館で開催された「榮久庵憲司の世界展」で、一連の作品を通して考えに触れることができました。日本に工業デザインという分野を確立したその人と、日本デザイン機構という団体を通じて関係を持つことができたことは、素晴らしい経験でした。その経験を生かし、日本ではまだまだ過小評価されている工業デザインという分野の発展に、少しでも貢献できればと思っているところです。
ギャラリー
  • モーターショーの未来を考える
  • モーターショーの未来を考える
  • モーターショーの未来を考える
  • モーターショーの未来を考える
  • 空飛ぶタクシーは成功するか
  • 空飛ぶタクシーは成功するか
  • 空飛ぶタクシーは成功するか
  • 電動アシスト自転車新時代
  • 電動アシスト自転車新時代