THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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ニューヨークの決断に学ぶ

東京でこの冬初めての積雪がありました。午後から雨に変わったこともあり、3cmに留まりましたが、午前中の降り方は、2014年2月の大雪を思い出しました。そして同時に、先日の米国ニューヨーク大雪にまつわる一連のニュースが頭に浮かびました。

米国北東部では、2015年1月27日に大雪が降るという予報が出されたことから、6つの州で非常事態宣言を発令。ニューヨークでは最大75cmもの積雪が予想されたために、前日夜から公共交通機関が運行を取りやめ、当日は道路も緊急車両以外は通行禁止となりました。もちろん学校や公園は閉鎖され、会社も多くが休みとなりました。

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ところが結果的には、ボストンでは50cmの積雪を記録したものの、ニューヨークは最大でも20cmで、27日の午前中には道路の通行規制が解除され、公共交通も運行を再開しました。つまり規制は空振りに終わったわけです。これについて市では、2010年末の大雪を、逆に過小評価したために、多くの道路が数日間除雪されなかった教訓を生かしたと釈明しました。

自然災害には予測不可能なものと可能なものがあります。台風や大雪はある程度予測可能です。それに合わせてあらかじめ予防することを「タイムライン(事前防災行動計画)」と呼びます。しかし日本では、住民の避難や、特定の路線や道路の規制はありますが、都市交通全体の規制はあまり耳にしません。

数少ない例外として、2014年秋にJR西日本が、台風上陸の前日に、京阪神地区のすべての在来線の運休を決めたことが挙げられます。このときは私鉄が運行していたこともあり、批判的な意見も聞かれました。 ただ個人的にはタイムライン型規制に賛成です。東京のような大都市は人が集中しており、土地勘のない人も多くいます。そういう人たちを安全な場に導くためには、事前に交通規制の予告を出し、帰宅や帰社を促すことがベストに思えるのです。

すべての人が自由に移動できるという「交通権」はもちろん認めます。しかし大雪の際の一部ドライバーの行動や、スキー場での管理区域外無断滑走による遭難など、日本人の自然災害に対する認識の甘さが目立つ昨今の状況を考えると、もし東京に度を超えた大雪や暴風雨の襲来が予想されるのであれば、タイムライン型規制の導入は止むなしと考えます。

小さく軽いことの素晴らしさ

軽自動車の勢いが留まるところを知りません。2014年の新車販売に占める比率は40.9%と、初めて4割を超え、もっとも売れた自動車も6年ぶりに軽自動車のダイハツ・タントになりました。昨年は消費税が5%から8%に引き上げられたのに対し、今年は軽自動車税の増税が控えており、駆け込み需要が販売を後押ししたとも考えられます。

それでも、いわゆるクルマ好きが軽自動車に冷たい視線を投げる状況はあまり変わりません。理由のひとつは、ボディサイズやエンジンの排気量に上限があるからでしょう。以前も書いたように、自動車ジャーナリズムの世界はヨーロッパ基準で回っています。ヨーロッパ、特にプレミアムブランドのクルマ作りは依然として、より大きく、より速く、より高級にという路線を継承しており、その路線を評価基準としているために、軽自動車を冷遇する状況が続いているのではないかと考えています。

しかし地球の大きさが不変であり、その状況下で環境問題が深刻になる中、速さや大きさを追求し続けることは無理があります。今の地球に求められているのは、ボディもエンジンも小さく、軽くすることでしょう。こういう時代だからこそ、ユーザーの意識を根本から転換させるような車両を、軽自動車規格で登場させることが求められているのではないかと思っていました。そんな矢先に発表されたのが、通算8代目となるスズキ・アルトでした。

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新型アルトはプラットフォームを新設計とし、ボディの背を低めるなどして、最低で610kgという驚異的な軽量化を実現しました。おかげで660ccの自然吸気エンジンでも十分な走りと、ハイブリッドカー以外では最高水準の燃費を実現しています。私も試乗しましたが、まるで自転車に乗っているような走りの臨場感と爽快感を味わえました。小さく軽いおかげで、自動車を操る歓びをダイレクトに堪能することができるのです。

街中を1時間程度走っただけでは、快適性に不満はなく、車載の燃費計は27km/Lという、驚異的な数字を示していました。短距離移動がメインの人なら、これで十分でしょう。シンプルながら考え抜かれたデザインを含め、小さく軽いことを隠そうとせず、むしろ前面に押し出すような設計思想に好感を抱きました。たしかにこの1台で自動車を取り巻く状況がガラッと変わることはないかもしれませんが、これを機に小さく軽いことを美徳と考える意識変化が進むことを期待します。

逆走防止のまちづくり

高齢者による交通事故のニュースが目立ちます。以前から問題になっているペダル踏み間違い暴走に加え、最近は逆走事故も目立ってきました。警察庁によれば、高速道路で逆走したドライバーの約半数が75歳以上の高齢者で、昨年1〜9月の逆走事故を起こしたドライバーの14%は認知症の疑いがあったそうです。

こうした状況を踏まえて警察庁では1月15日、75歳以上の高齢者に対する運転免許制度の改正試案を公表しました。免許更新時の検査で認知症の恐れがある人には医師の診断を義務付け、認知症と診断された人は免許取り消し。認知症の恐れがない人も、その後逆走などによる事故を起こした際には、臨時に検査を受ける制度を設けるなどとなっています。

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*写真はイメージです

警察庁では2月4日まで、この件に関してパブリックコメントを受け付けているので、興味がある人は意見を出してみてください。
 
ただ個人的には、運転免許の分野だけでの解決は無理があると考えています。認知症という診断が下された人の、代わりの足を確保しなければならないからです。現在の状況は、代わりの足がないから、不安な状況の中で自動車を運転しているとも考えられます。
 
具体的には、公共交通での移動に切り替えてもらうべく、駅や停留場・停留所の近くに移り住んでもらうのです。つまりコンパクトシティの推進です。公共交通の新規整備も必要になるでしょう。その際には、バリアフリーの観点から、路面電車がもっとも適していると考えています。近年、欧州各地で路面電車の新規開業が相次いでいるのは、環境対策のほかに、コンパクトシティやバリアフリーという側面があるのです。

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このブログで何度も取り上げた富山市では、市内電車環状線の開業に合わせ、まちなか居住を進めるべく、住宅建設や購入、賃貸に対して助成を行い、文化施設や商業施設の誘致を進めています。その結果、以前は減少が続いていた中心部の人口が増加に転じています。転入者の中心は40〜50歳代の、高齢化予備軍と言える人たちです。つまり富山のコンパクトシティ政策は結果を出しています。
 
警察と自治体がタッグを組み、認知症の恐れがある人に手厚い住宅助成を行うことで、駅や停留場・停留所近くへの移住を促すような仕組みを作れば、高齢者の交通事故を防止できるだけでなく、環境対策にもなり、行政サービス費用削減も期待できるなど、多くのメリットが生まれるのではないでしょうか。

ちなみに私の両親は、10年ほど前にバス停やスーパーマーケットから徒歩圏内の集合住宅に移り住み、まもなく自動車を手放し、運転免許を返納しました。現在も快適に暮らしているようです。 
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