THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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都市交通は景観の一部、というニースの考え方

先週は1週間ヨーロッパに滞在していました。そこで体験したモビリティの中から、まずニースのLRT(路面電車)について取り上げます。ニースのLRTは2007年に開業。ニースには地下鉄がないので、このLRTとバス、サイクルシェアリング、カーシェアリングなどが都市交通を担っています。

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写真を見て「あれっ?」と思った人がいるかもしれません。多くのLRT用車両は架線から電気を取って走る電車ですが、写真の線路の上には架線がありません。実はニースのLRT、屋根の上にハイブリッドカーなどに使われているニッケル水素電池を積み、走りながら充電を行っていて、架線がない区間ではその電力を使って走っているのです。ゆえに乗車感覚は通常のLRTと変わりません。他のフランスの都市では、地中から電気を取って走るLRT車両もあります。

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ではなぜ架線がない区間があるのか。それは景観のためです。ニースのLRTで架線がないのは、海岸に近いマッセナ広場(最初の写真)と、旧市街近くのガルバルディ広場(2番目の写真)の2ヶ所です。地名でお分かりのように、いずれも広場です。

都市交通は都市の景観の一部です。そこを走る公共交通は、公共物の一部であるわけですから、建造物と同じように、景観に溶け込む造形や色彩であることが理想です。とくに広場は、文字どおり広い場所であるべきです。便利さを考えればLRTは歓迎すべきですが、景観を考えれば架線はないほうが良い。その結果、架線のないLRTという結果に行き着いたのでしょう。景観を大切にするフランスらしい考え方です。

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ニースのLRTは、架線が張っている場所でも、このように可能な限りワイヤーを使用することで、景観を害さないよう配慮をしています。車両も石造りの建物に溶け込むようなカラーになっています。街が美しいかそうでないかで、訪れる人の印象は大きく違ってきます。世界的な観光地にふさわしいデザインをまとったニースのLRT。日本の各都市にもこうした考え方が根付いていくことを期待しています。

ムーバス20周年を機に地域交通を考える

「ムーバス」というバスをご存知でしょうか。東京都武蔵野市が1995年から走らせている公共交通で、コミュニティバスのパイオニアです。運賃100円、住宅地まで乗り入れる路線、そのための小型車両という、コミュニティバスを定義付けている項目は、ムーバスが確立したものです。名称も、武蔵野市のバスという意味だけでなく、move us=私たちと移動するという、深い意味を込めています。

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ムーバスのウェブサイト http://www.city.musashino.lg.jp/norimono_chuurin_chuusha/mu_bus/index.html
 
ムーバス誕生のきっかけは、市内に住む高齢の女性の方からの手紙でした。「吉祥寺駅に行きたいのだが、路線バスがあってもバス停までが遠く、足が悪いので行けない」という切実な声でした。武蔵野市が調べてみると、路線バスは幹線道路中心の運行であり、住宅地内には公共交通の不便な地域があることが分かりました。当時、行政主導のバスを走らせるには、いくつもの壁がありましたが、市民の生活を守るという強い意識で取り組み、実現にこぎつけたそうです。

それから20年。いまやコミュニティバスは全国各地を走り回っていますが、この20年間で日本は高齢化や東京への一極集中が進んだこともあり、多くのコミュニティバスが課題を抱えています。7路線9ルート、年間約260万人の方に利用されているムーバスも例外ではありません。それは地域交通そのものの問題と置き換えても異論はないでしょう。

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ムーバス路線図(ムーバス事業概要2015より)
http://www.city.musashino.lg.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/022/230/jigyougaiyou3.pdf

いまこそ地域交通のあり方を考え直す時期ではないか。私が所属している日本福祉のまちづくり学会では、以前からこうしたテーマのもとで活動を続けてきました。そこでムーバス20周年を契機に、地域交通のあり方を考えるフォーラムを、武蔵野市で開催することにしました。

日時は3月24日(木曜日)の18時30分から21時00分まで(18時10分開場)。会場はJR中央線武蔵境駅北口にある武蔵野スイングホールです。参加費は無料。参加をご希望の方は、会場準備の都合上、下のメールアドレスへ、事前申し込みをお願いいたします。

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申し込み先メールアドレス e127@ipc.fukushima-u.ac.jp

日本の地域交通は多くが深刻な状況に置かれています。ムーバス20周年を機に、みなさんと一緒にこの問題を考え、 解決法を探っていければと思っております。よろしくお願いいたします。

マンションをステーションに

三菱地所グループに属し、「ザ・パークハウス」などのブランドでマンションを提供している三菱地所レジデンスから、取材を受ける機会がありました。先日その内容が、オフィシャルサイト内の「ザ・パークハウス調査ノート」というコーナーで紹介されました。テーマは、所有から利用に動きはじめたモビリティの最新事情で、私が長年見続けてきたパリの状況を紹介しながら、現在の状況や今後への希望など話しました。下にURLを掲載しましたので、お時間がある方はご覧ください。

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2015年度グッドデザイン・ベスト100を受賞した「ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵」

モビリティにおける所有から利用へというフレーズでお分かりかと思いますが、話題の中心はカーシェアリングやサイクルシェアリングについてです。加えて公共交通を活用した、自動車中心から人間中心のまちづくりへの転換にも触れました。三菱地所グループはまちづくりにも関わる総合デベロッパーであり、シェアモビリティについても以前からマンションに導入してきた実績があるので、このようなテーマを選んだと思われますが、不動産を扱う会社が動くモノやコトにスポットを当ててくれたことには、とても好感を抱きました。

その中で、マンション開発を手掛ける会社のサイトということで、いくつか提案をさせていただきました。ひとつは地域内に複数の同グループのマンションが存在するのであれば、ネットワークを構築し、ワンウェイ型のシェアモビリティを導入してはどうかということ。そこに住むことの付加価値が向上するのは確実です。もうひとつは、とくに自転車など小型軽量の乗り物については、一定の料金を設定したうえで近隣住民も利用できるようにしてはどうかということです。

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記事のURL=http://www.mecsumai.com/brand/lifestyle/note/1602-2/ 

一戸建てに比べて敷地に余裕があり、多くの居住者がいるマンションには、シェアリングのステーション(拠点)としての可能性があると考えています。他のマンションや近隣住民とのシェアが実現できるなら、そこに新たなコミュニティが生まれるでしょう。マンションというとそれ自体をプライベートな場と捉えがちですが、住民のプライオリティを確保したうえで、一部をパブリックな場にできれば、まちづくりという視点でもプラスになるはずです。
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