THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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上下乗り換えとエスカレーター問題

昨日、国土交通省が「第12回大都市交通センサス」を発表しました。首都圏・中京圏・近畿圏の三大都市圏における鉄道、バスの利用実態を把握し、公共交通施策の検討に資する基礎資料の提供を目的としているもので、1960年から5年ごとに実施しています。今回は2015年に実施した調査結果を取りまとめ、公表されました。

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結果については国土交通省のウェブサイトからダウンロード可能となっていますが、利用者へのアンケート調査の他、自動改札機などを介して集計したビッグデータなども活用した調査結果は膨大であり(首都圏だけで約300ページに上ります)、ここですべてを紹介することは不可能なので、今回は「乗り換え」に焦点を絞って話を進めていきます。

というのも、乗り換え移動時間について5年前の結果と比べると、中京圏と関西圏ではわずかに短くなっているのに対し、首都圏では少し長くなっているからです。具体的に駅別で見ると、水平方向では東京駅や渋谷駅、上下方向では大井町駅や下北沢駅などが長いと報告されています。主要駅の乗り換え時間を水平移動・上下移動・列車待ちに分けたグラフもあります。多くの駅で水平移動が4分の3を占める中、大井町駅では半分近く、下北沢駅ではなんと約7割を上下移動が占めています。

乗り換え時間比較
大都市交通センサスのウェブサイト=http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000064.html

水平方向の乗り換え距離が長い駅は以前からあったのに対し、上下方向が長い駅は最近になって増えてきたと感じています。理由はもちろん、既存のインフラを避けるべく、駅がどんどん地下深くなっているからです。ここでネックとなるのは移動手段です。階段では利用者に負担をかけ、一方のエスカレーターやエレベーターは輸送量が限られます。効率的な上下移動モビリティが発明されない現状では、移動そのものをなるべく少なくする設計が大事でしょう。

駅別移動グラフ

エスカレーターの利用方法についても触れておきます。最近日本では、安全のためにエスカレーターは歩かず立って乗るという方向に動いています。一方海外は、今週訪れたタイやシンガポールを含めて片側を空けています。しかし海外でも、混雑時は両側とも歩かず立ったままというシーンを多く見かけます。

エスカレーターに限った話ではありませんが、いまの日本人には臨機応変な判断が不足していると考えます。駅は時間帯によって利用者が大きく上下します。それをひとつのルールで決めつけるのは無理があります。乗り場に列ができているときは両側立ち、できていないときは片側空けなど、そのときの状況によって利用者が決めるほうが、判断力が養われて、結果的に人の流れがスムーズになりそうな気がします。

オリパラBRTの危機

東京都中央卸売市場築地市場の豊洲への移転が延期となったことで、2020年の東京オリンピック・パラリンピック(以下オリパラと称します)の関係者や観光客などの移動の動脈として考えられているBRTが、存続の危機に立たされています。

2014年に一部が開通した環状2号線を使い、東京都心とオリパラ選手村が作られる晴海および複数の競技場が整備される有明地区を結ぶオリパラBRTについては、以前もこのブログで取り上げました。そのときにも不安点をいくつか列記しましたが、それ以前の段階として、走るかどうかが不安になってきているのです。

京成連節バス

この件については東洋経済オンラインで記事を掲載しているので、興味がある方はご覧ください。そこにも記しましたが、昨年8月に移転延期が発表されてから、現在までにBRTに関する動きが2つ起こっています。ひとつは昨年11月、新橋と築地を結ぶ環状2号線のトンネルが、移転延期の影響で2020年の完成が難しくなり、地上ルートへの転換を模索しているということ。もうひとつは今月、東京都と京成バス(上の写真)によるBRT運行のための新会社設立が延期になったことです。

これも以前ブログで記したことですが、日本はBRTを誤解している人が多いようです。BRTとはバス高速輸送システムの略であり、バスに鉄道並みの定時制や速達性を盛り込んだものです。そのためには専用レーンの用意が必須です。連節バスやバスロケーションシステムを用意することがBRTだと思っている人もいるようですが、これらは利便性には寄与するものの、定時性や速達性にはさほど効果はありません。

豊洲大橋
東洋経済オンラインの記事=http://toyokeizai.net/articles/-/164494

築地と晴海を結ぶ築地大橋(記事参照)、晴海と豊洲を結ぶ豊洲大橋(上の写真)はいずれも基礎部分は完成しており、後者は工事車両に限り通行が許可されています。つまり新橋と築地の間だけが残されています。これに対して東京都では、現時点でも渋滞している新大橋通りや狭い市場内道路を活用し、信号システムを工夫するとしているようですが、これでBRTが成立するとは思えません。そもそも市場内道路にBRTを走らせれば、市場として機能させることは難しくなります。

昨日の都知事の定例会見では、都庁内に「市場のあり方戦略本部」の設置が明らかにされました。安全性だけでなく経済性などからも市場移転をじっくり検討していくとのことです。たしかに市場移転にタイムリミットはありません。しかしオリパラは開催時期が決まっています。BRTはそれ以前の整備が前提です。東京の交通は世界的に高い評価を受けています。その評価が一変する可能性もあります。移転か否か、とにかく早めの決断を望みます。

都市と治安と交通の関係

 1月に続いて米国に行ってきました。 今回はSXSW(サウスbyサウスウエスト)というイベントの取材のためにオースティンを訪れたほか、アトランタとロサンゼルスにも滞在しました。 1月にラスベガスとポートランドを訪問したので、3か月で5都市に足を運んだことになります。

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米国の都市と言えば治安が気になりますが、この5都市の中で、もっとも安心して過ごせたのがオースティンでした。 直前まで犯罪率が高いアトランタにいたこと、SXSWは街全体がイベント会場になっているので朝から晩まで賑わっていたこともありますが、まちづくりも関係しているのではないかと思いました。

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オースティンはコンパクトな街です。都心はテキサス州議会議事堂とハドソン川に挟まれた1km四方ほどで、歩いて回れます。昔ながらの街並みも残っており、飲食店も目に付きます。さらに議事堂の北にはテキサス大学オースティン校の広大なキャンパスが広がっています。そこにバス、カーシェアリング、サイクルシェアリング、自転車タクシーなど、さまざまな乗り物が走っています。こうした作りが賑わいを生み出していることは間違いありません。

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特にバスの充実ぶりは驚くほどで、ダウンタウンから周辺の住宅地へ向けて網の目のように路線が用意されており、都心部では10系統以上のバスが停まる場所がいくつもあります。基幹バスや急行バスは本数も多めです。しかも車内には上の写真にあるような路線図や系統ごとの時刻表が置いてあるので、初めて訪れた人でも使いこなせるでしょう。私自身、海外の都市でここまでバスを多用したのは初めてでした。

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一方オースティンは産学連携でIT企業を積極的に誘致しており、今ではシリコンバレーに次ぐ規模を誇るそうです。研究開発拠点は都市の北部にあり、急行バスが都心との間を結んでいるほか、2010年に鉄道も開通しました。既存の線路を活用したもので、架線がないのでディーゼルカーを走らせています。設備投資を抑えつつ利便性を確保した賢い手法だと思いました。

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アトランタも地下鉄やバスは走っていましたが、危険な香りが漂う地域を何か所も目にしました。その点オースティンは、街の中心部に州議会議事堂や大学があるという幸運はありますが、企業誘致や交通整備が目的ではなく、まちづくりという大きな枠の中で働く場所や乗り物を用意していったことが理解できます。それが安心して暮らせる都市に結実しているという点は、1月に紹介したポートランドに似ていました。
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