THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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モビリティデザインもモノ+コトへ

ひさびさにグッドデザイン賞を取り上げます。審査委員を務めさせていただいている2019年度グッドデザイン賞およびグッドデザイン・ベスト100が10月2日に発表されました。私たちが担当するモビリティユニットからは48対象がグッドデザイン賞を受賞し、うち5つがベスト100に入りました。

具体的には、フィンランドのSensible 4と良品計画が共同開発した自動運転バス「GACHA」、 西武鉄道の特急車両「Laview」、瀬戸内海汽船のカーフェリー「シーパセオ」、フィンランドMaaS GlobalのMaaSプラットフォーム「Whim」、アイシン精機とスギ薬局が提供するデマンドバス「チョイソコ」となります。

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5件中2件にフィンランドが関わっており、今のモビリティシーンでこの北欧の国が重要な位置を占めていることを教えられるとともに、ものづくりではなくサービス分野から2件選ばれていることも目を引きます。
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Whimは何度か紹介しているのでチョイソコについて説明すると、愛知県豊明市で展開する高齢者はじめ交通弱者のためのデマンド交通で、親しみやすい名称や電話申し込みという手段に高齢者への配慮を感じる一方、走行経路はデジタル技術を活用して最適ルートを選び、停留所に登録された薬局や医療機関、金融機関などがスポンサーとして運営を支えるというパッケージであり、今後全国展開を予定しています。

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やはり以前取り上げたGACHAも、乗務員がいない無人運転シャトルであり、移動販売なども想定しているので、アプリなどによるサービスは必須になります。Laviewとシーパセオは純粋な乗り物としての受賞ですが、前者は大きな窓や優しさを感じる内装、後者は多様な過ごし方ができるゾーン分けなど、スピードなどの機能面より移動の心地よさを重視しており、モノだけでなくコトにもこだわったと言えます。

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この傾向は今年始まったことではなく、2013年度にはタクシー配車アプリ、2015年度には道の駅、2017年度には全国路線バス情報などがありました。モビリティ=ものづくりと捉える人も多いですが、近年は他の分野同様、ものづくりだけでは問題解決できない事例が多くなっています。そのためにサービスやビジネスの分野まで含めてデザインすることが重要になっているという流れを認識しました。

今年度のグッドデザイン賞の結果は、10月31日から11月4日まで東京ミッドタウンで開催される「2019年度グッドデザイン賞受賞展」で見ることができます。初日の31日には金賞などの特別賞が発表されるとともに、審査委員・受賞者・来場者の投票でグッドデザイン大賞が決まります。入場無料なので、ご興味のある方は足を運んでみてください。

電動キックボードを自由に乗るために

海外では自由に走れるのに日本では法律上認められない乗り物やモビリティサービスはいくつかあります。米国発祥の電動キックボードのシェアリングはそのひとつです。ちなみに米国ではこの乗り物をe-scooterと呼ぶことが多いですが、日本で電動スクーターというと二輪車のスクーターの電動版を指すことが多いので、ここでは電動キックボードという呼び方をします。

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厳密には日本でも電動キックボードのシェアリングは存在します。そのひとつが、さいたま市や千葉市で展開しているWINDです。写真は埼玉高速鉄道の浦和美園駅に配備してあるものです。他の多くの国の電動キックボードと異なるのは、原付のナンバープレートや灯火類がつき、ヘルメットが袋に入って用意してあることです。つまり日本では原付扱いとなるのです。もちろん運転免許は必要になりますし、交差点での二段階右折などのルールも適用されることになります。

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訪れたのは平日の日中ということもあり、借りる人は見られませんでした。原付免許を持っている人はそれなりにいると思いますが、ヘルメット装着には抵抗を感じる人が多いのではないでしょうか。実際、ヘルメットが不要な電動アシスト自転車が普及したことで、原付の販売台数が大幅に減少していることはご存じのとおりです。 

海外では電動キックボードは厳格な規制がなく、自由に借りて乗ることができます。その結果歩行者と接触したり、車両が無造作に放置されたりという問題が出ており、パリでは歩道での走行を禁止するルールが作られたりしています。これに限らず海外は、まずは挑戦し、問題があれば修正するというプロセスが多いと感じています。一方日本は既存のカテゴリに当てはめようとし、無理なら許可しないという方針が目立ちます。成功の賞賛より失敗の非難を重視する今の風潮とリンクしているような気がします。

少し前のブログで紹介したように、今週は京都府のけいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)で開催された「ネクストモビリティExpo2019」に参加してきました。この席で、以前から「小さな交通」に取り組んできた建築家・都市構想家で東京大学名誉教授の大野秀敏先生が興味深い提案をしました。道路を時速6kmまで、20kmまで、それ以上という3つの車線に分け、それぞれに該当する乗り物を走らせるというプランです。

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このうち歩行者や電動車いすなどが通行する6kmゾーンと、自転車や電動キックボードなどが走る20kmゾーンは一定の幅を確保するとしており、道幅が狭くなればそれ以上のゾーンが消え、自動車も20km制限になるという内容でした。車両の速度制御については、現在販売している自動車の運転支援システムにも、道路標識を読み取って走行速度を制御する仕組みが実現しているので、難しい話ではないはずです。路上の監視カメラでチェックする方式もあるでしょう。

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ネクストモビリティExpo2019の会場では、「オムニライド」と呼ばれる独創的なパーソナルモビリティの体験試乗もできました。自動車や鉄道に比べれば規制が緩いこのカテゴリーは、創造性にあふれた新しい乗り物が次々に出ています。もちろん電動キックボードもそのひとつです。こうした車両をひとつひとつ認可するか否かを検討していくという、我が国の今の体制は果たして正しいのか。もう一度多くの人が考えてほしいところです。

地方のMaaSにライドシェアは不可欠

昨年訪れたフィンランドとエストニアのMaaSを含めたモビリティサービスのセミナーを、所属する日本福祉のまちづくり学会が昨日開催したので参加してきました。昨年このブログでも取り上げたように、モビリティではフィンランドはMaaS、エストニアは首都タリンの公共交通無料化と、直線距離100km以下にもかかわらず異なるアプローチをしていますが、今回のセミナーでは共通する部分を教えられました。

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それはタクシーとライドシェアの扱いについてです。拙著「MaaS入門〜まちづくりのためのスマートモビリティ戦略」でも書きましたが、  フィンランドはMaaS導入に合わせて法律を改正。タクシー不足解消のために規制緩和を行い、ライセンス取得の敷居を下げ、Uberなどのライドシェアでも資格を取れば合法としています。エストニアも似たような状況で、タクシーとライドシェアが並立しているそうです。

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欧州でも英仏独など昔からタクシーが普及している国を中心に、ライドシェア撤退を求める動きが起こりましたが、日本のように事業そのものを禁止するわけではなく、一定のライセンスを取得すれば営業可能という方向を選択する国が多くなっています。フィンランドやエストニアの現状はその流れの上にあるようです。

フィンランドの首都ヘルシンキでは、MaaSグローバル社のアプリWhimで選択するタクシーにライドシェアが含まれます。タリンは前述のように市民は公共交通無料ということもあり、交通全体をカバーするMaaSはまだ存在せず、タクシーとライドシェアの配車アプリがメインだそうです。主役級はエストニア発で世界34か国に展開するBolt(Taxifyから名称変更)で、Uberのように電動キックスケーターやフードデリバリーも手がけているようです。

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なぜライドシェアが必要なのか。これも拙著で紹介しましたが、スウェーデンのMaaSアプリUbigoが同国第二の都市ヨーテボリでトライアルを実施した際の結果が参考になると考えています。MaaS導入前と導入後でもっとも大きく増えた移動手段がカーシェアリングだったからです。鉄道やバスはやはり限られた場所しか走っていないので、ラストマイルを含めたそれ以外の移動を気軽に使えることを住民は望んでいたようです。

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一方今年4月、日本で初めてウーバーのアプリを地域交通に導入したことで知られる京丹後市旧丹後町地域の「ささえ合い交通」を利用した際には、地方では移動の需要が少ないことに加え、運転手も不足しており、市民同士が移動を支え合うことが必要であると感じました。フィンランドとエストニアも日本に劣らず高齢化が進み、なおかつ人口はわが国より圧倒的に少ないわけで、同様の悩みを抱えているのではないかと想像しています。

こうした状況にある地方で、移動の利便性や快適性を高めるためにMaaSを導入するなら、やはりライドシェアは重要ではないかという意見が、昨日のセミナーで出されました。同感です。日本のタクシー業界は相変わらずライドシェアを「危険な白タク(タクシーが安全と断定できないことは以前書いたとおりです)」と敵視していますが、タクシーやバスが撤退した地で誰が移動を担うのか、真剣に考えるべき時期に来ていると感じました。