THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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新年度を機に望みたいこと

新年度が始まりました。いままでとは違う道を使って職場や学校へ行くことになった人もいることでしょう。そこで思い出したのが、先月ヨーロッパに行ったときに、あちこちで見かけた写真の仕掛けです。横断歩道そのものや手前の路面を盛り上げることで、自動車の減速を促すものです。ハンプ(hump)という呼び名が一般的です。

日本でも住宅地の中の生活道路に設置している例を見かけますが、ヨーロッパでは都市内の至る場所で目にできます。写真は1枚目がフランスのニース中央駅前通り、2枚目は同じフランスのグルノーブルで、公園やロープウェイ乗り場が近くにある川沿いの道です。いずれもひんぱんに自動車が通る道ですが、ハンプを設置して減速を促しています。

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なぜ日本ではハンプがあまり使われないのか、ヨーロッパの都市の光景を見るたびに不思議に思います。スポーツ施設でのゴミ拾いなどに代表される、日本人の他を思いやる気持ちは海外でも知られるところですが、歩行者という交通弱者への思いやりは、大きく遅れを取っていると言わざるを得ないからです。

特に通学者に対しては、2012年4月に京都府や千葉県などで立て続けに死亡事故が発生したにもかかわらず、多くはスクールゾーンの点検やゾーン30の導入など、マナーを促すレベルの改善に留まっています。その後も事故は起こっているわけですから、海外で実績のあるハンプの導入など、より効果的な対策が必要となっていることは明らかです。

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強者にあたるのは自動車だけではありません。今週とある自転車利用者のブログで、「夜道の歩行者はライトを使ってほしい」という投稿があり話題になりました。接触しそうになったら自転車が減速するのが筋であるはずなのに、歩行者にも責任の一端があるという意見を、驚くことに一部の自転車利用者は支持しているようです。

新生活をスタートした人たちは、慣れない道を使っています。いつもより事故の可能性が高いということです。今の日本は残念ながら、こうした弱者に対する思いやりが失われつつあり、ハンプなどの強制処置の導入も止むなしと考えます。しかし本音を言えば、道路を使うひとりひとりが気をつければ、それで済むことなのです。

「第3の自動運転車」は社会貢献を目指す

2週間前のブログでは南仏ニースのLRTを紹介しましたが、この地を訪れた目的は他にもありました。本ブログで何度か紹介している、EU(欧州共同体)がサポートする自動運転プロジェクト「シティモビル2」の実証実験の取材で、欧州のシリコンバレーと言われるニース近郊のソフィア・アンティポリスに足を運んだのです。

概要については「日経テクノロジーオンライン」に記事を書いていますので、そちらを参照していただきたいのですが、関係者の話によれば、実証実験に使われる車両イージーマイル「EZ10」が、今年中に日本上陸を果たす予定です。そこで現地でシティモビル2およびイージーマイルの関係者に聞いた話をもとに、日本のモビリティシーンにおけるEZ10の役割について考えました。

実証実験風景
日経テクノロジーオンラインの記事(要登録)=http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/032501257/

記事ではシティモビル2、イージーマイルおよびEZ10について、「第3の自動運転車」という表現を使いました。現状の自動運転業界は、IT企業グーグルと既存の自動車メーカーの対決という構図ですが、シティモビル2やEZ10はどちらにも属しません。グーグルや自動車メーカーのように特定の企業が主導する形態ではなく、複数の団体がコンソーシアムを組んでプロジェクトを進めていることや、パーソナルユースではなく公共交通的な用途を目指していることが理由です。

イージーマイルという社名には、ラスト1マイルを快適に移動できるようにという想いが込められており、既存の公共交通との連携を前提としていることが分かります。さらにEZ10は、箱型の12人乗りという構造で分かるように、バスやタクシー的な使い方を想定しています。ソフィア・アンティポリスの実証実験では、約1kmのルートに5か所の停留所を設けています。ソフィア・アンティポリスを走るEZ10はもちろん、停留所の近くで車線変更を行った後、指定位置に停車し、客扱いを行っています。

停留所
イージーマイルのウェブサイト=http://easymile.com/

自動運転を欲する理由はさまざまです。その中で、我が国において重視すべきことだと考えるのが、過疎地で暮らす高齢者の移動です。自動車メーカーが研究開発を続けている自動運転車は、高速道路での運転支援から発展したものですが、こうした移動は鉄道などで転換することが可能です。しかし過疎地では鉄道やバスが廃止された地域も多く、自転車は体力的に乗るのが困難であり、移動手段そのものがないという人がいます。

現在、世界各地で実験が進められている自動運転車の中で、こうした問題の解決にもっとも有効な1台が、今回取材したEZ10ではないかと思っています。関係者の言葉からも、社会貢献という意志が明確に感じられました。そして最初に書いたように、イージーマイルは日本の某企業と交渉を進めており、EZ10は今年中に我が国に上陸する予定です。現在の自動車が目的に応じて細分化されているように、自動運転車も目的に応じた使い分けが望まれます。1日も早い導入を期待しています。

カーメーカーまで参入したライドシェアをどう考えるか

今週15日、米国の自動車会社GM(ゼネラルモーターズ)が、スマートフォンを利用した配車サービスを提供しているライドシェア企業リフト(Lyft)のプラットフォームに対して、レンタカーサービス・プログラムの「エクスプレス・ドライブ・プログラム」を導入すると発表しました。今月末にまずシカゴでスタートし、その後ボストン、ワシントンDC、ボルティモアなどで展開していくそうです。カーシェアリングに自動車会社が関わった例はありますが、ライドシェアでは初めてではないかと記憶しています。

lyftxgm

米国では、ライドシェアのサービスを提供したいけれど車両がないという人もいるそうで、シカゴではリフトのプラットフォーム上でドライバーを募った際、条件を満たす車両を所有していないドライバーが6万人いたとGMは報告しています。今回のプログラムはこうした人々に対して、一定料金で車両をレンタルするというものです。GMの車載情報ネットワークシステム、オンスター(OnStar)を装備するクロスオーバーモデルの「エクイノックス」が提供され、プログラムには保険とメンテナンスが含まれているそうです。

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GMとリフトは今年1月に資本提携の発表を行っています。GMがリフトに5億ドルを投資し、リフトの取締役会のメンバーになるというものです。目的は単なるライドシェアだけではありません。両社の最終目標は、自動運転ライドシェアの実現なのです。すでに米国ではライドシェアの先駆者ウーバー(Uber)とテスラが自動運転ライドシェアを目指して提携を結ぶと噂されており、グーグルは単独で自身の自動運転車を用いたライドシェアに進出すると言われているなど、流れができつつあります。

多くの自動車会社は自動運転車を、従来と同じように販売しようとしていますが、自動運転車は運転の楽しみが得られなくなることから、所有への興味が薄れ、カーシェアやライドシェアなどで使用するほうが良いと考える人が増える可能性があります。GMはそれを見越してシェアサービスへの車両供給という道筋を切り拓こうとしているのかもしれません。米国らしい開拓者精神を感じます。

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一方日本では、 DeNAとZMPの合弁会社であるロボットタクシーが、2月29日から3月11日まで、神奈川県藤沢市で自動運転タクシーの実証実験を行いました。一方3月8日には、東京でタクシー運転手たちが集まり、ライドシェアへの反対集会が行われました。政府は「国家戦略特区」の新たな規制緩和策として、過疎地域などで、住民が自家用車を使って観光客を有料で送迎するサービスを認める方針です。京都府京丹後市ではウーバーのシステムを用いたライドシェアで、過疎地域の交通を賄う計画を立てています。

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私も大都市と過疎地域で、ライドシェアの判断を分けるべきだと考えます。現時点でタクシーが過剰と言われる大都市でライドシェアを認可すれば、交通渋滞や事故が増えるだけでなく、運転手の生活が脅かされる恐れもあります。総量規制が必要でしょう。またバスやトラックなどで過労運転による事故が頻発しているおり、営業時間を制限する装置も必須だと考えています。しかし過疎地域では、日々の移動にさえ苦労している人が多いわけですから、観光客だけでなく、住民のためにも、ライドシェア導入による利便性向上を期待したいところです。

ただし将来的に自動運転が普及すると、現状の問題の多くは解決する可能性があります。運転手がいなければ、タクシーとライドシェアはほぼ同じ存在になるからです。運転手のいるライドシェアが議論されている現在の状況は、過渡期と見るべきなのかもしれません。個人的には、自動運転は所有より使用のほうがふさわしいと考えています。日本のように運転手不足に悩む国も多いわけで、トラックやバス、タクシーなどから導入を進めたほうが良いと思います。その点で今回のGMの動きは歓迎するところです。
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