THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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多くの方には事後報告になってしまいましたが、昨日まで千葉市の幕張メッセで開催されていた第8回鉄道技術展の中で、「MaaS〜その考え方と現況から未来の交通体系を考える」と銘打たれたセミナーに、鉄道会社や自治体、大学でMaaSに関わる方々とともに登壇させていただきました。参加していただいた方には、この場を借りてお礼を申し上げます。

その席で、東京で生まれ、現在は名古屋に住んでいるという大学の研究者の方が、移動するときに東京ではまず鉄道で行けるかを考えるのに対し、名古屋では自動車で行けるかをまず考えるという話をしました。地域性を反映した指摘で、名古屋周辺は何度も行ったことがあり知人も多いので納得できる話ではありましたが、私はどちらでもない、あるいはどちらでもあると思いました。

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首都圏で暮らしつつ自動車メディアで仕事をしてきたこともありますが、出かけるときには多くの場合、いろいろな交通手段の時間や費用などを比べたうえで選んでいるからです。そのときに主に使うのがGoogle マップです。

今週も静岡県御殿場市で開催された新型車の試乗会に行きましたが、東名高速道路が集中工事で渋滞しているという話は知っていたので、いろいろ調べた結果、1日3往復しかない小田急電鉄の特急「ふじさん」が仕事のスケジュールに合っていたので利用しました。集中工事がなかったり、現地での用事と列車の時刻が合わなかったりした場合は、マイカーあるいは高速バスを選んだと思います。

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鉄道技術展のオフィシャルサイトはこちら(終了しました)

最初の画像は今日の10時に、事務所近くの東京都庁から目的地周辺にあった御殿場市役所までの経路を、自動車と公共交通ので検索して比べたものです。週末なので高速道路はさらに混んでいますが、実際に御殿場に行った日も、列車内から見る高速道路はトラックがゆっくり動いていたので、それなりに渋滞していたのではないかと思います。

多くのMaaSアプリは、MaaSがそもそもマイカー移動対抗として生まれた背景もあって、バスやタクシーを含めた公共交通のみの経路検索になります。カーナビは逆に、自動車移動の経路だけを表示します。しかも多くのカーナビは、出発の時点では渋滞情報などを加味しない所要時間を出すので、当初の表示より大幅に遅れて到着ということが、これまで試乗してきた車両で何度もありました。

その点Googleマップは、膨大なデータをもとに的確な渋滞情報を織り込んだうえでの所要時間を出してくれます。自分の経験でも、この時間が大幅に狂ったことはありません。つまりカーナビとしてもとても優秀なのです。一方の公共交通は、鉄道やバスだけでなくタクシーや自転車を含めた案内をしてくれます。真のマルチモーダルと言えるのではないでしょうか。

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しかもGoogle マップは世界の多くの国で基本的に、日本と同じ機能が同じ感覚で使えます。おまけに主要な地名や施設は日本語で表示してくれます。これもまた他の経路検索ではなかなか実現できないことです。1年前にルクセンブルクに行ったとき、同国は公共交通が無料なのでMaaSアプリが存在せず、Googleマップだけで各所に不満なく移動できたことが思い出されます。

公共交通事業者は自分たちの鉄道やバス、自動車メーカーは自分たちが作った自動車をなるべく使ってもらいたいという気持ちは理解できます。でもそれが視野や焦点を限定してしまっていることは否めません。その点Google マップは、たしかにグループ企業が自動運転車両を供給はしていますが、地球全体を分け隔てなく見て、私たちが進むべき道を示している感じがします。



そういえば今週はニュースメディア「東洋経済オンライン」で、LRTが開業した栃木県宇都宮市や芳賀町を目的地に仕立てた、自動車と公共交通の比較記事が公開されました。この記事で活用したのもGoogleマップです。みなさんもぜひこのアプリのマルチモーダル性能に注目して、いろいろな移動を試してみてください。時間やお金の節約になるだけでなく、いままでにない体験が得られるはずです。

明日まで東京ビッグサイトで開催しているジャパンモビリティショーを、先週に続いて取り上げます。今回はこのブログで何度も紹介してきたWHILLが、新たなメニューとして用意した「WHILL SPOT」と呼ばれるレンタルサービスを体験したので、印象を交えながら綴っていきます。なお先週紹介したwebCGに加えて、東洋経済オンラインでも記事がアップされたので、ご興味のある方はご覧ください。

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用意されていたのは、WHILLのラインナップでは上級車種と言えるモデルC2です。前のモデルCを含め、何度か乗ったことがあるので、扱いは問題ありません。最高速度は歩行者に合わせて4km/hに設定してもらい、もっとも人が多い東1~6ホールを、1時間かけて回りました。ブレスデーだったので、一般公開日に比べれば来場者は少なめでしたが、それでも人気の展示車両の周囲は人混みができていました。

電動車いすにここまで長時間乗るのは初めてだったので、いろいろなことがわかりました。まずは一見大きく感じる車体が、実際は人間ひとりの占有スペースとさほど変わらないこと。電動なので人間の動きとはもちろん違いますが、10年以上のキャリアがある会社の製品だけあって違和感はありませんでした。小回りが利き、多少の段差なら乗り越えられるところも重宝しました。



ただ車体重量が約50kgあるので、衝突しないよう気をつけて動かす必要はあると感じました。人混みの中を移動するときは、ちょうど将棋の駒のように、空いた場所に進める感じで動いていました。目線は低くなりますが、展示物が見えにくいということはありませんでした。ノンステップバスの展示では、スムーズに乗り降りできることが確認できました。実際に車いすに乗っていたからこそわかることで、貴重な体験になりました。

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歩数は1日目の3分の1ほどで済みました。たしかに楽です。歩くことはできるものの、ここまで広い会場を歩いて回るのは辛いという人には、ありがたい存在でしょう。そして元気に歩ける人にとっても、パーソナルモビリティを体験することは大切だと感じました。その後一般公開日に足を運んだ時も、数名が使用していましたが、歓迎できる行動だと思っています。

かなり前のブログで、英国のショップモビリティを紹介しました。足腰の弱い人がショッピングモールを楽しんでもらえるよう、駐車場などに電動車いすを置き使ってもらうサービスで、日本ではタウンモビリティという名称で導入している地域もあります。WHILLも同様のサービスを、以前から空港や病院、テーマパークなどで行っており、今回はその経験を生かしたサービスと言えます。

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私は東京モーターショー時代から、会場内の移動にこうしたパーソナルモビリティを活用してほしいと、関係者にお願いしたりしてきました。なのでジャパンモビリティショーという新しい看板とともに、このようなサービスが用意されたのは喜ばしい限りです。驚いたのは主催者ではなく、WHILLが独自に導入したサービスということで、同社の決断力や行動力にあらためて感心しました。

今回のショーでは、先週紹介した特定小型原付のカテゴリーに属する車両を含めて、パーソナルモビリティのコンセプトカーがいくつか出展され、市販車については試乗コーナーが用意されていました。次回はこれらの乗り物がWHILLとともにレンタルとして揃えられ、好きなものを選んで乗れるようになってほしいと思いました。

東京モーターショー改めジャパンモビリティーショーが、昨日から一般公開となりました。私は25・26日のプレスデーで、ひと足先に見てきました。自動車ニュースサイト「webCG」で、その様子をガイド風コラムにまとめたので、ご興味のある方はご覧になっていただければと思いますが、モビリティを名前に冠したとおり、出展者も展示物もこれまでになく多彩になっていました。

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なかでも出展数が多いうえに、独創的なデザインやエンジニアリングで目を引いたのが、パーソナルモビリティや超小型モビリティなどの、小さな乗り物でした。とはいえここですべてを紹介することはできないので、あるカテゴリーに向けて自動車メーカーのエンジニアたちが開発した3台を紹介したいと思います。

その3台とは、スズキの4輪電動パーソナル/マルチユースモビリティ「SUZU-RIDE(スズライド)」「SUZU-CARGO(スズカーゴ)」、トヨタ自動車の3輪電動パーソナルモビリティ「LAND HOPPER(ランドホッパー)」、そして本田技研工業発スタートアップのストリーモが販売している立ち乗り3輪パーソナルモビリティ「Striemo(ストリーモ) S01JT」で、いずれも今年7月に施行された特定小型原付を見据えていることが共通しているのです。

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ストリーモはすでに特定小型原付仕様を発売しているのに対し、スズキとトヨタはどちらもコンセプトカーで特定小型原付を想定した設計という違いはあります。ただしLAND HOPPERはボディサイズの発表があり、特定小型原付の枠内に収まっています。前にも書いたとおり、特定小型原付のカテゴリーが導入されたのは今年7月なので、その前から設計に入っていたと考えるのが自然でしょう。

つまりこのブログなどで主張してきたとおり、特定小型原付は電動キックボードのためのカテゴリーではないことが、日本を代表するモビリティの展示会で、大手メーカーや関連会社によって立証されたことになります。特定小型原付のルールが、日本のモビリティシーンでは異例と言えるほどスムーズに成立したのも、自動車メーカーがなんらかの形で関わっていたからではないかと想像しています。



ただし同じ特定小型原付でも、電動キックボードと今回紹介した車両たちでは、役目が異なると考えています。電動キックボードは、大都市で現役世代が駅から目的地までのラストマイルの移動手段として使うのに対し、今回ショーで披露された車両たちは、3輪や4輪になっていることでわかるとおり、地方の高齢者の運転免許返納後の移動手段が想定されます。だから自動車メーカーが相次いで提案してきたのでしょう。

これに限らず、会場に展示されたパーソナルモビリティを見て感じたのは、日本人の几帳面さやきめ細かさが製品に反映しやすいジャンルではないかということです。今後、高齢化に悩む国や地域が多くなることを考えれば、日本らしさを生かせるジャンルとして、産業としても強みになるのではないかと思っています。

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だからこそインフラの整備を進めてほしいと思います。特定小型原付は、基本的に自転車と同じルールで走るので、自転車道や自転車レーンの整備が重要になります。そこに大手自動車メーカーが参入しようとしているわけですから、メーカー団体などが国に対して走行環境の整備を働きかけて行くことを希望します。運転免許返納後も安全快適な移動を提供しようという気持ちは歓迎できることなので、それをより安全快適にするためにも、インフラ整備の後押しをしてもらいたいものです。

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