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モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

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LCCかレガシーキャリアか

東南アジア出張で、 日本とタイの往復にはLCC(ローコストキャリア)のタイ・エアアジアX、タイとシンガポールの間はタイを代表するエアラインのタイ国際航空を使いました。スケジュールの都合でこうなりましたが、両者の違いが分かりました。ちなみにLCCに対して従来からの航空会社を大手と呼ぶことがありますが、エアアジアも大手なので、航空業界で使われる「レガシーキャリア」という表現とします。

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成田空港にはLCC専用の第3ターミナルがありますが、タイ・エアアジアXは第2ターミナルから出発します。ただしチェックインカウンターは建物の外に作られた小部屋の中でした。機体は往復ともエアバスA330で、エコノミークラスは左右も前後もやや詰めた印象。斜めにフラットになるビジネスクラスは、ひと昔前のレガシーキャリアの設備を譲り受けたのかもしれません。

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6時間以上乗る国際線でありながら、ビジネスクラスを含めて機内エンターテインメントはありません。提供されるのはペットボトルの水だけ。それ以外の飲食物はすべて有料です。ビジネスクラスは食事も無料ですが軽食というレベルです。機内持ち込み手荷物の大きさや重さも厳しく制限されており、オーバーした場合は追加料金を支払って預けることになります。

ただし飛行は安定しており、タイの首都バンコクへの到着が30分遅れたぐらいで、帰りは逆に30分早く成田に着くほどでした。やはり先月乗ったアメリカン航空のロサンゼルス〜羽田便は、乗務員がひとり見つからないとかで出発が2時間遅れた経験があります。LCCの運行が不安定とは言い切れません。隣の乗客はLCC慣れしていたようで、手持ちのiPadで映画を見て過ごしていました。到着前に客室乗務員が枕や毛布を片付けに来ることも、コスト対策として納得できました。

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ところがバンコク〜シンガポール間のタイ国際航空を利用して、少し考えが変わりました。2時間ほどのフライトなのに、全席に機内エンターテインメントが付き、水だけでなくワインやコーヒー、タイ・エアアジアXより豪華な食事まですべて無料です。とりわけ行きはエアバスA350という最新鋭機で、圧倒的に静かだっただけでなく、コーポレートカラーのパープルを間接照明で表現した演出は見事でした。付加価値を提供するレガシーキャリア、付加価値は自分で用意するLCCの違いが明らかになりました。

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レガシーキャリアとLCCの違いは、携帯電話の大手通信事業者とMVNOの違いに通じるところがあります。しかし携帯電話が二者択一なのに対し、航空会社は場面ごとに選ぶことが可能です。私は4回のフライトで、両者を使い分けていこうという結論になりました。他の多くの交通同様、共存が望ましいと感じたのです。航空運賃は購入のタイミングで大きく上下することや、今回のようにスケジュールが左右することもありますが、そのときの状況に合わせて選ぶことで旅の幅が広がると思いました。

もっとも昔からサウスウエスト航空などがある北米では、LCCとレガシーキャリアの差が少なくなっているようです。たとえば日本にも就航するデルタ航空は、米国内線では手荷物や食事は有料と、LCCに近いサービスになっています。LCCの歴史が浅いアジアで、今後両者の関係がどのようになっていくかも注目です。

上下乗り換えとエスカレーター問題

昨日、国土交通省が「第12回大都市交通センサス」を発表しました。首都圏・中京圏・近畿圏の三大都市圏における鉄道、バスの利用実態を把握し、公共交通施策の検討に資する基礎資料の提供を目的としているもので、1960年から5年ごとに実施しています。今回は2015年に実施した調査結果を取りまとめ、公表されました。

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結果については国土交通省のウェブサイトからダウンロード可能となっていますが、利用者へのアンケート調査の他、自動改札機などを介して集計したビッグデータなども活用した調査結果は膨大であり(首都圏だけで約300ページに上ります)、ここですべてを紹介することは不可能なので、今回は「乗り換え」に焦点を絞って話を進めていきます。

というのも、乗り換え移動時間について5年前の結果と比べると、中京圏と関西圏ではわずかに短くなっているのに対し、首都圏では少し長くなっているからです。具体的に駅別で見ると、水平方向では東京駅や渋谷駅、上下方向では大井町駅や下北沢駅などが長いと報告されています。主要駅の乗り換え時間を水平移動・上下移動・列車待ちに分けたグラフもあります。多くの駅で水平移動が4分の3を占める中、大井町駅では半分近く、下北沢駅ではなんと約7割を上下移動が占めています。

乗り換え時間比較
大都市交通センサスのウェブサイト=http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000064.html

水平方向の乗り換え距離が長い駅は以前からあったのに対し、上下方向が長い駅は最近になって増えてきたと感じています。理由はもちろん、既存のインフラを避けるべく、駅がどんどん地下深くなっているからです。ここでネックとなるのは移動手段です。階段では利用者に負担をかけ、一方のエスカレーターやエレベーターは輸送量が限られます。効率的な上下移動モビリティが発明されない現状では、移動そのものをなるべく少なくする設計が大事でしょう。

駅別移動グラフ

エスカレーターの利用方法についても触れておきます。最近日本では、安全のためにエスカレーターは歩かず立って乗るという方向に動いています。一方海外は、今週訪れたタイやシンガポールを含めて片側を空けています。しかし海外でも、混雑時は両側とも歩かず立ったままというシーンを多く見かけます。

エスカレーターに限った話ではありませんが、いまの日本人には臨機応変な判断が不足していると考えます。駅は時間帯によって利用者が大きく上下します。それをひとつのルールで決めつけるのは無理があります。乗り場に列ができているときは両側立ち、できていないときは片側空けなど、そのときの状況によって利用者が決めるほうが、判断力が養われて、結果的に人の流れがスムーズになりそうな気がします。

オリパラBRTの危機

東京都中央卸売市場築地市場の豊洲への移転が延期となったことで、2020年の東京オリンピック・パラリンピック(以下オリパラと称します)の関係者や観光客などの移動の動脈として考えられているBRTが、存続の危機に立たされています。

2014年に一部が開通した環状2号線を使い、東京都心とオリパラ選手村が作られる晴海および複数の競技場が整備される有明地区を結ぶオリパラBRTについては、以前もこのブログで取り上げました。そのときにも不安点をいくつか列記しましたが、それ以前の段階として、走るかどうかが不安になってきているのです。

京成連節バス

この件については東洋経済オンラインで記事を掲載しているので、興味がある方はご覧ください。そこにも記しましたが、昨年8月に移転延期が発表されてから、現在までにBRTに関する動きが2つ起こっています。ひとつは昨年11月、新橋と築地を結ぶ環状2号線のトンネルが、移転延期の影響で2020年の完成が難しくなり、地上ルートへの転換を模索しているということ。もうひとつは今月、東京都と京成バス(上の写真)によるBRT運行のための新会社設立が延期になったことです。

これも以前ブログで記したことですが、日本はBRTを誤解している人が多いようです。BRTとはバス高速輸送システムの略であり、バスに鉄道並みの定時制や速達性を盛り込んだものです。そのためには専用レーンの用意が必須です。連節バスやバスロケーションシステムを用意することがBRTだと思っている人もいるようですが、これらは利便性には寄与するものの、定時性や速達性にはさほど効果はありません。

豊洲大橋
東洋経済オンラインの記事=http://toyokeizai.net/articles/-/164494

築地と晴海を結ぶ築地大橋(記事参照)、晴海と豊洲を結ぶ豊洲大橋(上の写真)はいずれも基礎部分は完成しており、後者は工事車両に限り通行が許可されています。つまり新橋と築地の間だけが残されています。これに対して東京都では、現時点でも渋滞している新大橋通りや狭い市場内道路を活用し、信号システムを工夫するとしているようですが、これでBRTが成立するとは思えません。そもそも市場内道路にBRTを走らせれば、市場として機能させることは難しくなります。

昨日の都知事の定例会見では、都庁内に「市場のあり方戦略本部」の設置が明らかにされました。安全性だけでなく経済性などからも市場移転をじっくり検討していくとのことです。たしかに市場移転にタイムリミットはありません。しかしオリパラは開催時期が決まっています。BRTはそれ以前の整備が前提です。東京の交通は世界的に高い評価を受けています。その評価が一変する可能性もあります。移転か否か、とにかく早めの決断を望みます。
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