THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

講演・調査・執筆などのご依頼はこちらからお願いいたします→info@mobilicity.co.jp

どうする新高岡駅

北陸地方の交通はこのブログで何度も取り上げてきました。いずれも先進的かつ革新的な取り組みであり高く評価してきました。しかし中には、これは?と首を捻るような事例もあります。

IMG_9493

まもなく開業3周年を迎える北陸新幹線の富山駅と金沢駅の間に新高岡駅があります。JR城端線との乗換駅で、次の駅が高岡市の中心となる高岡駅になります。新高岡駅は当初、今より250m東側にあるイオンモール高岡付近に作られる予定でしたが、地元自治体の要望を受けて現在の位置に変わりました。自治体側は続いてJR西日本に城端線新駅の設置を要望し、現在の形になったそうです。

筆者は金沢駅から北陸新幹線に乗って新高岡駅で降り、城端線で高岡駅に向かおうとしました。新幹線と城端線の駅は隣接していて乗り換えは楽です。しかし城端線の時刻表を見て唖然としました。本数が少ないうえに新幹線との連絡が考慮されておらず、1時間近く待つことになったのです。

IMG_9519

駅の中には土産物屋がありますが、駅前広場はカフェ、ラーメン屋、ビジネスホテルが点在しているだけ。高岡駅を経由して各地へ向かうバスは本数があります。バス移動を前提とするならイオンモールの場所のほうが良かったのでは?と思いました。それでも1時間近く待って2両編成のディーゼルカーに乗ると、下校時間帯ということもあり東京の通勤電車を思わせる混雑でした。

IMG_9525

高岡駅は4年前に新しい駅ビルが完成し、駅前広場で止まっていた万葉線が中に乗り入れるなど、富山駅を思わせるモダンな作りになりました。おそらく北陸新幹線開業を見据えて建て直したのでしょう。しかし新高岡駅とここを結ぶ城端線は上記のような状況です。万葉線を新高岡駅に伸ばせば利便性は高まるでしょうが、当初からその計画があれば駅構造は違ってきたのではないでしょうか。

IMG_9548

しかも高岡市は慢性的な財政難であり、筆者が訪れた1月は周辺自治体に比べて除雪の遅れが話題になっていました。まして新高岡駅も高岡駅ビルも作ったばかりであり、当面はこれを活用するしかありません。そこで思い出したのが、富山市がJR高山本線に対して行った列車増発の社会実験です。

くわしくは拙著「富山から拡がる交通革命」に書いていますが、社会実験では増発分の費用を富山市が負担する代わりに、乗客増加分の運賃収入をJRから返還してもらう形で進め、まちづくり交付金を活用して沿線の整備も進めました。新興住宅地が広がる場所に婦中鵜坂という新駅も作りました。実験は一定の効果を上げ、駅は常設となり、本数も以前より増えています。

IMG_0892

高岡市などでは停車駅の少ない「かがやき」の新高岡駅停車を求めており、JRでは臨時列車を1日1本停車させていましたが、利用者が少ないことを理由に、昨年12月からは平日の停車がなくなりました。これについて高岡市長は残念とコメントしたようです。受け身の姿勢が感じられて残念に思いました。利用者を増やすのはJRだけの仕事ではありません。自治体がやれることもたくさんあるはずです。

「自動運転があれば公共交通は不要」という嘘

今回はまず、1月に富山で行なったセミナーで使ったスライドからお見せします。「自動運転ですべて解決、ではない」というタイトルの下に4つの乗り物の写真があり、脇に数字が書かれていますが、何を意味しているかお分かりでしょうか。

IMG_1601

数字は自転車、軽自動車、無人運転バス(イージーマイルEZ10)、LRT車両 (富山ライトレール)の乗車定員を示したものです。ここで取り上げるLRT車両の全長は18.4mですが、これと同じ人数を運ぶとするとEZ10では7台・27.4m、軽自動車では20台・67.9mにもなります(自転車はサイズがまちまちで幅がかなり狭いので比較は避けます)。

最近一部のメディアで、自動運転が実用化されれば公共交通は不要になるという論調を目にすることがあります。しかし私はそもそもこの両者を比べることが誤りだと考えます。理由は東京の新交通システムゆりかもめなど、公共交通にはすでに自動運転を実用化しているものがあり、現在実験中の自動運転・無人運転の多くはバスやライドシェアなど公共交通としての利用を目的としているからです。

ライドシェアは現状では個人所有の乗用車を使っているので、パブリックとパーソナルの中間と言えそうですが、 ドライバーがいなくなれば運行業者がコントロールすることになるので、公共交通の一種になります。今月5日から日産自動車とDeNAが実証実験を開始する「イージーライド」については日産が開発した自動運転乗用車を使っていますが、同社では交通サービスと呼んでいます。

IMG_0320
イージーライドについてはこちらもご参照ください=https://news.mynavi.jp/article/20180302-easyride/

自動運転と公共交通を対立軸に置く人は、おそらく自動運転は乗用車、公共交通は鉄道に代表される大量輸送機関をイメージしたのではないかと思われます。正確な言葉を使ってほしいものですが、それでも両者は比較相手にはならないと考えます。理由が最初に挙げた数字です。

場所や時間によって移動する人の数は異なります。過疎化が進む農村部では乗用車で間に合うでしょうが、地方都市でも富山の中心部であればLRTレベルの車両が必要になります。これをすべて乗用車で賄えば、多くの道が大渋滞になるでしょう。自動運転になっても車両の大きさは変わらないのですから。東京で暮らす人は東日本大震災が発生した日の夜を思い出してください。あのときも鉄道がストップしたことで多くの人が自動車で移動した結果、大渋滞となりました。

自動運転乗用車が普及するとコンパクトシティの考えが必要なくなるので、大量輸送機関が必要なくなるという人もいます。しかしコンパクトシティは交通の集約化が目的ではありません。7年前に富山市長の森雅志氏からお聞きした「除雪の費用が大変」という言葉は今も忘れられません。水道やガスなどインフラの長さも違ってきます。コンパクトシティは行政サービスの効率化が最大の目的であり、そのためのツールとして公共交通を活用しているのです。

IMG_9630

このブログで自動運転・無人運転の実験現場を何度も報告してきたことで分かるとおり、私は自動運転推進派です。しかしすべての乗り物が自動運転の乗用車に置き換わることは、インフラのキャパシティなどから鑑みて無理だと思います。モビリティの問題解決のための選択肢がひとつ増えたとするのが自然だと考えています。

信用乗車への第一歩

信用乗車という言葉をご存知でしょうか。ワンマン運転のLRT(路面電車)などで、運転士などの乗務員が乗車券の確認をせず、利用者が運賃を支払って乗車していると信用することで、複数の扉での乗り降りを認める方式です。他にも呼び名があるようですが、ここではもっともよく使われている信用乗車という言葉を使います。

欧州の都市交通では一般的になっていますが、日本では乗車時あるいは降車時に乗務員が運賃収受やICカードの確認を行う方式を踏襲しています。しかしこの方式では、乗降の扉が限定してしまうので混雑時に時間が掛かるという欠点があります。特に車両が長く扉数が多い近年のLRT車両は、信用乗車を前提とした設計と言えるでしょう。

IMG_9586

こうした流れを受けて、日本では広島電鉄で数年前、ICカードのみ全扉での乗降を認める試験運用が行われたのに続いて、昨年10月からは富山ライトレールで降車のみ導入されています。富山ライトレールは後ろ側の扉から乗り、乗務員がいる前側の扉から降りる方式ですが、カード利用者に限り降りるときも後ろ側の扉を使うことができるようになりました。

IMG_9592

先月富山ライトレールに乗ったのは週末の午前中という混んでいない時間帯でしたが、当然のように後ろ側の扉からカードをタッチして降りる利用者が多く見られました。 乗務員の目の届かない場所で乗り降りができるので無賃乗車も可能ですが、朝のラッシュ時には以前から導入していたことに加え、他の乗客の目があることもあり、大きな問題にはなっていないようです。

前述のように欧州では全扉での乗降が可能です。写真はル・マン(フランス)のLRTですが、扉付近に乗車記録を行う端末を取り付けてあり、切符の場合は乗車時に挿入、カードの場合は乗車時と降車時にタッチすることで、所定の運賃を支払ったことになります。

IMG_6241

ただし不定期で乗車券の確認を行う係員が乗車しているとのことで、無賃乗車が見つかった場合は高額の罰金を取られます。カードの場合も係員が持つ端末で瞬時に分かるそうです。下の写真のフランクフルト(ドイツ)の場合は60ユーロと、最大で通常の乗車券の約20倍にも相当します。これを抑止力としているのです。

IMG_1383

実はここに日本での信用乗車導入が難しい理由のひとつがあります。日本の法律では無賃乗車に対する罰金は乗車券の2倍以内と定められているそうなのです。つまり富山ライトレールの場合は340円(カード利用時)であり、自動車で交通違反をした際に支払う反則金を考えれば、比べるべくもないほどの少額です。

日本ではローカル線のワンマン車両も同様の乗降スタイルを使っていますが、長い車両に2〜3駅だけ乗る場合など、走行中に後方から前方に移動しなければならず不便です。ワンマン方式が当然であり、将来的には無人運転も考えられるわけですから、早急に信用乗車を前提とした法整備をすべきでしょう。
ギャラリー
  • 物流確保のためにも山陽本線の早期復旧を
  • 物流確保のためにも山陽本線の早期復旧を
  • 物流確保のためにも山陽本線の早期復旧を
  • パリのEVシェアに自動車メーカー参入へ
  • パリのEVシェアに自動車メーカー参入へ
  • パリのEVシェアに自動車メーカー参入へ
  • グリーンスローモビリティは根付くか
  • グリーンスローモビリティは根付くか
  • グリーンスローモビリティは根付くか