THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2015年04月

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ベンチャー育成に必要なこと

先週土曜日、電動2輪車「zecOO(ゼクー)」の試乗会が、千葉県船橋市でありました。2011年の東京デザイナーズウィークにプロトタイプが初出展されたあと、電動車両の肝となるバッテリーとモーターの調達に苦労したそうですが、その問題もクリアし、市販に漕ぎ着けました。手作りということもあり、生産台数は49台限定で、価格は888万円ですが、すでに1台売れたそうで、海外からの問い合わせも絶えないそうです。

zecoo
車両の解説や試乗記はこちら=http://autoc-one.jp/report/2162102/

コンセプトとデザインを手掛けたznug design(ツナグ デザイン)の根津孝太さんは、 2014年度グッドデザイン賞審査委員をともに務めた間柄でもあるので、試乗会当日もいろいろ話をしました。そのなかで彼が強調していたことのひとつは、「市販してこそ意味がある」という言葉でした。同感です。そして10年ほど前に発表された、同じ電動のある自動車のことを思い出しました。

その電気自動車とは、慶應義塾大学電気自動車研究室が製作した「Eliica(エリーカ)」です。日本のベンチャーユニットの生まれであること、独創的なデザインを持つこと、ガソリンエンジンの超高性能車に匹敵するパフォーマンスを備えることなど、この2台には似ている点が数多くあります。市販を目指したこともまた共通しています。

eliica

Eliicaもまた市販を目指しており、購入希望者も少なからずいたと言われています。しかし日本で生産する新型車に義務づけられる衝突試験をパスできず、断念したいう話を聞きました。zecOOは、それを理由に2輪車としたわけではありませんが、衝突試験はなく、保安基準など他のハードルをクリアし、市販が実現しました。さらにこのブログでも紹介した電動車いす「WHILL Model A」や「テラモーターズ」の電動3輪車など、海外市場にまず挑戦するというプロセスを選ぶ企業もあります。

日本にはzecOOやEliicaなどを製品化できる優れた技術力と、独創性あふれるデザイン力があります。信頼性や安全性を考えて基準や規制を強化することも重要でしょう。しかし国際競争という視点に立って、国内のものづくり育成を考えるなら、少なくとも他の先進国並みに基準を緩和すべき時期にきているのではないかと、2台の革新的な電動モビリティを比較しながら思ったのでした。

ブランドと宗教の関係

日本の自動車業界に元気が戻ってきたようです。次世代環境技術をいち早く市販する一方で、手頃な価格で運転の喜びを味わえる車種もいくつか登場しています。その中から先週は本田技研工業(ホンダ)の軽自動車スポーツカーS660、今週はトヨタ自動車の燃料電池自動車ミライに乗りました。試乗の印象はメディアで報告するつもりなので、ここではブランドという視点で2台にスポットを当てます。

mirai

トヨタもホンダも、 さまざまな自動車を生産しています。個性という面でも多種多様であり、最近登場した車種で言えばトヨタのミライとアルファード、ホンダのS660とレジェンドとでは、かなり違うイメージを受けます。欧州車はそうではないブランドが多く、たとえばBMWは多くの車種で共通のデザインとメカニズム、そして走り味を備えています。

以前も書いたように、自動車業界は欧州のクルマ作りをベンチマークとする傾向があります。ブランド戦略についても、すべての車種をひとつの世界で統一していく欧州流が正しいという意見が主流です。ここで思い出してほしいのは、欧州は基本的にキリスト教社会だということです。キリスト教は一神教です。つまり欧州人は唯一神を信じ尊ぶことを当然としており、それを戦略としてブランドの世界に反映させてきたのではないかと思うのです。

一方日本には神道という多神教が根付いています。森羅万象に神が宿る、八百万の神という考え方です。多くの日本車が、ブランドとしての統一感は希薄であり、むしろ各車種ごとに独自の個性を与えているのは、日本人特有のきめ細かいものづくりも関係していますが、八百万の神のもとで暮らしてきたことも大きいのではないかという気がしています。

S660

神道は日本ならではの素晴らしい宗教だと思っています。ゆえに欧州車のブランドとしての統一感を評価しつつ、日本車が車種ごとに独自の個性を与える手法も、この国らしいクルマ作りであり、好意的に受け止めています。モビリティは競争よりも共存が望ましいという個人的な希望に当てはめれば、どちらが正義ということではなく、双方が共存することが理想ではないかと考えています。 

電子書籍を出しました

2011年1月から続けてきたこのブログが電子書籍になりました。新年度ということで新しいことを始めたいと思ったし、メディアに関わる人間として早めに体験しておくべきと考えたのが大きな理由です。このブログは国内外のモビリティやまちづくりにまつわるモノやコトについて触れてきましたが、今回はそのなかから、2020年オリンピック・パラリンピック開催が決まった東京のモビリティに関するものを再編集しまとめ、Amazonで発売しました。

東京モビ表紙

価格は500円。ダウンロードはPCのみになるようですが、そこからスマートフォンなどに転送可能。下の写真は自分のiPhoneで表示したものです。自分自身、電子書籍を買ったのは初めてなので、字の大きさや背景色が選べるなど、紙の書籍とは違う魅力があることを知りました。これまで電子書籍に縁がなかった人にこそ、この新しい世界を体験してほしいと思っています。

iphone

電子書籍の出版と同時に、ブログで公開する記事は過去半年分に限らせていただくことになりました。理由は2つあります。ひとつはこのブログのテーマ別アーカイブ版として電子書籍を位置づけたいと考えていること、もうひとつは今回選択したAmazonのプログラムの規定で、内容の10%以上の公開が禁止されているからです。もちろん今後も本ブログのアーカイブ版としての電子書籍発行を計画しています。ご理解をよろしくお願いいたします。


ウィラーの鉄道参入に注目

2015年度がスタートしました。モビリティの世界でも新体制となった事業者がいくつかあります。そのひとつが京都府と兵庫県を走る京都丹後鉄道(丹鉄)です。

この路線は3月31日までは、第3セクターの北近畿タンゴ鉄道が運行していました。しかし地方鉄道の例に漏れず、経営は芳しくありませんでした。そこで京都府や兵庫県など出資者は、施設保有と車両運行を分ける上下分離方式の導入を決定。後者の公募を行った結果、高速バス事業で有名なウィラーグループが選ばれ、4月から新会社ウィラートレインズのもとで丹鉄の運行が始まったのです。施設の保有はいままでどおり北近畿タンゴ鉄道です。

willer

ウィラーグループはバス事業の規制緩和に合わせて都市間ツアーバスに参入し、インターネット予約システムなどが評判を呼び、業界大手に躍進しました。しかし都市間ツアーバスは価格重視、安全軽視の傾向が問題視され、関越自動車道での大惨事を引き起こした結果、高速乗合バスに一本化されました。こうした経緯からウィラーグループの経営方針に不安を抱く人もいます。

しかし鉄道事業はバス事業に比べて認可のハードルが高いうえに、JR北海道の例を見るまでもなく、経営状況が安全性に影響する傾向にあることを考えれば、経営に余力がある企業の参入はプラスになるという見方もできます。さらにウィラーが得意とするIT技術は、過疎地域でこそ効力を発揮します。またバスや旅行部門のウェブサイトは、多彩なキャンペーンで利用者にアピールしています。こうした柔軟な発想も地方鉄道に必要でしょう。

京都丹後鉄道

モビリティの世界が大きな転換点に差し掛かっていることは、多くの人が認めるところです。ゆえに異業種参入も盛んであり、自動車業界にはテスラに続いてグーグルが名乗りを上げ、アップルも参入するという噂があります。新規組と既存組が互いを刺激しながら、次世代にふさわしいシステムやサービスを生み出していくのが理想だと考えます。とりわけ地方鉄道のように存亡の危機にある業界は、異業種参入による活性化こそ待ち望まれていたものではないでしょうか。

すでに一部の駅名を公共施設や観光地にちなんだ名称に変更するなど、改革は始まっています。1月のプレスリリースでは、レンタサイクルや超小型モビリティの導入を考え、グループの施設を沿線に移転して雇用創出を狙い、教育機関と連携してモビリティやまちづくり分野の人材育成を図るなど、さまざまな構想を発表しています。今後どのような展開になるか、現時点で予想することはできませんが、個人的には異業種参入ならではの斬新な鉄道経営による地方活性化を期待しています。
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