THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2015年05月

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DeNAが仕掛ける「遅れてきたIT革命」

今週28日、IT企業DeNAが自動車事業についての発表会を開催しました。同社は今月12日、自動運転技術開発会社のZMPと、ロボットタクシー(自動運転タクシー)事業の実現に向けた合弁会社設立に合意。今回の発表会はそれを受けてのものでした。内容については自動車専門ウェブメディア、オートックワンで紹介しているので、そちらをご覧いただくとして、ここでは発表会で感じたことを記します。

まず印象に残ったのは、説明に立ったDeNA執行役員の
中島宏氏が、他のIT業界の方が自動車業界を表した言葉として紹介した、「遅れてきたIT革命」です。たしかに音楽も、買い物も、コミュニケーションも、身のまわりの多くのモノやコトにIT革命は起きていて、自動車は最後の砦かもしれません。しかも前述の業界で革命を起こしてきたのは既存の企業ではなくIT企業です。だからDeNAが自動車業界に参入するという説明は納得できるものでした。


DeNA
オートックワンの記事=http://autoc-one.jp/launch/2209415/

その例えとして、中島氏は1960年代のモータリゼーションを引き合いに出していました。当時はクルマだけでなく、レストランやスーパーマーケットなど、周辺産業を含めた発展があって、カーライフ全体が生活を豊かにしてきたという歴史があり、今回も社会構造を伴った成長を予想しているので参入を決断したという説明です。自動車業界を外から眺めてきた人たちらしい視野の広さに感心しました。

次に感じたのは、既存の自動車産業が構築してきたピラミッド型とは対照的に、IT業界では一般的なプラットフォーム型ビジネスを構築しようとしていることです。今回はハードウェアのパートナーとしてZMPと手を結び、ロボットタクシーサービスの導入に際してはアライアンスやフランチャイズ方式も考えると表明していました。実車は5月20〜22日に開催された「人とくるまのテクノロジー展2015」でZMPが展示しており、トヨタ・エスティマをベースとしていました。

ZMP

ロボットタクシーというスタイルを選んだ理由としては、高齢者や身障者などの交通弱者の移動を楽にし、その時間を楽しくしていく「2つの楽」を挙げていました。ソーシャル的な考え方は、このブログで何度も紹介しているグーグルに似ており、自動運転を付加価値として考える自動車会社とは一線を画していました。そこにUber(ウーバー)のITタクシーの考え方を掛け合わせたものと言えそうです。

実現へ向けて障壁になりそうな関係省庁や団体との打ち合わせも、タクシー業界を含めて進めていると答えており、この点では大企業らしく用意周到な準備を進めているという印象を受けました。これまでは老舗大手と中小ベンチャーの二極構造だった自動車産業に挑むIT大手のDeNA。しばらく目が離せません。

福祉車両を通して見るクルマ社会

今週木曜日から土曜日まで、名古屋市のポートメッセなごやで、第18回国際福祉健康産業展「ウェルフェア2015」が開催されました。同様の展示会は東京・大阪などでも異なる名称で開かれていますが、今回はたまたま名古屋出張と重なったので、ウェルフェアで福祉車両や車いすなどを見てきました。その中から福祉車両(自動車)について紹介します。

まず書いておきたいのは、自動車メーカー自らが福祉車両を設計し販売する日本の状況は異例だということです。欧米では専門業者が改造を施す例が一般的です。そして日本の場合、メーカーは助手席や後席、後部空間に乗せる介助式がメインであり、専門業者は逆に自分で運転する運転補助式を主役に据えています。前者が高齢者、後者は身障者の割合が大きいことは言うまでもありません。

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日本の自動車メーカーが介助式の福祉車両をメインに手掛けているのは、箱形のミニバンを多く生産していることと無関係ではないでしょう。今回も、たとえば本田技研工業は新型ステップワゴンの車いす仕様車をこの場でいち早く参考出展するなど、ミニバンの特性を生かした車両を積極的にアピールしていました。どれも簡単な操作で複雑な動きを実現しており、日本らしいきめ細かさ、おもてなし精神が伝わってきました。

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逆に専門業者が運転補助式を多く手掛けるのは、手足が不自由な状況は千差万別であり、量産では対応しきれないことや、自分の好きなクルマに乗りたいというユーザーが多いことが理由とのことです。たしかに身障者であってもひとりの人間であるわけですから、個人の個性や特性は尊重しなければいけません。

ちなみに欧米で福祉車両と言うと、このスタイルを指すことが多くなります。介助式車両が目立たないのは、STS(スペシャル・トランスポート・サービス)など、高齢者や身障者の移動を社会で支えるシステムが確立されているためかもしれません。福祉車両にはその地域の福祉の状況が反映されていると言えそうです。

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もうひとつ、メーカー以外で唯一自動車関連の展示を行っていたニッシン自動車工業のブースで感じたのは、自動車の運転には丸いステアリングと2〜3枚のペダルが必要だろうか?ということでした。ジョイスティック1本で運転できる装置が存在していたからです。これなら片手が動かせれば運転できます。装置を工夫すれば片脚だけでの運転も可能でしょう。

今後、自動運転が実用化されれば、福祉車両はまた新しい局面に差し掛かりそうですが、それまではユニバーサルデザインの考えに基づき、ひとりでも多くの人が移動の喜びを味わえるような発展を希望します。

自転車違反取り締まり厳格化へ

今週、警察庁のウェブサイトに、こんなページがアップされました。「いまさら自転車ルールか」と思った人もいるでしょう。あえて今、このタイミングでこういうページを用意したのは、6月1日に道路交通法が改正され、自転車違反の取り締まりが厳しくなることを前に、周知を図ったものではないかと想像しています。

ピクチャ 1
https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/bicycle/index.htm

それならはっきり記せばいいのに、と思ったことも事実ですが、スクロールしていくと、最後のほうに具体的な画像が掲げてありました。6月1日から大きく変わるのは、危険な運転を繰り返した自転車運転者に講習を受けてもらう制度ができることです。講習は3時間で、5700円掛かります。自動車の交通違反制度に近づくような感じでしょうか。

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個人的にはこういう規制型の解決法は反対ですが、一部の利用者がいつまでたってもルールを守らないのだから仕方ないでしょう。 写真は自宅近くの交差点で今日、5分ほどの間に見かけたシーンです。ここは東京都内では早い時期に自転車レーンが整備されたためもあり、ルールを守る人が多いのですが、それでも違反者はいます。

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上の写真は明らかな信号無視です。スピードを緩めもせず通過していきました。下は右側の歩道から交差点を斜めに横切って左側の自転車レーンに移っていきました。信号無視と斜め横断。どちらも個人的に最近ひんぱんに見る違反です。そしてスポーツ系の自転車でスピードを出しての違反を良く目にします。自分も右側の路地から自転車で出てきて、奥から高速で走ってきた信号無視の自転車と衝突しそうになり、肝を冷やしたことがあります。

明確なルールができたことで、来月以降、自転車の取り締まりは一気に厳しくなるのではないかという気がしています。今回の道路交通法改正がどの程度の効果を上げるのか、注目です。ブログをお読みの皆さんも、いままで以上に安全運転を心掛けてほしいと思っています。

ひたちなか海浜鉄道の基本性能

ゴールデンウィークを利用して、茨城県ひたちなか市を観光してきました。那珂湊のおさかな市場やネモフィラが満開の国営ひたち海浜公園に行ってきました。日帰りで時間がなく、現地は大渋滞という情報を聞いていたので、JR常磐線とひたちなか海浜鉄道を使って往復しました。いろいろな意味で正解でした。

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時間に正確に移動できたことはとにかくありがたかったです。那珂湊駅から市場へは、徒歩では約10分ですが、車列はほとんど動いていませんでした。おそらく1時間は掛かったでしょう。その後向かった海浜公園でも、駐車場への入場で1〜2時間待ちと言われる中、駅からの無料バスは別ルートで公園に入るので5分ほどで着きました。その利便性を知る人も多いようで、車内は予想を上回るにぎわいでした。

海浜鉄道では、公園の入場料付き一日乗車券を販売していて、市場や公園の周遊を1100円でこなせます。この日の行程では500円ほどお得でした。これなら次回も鉄道で行こうという気になります。さらに那珂湊駅にはネコもいます。以前訪れた和歌山電鐵の「たま」を思わせる存在で、「おさむ」と「ミニさむ」がいます。残念ながら会うことはできませんでしたが、宣伝役として各所で活躍していました。

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*来週末の17日(日曜日)には開業7周年記念祭が開催されるそうです。

でも個人的に感心したのはこれらの観光振興策より、鉄道としての基本性能でした。まずは地方鉄道としては乗り心地が良いこと。車両は旧国鉄で使われたタイプと新製車を併用していますが、どちらも揺れが少ないのです。線路を敷いている路盤の管理状況が良いのでしょう。今後、海浜鉄道ではJR東海で使われていたクーラー付きの車両を、旧国鉄型の代わりに導入する予定で、さらなる快適性が期待できそうです。

昨年は新駅も開業しました。那珂湊駅のひとつ手前にある高田の鉄橋駅です。近くに新興住宅地や商業施設があることに配慮したもので、半世紀ぶりの新駅だそうです。さらに現在はバスで連絡している終点の阿字ケ浦駅から公園まで、延伸の計画もあるそうです。実現すればさらに快適に公園に行けるでしょう。

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ローカル私鉄というと乗ること自体がイベントになりがちですが、ひたちなか海浜鉄道は自然に利用できました。一日乗車券や駅ネコで観光客にアピールしつつ、新駅設置や車両更新など、鉄道としての基本性能を着実に高めているからでしょう。自動車から鉄道へのシフトを呼びかけても、受け手となる鉄道が貧弱では話になりません。でもひたちなか海浜鉄道にはその資格があると感じました。

臨海BRTはなぜ虎ノ門発着なのか

今週火曜日、東京都都市整備局が、2020年東京オリンピック・パラリンピック(以下オリパラ)を見据えた都心と臨海副都心を結ぶBRT(以下臨海BRT)の基本計画を公表しました。以前からこの地域では中央区がBRT導入構想を打ち出していましたが、東京都もこの地域の交通需要の増加に迅速かつ柔軟に対処できるのはBRTであると考え、昨年11月に「都心と臨海副都心とを結ぶBRT協議会」を立ち上げ、議論を重ねてきました。その結果、今回の発表に至ったものです。

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*東京都の報道発表=http://www.metro.tokyo.jp/INET/KEIKAKU/2015/04/70p4s200.htm

計画を見て気付いたのは、都心側の起点が銀座や東京駅ではなく、虎ノ門ヒルズになっていることです。需要がより多く見込まれる銀座・東京駅方面のルートは今後検討とのことです。BRTは主として環状2号線(外堀通りを含む)を走る予定で、虎ノ門ヒルズはこの道路上にあります。さらにこの場所には東京メトロ日比谷線の新駅ができる予定です。しかし銀座や東京駅と比べればターミナルとして弱く、東京駅方面の開業が遅れた場合のポテンシャルに不安が残ります。

ちなみに臨海BRT協議会のメンバーには、関連省庁や自治体などとともに、森ビルとUR都市機構も名を連ねています。

また東京都に限らず、日本ではBRTの定義として、連節バス、ICカードシステム、道路改良等により、路面電車/LRTと比較して遜色のない輸送力と機能を有し、かつ柔軟性を兼ね備えたバスによる都市交通システムと、複合的な要素で定義することが多いのですが、BRTのRはラピッドであり、なによりも正確性が重要です。そのためにはバス専用/優先レーンを用意することが不可欠です。

臨海BRTには燃料電池バスの運行が予定されています。日本の先進技術を披露するためには好ましい選択です。しかし我が国は同時に、鉄道の正確さでも有名です。多くの外国人がBRTにも同様のサービスを求めるのではないでしょうか。

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日本は欧米に比べると、バス専用/優先レーンの設置に及び腰ですが、写真の名古屋市のようにしっかり機能している例もあり、不可能ではありません。今回の発表では、専用/優先レーンの設定や公共車両優先システムの導入を検討とあるだけで、具体的な計画はありませんが、環状2号線の新設区間であれば導入は可能でしょう。技術面だけでなく運行面でも、世界に自慢できるBRTを目指してほしいものです。
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