THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2015年11月

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食堂車は過去の遺物なのか

先週末、名古屋市のポートメッセなごやで開催された名古屋モーターショー・あいちITSワールドでの仕事の帰りに、あおなみ線金城ふ頭駅を挟んで反対側にあるリニア・鉄道館に行きました。大正時代の機関車から最新の超伝導リニア試作車まで、幅広い時代を網羅した展示の中で、個人的にもっとも印象に残った車両のひとつがこれでした。

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さいたま市にある鉄道博物館にはなかった食堂車が、新幹線0系と100系の2両、展示されていました。車内に入ることはできませんでしたが、窓越しにテーブルや椅子、当時のメニューなどを眺めることができました。どちらも利用した経験があったので、最初は懐かしい気持ちになりましたが、しばらくして、食堂車を懐かしい存在と断定して良いのだろうかと思うようになりました。

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新幹線や特急列車から食堂車が次々に消え、日本国内で現在食堂車を連結しているのは、「ななつ星in九州」などの観光列車がメインになっています。たしかにファミリーレストランや居酒屋チェーン店が飽きられている現状を考えると、昔のままのスタイルの食堂車は受けないでしょう。しかし観光列車で豪華料理を供するだけしか生きる道がないとも思えません。

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たとえば来年3月に開業する北海道新幹線は、東京〜新函館北斗間に約4時間を要します。このあと札幌まで延伸する予定ですが、いずれにせよ速さでは飛行機にかないません。同じシートに4〜5時間座り続けるのは苦痛だという人も多いでしょう。鉄道はシートベルトを装着せずに乗れる高速移動体です。通常の座席とは違う気分転換の場を用意することが可能だし、移動の質を高める上で重要だと考えます。

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写真で紹介した従来のスタイルではなく、一部の私鉄で用意しているビュッフェやカフェテリア、高速道路のサービスエリアで人気のフードコートなどの雰囲気なら、気軽に利用できそうです。そこで沿線ならではの食べ物や飲み物を提供するスタイルであれば、受け入れられるのではないでしょうか。それを食堂車と呼べるかどうかは分かりませんが、今の食環境に沿った改革を行えば、再生は可能だと思っています。

i-ROAD日本でも2人乗り可能に

トヨタ自動車の超小型モビリティ、i-ROADを使った「OPEN ROAD PROJECT」については、私が第2期試乗パイロットに選ばれたことを、このブログで書きました。約1ヶ月のパイロット期間は無事に終わり、先月には事後報告会も開かれました。その席で私は「ヨーロッパのように2人乗りでないと買いたいとは思わない」と発言したのですが、回答がここまで早く返ってくるとは思いませんでした。

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トヨタは昨日、今日からスタートする第4期OPEN ROAD PROJECTから、従来からある1人乗り仕様に、新たに2人乗り仕様を加え、東京都渋谷区の住民や区職員の方に乗ってもらうそうです。1人乗りがミニカー(原付3輪)登録だったのに対し、2人乗り仕様は国土交通省が創設した「超小型モビリティ認定制度」に則った実証実験での運用となります。

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トヨタのニュースリリース=http://newsroom.toyota.co.jp/jp/detail/mail/10306607

写真のピンクの車両が2人乗り仕様、グリーンの車両が私がパイロット試乗していた1人乗り仕様です。外観は超小型モビリティ認定制度に合致した車両であることを示す逆三角形の識別マークが貼られるほか、ウインカーや反射板も異なっていることに気づきます。リアのナンバープレートは、原付よりひとまわり大きな軽自動車用になっていることが分かります。それ以外に、車両接近通報装置も追加されているそうです。

車内には、もともと2人分のシートは用意されており、私がパイロットで乗った車両ではネットを張ることで荷物置き場にしてありました。後席に乗った人は、足を開いて前席両脇に置く姿勢になりますが、高速道路を走れず、満充電での航続距離に限りがあるi-ROADの性能を考えれば、これで良いと考えます。またトヨタが用意した広報写真では、ジュニアシートの装着が可能であることも分かります。

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OPEN ROAD PROJECTは、回を追うことに着実なバージョンアップを実施しています。私が担当した第2期のときも、第1期ではなかった専用アプリが用意されていました。今回の2人乗り仕様追加も、その一環と言えるでしょう。下の写真の虎ノ門ヒルズのような、充電施設付き専用駐車スポットも増えているのではないでしょうか。トヨタがこのプロジェクトに本気で取り組んでいることが分かります。OPEN ROAD PROJECTは第8期まで続く予定です。今後どのように育っていくのか楽しみです。

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OPEN ROAD PROJECTのオフィシャルサイト=http://openroad-project.com/ 

トヨタはIOC(国際オリンピック委員会)との間で、2024年まで最高レベルのスポンサー契約を結びました。同社は主な対象として、乗用車、商用車、ITS、テレマティクスサービスとともに、小型モビリティを掲げています。2020年の東京でi-ROADを走らせる構想を抱いているのは確実でしょう。その目標へ向け、残り5年間をどう歩んでいくか。日本でもっとも多くi-ROADに接してきたジャーナリストのひとりとして、これからもこの魅力的な超小型モビリティの動向をお伝えしていくつもりです。

鉄道技術展で見た台車改革

2年に一度、幕張メッセで開催される鉄道技術展に行ってきました。今回で第4回となるこの展示会、展示スペースは第3回に比べて約1.5倍、出展会社・団体数は328から450になり、3日間の受付登録者数は19,221名から28,507名へと大幅に増えたそうです。私は前回に続いて足を運んだのですが、たしかに来場者の多さは驚くレベルで、鉄道技術に関心を寄せる人が増えていることを裏付けていました。

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展示物の中でもっとも目立っていたのはやはり実車です。今回も、三菱重工業のAGT(新交通システム)で「ニューシャトル」用新型車両2020系や、JR山手線用新型車両E235系などに使われる総合車両製作所の次世代ステンレス車両「sustina」に、多くの人が集まっていました。しかしここでは縁の下の力持ち的存在である台車の技術について触れたいと思います。

まずは日立オートモティブシステムズの台車に装着するダンパーです。日立は英国高速鉄道用車両など、鉄道に深く関わっていますが、同社は社名で分かるように自動車用部品が本業です。トキコの名称で知られるダンパー作りの経験を鉄道車両に投入したのです。同社が手掛けたダンパーは、クルーズトレイン「ななつ星in九州」に採用されています。線路状態があまり良くないローカル線でも、超豪華列車にふさわしい乗り心地を届けるべく、鉄道総合技術研究所と共同開発したものです。

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同社以外ではKYB(旧カヤバ工業)が、初代新幹線車両0系に使われたダンパーと最新のフルアクティブサスペンションを展示。鉄道の分野でも豊富な経験を持つことをアピールしていました。今回はこれ以外にも、曙ブレーキやボッシュなど、自動車業界で有名な企業の出展が目立ちました。最近の鉄道業界は、デザイナーや建築家がデザインを担当したり、自動車用シートメーカーが新幹線の座席を開発したり、良い意味でオープンな業界になっており、今後も異業種参入は増えそうです。

東京メトロは銀座線新型車両1000系に使われている、新日鐵住金と共同開発した操舵台車を、模型を使うことで前回より分かりやすい形で出展していました。操舵台車とは、台車内の片方(車両に装着した際の内側)の車輪が左右に首を振る設計としたもので、第2次世界大戦前に開業したこともあり、急カーブの多い銀座線をスムーズに走行するために開発されたものです。

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これらの技術が誕生した背景として、近年の鉄道が今まで以上に快適性を求められていることがあると考えます。鉄のレールの上を鉄輪で走る鉄道は、アスファルトの上をゴムタイヤで走る自動車より、乗り心地では有利です。しかし他の交通との競争にさらされ、利用者減少に悩む路線も多い中で、「移動の質」に注目するようになり、その一環として快適性向上を目指すようになったのではないかと思っています。

最初の写真で紹介した三菱重工業が開発し、昨年営業運転を始めた「ゆりかもめ」用新型車両7300系も、車体だけでなく台車の刷新も行っており、衝撃緩衝機構を採用するなどして乗り心地の向上を図っています。我々が鉄道を利用する際、台車は床やホームの下にあるのであまり注目されませんが、異業種のノウハウも活用して改革を進めていることは覚えておいて良いでしょう。

ヒューマンモードに託した想い

以前もこのブログで紹介したように、私が所属している日本デザイン機構で昨年から始めた新しい活動Design DOOの第2弾として、「ヒューマンモードを考える」というテーマのアクティビティを、9月から11月にかけて3回開催しました。こちらの予想を上回る方々に参加していただきました。ありがとうございました。

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*第1回「メーカーとともに体験&議論」より

一軒家の居酒屋や職人が作った道具など、最近さまざまな分野で、人間に近いモノやコトが再評価されています。モビリティの分野でも同じような流れが生まれています。具体的には歩行者と自動車の間にある乗り物のことで、車いす、ベビーカー、自転車に、パーソナルモビリティや超小型モビリティなどの新種が加わっています。これらがヒューマンモードです。

ところがこれだけ状況が変化しているのに、今の日本では歩道あるいは車道という既存のルールに無理に当てはめようとしています。その結果、パーソナルモビリティは実証実験でなければ道路を走れないなど、さまざまな部分で無理が生じています。この課題について多くの人に認識してもらおうと思い、「ヒューマンモードを考える」を企画しました。

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*第2回「街を舞台に動かし方を考える」より

私たちが心掛けたのは、体験と議論を結び付けることでした。パーソナルモビリティや超小型モビリティの試乗の場はいくつか用意されていますが、体験後に専門家とじっくり意見を交わす機会は限られています。逆にこれらのモビリティの展開について議論する場は数多く用意されているものの、多くの場合そこには体験の場は併設されていません。

私はモータージャーナリストとしての経験から、 体験と議論を結び付けることが重要だと考え、各方面の協力を得て、これを実践することにこだわりました。さらに第1回はモビリティ開発者、第2回はまちづくりNPO、第3回はコーディネーター&プロモーターと、異なる立場にあるゲストをお迎えし、舞台も変えることで、さまざまな角度からヒューマンモードを考えられる舞台作りに努めました。

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*第3回「モーターショーでワークショップ」より
*Design DOO Facebookページ=https://www.facebook.com/Design.DOO.JD/

とはいえ力足らずだった部分は数多くあったとも認識しています。さらに今回は体験と議論によって参加者に気付き、考えてもらうことが主眼だったので、そこから先の展開については踏み込んでいなかったのも事実です。これら積み残した部分については、来年以降、関係各方面と議論を重ね、続編を実現できるよう動いていくつもりです。情報についてはDesign DOOのFacebookページで随時告知していきます。

最後になりましたが、今回のアクティビティでは、会場となったメガウェブ ライドスタジオ、首都圏イノベーションセンターMICAN、東京モーターショーSMART MOBILITY CITY / TOKYO FMブースや、モビリティおよびプレゼンテーションを準備していただいたトヨタ自動車、NPOまちづくり大井、クラモト、グラディエ、日産自動車、本田技研工業、WHILL、ナインボット各社にお世話になりました。皆様のご協力がなければ実現は不可能でした。この場を借りてお礼申し上げます。
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