THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2016年02月

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マンションをステーションに

三菱地所グループに属し、「ザ・パークハウス」などのブランドでマンションを提供している三菱地所レジデンスから、取材を受ける機会がありました。先日その内容が、オフィシャルサイト内の「ザ・パークハウス調査ノート」というコーナーで紹介されました。テーマは、所有から利用に動きはじめたモビリティの最新事情で、私が長年見続けてきたパリの状況を紹介しながら、現在の状況や今後への希望など話しました。下にURLを掲載しましたので、お時間がある方はご覧ください。

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2015年度グッドデザイン・ベスト100を受賞した「ザ・パークハウス グラン 千鳥ヶ淵」

モビリティにおける所有から利用へというフレーズでお分かりかと思いますが、話題の中心はカーシェアリングやサイクルシェアリングについてです。加えて公共交通を活用した、自動車中心から人間中心のまちづくりへの転換にも触れました。三菱地所グループはまちづくりにも関わる総合デベロッパーであり、シェアモビリティについても以前からマンションに導入してきた実績があるので、このようなテーマを選んだと思われますが、不動産を扱う会社が動くモノやコトにスポットを当ててくれたことには、とても好感を抱きました。

その中で、マンション開発を手掛ける会社のサイトということで、いくつか提案をさせていただきました。ひとつは地域内に複数の同グループのマンションが存在するのであれば、ネットワークを構築し、ワンウェイ型のシェアモビリティを導入してはどうかということ。そこに住むことの付加価値が向上するのは確実です。もうひとつは、とくに自転車など小型軽量の乗り物については、一定の料金を設定したうえで近隣住民も利用できるようにしてはどうかということです。

park house
記事のURL=http://www.mecsumai.com/brand/lifestyle/note/1602-2/ 

一戸建てに比べて敷地に余裕があり、多くの居住者がいるマンションには、シェアリングのステーション(拠点)としての可能性があると考えています。他のマンションや近隣住民とのシェアが実現できるなら、そこに新たなコミュニティが生まれるでしょう。マンションというとそれ自体をプライベートな場と捉えがちですが、住民のプライオリティを確保したうえで、一部をパブリックな場にできれば、まちづくりという視点でもプラスになるはずです。

北海道の鉄道をどうすべきか

今年1月、JR北海道が、昨年度の路線別営業成績を公表しました。札幌近郊区間を含め、全線区が赤字という衝撃的な結果でした。今月、北海道で仕事があったので、いくつかの路線を利用してみました。そこで見たのは、苦しい経営状況の中、自然の厳しさに対峙して移動を提供しようとしている必死な姿でした。

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新千歳空港で飛行機を降りた私は、まず千歳線で札幌に向かいました。ところが発車後間もなくトンネル内で停止。隣りの駅で、列車に付着した氷が落下してポイントに挟まったとのことでした。40分ほど停車したあと、札幌に向かいましたが、当初の予定では札幌から特急になって旭川へ向かう予定が、札幌で運転を打ち切ってしまいました。

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札幌から40kmほど離れた岩見沢付近が集中豪雪に見舞われ、列車に遅れが出ているためでした。札幌駅のホームは、遅れた列車を待つ人たちでごった返していました。 千歳や札幌は晴れていたので、俄かには信じられませんでしたが、 その後札沼線(学園都市線)に乗って北へ向かうと、状況が把握できました。

札沼線は、 途中の北海道医療大学駅までは6両編成の電車が走り、一部は複線となっているなど、東京や大阪の通勤路線を思わせます。ところがそれ以北は一転して、ディーゼルカーが1両で終点の新十津川までを結びます。100円の利益を出すために必要な経費を示した営業係数は、北海道医療大学駅以南を含めた札幌圏が107円なのに対し、同駅〜新十津川駅間は2162円に跳ね上がります。
 
この日は北海道医療大学駅に近づく頃から天気が急変し、雪になりました。岩見沢と同じ集中豪雪の地域に入ったようです。レールは見えず、列車は雪を踏みしめながら進みます。日中ということもあり、乗客は数人でした。途中の石狩月形駅で降り、逆方向の列車で引き返しました。こちらは学校帰りの生徒が大勢乗ってきました。運転免許のない彼らにとっては、雪の日の唯一の移動手段であることが理解できました。

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北海道の人口密度は約65人/㎢で、言うまでもなく全都道府県中最低です。しかも全人口の35%以上が札幌市に住むという、日本における東京以上の一極集中となっています。札幌圏外の鉄道経営が厳しいことは、この数字からも容易に想像できます。さらに札幌市内には地下鉄や路面電車が走っており、近距離輸送のかなりの部分を担当しています。よって200万人近い住民を抱えながら、この圏内のJRが赤字となるのでしょう。

経営が苦しくなれば、当然ながら人員削減を含めたコストカットを目指すことになります。しかし北海道は今回のように、冬になれば大雪への対策で膨大な人員や費用が必要とされます。コストダウンを進める中で、積雪対策を含めた安全対策ができるのか。この状況が近年の事故の頻発に関係しているのではないかと想像しています。

東京に住む人の中には、そこまで赤字で運行に苦労するなら廃止すべしという意見を持っているかもしれません。しかし鉄道などの公共交通は、すべての人に移動の機会を与える重要なインフラです。人間にとって移動とは本能であり、フランスなどでは人間の基本的な権利として認められています。安易な廃止はすべきでないと考えます。また現在残っているJR北海道の路線の多くは貨物輸送も担っており、隣国に近いことから非常時には防衛にも寄与することが考えられます。

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30年近く前の国鉄分割民営化の手法は、はたして正しかったのかという疑問を抱きます。リニア中央新幹線を建設できるほどの力を持つJR東海と、日々の運行に苦労しているJR北海道の差はあまりに大きいと感じるからです。高速道路を管理していた日本道路公団の民営化のほうが、三大都市圏をベースにした分割としており、まだ理解できます。

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日本同様、人口減少に悩む国が多いヨーロッパの鉄道は、国営・民営にかかわらず一国一事業者が一般的です。JR北海道など現行の会社を残したままで解決を目指すなら、上下分離方式を導入し、保線などの整備を切り離し、各社からの使用料や国の補助をベースに全国一括で面倒を見る手法があるのではないでしょうか。

同じ道内の移動を賄う飛行機は、一部キャリアが拠点を札幌の丘珠から新千歳に移行しています。道外や国外からの観光客も念頭に置いたネットワークを構築しているのでしょう。この転換は参考になりそうです。またJR九州のように、速さ以外の魅力を持つ列車を走らせても良いかもしれません。残された時間はそう長くないと認識しています。

環状線の役割

東京の首都高速道路の料金が、今年4月から変わります。これまでは首都高速単独で料金を決めていたのに対し、4月からは周囲の高速道路と連携した料金体系になる予定です。それを前に、先週から広報活動が始まりました。料金所にもこのような案内が出るようになりました。

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日本の高速道路の料金が高いことは知られていますが、今回は現状に即して話を進めます。もともと首都高速は東京、神奈川、埼玉の地区別料金が基本でしたが、5年前に距離別料金に移行しました。しかしその後、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の開通区間が増えると、首都高速が安く、圏央道が高いことが問題になりました。

環状線には2種類あります。都心型と外周型です。都心型は首都高速都心環状線や阪神高速1号環状線、外周型は圏央道や近畿自動車道などです。似たような状況は鉄道にもあって、東京ではJR東日本山手線と武蔵野線、大阪ではJR西日本大阪環状線と城東貨物線(おおさか東線)が相当します。

山手線

両者は役割も違います。都心型は回遊、外周型は回避が目的です。鉄道の外周型環状線が、もともと物流のために整備されたことで分かるように、 外周型は都心をまたぐ物流を迂回させることで、都心の交通集中を防ぎ、都市環境悪化を食い止めることが主目的になっています。

しかし圏央道と東名高速道路/東北自動車道が接続されると、首都高速を通ったほうが割安となってしまいました。本音を言えば、物流業者も都市環境を考え、都心を避ける移動を心掛けてほしいところですが、残念ながら彼らの一部は安さを求め、都心経由を選びました。今回はそれを是正するため、郊外から郊外への移動では、どこを通っても同一料金とするか、場合によっては圏央道を使ったほうが安くするというものです。

新料金ルート
新料金表

個人的には以前このブログでも紹介した、欧州の公共交通が導入している「ゾーン制」を、東京の高速道路に導入してはどうかと考えています。都心環状線内をゾーン1、中央環状線内をゾーン2…と分ければ、都心を抜けて郊外から郊外へ抜ける車両は割高になるし、距離で示すより利用者に分かりやすいはずです。ともあれ4月からの料金改定で、東京の高速道路の流れがどう変わるか注目です。

桜島と共存するまちづくり

鹿児島市の桜島で今週、大規模な噴火があり、噴火警戒レベルが2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げられました。しかし桜島港と鹿児島港を結ぶフェリーは通常どおり運行され、鹿児島市民も冷静に受け止めています。箱根山がレベル3になった時との違いに驚かされました。長い間、噴火と降灰に悩まされてきた経験が生かされているのでしょう。その経験はまちづくりやモビリティにも反映されていることが、噴火の直前に鹿児島を訪れた際に理解できました。

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鹿児島市の中心は九州新幹線が乗り入れる鹿児島中央駅周辺ではなく、そこから1kmほど北東にある天文館という場所です。天文館を訪れると、アーケードの多さが目に付きます。このアーケード、夏の暑さと桜島の灰をよけるためだそうです。また私が訪れたのは平日の昼間でしたが、他の県庁所在地の繁華街と比べて活気があるという印象でした。商店街が積極的な振興策を打ち出していることもありますが、ひんぱんに運行される市電や市営・民間路線バスで市内各所からアクセスしやすいことも、にぎわいを失わない理由だと思いました。

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その市電は、芝生軌道(軌道敷緑化)に積極的に取り組んでいます。欧州の路面電車で良く見られる手法で、線路の周辺に芝生を植えることで、ヒートアイランド現象防止、沿線の騒音低減、都市景観向上などの効果を得るものです。特に鹿児島市は、降灰時には一面グレーがかった景色になるので、道路に緑の帯があることは、他の都市以上に効果がありそうです。架線柱を中央に設置したことも、景観面で効果を上げていました。なお芝生軌道の維持管理のため、芝刈電車も用意されていますが、この車両は散水も同時に行うことで、灰の掃除も行っているようです。

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道路においては、清掃車や散水車をひんぱんに走らせるとともに、ドライバーは早めのヘッドランプ点灯を心掛け、スリップしやすいので速度を落としての運転を心掛けるそうです。ワイパーはガラスを傷つけるので厳禁であり、水で流すのが基本とのことです。もちろん大規模な噴火が起きれば避難が必要になるはずですが、的確な対策を行ったうえで冷静に生活を営む鹿児島市の人々に、学ぶべき部分は多々あるような気がしました。
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