THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2016年03月

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「第3の自動運転車」は社会貢献を目指す

2週間前のブログでは南仏ニースのLRTを紹介しましたが、この地を訪れた目的は他にもありました。本ブログで何度か紹介している、EU(欧州共同体)がサポートする自動運転プロジェクト「シティモビル2」の実証実験の取材で、欧州のシリコンバレーと言われるニース近郊のソフィア・アンティポリスに足を運んだのです。

概要については「日経テクノロジーオンライン」に記事を書いていますので、そちらを参照していただきたいのですが、関係者の話によれば、実証実験に使われる車両イージーマイル「EZ10」が、今年中に日本上陸を果たす予定です。そこで現地でシティモビル2およびイージーマイルの関係者に聞いた話をもとに、日本のモビリティシーンにおけるEZ10の役割について考えました。

実証実験風景
日経テクノロジーオンラインの記事(要登録)=http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/032501257/

記事ではシティモビル2、イージーマイルおよびEZ10について、「第3の自動運転車」という表現を使いました。現状の自動運転業界は、IT企業グーグルと既存の自動車メーカーの対決という構図ですが、シティモビル2やEZ10はどちらにも属しません。グーグルや自動車メーカーのように特定の企業が主導する形態ではなく、複数の団体がコンソーシアムを組んでプロジェクトを進めていることや、パーソナルユースではなく公共交通的な用途を目指していることが理由です。

イージーマイルという社名には、ラスト1マイルを快適に移動できるようにという想いが込められており、既存の公共交通との連携を前提としていることが分かります。さらにEZ10は、箱型の12人乗りという構造で分かるように、バスやタクシー的な使い方を想定しています。ソフィア・アンティポリスの実証実験では、約1kmのルートに5か所の停留所を設けています。ソフィア・アンティポリスを走るEZ10はもちろん、停留所の近くで車線変更を行った後、指定位置に停車し、客扱いを行っています。

停留所
イージーマイルのウェブサイト=http://easymile.com/

自動運転を欲する理由はさまざまです。その中で、我が国において重視すべきことだと考えるのが、過疎地で暮らす高齢者の移動です。自動車メーカーが研究開発を続けている自動運転車は、高速道路での運転支援から発展したものですが、こうした移動は鉄道などで転換することが可能です。しかし過疎地では鉄道やバスが廃止された地域も多く、自転車は体力的に乗るのが困難であり、移動手段そのものがないという人がいます。

現在、世界各地で実験が進められている自動運転車の中で、こうした問題の解決にもっとも有効な1台が、今回取材したEZ10ではないかと思っています。関係者の言葉からも、社会貢献という意志が明確に感じられました。そして最初に書いたように、イージーマイルは日本の某企業と交渉を進めており、EZ10は今年中に我が国に上陸する予定です。現在の自動車が目的に応じて細分化されているように、自動運転車も目的に応じた使い分けが望まれます。1日も早い導入を期待しています。

カーメーカーまで参入したライドシェアをどう考えるか

今週15日、米国の自動車会社GM(ゼネラルモーターズ)が、スマートフォンを利用した配車サービスを提供しているライドシェア企業リフト(Lyft)のプラットフォームに対して、レンタカーサービス・プログラムの「エクスプレス・ドライブ・プログラム」を導入すると発表しました。今月末にまずシカゴでスタートし、その後ボストン、ワシントンDC、ボルティモアなどで展開していくそうです。カーシェアリングに自動車会社が関わった例はありますが、ライドシェアでは初めてではないかと記憶しています。

lyftxgm

米国では、ライドシェアのサービスを提供したいけれど車両がないという人もいるそうで、シカゴではリフトのプラットフォーム上でドライバーを募った際、条件を満たす車両を所有していないドライバーが6万人いたとGMは報告しています。今回のプログラムはこうした人々に対して、一定料金で車両をレンタルするというものです。GMの車載情報ネットワークシステム、オンスター(OnStar)を装備するクロスオーバーモデルの「エクイノックス」が提供され、プログラムには保険とメンテナンスが含まれているそうです。

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GMとリフトは今年1月に資本提携の発表を行っています。GMがリフトに5億ドルを投資し、リフトの取締役会のメンバーになるというものです。目的は単なるライドシェアだけではありません。両社の最終目標は、自動運転ライドシェアの実現なのです。すでに米国ではライドシェアの先駆者ウーバー(Uber)とテスラが自動運転ライドシェアを目指して提携を結ぶと噂されており、グーグルは単独で自身の自動運転車を用いたライドシェアに進出すると言われているなど、流れができつつあります。

多くの自動車会社は自動運転車を、従来と同じように販売しようとしていますが、自動運転車は運転の楽しみが得られなくなることから、所有への興味が薄れ、カーシェアやライドシェアなどで使用するほうが良いと考える人が増える可能性があります。GMはそれを見越してシェアサービスへの車両供給という道筋を切り拓こうとしているのかもしれません。米国らしい開拓者精神を感じます。

ExpressDrive2

一方日本では、 DeNAとZMPの合弁会社であるロボットタクシーが、2月29日から3月11日まで、神奈川県藤沢市で自動運転タクシーの実証実験を行いました。一方3月8日には、東京でタクシー運転手たちが集まり、ライドシェアへの反対集会が行われました。政府は「国家戦略特区」の新たな規制緩和策として、過疎地域などで、住民が自家用車を使って観光客を有料で送迎するサービスを認める方針です。京都府京丹後市ではウーバーのシステムを用いたライドシェアで、過疎地域の交通を賄う計画を立てています。

robottaxi

私も大都市と過疎地域で、ライドシェアの判断を分けるべきだと考えます。現時点でタクシーが過剰と言われる大都市でライドシェアを認可すれば、交通渋滞や事故が増えるだけでなく、運転手の生活が脅かされる恐れもあります。総量規制が必要でしょう。またバスやトラックなどで過労運転による事故が頻発しているおり、営業時間を制限する装置も必須だと考えています。しかし過疎地域では、日々の移動にさえ苦労している人が多いわけですから、観光客だけでなく、住民のためにも、ライドシェア導入による利便性向上を期待したいところです。

ただし将来的に自動運転が普及すると、現状の問題の多くは解決する可能性があります。運転手がいなければ、タクシーとライドシェアはほぼ同じ存在になるからです。運転手のいるライドシェアが議論されている現在の状況は、過渡期と見るべきなのかもしれません。個人的には、自動運転は所有より使用のほうがふさわしいと考えています。日本のように運転手不足に悩む国も多いわけで、トラックやバス、タクシーなどから導入を進めたほうが良いと思います。その点で今回のGMの動きは歓迎するところです。

都市交通は景観の一部、というニースの考え方

先週は1週間ヨーロッパに滞在していました。そこで体験したモビリティの中から、まずニースのLRT(路面電車)について取り上げます。ニースのLRTは2007年に開業。ニースには地下鉄がないので、このLRTとバス、サイクルシェアリング、カーシェアリングなどが都市交通を担っています。

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写真を見て「あれっ?」と思った人がいるかもしれません。多くのLRT用車両は架線から電気を取って走る電車ですが、写真の線路の上には架線がありません。実はニースのLRT、屋根の上にハイブリッドカーなどに使われているニッケル水素電池を積み、走りながら充電を行っていて、架線がない区間ではその電力を使って走っているのです。ゆえに乗車感覚は通常のLRTと変わりません。他のフランスの都市では、地中から電気を取って走るLRT車両もあります。

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ではなぜ架線がない区間があるのか。それは景観のためです。ニースのLRTで架線がないのは、海岸に近いマッセナ広場(最初の写真)と、旧市街近くのガルバルディ広場(2番目の写真)の2ヶ所です。地名でお分かりのように、いずれも広場です。

都市交通は都市の景観の一部です。そこを走る公共交通は、公共物の一部であるわけですから、建造物と同じように、景観に溶け込む造形や色彩であることが理想です。とくに広場は、文字どおり広い場所であるべきです。便利さを考えればLRTは歓迎すべきですが、景観を考えれば架線はないほうが良い。その結果、架線のないLRTという結果に行き着いたのでしょう。景観を大切にするフランスらしい考え方です。

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ニースのLRTは、架線が張っている場所でも、このように可能な限りワイヤーを使用することで、景観を害さないよう配慮をしています。車両も石造りの建物に溶け込むようなカラーになっています。街が美しいかそうでないかで、訪れる人の印象は大きく違ってきます。世界的な観光地にふさわしいデザインをまとったニースのLRT。日本の各都市にもこうした考え方が根付いていくことを期待しています。

ムーバス20周年を機に地域交通を考える

「ムーバス」というバスをご存知でしょうか。東京都武蔵野市が1995年から走らせている公共交通で、コミュニティバスのパイオニアです。運賃100円、住宅地まで乗り入れる路線、そのための小型車両という、コミュニティバスを定義付けている項目は、ムーバスが確立したものです。名称も、武蔵野市のバスという意味だけでなく、move us=私たちと移動するという、深い意味を込めています。

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ムーバスのウェブサイト http://www.city.musashino.lg.jp/norimono_chuurin_chuusha/mu_bus/index.html
 
ムーバス誕生のきっかけは、市内に住む高齢の女性の方からの手紙でした。「吉祥寺駅に行きたいのだが、路線バスがあってもバス停までが遠く、足が悪いので行けない」という切実な声でした。武蔵野市が調べてみると、路線バスは幹線道路中心の運行であり、住宅地内には公共交通の不便な地域があることが分かりました。当時、行政主導のバスを走らせるには、いくつもの壁がありましたが、市民の生活を守るという強い意識で取り組み、実現にこぎつけたそうです。

それから20年。いまやコミュニティバスは全国各地を走り回っていますが、この20年間で日本は高齢化や東京への一極集中が進んだこともあり、多くのコミュニティバスが課題を抱えています。7路線9ルート、年間約260万人の方に利用されているムーバスも例外ではありません。それは地域交通そのものの問題と置き換えても異論はないでしょう。

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ムーバス路線図(ムーバス事業概要2015より)
http://www.city.musashino.lg.jp/dbps_data/_material_/_files/000/000/022/230/jigyougaiyou3.pdf

いまこそ地域交通のあり方を考え直す時期ではないか。私が所属している日本福祉のまちづくり学会では、以前からこうしたテーマのもとで活動を続けてきました。そこでムーバス20周年を契機に、地域交通のあり方を考えるフォーラムを、武蔵野市で開催することにしました。

日時は3月24日(木曜日)の18時30分から21時00分まで(18時10分開場)。会場はJR中央線武蔵境駅北口にある武蔵野スイングホールです。参加費は無料。参加をご希望の方は、会場準備の都合上、下のメールアドレスへ、事前申し込みをお願いいたします。

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申し込み先メールアドレス e127@ipc.fukushima-u.ac.jp

日本の地域交通は多くが深刻な状況に置かれています。ムーバス20周年を機に、みなさんと一緒にこの問題を考え、 解決法を探っていければと思っております。よろしくお願いいたします。
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