THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2016年05月

講演・調査・執筆などのご依頼はこちらからお願いいたします→info@mobilicity.co.jp

高速道路の制限速度引き上げに賛成の理由

今年3月、警察庁が従来100km/hだった日本の高速道路の制限速度を120km/hに引き上げるというニュースが報じられ、賛否両論が巻き起こっています。私は先月、価格.comマガジンでこのテーマについてコラムを書きましたが、テレビ朝日系列で毎週日曜日に放送されている「ビートたけしのTVタックル」でも29日の放送で取り上げることとなり、ゲストとして出演することになったので、あらためて自分の考えを記すことにしました。

新東名高速b
価格.comマガジンのコラム=https://mag.kakaku.com/car/?id=4032

私は120km/hへの引き上げに賛成します。理由は、自分を含めて現在の自動車とドライバーの能力を考えると、120〜130km/hでの走行に問題はなく、現に欧米の多くの国の制限速度がこのあたりに集中しているからです。その中にはオランダやデンマークのように、21世紀になってから引き上げを行った国もあります。しかも警察庁の資料によれば、デンマークでは110km/hから130km/hへの引き上げで、むしろ事故が減ったそうです。

なぜ事故が減ったのか。デンマークの場合、以前から多くのクルマが130km/hで走っていた、つまり実勢速度でした。一方で制限速度を遵守する車両もいます。制限速度を実勢速度に合わせることで、2つの流れがひとつになって追い越しが少なくなり、事故が減ったと想像できます。また大型トラックの制限速度は多くの国で100km/h未満となっています。乗用車との速度差が大きくなればトラックの追い越しも減り、事故防止に貢献するのではないかと想像しています。

大型トラックb

日本でも一般道路については、警察庁が2009年に新たな速度規制基準を発表し、これまで40〜60km/hだった制限速度を、生活道路は30km/h(ゾーン30)に引き下げる一方、自動車の通行機能を重視した構造の道路では70〜80km/hに引き上げました。しかしその後、事故は増えていません。警察庁ではこの結果も踏まえ、高速道路の制限速度引き上げに踏み切ったのではないかと思っています。
 
ただしドイツの高速道路アウトバーンの一部で実施している速度無制限には賛同できません。昔は他国でも速度制限がなかったそうですが、事故の増加や環境問題の深刻化、航空機や高速鉄道の発達を考え、速度制限を導入しました。ドイツでも環境問題を重視する人々は速度制限の導入を訴えていますが、自動車業界は高速性能をアピールできるというメリットを重視して反対を続けています。いずれにせよアウトバーンはガラパゴスだと考えるべきでしょう。

 アウトバーン80キロb

注意してほしいのは、すべての自動車がいつどこでも120km/hを維持する必要はないことです。写真のように、アウトバーンでもカーブが続く道では100km/h以下の制限速度を掲げています。筆者が海外の高速道路で走る機会が多いフランスのオートルートでは、晴天時は130km/h、雨天時は110km/hという表示を見掛けます。
 
そもそも自動車は、そのときの状況に合わせてドライバーが速度を調節して運転するものです。日本のドライバーはこの意識が希薄だと思っています。だから登校時の子供の列にクルマが突っ込んで死傷者を出すなど、歩行者や自転車利用者が亡くなる交通事故が多いのでしょう。120km/hへの制限速度引き上げを機に、すべてのドライバーが自分の運転技能を引き上げていく状況に切り替わってほしいと願っています。

待ったなしの超小型モビリティ

昨日、東京・原宿で、rimOnO(リモノ)という名前の超小型モビリティの発表会がありました。経済産業省出身の伊藤慎介氏と、トヨタ自動車出身の根津孝太氏が2014年に設立した会社で、ネーミングには「乗り物からNOをなくした」という意味が込められています。私はグッドデザイン賞の審査委員で2年間、根津氏とご一緒したこともあり、発表会に参加してきました。 

image

この日発表されたのはプロトタイプで、着せ替え可能な布製ボディ、回転式の運転席、交換可能なカセット式バッテリー、速度に合わせてテンポやトーンを変えるBGMなど、斬新な仕掛けが盛り込まれています。可愛い系のデザインは、人に近い存在、小さく優しい乗り物であることを表現したもので、軽量樹脂素材を活用して車両重量200kg以下、満充電での航続距離50kmを目標とするそうです。
 
image

大人2名あるいは大人1名+子供2名という乗車定員は、国土交通省が軽自動車をベースとした特例として一定の地域で運用を認める「超小型モビリティ認定制度」、45km/hという最高速度は欧州の超小型モビリティ規格L6eに準じています。三井化学や帝人フロンティアなど有名企業をパートナーとしたコラボレーション能力も評価できるものです。

image

しかしながら、ひとつ問題があります。2013年4月にスタートした「超小型モビリティ認定制度」は、今年3月で実証実験期間が終了し、4月以降も認定制度をしばらく続けて様子を見るという方針を表明したのです。 

image

ひと足先に茨城県つくば市で実証実験をスタートしたパーソナルモビリティは、昨年から全国展開が可能となり、東京・二子玉川などでの実証実験が始まっています。なぜ超小型モビリティの歩みが遅いのか、不思議に思うほどです。 

image

rimOnOでは来年に市販モデルの発売を目指しつつ、日本版L6eの導入を要望していきたいとしています。同様の考えは、超小型モビリティを手掛ける他の企業も抱いているはずです。それなら大手・ベンチャーの別を問わず、一致団結して国への本格制度導入を働きかけてほしいものです。日本で超小型モビリティが普及するか、今が正念場だと感じています。

バスタ新宿1か月 見えてきた課題

東京の新宿駅に先月開業した日本最大級の高速バスターミナル、バスタ新宿については、事務所から近いこともあり、何度かチェックに行っています。開業直後の模様は「東洋経済オンライン」にまとめたので、今回は1か月後、大型連休中の5月5日午後の様子を報告しつつ、感じたことを記します。

IMG_1758
東洋経済オンラインの記事=http://toyokeizai.net/articles/-/113216

バスタ新宿についてはご存知の方も多いと思いますが、JR東日本新宿駅ホーム上に人工地盤を築いて建設した複合施設の3・4階にあります。3階には高速バス降車場とタクシー、コミュニティバスの新宿WEバス乗り場があり、4階に発券カウンター、待合室、乗り場があります。

IMG_1751

開業直後に訪れたときは、待合室の混雑と暑さが気になったので、まずここに足を運びました。連休中にもかかわらず、さほど混雑していませんでした。以前の写真と見比べると、理由が分かりました。ベンチが少なくなっていたのです。そのためか、部屋の暑さも解消されていました。バスの運行は前回同様、混乱はなく、整然と乗客を乗せ、次々に発車していました。

しかし前回の訪問でもうひとつ気になっていた点、飲食店が存在しない状況は変わっていませんでした。そもそも乗り場がある4階にはそれにふさわしいスペースはないのですが、それに比べればスペースに余裕がある3階にも、観光案内所しかありません。

IMG_1748

タクシー乗り場もこの3階に統合したことで、目の前の甲州街道の陸橋上の渋滞が減るなど、バスタ新宿は交通結節点の機能としては評価できます。でもターミナルは単なる交通結節点ではありません。待ち合わせや乗り換えなどの時間を過ごす場所としての、おもてなし施設も必要だと考えます。

逆に同じ建物の2階にある新宿駅には飲食店が複数あります。南側には駅に出入りする電車を眺められるデッキがあり、SHINJUKUのオブジェは子供たちの遊び場所になっていました。また隣のJRミライナタワーには、レストランも備えたNEWoMan(ニュウマン)と呼ばれる商業施設が入っています。さすがルミネを展開する会社だけあります。ところがバスタ新宿に、これら飲食施設の案内はありません。 

IMG_1769

交通結節点という機能に徹したバスタ新宿と、ターミナルの魅力をアピールするJR東日本の施設は、同じビルの中にあるとは思えないほど雰囲気が違っており、お互いの連携もイマイチでした。バスタ新宿を手掛けた国土交通省関東地方整備局とJR東日本の間で、この点についての話し合いは持たれなかったのか、不思議に思うほどです。

IMG_1763

バスタ新宿はすでに動き始めており、大きな変更はできません。しかし東京を代表するターミナルのひとつであり、世界の目が注がれる施設であることも確かです。両者が協力することで、空きスベースの活用や案内の充実などを行い、より良いターミナルに育てていってほしいと考えています。 

移動者の公共性を問う

今年は大型連休中の交通事故の報道が目立ちます。中でも個人的に気になったのは、判断ミスや運転ミスなどが原因ではない、起こるべくして起こった事故、避けられない事故がいくつかあったことです。

ひとつは今月3日、神戸市中央区で乗用車が暴走して歩道に乗り上げ、歩行者を相次いではね、5人が重軽傷を負った事故で、乗用車を運転していた男性が逮捕されました。その後の捜査や鑑定で、運転手は自身が鬱病であると認識しており、事故当時、助手席に乗っていた次男の呼びかけに返答できなかったそうです。さらに昨年も2度人身事故を起こしていたことが分かっています。

もうひとつは6日、東京都国分寺市で、生後7か月の赤ちゃんを背負った母親の自転車が乗用車と接触し、自転車が転倒。赤ちゃんが頭を打ち死亡した事故です。母親が運転する自転車は、赤ちゃんを背負うという不安定な状態で、信号待ちをしていた車の間を通り抜けて対向車線に出た際に、走ってきた乗用車と接触したそうです。こちらは乗用車を運転していた女性を逮捕しました。

神戸の事故を起こしたドライバーは、正常な運転ができなかった可能性が高いようです。こうしたドライバーは自ら運転を控えるべきですが、それが難しいなら、家族と医療機関、警察、自治体が連携して、正常な運転ができない人にはハンドルを握らせず、自動車を使わなくても生活できる場所で暮らしてもらう仕組みを作ることが急務でしょう。

国分寺の事故では、自転車は車両であり、対向車が走行する本線が優先であるにもかかわらず、自転車利用者は過失を問われず、ドライバーだけが逮捕された状況に疑問を持っています。自転車は車両であるという認識で対応してもらわないと、一部の自転車利用者の無謀運転を助長する恐れがあります。

IMG_7137

しかし今の日本の状況を考えると、行政や警察任せの姿勢では、また同様の事故が頻発するのではないかとも思っています。もっとも大事なのは、道路を利用するすべての人がルールを守り、マナーを心得ることです。そうすれば、現状下でも不幸な事故は確実に減るはずです。

先月東京都の新宿駅に開業したバスターミナルは、それまで駅をまたぐ陸橋上にあったタクシー乗り場もターミナル内に併設したことで、陸橋の渋滞が大幅に減りました。ところが先日訪れると、早くも駐停車禁止の陸橋上に違法駐車をしている車両を目にしました。この陸橋が駐停車禁止だと認識しているドライバーも多く、渋滞が発生していました。この状況が続くようだと、やがて事故が発生するでしょう。

私たちが使う道路の多くは、公道という呼び名があるとおり、公共の場所です。つまり公園や美術館などと同じです。歩行者、自転車、自動車など、さまざまな立場で移動をする人が同じ場所を共有して、初めて円滑な交通が成り立ちます。自転車や自動車はパーソナルなモビリティですが、だからといって自分さえ良ければいいという身勝手な移動は許されません。それを走らせる道はパブリックな場所だからです。

自分を含め、道路を使うひとりひとりが、道路は公共空間であるという認識を肝に銘じてほしいと思っています。
ギャラリー
  • 日本一のバスターミナルは?
  • 日本一のバスターミナルは?
  • 日本一のバスターミナルは?
  • 日本一のバスターミナルは?
  • 高速道路110キロ化で問われる「運転力」
  • 高速道路110キロ化で問われる「運転力」
  • スーパーカブ1億台の原動力
  • スーパーカブ1億台の原動力
  • スーパーカブ1億台の原動力