THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2016年09月

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女川のまち力

 2週間前のこのブログで、昨年春から走りはじめた、JR東日本仙台駅と石巻駅を結ぶ「仙石東北ライン」について書きました。実はあのときの目的地は石巻ではなく、そこから石巻線に乗り換えて終点の女川駅に向かいました。女川駅もまた、昨年春に駅舎が高台に移設されて復活し、周辺のまちづくりも着々と進んでいるのでチェックしに行ったのです。仙石東北ラインと合わせて記事にもまとめたので、そちらもご参照ください。

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東洋経済オンラインの記事=http://toyokeizai.net/articles/-/137147

女川駅は、町の中心部もろとも津波で流されたので、駅は内陸側に200m移動し、7〜9m嵩上げされた土地の上に構築されました。ウミネコが羽ばたく様子をイメージした駅舎は、紙管を用いた仮設住宅や避難所間仕切りなど、災害支援建築で国際的な評価を受けている建築家、坂茂氏が設計。改札口を出ると、眼前には緩く下るプロムナードが伸び、両脇には商業施設が並び、遠くには海が望めます。

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プロムナードの両脇には、昨年12月にオープンした商業施設「シーパルピア」があります。地元の特産品を提供する商店やレストランのほか、石巻市の段ボール加工会社「今野梱包(こんのこんぽう)」のテナントもあり、「ダンボルギーニ」が展示されています。いちばん奥の海沿いの地域は、公園として整備されるそうですが、女川交番の建物は震災遺構として残される予定です。

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個人的に印象に残ったのは、海から離れた高台に街並みを移設したり、巨大な堤防を築いたりする被災地もある中、女川は甚大な被害を出した海と向き合い、歩んでいく道を選んだことです。自然の前には人間は無力であるという前提に立ったうえで、その自然と共存していく。海辺のまちとしての好ましいありかたを見ることができました。

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しかもスロープしたプロムナードの中程にある「まちなか交流館」には、会議室や音楽スタジオといった町民のための設備以外に、復興の内容をパネルなどで紹介したスペースがあります。東日本大震災は、被害地域があまりにも広範だったので、個々の都市の復興状況をチェックすることが困難です。しかしここに来れば、女川の5年間の歩みが手に取るように分かります。多くの人に見てほしい展示です。

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女川町には原子力発電所があり、国や県から交付金が支給されています。しかしそれが復興の原動力であるとは思えませんでした。素晴らしい景観に生まれ変わった駅前広場からも、シーパルピアやまちなか交流館で働く人々からも、町の力を感じたからです。町の人たちが主役となって復興を進めつつあることが、この場所にいるだけで伝わってきました。

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そんな女川にうれしいニュースがありました。8月から仙石東北ラインが延長運転するようになったのです。仙石東北ラインは、交流電化の東北本線と直流電化の仙石線を直通運転することから、ディーゼルハイブリッド車を導入しました。その機能を生かす形で、非電化の石巻線への乗り入れが実現したのです。現在は1往復だけですが、需要があれば増便も期待できるでしょう。復興の後押しになることを期待します。

無料即配願望が招く物流危機

モビリティとは本来、人の移動のしやすさを表す言葉で、物流は含まれないかもしれませんが、今日はその物流にスポットを当てます。

21世紀になって急激に増えた物流に、インターネットショッピングで購入した商品の配送があります。私も利用者のひとりですが、最近、気になることがあります。送料無料、スピード配送をセールスポイントとする販売業者が目立つことです。有名なのはアマゾンですが、それ以外にも家電量販店など、さまざまな業種がサービス競争を繰り広げています。

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*写真はイメージです

日本の物流システムは以前から、指定した時間に確実に届くことが世界的に評価されており、それを武器とした海外進出も盛んです。しかし販売業者主導による最近の無料競争、スピード競争は度が過ぎると感じています。

特にスピードは、その地域を移動している人なら、おおよその計算はできます。インターネットで注文してから数時間で荷物が届くというサービスは、誰かに無理を強いているはずです。しかもそれを無料としたり、定額制として使い放題にしている業者もあります。運送業者にしわ寄せが行っていることを懸念します。
 
このテーマを取り上げた理由のひとつとして、東京を走る事業用軽商用車の数が急に増えたことがあります。慢性的なドライバー不足と合わせて考えれば、過酷な労働状況が想像できます。もうひとつは、いままで正確だった配送に遅れが生じる例を体験しつつあることです。日本的物流システムの限界を見せつけられている印象を抱いています。

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*写真はイメージです
 
旅客鉄道や高速バスでは、度を超えたスピードや低運賃の追求が大惨事を招いた例がいくつもあります。トラックでも今年、山陽自動車道のトンネル多重事故で、運送業者の過剰労働が問題となりました。宅配のトラックは車両が小型で低速で走行するので、大事故には至りにくいですが、現状を見る限り、サービスそのものが限界にきているのではないかという気がしています。

ではこういう状況を改善するにはどうすべきでしょうか。ひとりひとりが、物流には相応の時間とコストが必要であると認識し、明らかに過剰なスピードや低価格をアピールするサービスは使わないという意志表示をすることでしょう。バスと違って運んでいるのはモノですが、それを操っているのは人間であり、度を超えたサービス追求は当然ながら事故に結びつくことを忘れてはいけないと思います。

復興を後押しするハイブリッドトレイン

ひさびさに東日本大震災の被災地に向かいました。昨年、JR東日本石巻線終点の女川駅が内陸に移設されて営業を再開し、仙台と石巻を結ぶ仙石線も一部区間を内陸の高台に移設することで全線の運転を再開。同時にこの区間の所要時間を短縮した「仙石東北ライン」が走り始めるなど、明るいニュースがいくつかあったので、チェックしたいと思ったからです。

仙台駅停車中

今回は仙台駅からまず仙石東北ラインに乗りました。仙石線は、途中塩竈市や松島町で東北本線と併走します。ここを線路で結び、仙台からここまでは速達性に勝る東北本線を走ることで、所要時間短縮を実現した列車です。東北本線は交流、仙石線は直流と、電化の方式が違うので、連絡線は電化せず、同じJR東日本の小海線で走っているディーゼル・ハイブリッド車両の技術を用いた新型車を投入しています。

私が利用したのは日曜日の午後。席はほとんど埋まっていました。仙石東北ラインはすべて快速扱いで、停車駅は2パターンあり、それ以外に1往復の特別快速があります。乗ったのは東北本線内各駅停車の快速で、同線内のみの利用者もけっこういました。ディーゼルカーでありながら加減速性能は同じ線路を走る電車に遜色なく、多くの利用者は電車と同じ感覚で乗っているようでした。

塩釜駅を過ぎてしばらくすると、右側に仙石線の線路が近づいてきます。しばらく並走した後、列車は約300mの連絡線を、かなり速度を落として通過し、一旦停止。その後仙石線に乗り入れ、松島町の高城町駅に停車します。このあたりは松島湾の近くを走りますが、しばらく進むと海岸線に別れを告げ、真新しい高架橋に入りました。ここからが高台移転の区間です。

野蒜駅舎

野蒜駅前造成地

次の快速停車駅である東松島市の野蒜駅で降りてみました。真新しい駅前広場の周辺はいまだ造成中で、家は一軒もありません。駅の跨線橋からは旧野蒜駅周辺が望めますが、保存が決まったホームは残っているものの、周囲の家はほとんど津波で流されたうえに、多くの地域が津波防災区域に指定されていることもあり、更地が目立っていました。震災から5年半。復興はまだ道半ばであることを痛感しました。

再び列車に乗って終点の石巻に向かいます。震災直後、バスで仙台から2時間以上掛かった経験があるだけに、通常の快速でも約1時間で行けることはありがいと思いました。駅周辺は、閉店したデパートの建物を活用した市役所の隣に、旧北上川河口近くにあって津波で被害を受けた市立病院が移転していました。歩いて暮らせるコンパクトなまちづくりを目指した再生計画が進みつつあるようでした。

仙石東北ライン車内

東日本大震災の被災地は、多くが人口減少に悩んでいます。その中で東松島市と石巻市では、手法は異なれど、鉄道駅を中心とした復興まちづくりを進めていました。人口減少に歯止めを掛け、復興まちづくりを成功に導くために、野蒜から約30分、石巻から約1時間で大都市仙台に行ける仙石東北ラインは、重要な役目を担っていることが分かりました。

自動運転先進国シンガポール

先月25日、シンガポールで、世界初の自動運転タクシーが試験サービスを開始したというニュースがありました。MIT(マサチューセッツ工科大学)出身の研究者2名によって設立されたnuTonomy(ヌートノミー)という会社が運用しており、同社が開発した専用アプリで呼び出して乗ることができるそうです。

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今はまだ実験段階なので、技術者が同乗して非常時の停止操作などを行い、一部地区での運行に限られ、利用者についてもあらかじめ選ばれた住民に限定しているそうですが、2年後には正式サービスを目指しているそうです。

一般人が乗って公道を走る自動運転の実験は、近年各所で行われています。このブログでも今年6月、スイスのシオンという都市で、BestMile開発のソフトウェアを用いたNavyaのARMAという無人運転小型バスが運行を始めたことを紹介しました。

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なのでnuTonomyは、世界初の一般人が乗れる自動運転車ではないのですが、自由に走行ルートを選べるタクシーであることと、ルノーZOEや三菱i-MiEVといった市販の電気自動車を起用したことは画期的です。そしてもうひとつ、自動運転の普及に積極的なシンガポールの姿勢も見逃せません。

最新の自動運転状況についてはこちらでも紹介しています=https://mag.kakaku.com/car/?id=4465

先月千葉市で実験走行を行ったEasyMileの無人運転小型バスEZ10もシンガポールで走っています。アジアでの展開はシンガポールが初とのことです。公道ではなく、Gardens by the Bayという公園内の移動ではありますが、昨年12月の試験走行の結果が良好だったことから、現在もAUTO RIDERの名前でサービスを提供しています。

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シンガポールはまた、日本では新交通システムと呼ばれることが多いAGT(オートメーテッド・ガイドウェイ・トランジット) の導入も積極的です。こちらも無人運転で、三菱重工業が開発した車両が、市街地や空港を走っています。このように、自動運転モビリティの導入に積極的な都市国家なのです。

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自動運転の実用化にとって大切なのは、テクノロジーとインフラ、双方が連携しながら迅速な決断を行ない、導入に結びつけていくことだと思っています。もちろんその前提として安全確保が大前提ではありますが、ITベンチャーとシンガポールという、ともに若くて活力のある集団のコラボは、最適な組み合わせではないかと思いました。自動運転の将来を語るうえで、外せない動きになりそうです。
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