THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2016年10月

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悲惨な通学事故を繰り返さないために

通学中の小学生の列に自動車が突っ込み、幼い命が失われるという、悲惨な事故がまた起こってしまいました。今月28日、横浜市港南区の市道で、小学1年生の男児が死亡、児童を含む数人が重軽傷を負いました。

この事故は複合的な原因で起こっています。通学路として指定した道路が狭く、しかも自動車の通行量が多かったことに加え、事故を起こした運転手は87歳という高齢でありながら、前日から夜通し運転を続け、警察の調べに対し「どこを走ったか覚えていない」と答えているそうです。

通学路

事故を受けて小学校の校長は、通学路の見直しを考えると発言したそうです。本末転倒です。なぜ歩行者より自動車が優先されなければならないのでしょうか。特に小学生は自動車の運転ができない、いわゆる交通弱者であり、彼らの安全な移動は最優先されるべきてす。

小学校への登校は短時間に一斉に行われます。その間だけバスなどの公共交通以外の車両を通行禁止にすることは容易にできるはずです。でも日本はなぜかそういう道を選びません。欧州の都市では当然のように目にするバスレーンも、我が国ではほとんどが時間指定に留まっています。多くの先進国が行き過ぎた自動車優先社会からの脱却を目指しているのに、日本はなかなか転換が進みません。

大都市の道
写真はいずれもイメージです
 
事故現場や運転手の住所は、いずれも大都市にあり、公共交通が発達しています。過疎地のように自動車がないと生活できない場所ではないはずです。一人ひとりが、高齢者になれば判断能力が落ちることを認識し、公共交通での移動に切り替えていくべきだし、家族をはじめとする周囲の人間もそう促していく必要があるでしょう。

子供の安全はなによりも最優先で守るべきであり、通学路が悪いなどという論調は絶対に避けなければなりません。

WALKCARの問題提起

昨年プロジェクトが公開され話題になっていた、軽量薄型の電動パーソナルモビリティ「WALKCAR(ウォーカー)」が10月21日、メーカーであるCOCOA MOTORS.のウェブサイト上で予約受付を始めました。13インチのノートパソコンと同等のサイズで、カーボンファイバーを用いることで重量は2.8kgに収め、最高速度は16km/h。1充電で約1時間の走行が可能とのことで、価格は12.8万円です。

WALKCARph2
WALKCARのウェブサイト=http://www.cocoamotors.com/

WALKCARについては昨年の発表時から斬新な発想に感心し、それが日本から生まれたことにも注目していました。なので商品化に漕ぎ着けたことには拍手を送りたい気持ちですが、一方でウェブサイトを見て気になることがありました。

WALKCARph3

写真や映像が、日本の公道で撮影されたと思われるからです。特に映像では、渋谷駅前のスクランブル交差点を横断しています。この点について何か記述があるかウェブサイトを探したところ、下のほうに小さな字で、「本映像は、プロモーション上の演出です。各国の法律に従いご使用ください」という一文が添えてありました。

WALKCARは、セグウェイに似た乗り物であると考えています。しかし日本でのセグウェイは、現状では実証実験という形でないと公道を走ることができません。また最高速度は電動車いすと同じ6km/hとなっています。WALKCARにも同じルールが適用されることになるはずです。

segway_nikotama
セグウェイジャパンのウェブサイト=http://www.segway-japan.net

また公道には凹凸や段差が点在しており、現在の構造では走破は難しそうです。といってもWALKCARそのものを否定するわけではありません。工場、空港、商業施設など、屋内の広い場所の移動には便利だと思っています。いずれにせよウェブサイトに、日本国内で走行可能な場所を明記してほしいところです。

ここまで今の日本のルールを基準として書いてきましたが、もちろん私は今のルールが最善だとは思っていません。電動車いすを含めたパーソナルモビリティは、これからの社会で重要な役割を持つと考えています。また歩道を走行する際は6km/hという最高速度は妥当ですが、車道であればそれ以上の速度を出しても良いと考えています。

WALKCARのデリバリーは来年9月以降になるとウェブサイトに明記してあります。それまでに他のパーソナルモビリティを含めたメーカーとユーザーがいっしょになって、理想のルール作りへの動きが加速していくことを希望します。

駅前広場の理想形

先週末の連休を使って、3年ぶりに富山に行ってきました。北陸新幹線が開通してからは初めてなので、新幹線を使ったのですが、もっとも印象に残ったのは、富山駅に降り立った瞬間です。新幹線開通に合わせて、駅前広場が一新されていたからです。

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いままでは駅前の道路上にあった市内電車の停留場が、将来北側を走るライトレールと直結するという理由もあって新幹線ホーム下に移り、駅と道路の間はバスとタクシーの乗り場になっています。一般車の駐車場は市内電車の線路の左にあり、乗降場も用意されていますが、公共交通重視という明確なメッセージが伝わる設計です。
 
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富山市は以前から「公共交通を軸としたコンパクトなまちづくり」を目指しており、富山駅はそのシンボルとしての役目があります。しかも富山のようなターミナル駅は、地域の小さな駅とは違い、観光や仕事で遠方から来る人々を迎えるわけで、公共交通を分かりやすい場所に置き、存在を見せることも、スムーズな移動のために大切です。

気になったのは、今回の滞在で多用したサイクルシェアリングのステーションが、道路寄りにあって存在が分かりにくいことです。乗ってすぐに道路に出られるという利便性は評価できますが、存在を見せるという点では駅に近いほうが理想でしょう。駅構内にサイクルシェアリングの存在を伝える案内施設も欲しいところです。

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このように細かい部分で改善してほしい箇所もありますが、富山駅前広場は日本の地方のターミナルとして、理想に近い設計だと思いました。今後も市内電車とライトレールの直結など、いくつかのプロジェクトが残っていますが、公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりの顔として、進化を続けていってほしいと感じました。

これでいいのか原付規格

 今週のニュースで個人的にもっとも衝撃的だったのは、 本田技研工業とヤマハ発動機の提携のニュースでした。 原付1種(50cc以下)での協議の検討を開始するという内容でした。本田技研工業は2輪車販売台数で世界第1位、ヤマハ発動機は第2位です。 2トップが手を結んだことにまず驚かれされました。しかも両社は1980年頃、「HY戦争」とまで呼ばれた原付1種の販売競争を繰り広げた間柄なのです。

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原付という規格が生まれたのは1952年のことで、当時は14歳以上なら許可制で乗ることができ、排気量は2ストローク60cc、4ストローク90cc以下でした。当初の原付は自転車に補助エンジンを取り付けた形態であり、現在の電動アシスト自転車に近い発想です。 2年後に50cc以下の第1種と125cc以下の第2種に分かれ、1960年代に現在と同じ16歳以上の免許制(50cc以下が原付免許、51cc以上は自動2輪免許)になりました。

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その後ヘルメットの装着や、多くの交差点での2段階右折が義務付けられましたが、排気量は50cc、最高速度は30km/h、乗車定員は1名のままです。24km/hまでアシストが効く電動アシスト自転車に近い性能と言えるでしょう。しかし電動アシスト自転車は、運転免許は不要で、ヘルメットの装着義務はなく、子供2名を乗せた3人乗りも認められています。多くの人が電動アシスト自転車に流れたのは当然でしょう。

少し前、4輪車の免許で乗れる原付を125ccに引き上げる動きがあるというニュースが流れました。このニュースはインターネットで話題になり、多くの意見が出ましたが、危険であるという否定的な声が主流だったと記憶しています。

欧州や東南アジアなどの小型2輪車は125ccが主流です。欧州では14歳になると許可制で50cc以下の2輪車と最高速度45km/h以下の超小型モビリティに乗ることが可能で、16歳以上でそれ以上の2輪車の免許が取得できますが、4輪免許でも125cc以下の2輪車は乗ることができます。これに近い制度の導入を目指しているのでしょう。

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個人的には、4輪免許を持っているだけで無条件に2輪車に乗れる制度には不安を抱いています。ゆえに現行の原付1種は最高速度30km/h・ひとり乗りという中途半端な規格なのかもしれません。ただし4輪免許取得希望者の中で、2輪車も運転したい人を対象に講習を行い、講習に合格した人に原付免許も与える方式なら125ccでも妥当だし、逆に50ccのままで最高速度60km/h・2人乗り可能としても良いでしょう。もちろんそこには超小型モビリティも含まれます。

欧州や東南アジアの都市では、日本よりもはるかに2輪車を多く見かけます。自転車より速く、4輪車より時間が正確で場所を取らないというメリットを合理的に判断し、多くの人が2輪車を選んでいるのでしょう。何かというと2輪車をネガなイメージで捉えがちな日本との思想の違いを感じます。私も都市内移動に最適なツールのひとつであると認識しています。こういう部分での2輪車の機能はもっと評価されるべきです。

04GEN

今月10日まで、東京の六本木ヒルズで、ヤマハ発動機と楽器製造のヤマハの合同デザイン展が行われています。 展示物の中に、125ccスクーターのコンセプト04GENと、電動アシスト3輪自転車のコンセプト05GENがありました。 04GENは都市部、05GENは離島での身近な移動手段としてデザインされたそうです。 

05GEN

それが日本では、04GENは無免許で乗れるのに対し、05GENは相応の金額を払って教習所に通い、免許を取得しなければ乗れません。都市と離島、舞台は異なるとはいえ、使用目的が近いわけですから、ルールも近づけるべきではないでしょうか。

原付免許が現在とほぼ同じルールになって、約半世紀が経過しました。この間、我が国のモビリティシーンは大きく変わりました。2輪車メーカー2トップの提携劇という異常事態は、その事実を多くの人に知らせるシグナルであり、日本のミニマムモビリティのルールをゼロから見直すべきというサインではないでしょうか。今こそ、この問題を真剣に議論すべきだと思っています。

外堀から埋めていくUberの日本戦略

今週木曜日、ライドシェアという新しい移動のかたちを生み出したUberが、UberEATS(ウーバーイーツ)という名前のフードデリバリーサービスを始めました。

前日に行われた発表会の模様を記事にしたので、くわしくはそちらをご覧いただきたいのですが、従来の多くの同業者と異なるのは、デリバリースタッフやシェフは雇わず、飲食店と配達員、ユーザーの三者をつなぐアプリケーションの提供という形態を取るところは、配車アプリと似ています。

UberEATS1

UberEATSは、海外ではサンフランシスコやパリ、ロンドンなど7カ国・33都市ですでに提供しており、東京のために考案されたビジネスではありません。しかし東京でのUberEATS導入は、他の都市とはやや違う意味が込められていると感じています。

このブログでも触れてきたとおり、我が国でのUberはタクシー業界の反発を受けています。2014年に東京でスタートしたハイエンド向け配車サービスはスムーズに導入されましたが、一般のドライバーが一般ユーザーを運ぶ、Uberの核となるサービスは、たびたび導入が見送られました。

Presentation
日経テクノロジーオンラインの記事=http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/news/16/093004326/?rt=nocnt

そこでUberは、人ではなく食を運ぶUberEATSを東京に導入することで、一般の人々が移動や物流を支えることのメリットを、モビリティとは別の視点から投げかけることで、多くの人にアピールしていきたいと考えたのではないでしょうか。

ライドシェアでも着実な歩みを進めています。5月にサービスを始めた京都府京丹後市に続き、先週末には北海道中頓別町でも「なかとんべつライドシェア」と名付けた、ボランティア町民ドライバーの自家用車を利用した実証実験が始まりました。人口わずか1800人という北国の小さな町で移動を確保するために、不可欠なサービスだと町が判断したようです。

なかとんべつライドシェア
中頓別町のウェブサイト=http://www.town.nakatombetsu.hokkaido.jp

Uberが良くてタクシーが悪いという主張ではありません。都市のモビリティは自転車、公共交通、そして自動車など、複数の交通が共存することで新たな可能性を生み出すことが理想です。どれが大事かを決めるのは事業者ではなく、ユーザーである市民であるはずです。

Uberが中央突破ではなく、外堀から埋めていくような慎重な導入を進めている様子を目にして、そこまでしなければ認められない日本のモビリティシーンの閉鎖性を残念に思います。まずは同じ土俵に立たせることこそ重要ではないでしょうか。
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