THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2016年11月

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路上駐車の「枠」と「帯」

自動車業界関係者と都市交通について話をすると、必ずと言っていいほど出てくるのが駐車場の話題です。今週も某欧州メーカーの研究開発者と意見交換をした際に、「日本は路上駐車ができない」旨の発言をしていました。

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日本も昔に比べれば、パーキングメーターなどを使い路上駐車できる場所は増えていると実感しています。ただし道路は駐車する場所であると考える欧州と、そうではないと考える日本では、根本的な違いがあるのも事実です。もちろん欧州流を全面的に支持するわけではなく、景観面では日本の考え方のほうが好ましいと思いますが、それ以前に路上駐車の方法に大きな違いがあるのも事実です。

これについては、近年日本で広まりつつある「パークシェア」サービスなど、駐車場を取り巻く新しい動きとともに、「価格.com」のコラムで記しているので、ご興味がある方はご覧いただきたいと思います。

日本の路上駐車スペースは1台ごとの枠になっています。しかし欧州は1台ごとの区切りがありません。複数のクルマが共有する帯になっています。パリへ行くと、道路の脇に駐車車両がビッシリ並んでいる光景を目にします。どうやって出し入れするのか疑問に思うほどです。こういう場面では言うまでもなく小型車が有利です。トヨタi-ROADや日産ニューモビリティコンセプトなどの超小型モビリティなら、縦方向に停めることもできます。

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価格.comのコラム=https://mag.kakaku.com/car/?id=4739

言うまでもないことですが、環境対策には小さい自動車のほうが有利です。一部のメーカーは、車体の軽量化やエンジンの小排気量化が環境対策であるとアピールしていますが、たとえば全長5mの車体を4mにすれば、20mの道路に収まる車の数が4台から5台に増えるわけで、渋滞緩和、ひいては環境対策に結び付きます。小さい自動車の優位性は動きません。

環境問題を真剣に考えるなら、小さい自動車によりメリットをもたらす社会が理想でしょう。欧州の路上駐車は生まれながらにしてその素質を備えていると言えます。日本は軽自動車や超小型モビリティなど、小型車作りを得意としているわけですから、それを生かせるインフラ作りを進めてほしいところです。

JR北海道の最後通告

今年2月、JR北海道の近況についてこのブログで取り上げました。その最後で「残された時間は長くない」と記しましたが、予想以上に早く、それを裏付ける発表が昨日ありました。くわしい内容はJR北海道のオフィシャルサイトでも見ることが可能で、収支状況や支援措置など、幅広い内容をまとめており参考になるので、ご覧になることをお勧めします。

 JR北海道資料1
JR北海道のウェブサイト=http://www.jrhokkaido.co.jp/

上で紹介したのは資料のうちの1枚で、同社単独では維持が困難な線区を記してあります。黒、青、緑の線区が維持可能で、紫は北海道新幹線札幌開業後に第3セクターに転換予定。それ以外は維持困難となっています。資料どおりに事が進むと、根室、網走、稚内には鉄道で行けなくなることになります。

自身の体験から言えば、たとえば札沼線の北海道医療大学以遠などは、沿線の高校に通う生徒以外にほとんど乗客がおらず、存続が困難という主張に賛同します。しかし根室や網走、稚内を結ぶ幹線は、異なる視点が必要だと考えています。理由はJR貨物が走らせている貨物列車なども、同じ線路を使っているからです。雄大な自然が観光を含めた産業資源になっている北海道では、モーダルシフトは重要な取り組みだと認識しています。

資料では上下分離方式についても触れており、私も訪れた福井鉄道や四日市あすなろう鉄道が例として紹介されています。現時点でも南千歳〜釧路、旭川〜名寄間などは「北海道高速鉄道開発」という第3セクターが一部車両や設備を保有しています。自動車交通も、道路は国や地方自治体が建設管理する、上下分離方式に近い形態ですから、違和感は抱きません。ただ貨物列車などのことを考えれば、北海道レベルではなく、国レベルでの議論を進めるのが自然でしょう。

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同時に観光客への対応を積極的に進めてほしいところです。現在のJR北海道の特急は都市間連絡がメインですが、札幌以外の多くの都市で人口減少が進む一方、国内外からの観光客は増えているわけですから、多くの観光客にとっての玄関口である新千歳空港と観光地を直接結ぶ特急を、北海道ならではのサービスを盛り込んで走らせれば、相応の需要はあると思っています。

今回の発表を聞いて、少し前にこのブログで取り上げた、本田技研工業とヤマハ発動機の原付一種領域での協業検討開始発表を思い出しました。どちらも現状では廃止や協業という案を提示していますが、それがモビリティシーンにとっての理想でないことは明らかです。日本全体でこの問題を考えてほしいというメッセージだと考えています。

東京の通勤電車をどうするか

インターネットメディアの「citrus(シトラス)」から、通勤電車についてのコラムを依頼されました。私は東京都在住なので、小池百合子都知事が選挙中に公約として挙げた「満員電車ゼロ」を思い出し、それを含めた内容としました。本日記事がアップされたので、今回はこの話題について綴っていきます。

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citrusのコラム=http://citrus-net.jp/article/8721

コラムではまず、東京とそれ以外の大都市での通勤電車事情の違いが、人口の違いであることに触れました。東京23区と横浜市の人口を合わせると約1370万人。これは関西圏の大阪市、京都市、神戸市、奈良市、和歌山市を合わせた人口の約2倍です。首都圏にはこれに、川崎市、さいたま市、千葉市などの100万人級都市が加わるのです。

その結果、首都圏とそれ以外の地域では通勤電車の混雑率に大きな差が生じています。下に挙げた国土交通省作成のグラフにあるように、主要区間平均混雑率は東京圏(首都圏)が164%、大阪圏(関西圏)が124%、名古屋圏(中京圏)が134%と、首都圏が群を抜いています。新聞を広げて楽に読めるレベルが150%だそうですから、東京と他の2都市の違いがよく分かります。

三大都市圏混雑率

首都圏の満員電車が、東京への一極集中と大きく関係していることは明らかです。なので鉄道事業者に責任はないと考えます。そもそも一極集中は好ましからぬ状況なのですから、これを追認するような手段は選ぶべきではないでしょう。それよりもまず一極集中解消を目指すべきです。それにより保育所の待機児童問題など、多くの問題が解消に向かう可能性があるからです。

このコラムで提案したのは、満員電車ゼロを理由として、勤労者の在宅勤務や事業所の地方移転を進めることです。都知事選挙で一極集中解消に言及するのは難しかったでしょう。有権者の一部に都から出て行ってもらうことを意味するからです。しかし満員電車解消のために一極集中に手を付けるのは正しい論理であると考えます。

同時に鉄道事業者の経営形態を改めることも必要でしょう。以前もこのブログで触れたように、欧州の都市交通は公で支えるという明確な姿勢を取っています。公共交通という呼び名があるぐらいですから、それが妥当でしょう。そうすれば満員電車でないと採算が取れないということはなくなり、ゆとりある通勤電車実現に近づくはずです。

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モビリティとまちづくりはリンクしています。21世紀になってその傾向は強まっています。鉄道とて例外ではないはずです。高度経済成長時代はとうの昔に終わっています。住みやすく暮らしやすい都市とはどうあるべきかをまず考え、それに見合った移動を構築していくことが正しいプロセスではないでしょうか。

パリ協定とモビリティ

地球温暖化対策の新しいルール「パリ協定」が昨日、発効しました。産業革命時を基準として世界の気温上昇を2度以内に抑えるという数値目標を掲げただけでなく、1997年に採択された京都議定書では先進国のみだった枠組みを全世界に拡げた点で、画期的な決定だと思っています。

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多くの国でこのパリ協定を迅速に批准する動きが起こる中、日本は批准に遅れてしまいました。「決められない日本」を象徴するような出来事であり、残念なことですが、それがパリ協定の価値を左右することではないこともまた確かです。ここでは地球レベルで眺めたパリ協定とモビリティの関係について綴っていくことにします。

日本ではパリ協定を踏まえた温暖化対策で、運輸部門で27.4%のCO2削減が必要と算出しています。やはりモビリティ分野の対策は重要なのです。そこで思い出したのが、パリを首都に持つフランスが1982年に制定した、LOTI(国内交通の方向づけに関する法律)です。

LOTIは交通権という概念を世界に先駆けて提示。国民の誰もが容易に、低コストで、快適に、社会負担を増加させずに移動できる権利を認めました。使用する人だけに恩恵を与え、そうでない人には大気汚染などの悪影響を及ぼす自動車を削減し、公共交通の支援や自転車・歩行者交通の整備を促進することが法律として明文化されました。

LOTIはたしかにフランス国内の法律ですが、この考え方を全世界に拡大すれば、世界中の人々に使いやすく環境に優しい交通を与えるという意味になり、パリ協定に通じる考え方ではないかと思っています。

LOTIの制定後、フランスでは自転車レーン・バスレーンの整備やサイクルシェア・カーシェア、そしてLRT(次世代型路面電車システム)の整備が進み、中心市街地では旧いクルマの乗り入れ制限も実施されています。同様の取り組みは欧州をはじめ、他の多くの国で実施しています。こうしたモビリティ改革が、今回のパリ協定発効を機に、全世界に波及していくのではないかという気がしています。

近年の自分の経験から言えば、都市部の交通渋滞や大気汚染は、先進国より新興国のほうが顕著です。だからこそ、こうした分野に豊富なノウハウを持つ先進国が技術援助を行い、環境対応型モビリティの普及を積極的に進めることが重要になってきます。利益や台数を競う量的な競争から、CO2排出量など質的な分野での競争への転換が迫られていると言えそうです。

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このブログで何度も紹介してきたように、環境対応型モビリティにはIT企業やベンチャー企業も迅速な動きを見せています。会社として小回りが利くこともたしかですが、コネクテッドカーやシェアモビリティについては、プラットフォーム型ビジネスに慣れていることも有利に働いているのではないかと思っています。

ただここでは、大手VSベンチャー、カーメーカー対IT企業という対立軸の構築を望むつもりはありません。先進国と新興国の関係についても同じことが言えます。それぞれが得意分野を生かして、地球規模での対策を進めていくことが、パリ協定の真意に沿った行動だと思っています。
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