THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2016年12月

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糸魚川のまちと乗り物

本年最後のブログになります。当初は他のテーマを書くつもりでしたが、今年8月に訪れた糸魚川市で大規模火災が発生したので、こちらについて綴っていきたいと思います。この場を借りまして、被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げます。

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糸魚川市の中心部は、日本海沿いに国道8号線が通り、そこから300mほど内陸側に駅があります。今回被害に遭った旧市街はこの間に広がっています。市役所は駅の反対側ですが、こちらも徒歩圏内です。コンパクトシティという言葉を使っても良さそうな、機能が集中した都市であることがお分かりでしょう。

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上の写真は駅前通りから旧市街を眺めたところです。木造家屋が多く、大雪を避けるための雁木も見えます。今回の大火では強風に加えて、木造家屋が密集していたことや、雁木(がんぎ)を伝って火が燃え広がったことも、大惨事につながったと報道されています。

たしかにこうした建造物は耐火性では劣ります。しかしそれだけを理由として、長い歴史の中で構築された木造家屋群や、雪国の知恵が編み出した雁木を悪者扱いするのは早計に過ぎるでしょう。可能であれば、建物や道路などの非常時対応を確保したうえで、元の姿を取り戻してほしいと思っています。

また今回の大火では、150軒余りが消失したにもかかわらず、死者を出さなかったことが賞賛されています。報道によれば、日頃から住民同士のつながりが密だったことが、避難時に助け合いにつながったとのことです。コンパクトなまちづくりが良い結果を生み出したと言えるでしょう。

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ところで糸魚川は、乗り物とのつながりが深い都市でもあります。昨年開通した北陸新幹線のホーム下には「糸魚川ジオステーション ジオパル」があり、大糸線を走っていた気動車キハ52、鉄道模型のジオラマ、観光インフォメーションセンターが用意され、外にはレンガ造りのかつての機関庫の壁も移築されています。

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一方自動車の分野では、毎年9月に行われる「糸魚川クラシックカーレビュー」が知られています。今年で25回を数える由緒あるイベントです。市内のフォッサマグナ・ミュージアムをメイン会場として、旧市街や国道8号線などのパレード走行も行っています。来年以降も続けてほしい催しのひとつです。

最後になりますが、糸魚川市は早稲田大学校歌や童謡「春よ来い」などの作詞で知られる文人、相馬御風の生誕の地でもあります。生家は大火に見舞われた地域とは駅前通りを挟んで反対側にあり、被害は免れたようです(ただし耐震工事のため3月末日まで休館中)。また市役所の近くにある糸魚川歴史民俗資料館には、相馬御風にまつわる資料などが展示されています。

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現地はまだ混乱の最中だと思いますが、すでに復興への歩みが始まっているとも聞きます。そのための後押しになればと思い、このブログのテーマと関連のある街並みや乗り物などについて、紹介をさせていただきました。いまは1日も早く、かつての街並みと賑わいを取り戻してほしいという気持ちです。

パリ流 水上タクシー

パリが大気汚染に悩まされています。サイクルシェアリングの「ヴェリブ」をはじめ、さまざまな環境対応型モビリティを次々に導入したにもかかわらず、昨日と今日は危険レベルに達しそうということで、自動車はナンバープレートの末尾の数字で通行規制を行い、公共交通は無料とするなどの緊急対策を実施したそうです。

そのパリが、また新しい環境対応型モビリティの導入を発表しました。今度は水上タクシーです。電動小型ボート「シーバブル(Sea Bubble)」を、来年からセーヌ川で運行するそうです。フランス観光開発機構のウェブサイトで日本語で紹介されているので、気になる方はご参照ください。

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フランス観光開発機構の記事=http://jp.france.fr/ja/news/114413 
 
ウーパールーパーのような愛らしい姿をしたこのシーバブルは、フランスのヨットマン、アラン・テボー氏が考案したもので、4枚の翼を持ち、水中翼船(ハイドロフォイル)のように水上を飛ぶように進むことになります。イラストでは後ろ側の翼に小型モーター2台が装備されていることが分かります。

最高速度は18km/hと、陸上はおろか水上の多くの乗り物より低速です。しかし道路が渋滞していたら、自動車より早く目的地に着くでしょう。充電は停泊中に川の流れでスクリューを回すほか、ソーラーパネルも活用。当初は運転手1名と乗客最大4名が乗って移動するそうですが、将来的には自動運転も考えているようです。

このプロジェクトに関心を寄せたのがパリのアンヌ・イダルゴ市長で、先月、セーヌ川でのテストを許可しました。テストは2017年6月頃から始まる予定で、ロンドンもこのシーバブルの導入に関心を示しているそうです。また価格は3万ユーロということで、すでに約100名の人々が自家用として購入を考えているとのことです。

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大気汚染が深刻だからこそ、こういう新しいモビリティの導入を次々に考えているのかもしれませんが、彼らの柔軟な発想と迅速な決断には恐れ入ります。日本も多くの都市に川が流れているわけですから、「船は遅い」という昔の判断基準を捨て、陸上交通を補完するモビリティとして積極的に活用していってほしいものです。

高齢ドライバーと郊外型ショッピングセンターの関係

報道が過熱気味という感もありますが、連日のように高齢ドライバーによる事故がニュースになっています。そんな中インターネットメディアのcitrus(シトラス)から、郊外型ショッピングモールについての記事の依頼を受けたので、流通最大手のイオングループが展開するショッピングセンター、イオンモールを例に挙げ、高齢ドライバーとの関係を書きました。

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 citrusの記事=http://citrus-net.jp/article/10045

高齢ドライバーがステアリングを握り続ける理由はいろいろあります。個人的には記事にも書いたように、多くの高齢者が運転免許を取ったのは高度経済成長期であり、高速道路の開通、モータースポーツの盛り上がりなどもあって、クルマに対する憧れが特に強い世代であることが大きいと考えています。

もうひとつ、この時代の庶民の目標だったのがマイホームです。都心の職場から遠く離れ、駅から徒歩圏内でなくても、庭付き一戸建てに住むことがステイタスでした。もちろん車庫には愛車がありました。マイホームだけあって、多くの人はそこを終の住処とします。郊外に住み、クルマで移動する生活を続けながら、歳を重ねていく人が多いようです。

こうしたライフスタイルを支えてきたのがイオンモールなどの郊外型のショッピングセンターです。広大な郊外の空き地に広い駐車場を構え、レストランや銀行、医療施設などを併設しているので、中心部へ行く必要がなくなり、クルマ中心の生活が加速していきます。駅と店舗を結ぶ専用バスを運行している店舗も多くありますが、ほとんどの利用者は鉄道とバスを乗り継ぐのが面倒と感じるでしょう。

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ところがこのイオンモールが最近になって、駅の近くに相次いで店舗をオープンさせています。イオングループの経営状況が芳しくなく、なかでも総合スーパー事業が不振であることから、いままでと異なる分野への進出を考えたのかもしれません。

自治体としてはこの流れを好機と捉えるべきでしょう。市役所や病院などの公共施設も移設して、駅を中心とした街づくりを進めれば、クルマ中心の移動を公共交通に転換させる転機になるからです。もちろんこれだけで高齢ドライバーの問題が解決するとは思っていませんが、郊外型ショッピングモールの代表格が駅前に進出という事実は、移動を変えるきっかけになる可能性があると考えています。

モーダルシフト推進の動きに注目

国土交通省は先月25日、今年10月に一部が改正された「物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)」に基づく総合効率化計画として、複数の事業者が連携してトラック輸送から鉄軌道あるいは海上輸送に転換することで物流の効率化を図る、いわゆるモーダルシフトの取り組み計画3件を認定・支援すると発表しました。

国土交通省や環境省では数年前から、モーダルシフトを推進する事業を支援してきました。しかし改正物流総合効率化法でモーダルシフトの取り組みが認定されるのは、これが初めてとのことです。

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国土交通省のウェブサイトには、11年前に制定された従来の物流総合効率化法との対照表もあります。そこで目に付くのは、「流通業務に必要な労働力の確保に支障が生じつつある」「効率性の高い輸送手段の選択」「中小企業の連携または共同化」という言葉であり、それを受けて対象とする運送事業として自動車の他に鉄軌道と船舶が加わっていることです。

慢性的なドライバー不足の中、インターネットショッピングの急増によって、物流業界が過酷な労働環境に置かれていることは、以前このブログで書きました。同省のプレスリリースでも、「トラックドライバーの約3割が50歳以上であるとともに、ネット通販の進展等による小口貨物の増加に伴い、トラックの積載率が5割を切っており…」という記述があります。また自動車よりも鉄道や船のほうが、輸送量あたりのCO2排出量が少ないことは、ここで改めて説明するまでもないでしょう。

トラックドライバー年齢
輸送機関別CO2比較
国土交通省のウェブサイト=http://www.mlit.go.jp/index.html

直接の原因がトラックドライバーの労働問題にあるとはいえ、遅まきながら我が国がモーダルシフトに本腰を入れ始めつつあることは歓迎すべき動きです。だからこそ気になるのは、北海道の鉄道網の一部が存続の危機にあることです。モーダルシフトという観点でも、幹線鉄道の維持は必然であると思っています。
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