THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2017年02月

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クロネコヤマトの悲鳴を受け止めよ

今週木曜日、宅配便最大手のヤマト運輸の労働組合が、今年の春闘で荷物の取扱を抑える要求を行うというニュースが流れました。これを受けて経営側も協議に応じる構えだそうです。通常の労使交渉は賃上げを議論するのが一般的ですが、今回は賃下げにもつながる取扱量低下を組合側が求めるという異例の事態になっているようです。

インターネットショッピングで購入した商品の配送が急増したことに加え、送料無料やスピード配送などのサービス競争が運送業者の負担になっていることは、昨年秋あたりから話題になりはじめており、このブログでも9月17日に取り上げています。しかし今回は私を含めた外野の声ではなく、労働組合という内部の声です。今までよりもさらに深刻な状況になりつつあることが想像できます。

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昨年のブログでも書いたように、私自身もインターネットショッピングを利用しているので、その利便性自体は否定しません。しかし郵便の速達にしても、鉄道の特急にしても、通常より早く到達する行為に対しては追加料金を払うのが一般的です。ところが一部のインターネットショッピングでは、会費を払えば送料無料かつ速達というサービスが何度でも使えるという状況になっています。

人間が長年掛けて育て上げてきた物流システムとは異なる解釈のもとで生まれたサービスであり、売上高を増やすことはもちろん、ウェブサイトへのアクセス数を稼ぎ、広告収入を上乗せしたいという目的もあるのではないかという気がします。少し前に問題となったキュレーションサイトに通じるような印象です。

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キュレーションサイトと違うのは、宅配のトラックが公道を走っていることです。過酷な労働状況が原因で運転ミスが引き起こされた場合、同じ道路を走る私たちが巻き込まれる可能性もあります。昨年は山陽自動車道のトンネル多重事故で運送業者の過剰労働が問題となりましたが、こうした事故が自宅の周辺の生活道路で引き起こされるかもしれません。

昨年9月のブログでは、物流には相応の時間とコストが必要であるとひとりひとりが認識し、明らかに過剰なスピードや低価格をアピールするサービスは使わないという意志表示をすべきだと書きました。それに加えて、無料即配をアピールするサービスになんらかの規制を掛けることが必要ではないかと思いはじめています。最大の理由はもちろん道路交通の安全のためです。

ヘッドライトのもうひとつの機能

自動車にとってなくてはならない装備のひとつであるヘッドライト。今週このヘッドライトについてのコラムが「価格.comマガジン」でアップされました。LEDとHIDの違いなど、技術的な話を主としつつ、後半でマナー面について触れたのですが、編集担当の方によると後半の話題に共感していただいた方が多かったとのことなので、ブログで改めて取り上げることにしました。

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価格.comマガジンのコラム=https://kakakumag.com/car/?id=9750

その内容とは、日本のドライバーは欧米に比べて、ヘッドライトの点灯タイミングが遅いことです。夜間は外出しない農耕民族をルーツに持つためか、明るいうちから点けるのは迷惑という気持ちがあるのか、モッタイナイという意識が強いのか、理由はいろいろ考えられますが、夜が明けるとすぐに消し、真っ暗にならないと点けないクルマをよく見かけます。

対向車のない道を走るならそれでも良いでしょう。しかしヘッドライトには暗い場所で自分の行き先を明るく照らすという機能の他に 、歩行者や他の運転者に自分の存在を知らしめるという機能もあります。2輪車は現在、常時点灯となっていますが、それは4輪車に比べて認識しにくい2輪車の存在を早めに知ってもらい、事故を防止するためなのです。

道路は公共空間です。夜に点けて昼に消す自分の家の照明とは違う判断、まわりの人からどう見えるかを考えることが大事です。雨や雪で視界の悪いときには点灯すべきだし、早朝や夕方なども然りです。サンバイザーやサングラスが必要となる状況では、ヘッドライトも必要と考えたほうが良いでしょう。

オートライト

最近は周囲の明るさを感知して自動的に点灯・消灯を行うオートライトも増えてきました。しかしこのオートライト、車種によりタイミングに大きな違いがあり、陸橋の下を通過するたびに点灯する車両、薄暗くなっても点灯しない車両など、気になるパターンがいくつもあります。

人間の判断や操作などを機械で置き換えた自動運転車の開発が進んでいます。しかし自然は人間よりも、もっと機械で置き換えることが難しい対象だと思っています。地震や噴火の予知はできず、大雪や強風などの予報も完璧ではありません。自分が見えにくいと思ったら昼夜問わずに点けるという意識が大切ではないかと思います。

日本の公共交通にいちばん必要なこと

先日、都市計画を専門とする大学の先生と話をする機会がありました。先生は主として北米・南米を研究しているので、先月ポートランドでライトレールなどに乗ってきたことを話すと「ガラガラだったでしょう。でもやっていけるんですよね」と返されました。その後、欧米と日本の公共交通運営の違いでしばらく盛り上がりました。

ポートランドの公共交通はトライメット(TRIMET)という公共組織が運行しています。それまでバラバラだった交通事業者はこのトライメットに一元化され、まちづくりの一部としての整備が始まりました。その原資は地域住民の所得税が中心です。これは欧州の多くの都市交通と共通するところです。資料を見ると、2016年度の収入のうち運賃収入は約2割に留まり、税金収入が半分以上を占めていました。

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一方日本の公共交通は、単一都市圏でも複数の事業者が存在するパターンが多くなっています。そのひとつ、広島都市圏で鉄軌道やバスなどを運行する広島電鉄の2015年度の鉄軌道部門を見ると、収益の9割以上を旅客運輸収入で占めています。収支で見ればトライメット、広島電鉄の鉄軌道部門ともにやや赤字ですが、内容は大きく異なるのです。

欧米と日本の公共交通の大きな違いがここにあります。欧米の公共交通は税金主体で運行しており、黒字経営を目指すこと以上に、より良い公共サービスを提供することを重視しています。公立学校や図書館は税金で運用され、道路も税金で作られているわけですから、違和感はありません。逆になぜ日本の公共交通が民間企業的な運営を強いられているのか、不思議に感じます。

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またポートランドでは、路面電車やバスは道路交通とみなされるそうです。よって都心部への高速道路乗り入れが争点となった1970年代の市長選挙で反対派が当選すると、高速道路のための財源をライトレールをはじめとする公共交通整備に回すことができたというのです。道路と公共交通が別の管轄になっている日本とは、この点も大きく違います。

都市交通に限った話ではありません。昨年春に訪れた、フランスのニースから山間部へと伸びるローカル線、プロヴァンス鉄道もそうでした。この鉄道については記事にしているので興味がある方はお読みいただきたいのですが、日本では私鉄と紹介されているこのローカル線の実態は、第2次世界大戦前には地方自治体が経営に参加しており、現在は公営交通として運行されているのです。

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プロヴァンス鉄道の記事=http://toyokeizai.net/articles/-/118362

日本の公共交通改革は、先人たちが主として欧州の状況を伝え、富山市など一部の都市がそれを導入するという形で進んできました。しかし、上記のとおり欧米と日本では内部構造が大きく異なるので、多くの都市で改革がなかなか進まないというのが現状です。

公共交通は学校や道路と同じように公共サービスとして位置づけ、都市交通は単一事業者に統合し、まちづくりと連携して整備を進めていく。JR北海道をはじめ、日本各地で公共交通の危機が叫ばれている今こそ、表面を変えることより、内側から生まれ変わらせることが重要です。そのうえで日本ならではの企業努力を盛り込めば、世界一素晴らしい公共交通が生まれるかもしれないと、先生は話していました。

自転車と共存する街

2週間前のブログで取り上げたポートランドを再び紹介します。今回のテーマは自転車です。下の写真は、国際空港からダウンタウン(旧市街)を抜けて西部の新興住宅地へ至る MAXライトレールのレッドラインです。ドアの脇の空間に自転車が立て掛けてあります。

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車内に車いすやベビーカー利用者のためのユニバーサルスペースを設け、そこに自転車も置く作りはヨーロッパで何度か見てきましたが、自転車を縦に置く方式はあまり目にしたことがありません。自転車利用者にとっては固定がひと手間になりますが、限りある車内空間を節約できるし、乗車中は座って過ごせるので、 個人的にはこの方式のほうが良いと感じました。

ユニバーサルスペースにはスーツケースのアイコンもあります。レッドラインは国際空港へ向かうので、大きな荷物を持った乗客もいます。そういう人たちのためのスペースでもあるのです。見方を変えれば、空港アクセス鉄道の荷物置き場に自転車も置けるようにした、と言えるかもしれません。

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一方路線バスは、車体の前方にキャリアが付いており、ここに自転車を載せることが可能です。写真で見る限り2台の積載ができるようです。 バスは電車より狭いので外側に置くという判断をしたのでしょう。ちなみにこちらでは、車いすやベビーカーは中央の扉から出入りします。つまり車いすやベビーカーと自転車を分けて扱っているのです。

ポートランドでも自転車は、道路上では車両として見なされますが、鉄道の車内では車いすやベビーカーと同列に扱われ、バスではそれとも異なる対応がなされます。状況に応じて柔軟に対処しているのです。まるで大昔からこのスタイルを続けているのではないかと思うぐらい自然に映りました。

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もうひとつ、自転車置き場も紹介しましょう。ポートランドの自転車置き場はこのように、パイプを使った簡単な作りが主流です。ダウンタウンを含めて駐輪料金はないようです。もちろんロックはないので盗難対策は自己責任になります。シンプルかつスマートで、自転車に似合う作りだと思いました。

法律に縛られず利用者を第一に考えた臨機応変な対応と、複数の交通を組み合わせてより良いモビリティを構築していく姿勢、そして利用者の判断を尊重した必要十分な設備が、とても心地よく映りました。ポートランドの人口は約60万人。同等の規模を持つ日本の地方都市なら十分に導入可能な手法ではないでしょうか。
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