THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2018年10月

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MaaSの真実を知った日

2週間前のこのブログで、フィンランドのヘルシンキからエストニアのタリンへフェリーで移動したことを書きました。では両都市では何をしていたのか。まずヘルシンキでの活動を書けば、私も所属している日本福祉のまちづくり学会の有志が企画したMaaS(マース)のスタディツアーに参加していました。

ご存じの方も多いかと思いますが、MaaSはMobility as a Serviseを示した言葉です。しかし単なるモビリティサービスを示しているわけではありません。この言葉をいち早く使いはじめたフィンランドの交通通信省、ヘルシンキ市役所、MaaS Global社から説明を受け、議論を重ねることで、MaaSの真の意味が理解できたような気がします。内容についてはモビリティ専門ウェブサイト「ReVision Auto&Mobility」でも紹介していますので、興味のある方はご覧ください。

ヘルシンキのトラム
ReVision Auto&MobilityのMaaSの記事 = https://rev-m.com/mobility/whim20181009/

日本でも今年になって、MaaSに取り組む交通関係者が多くなりました。特に自動車業界で目立つような気がします。しかしフィンランドのMaaSは自動車のために生まれたわけではありません。その逆で、ICTを駆使することで公共交通にマイカー並みの利便性を持たせ、自動車移動に頼りがちな市民を公共交通に誘導するという考えです。

そのためにMaaS Global社が製作したスマートフォンアプリ「whim(ウィム)」は、目的地への経路探索を行うのみならず、クレジットカード情報をあらかじめ入力しておくことで事前決済を行い、定額乗り放題のプランまで用意しています。しかも鉄道やバスだけでなく、タクシーや自転車シェア、カーシェア、レンタカーなど、あらゆるモビリティサービスを使って案内をしてくれます。

whimアプリ画面

アプリを開発すればOKという簡単な話ではありません。ヘルシンキの交通にはさまざまな事業者が絡んでおり、各事業者の時刻や運賃などのデータがないと実現は不可能です。そのために陣頭指揮を取ったのがフィンランド政府で、交通事業者などが持つデータのオープン化を進めました。国を挙げてのスマートモビリティへの取り組みがMaaSに結実したと言えそうです。

もうひとつヘルシンキのMaaS関連のウェブサイトを見ると、インテグレーテッドモビリティという言葉を目にします。ユーザーの声でもオールインワンであることがもっとも評価されているようです。前述のように鉄道、バス、自転車シェア、レンタカーなどあらゆる交通を、マイカーのように一体で利用できることもスマートモビリティでは大切だと教えられました。

ヘルシンキ自転車シェア

つまり特定の交通事業者が自分たちの利益だけのためにアプリを提供することは、MaaSとは言えないと思います。日本の多くの都市は複数の民間事業者が競合している状況ですが、利用者にとって有り難いのはやはり、ひとつのアプリで多彩なモビリティを一体に使いこなせる、スマートでインテグレーテッドなサービスではないでしょうか。そのためには国や自治体のリーダーシップが大切だと感じました。

前述のReVision Auto&Mobilityでは11月21日にセミナー&交流会を開催予定で、私もMaaSをテーマにした回で登壇予定です。この場を含め、MaaSの本場を見てきたひとりとして、今後も積極的にこのテーマについて情報発信をしてきたいと思っています。

計画運休は今後も実施すべき

先週末に日本に上陸した台風24号では、進路に近い首都圏でJR東日本が前もって運休を告知・実施する、いわゆる「計画運休」を初めて行なって話題になりました。

IMG_5862

まず記しておきたいのは、首都圏では計画運休は今回が初めてだったものの、JR西日本の京阪神圏では4年前に初めて行なっており、今年は強風や高潮で多くの被害が出た台風21号でも実施していることです。つまり日本国内で見れば画期的なことではありません。鉄道に限ったことではありませんが、マスメディアの東京偏重報道は是正を望みたいところです。

ではなぜJR東日本は、JR西日本では4年前から取り入れていた計画運休を、今回初めて導入したのか。これは台風の襲来予定が日曜日の夜だったことが大きいと思います。平日に比べれば明確に利用者が少なく、朝ではないので事前に知らせやすかったのではないでしょうか。

ただし決定の時間帯は、台風21号のときのJR西日本は前日だったのに対し、読売新聞のウェブサイトでは運休の約6時間前に記事がアップされていました。東京在住の自分はこれでも十分だと思いましたが、台風の進路はある程度予測できるものであり、遠くから東京を訪れる人のことを考えれば、前日発表のほうが望ましかったように思います。

スクリーンショット 2018-10-06 18.45.16
YOMIURI ONLINEのウェブサイト = https://www.yomiuri.co.jp

一方でテレビのニュースでは、列車が止まりはじめた20時過ぎに駅に来て初めて運休を知った利用者を映し出していました。この場合は「知らなかった」のではなく「知ろうとしなかった」のだと考えます。手にはスマートフォンを持っていたので、情報収集はできたはずです。地震と違って予測が可能なわけですから、こういう人まで判断に含める必要はないと思います。

ただJR東日本にとっては、翌日のアナウンスがなく、運休や遅延で混乱を招いた点はマイナスでした。夜の間に強風による倒木などがあることは想定できたはずで、朝のラッシュ時が終わった午前9時ぐらいからの運転再開にしても良かったのではないかと思います。倒木の瞬間を時刻入りで記録し、公開することができれば、計画運休が正しい判断だったと理解してもらえるでしょう。

計画運休は仕事に支障を及ぼすという声も出るかと思います。しかし普段の生活環境を守ろうとする気持ちが、被害を大きくした例はいくつもあります。東日本大震災では、避難を拒む住民の自宅に消防団員が説得に向かったが聞き入れてもらえず、消防団員もろとも津波で命を落としたという話を聞きました。台風が近づいていれば仕事や学校を休み、身の危険を感じたら自治体に言われなくても率先して避難するのが自然な行動ではないでしょうか。

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台風24号は自分の動きにも影響を与えました。関東地方に最接近する日曜日の夜にヨーロッパから帰国予定だったからです。現地でやることは残っていましたが、早めに日本に帰るほうが重要だと考え、1日早い便に振り替えてもらいました(上の図版の左が当初の予定表、右が変更後の搭乗券)。帰国後、本来乗るべきだった便を見ると、同じ時間帯に到着する他の国際線と同じように、翌日到着に変わっていました。

翌日は前述のように、沿線の倒木などで多くの路線が運休あるいは遅延という状況になっていたので、自分の選択は正しかったのかなと思っています。備えあれば憂いなし。この言葉の大切さを噛み締めているところです。
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