THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2019年01月

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東急の観光列車は北海道を変えるか

JR北海道が東京急行電鉄(東急)と連携し、北海道で観光列車を走らせようと計画しているというニュースが昨日ありました。東急からの正式発表はありませんが、現在JR東日本と伊豆急行を直通運転し、横浜と伊豆急下田を結ぶ東急の観光列車「THE ROYAL EXPRESS(ザ・ロイヤルエクスプレス)」のような車両を考えており、早ければ2020年にも走らせたいとのことです。

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伊豆急は東急グループなので、東急の観光列車が走るのは理解できます。横浜発着というのも東横線の終点であることを考えれば妥当です。しかし今回報じられた観光列車が走るのはJR北海道の路線で、東急グループとは無関係です。

JR北海道の経営状況が芳しくないことは以前も書きました。改善のための手段として収益率の高い観光列車は有望ですが、今のJR北海道が自力で観光列車を開発するのは難しいという気がしています。そこで東急との連携という話が出てきたのだと思います。THE ROYAL EXPRESSは温暖地域を走る直流電車なので、JR北海道の車両ベースということも考えられるでしょう。

東急グループは北海道と無縁ではありません。札幌でバスを運行する「じょうてつ」(旧定山渓鉄道)を傘下に持ち、札幌にはホテルや百貨店、ニセコにはスキー場やリゾートホテルを構えるなど、道内でも多彩な展開をしています。ハードとしての交通だけでなく、まちづくりやレジャーといったソフト分野に強みを持つことも、観光プロジェクトに向いているのではないかと考えています。

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さらに東急は近年、空港運営に積極的に参加しています。2016年から仙台空港に関わり、今年4月からは静岡空港も運営開始。さらに今年7月に優先交渉権者が決定予定の北海道内7空港(新千歳・稚内・釧路・函館・旭川・帯広・女満別)の特定運営事業公募にも応募しています。

北海道7空港については、東急は新千歳空港ターミナルビルを運営する北海道空港や三菱地所、日本政策投資銀行などと企業連合を組み、仏バンシ・エアポートとオリックスなどの連合、仏パリ空港公団と加森観光、東武鉄道、東京建物などの連合とともに第一次審査を通過。しかしバンシ・オリックス連合が台風で被害を受けた関西国際空港の復旧と対策に全力を注ぎたいということから辞退し、北海道空港陣営とパリ空港公団陣営の一騎打ちになっているとのことです。

まだ北海道7空港の運営参加が決まったわけではありませんが、これまで札幌中心のネットワークを構築してきたJR北海道の特急列車に対し、東急の観光列車については新千歳空港を核としたネットワークとなることを望みます。北海道を観光で訪れる人の多くが飛行機を利用しているからです。一部で報道されている新千歳空港駅の機能強化が、この観光列車を契機として推進されることも期待します。

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2030年度に札幌延伸予定という北海道新幹線と競合するという意見も出そうですが、そうは思いません。JR東日本が検討している東北新幹線盛岡~新青森間の最高速度引き上げが実現すれば、東急がリゾート施設を構えるニセコは東京からの所要時間が飛行機利用と同等になります。ニセコの最寄駅である倶知安までの先行開業を望む声もあるほどです。新幹線は雪に強いことも知られています。旅の選択肢が増えるのは好ましいことだと思っています。

団地の街から大学の街へ

このブログではいままでも、団地やニュータウンについて書いてきました。その中から今回は、幼少期に住んでいた埼玉県草加市の松原団地を取り上げます。昨年末、6年ぶりにここを訪れた理由のひとつとして、2017年4月に東武鉄道の最寄り駅の名前が「松原団地」から「獨協大学前<草加松原>」に変わったことがありました。

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東武鉄道のニュースリリースによると、松原団地駅は完成当時、東洋最大規模のマンモス団地と言われた松原団地の最寄駅として、入居開始と同じ1962年に開業。獨協大学は2年後に開学しています。しかし現在、団地の建て替えや市街地の整備が進展していること、2014年に旧日光街道の松並木「草加松原」が国指定の名勝地となったことなどから、草加市では駅名変更協議会を設立。東武鉄道に対し獨協大学前<草加松原>への変更要望を提出しました。

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東武側でも「大学のあるまち」を想起させ地域のイメージアップが図れるとともに、副駅名として草加松原を採用することで観光地としてのPRにもつながることから、改称を受け入れたとのことです。しかし現地を訪れると、それ以上の理由があることが分かりました。

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以前訪れた際にはまだ残っていた、自分が住んでいた棟を含め、多くの団地が取り壊され、マンションや広場に姿を変え、わずかに残る棟も住民の退去が完了し、解体を待っている状況でした。マンションには当然ながら松原団地の名はありません。しかも昔住んでいた場所は「松原団地記念公園」となっていました。松原団地は機能としての役目は終え、果たした役目を回顧する存在になりつつあるようでした。
 
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しかし大昔に通った幼稚園は健在で、昔はなかった保育園も新設してありました。幼稚園の脇では親子連れが遊んでいました。建物とともに住民の世代交代が進んでいました。一方駅前には商店や飲食店に加えて市立図書館もあり、不動産屋は学生相手の看板が目立ちます。昔よりも学生街としての雰囲気は増していました。
 
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団地やニュータウンの「老後」に悩む地域が多い中で、松原団地は団地を取り壊して現代的なマンションに建て替え、駅名まで変えて、大学の街への転身を図っていました。昔の住処が消えたことを悲しいとは思いませんでした。むしろ生まれ変わった街が順調に育ちつつあることを目にして嬉しく思いました。松原団地という地名がなくなるのは残念ですが、こういうまち再生もアリだと思うようになりました。

車いすの自動運転が重要な理由

昨年末のセミナー「地域交通と情報技術〜MaaS・ライドシェア・自動運転と地域交通計画〜」で自動運転とMaaSの関係について話したことは、前回のブログで書きました。自動運転というと多くの方はバスやタクシーを含めた自動車を連想するでしょう。私の話もメインは自動車についてでしたが、最後に車いすについても触れました。

このブログで何度も紹介しているWHILLは、パナソニックと共同開発した自動停止・自律移動・隊列走行可能な「WHILL NEXT」を、2017年に羽田空港で実証実験を行い、東京モーターショーで展示もしましたが、今月米国ラスベガスで開催したCES(家電見本市)では独自開発の自動運転システムを公開するとともに、MaaSの中でラストワンマイルを担っていくと表明しました。

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WHILLのウェブサイト = https://whill.jp

私も短期間ながら車いす利用経験があります。10年ほど前のフランス出張時に足を骨折し、その状態で帰国となった際に、パリと成田の空港内で介助スタッフとともに車いすのお世話になったのです。パリの空港で事情を説明したところ車いすがスタッフとともに準備され、飛行機のドア直前まで移動。到着した成田でも車いすが用意されており、スタッフの介助で快適に空港を出ることができました。

両空港と航空会社(エールフランス)の協力により、フランス出国から日本入国までのプロセスをシームレスにつなげてもらったわけで、今思えば一種のMaaSであったと感じています。また当時、松葉杖での歩行はできたにもかかわらず車いすのお世話になった経験から、普段は車いすに乗らない人でも、長距離・長時間移動の際に車いすを選ぶという考え方はアリだと思うようになりました。

ではその車いすを自動運転とする理由は何か。空港のように多数の人が行き交う場所での接触事故防止に役立ちますし、空港に慣れていない人にとっては、目的の飛行機に確実に搭乗するためにMaaSと自動運転の連携は有効です。そして使い終わった車いすを回収し、必要とされる場所に輸送する際にも自動運転は役立ちます。パナソニックがプレゼンテーションしたように、同じシステムを用いたパレットを連携させることも可能でしょう。

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パナソニックのウェブサイト = https://www.panasonic.com/jp/home.html

技術的にも、日本における電動車いすの最高速度は6km/hであり(本音を言えば欧米諸国のような15km/h前後が望ましいですが)、制動距離は自動車に比べると圧倒的に短くて済みます。また自転車と違って停車時に自立しているので、自動停止や隊列走行がしやすいという利点もあります。自動運転との相性が良い乗り物のひとつと言えるのです。

もちろん空港だけでなく、ショッピングモールや展示会場など、車いすと自動運転・MaaSの融合はさまざまなシーンで、足腰の弱い人々の移動を快適にしてくれるでしょう。昔のブログで、英国の商業施設で車いすを貸し出す「ショップモビリティ」という仕組みを紹介しましたが、それの進化形と言えるかもしれません。2020年に公道での自動運転実現を目指すというWHILLの取り組みに期待します。

地方型MaaSが試される2019年

2019年最初のブログになります。本年もよろしくお願いいたします。今回は以前ここでも紹介した、昨年末に開催された「地域交通と情報技術〜MaaS・ライドシェア・自動運転と地域交通計画〜」というテーマのセミナーについて記します。当日はこのブログを見ている方々も何名か参加していただきました。この場を借りてお礼を申し上げます。

ルーラルMaaS概念図

この日は第一部がフィンランドのMaaSについて、私も登壇した第二部はMaaS・ライドシェア・自動運転と地域交通計画についてプレゼンテーションを行いました。フィンランドのMaaSについては以前も紹介したので割愛させていただくとして、第二部についてひとことで紹介すると、以前のブログで予想したとおり地方視点、生活者視点の内容になりました。

アーバンMaaS概念図

上の2つの図版はフィンランド交通・通信省での勉強会で見せていただいたものです。2枚目の都市型MaaSでは複数の交通をシームレスにつなぎ合わせることがポイントなのに対し、1枚目の地方型MaaSは多様な移動や物流を単一の交通で賄うことが重要としていました。フィンランドでは前者はヘルシンキのWhim(ウィム)が具現化したのに対し、後者については決定的な回答は出ていないとのことでした。

一方日本では、以前のブログで紹介したように貨客混載という取り組みがあります。2015年のヤマト運輸と岩手県北交通による「ヒトものバス」が最初で、その後鉄道やタクシーにも波及しており、異なる物流事業者の混載も実現しています。こうした多種多様な需要をMaaSによりシームレスに1台につなげる仕組みを確立すれば、世界に先駆けた地方型MaaSの提案になるのではないかと考えています。

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ヤマト運輸のウェブサイト = http://www.kuronekoyamato.co.jp

こうした取り組みはビジネス視点では難しいでしょう。儲けが見込めないからです。一方で今回のセミナーでは、地方交通は多くが自治体の補助により運行されているので、自治体主導によるMaaSは実現しやすいのではないかという意見が出ました。個人的にもそのような動きが出てくることを期待します。そのためには路面電車整備時に用意されるような「MaaS補助金」が必要になってくるかもしれません。

当日、私は自動運転とMaaSの関係について話しました。自動運転は自家用車よりも公共交通、特に交通量が少なく運行経路が限られる地方交通で導入しやすいという意見が多くなっています。しかし現在実証実験中の無人運転車が実用化されると、乗務員に行き先を聞いたり、両替を依頼したりという行為はできなくなります。MaaSによる事前の経路探索や運賃決済が必須になってくるのです。

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日本は世界最先端の高齢化国家であり、 運転免許返納者も増加しています。一方で若年層を中心に大都市への一極集中が進んでおり、地方の過疎化もまた加速しています。運転手不足も深刻です。我が国の交通でまず手をつけるべきは地方であると、多くの人が認識しているでしょう。その解決策のひとつとして、地方型MaaSをどう導入していくか。今年のモビリティシーンにおけるテーマのひとつだと考えています。
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