THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2019年03月

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2つのモビリティコンソーシアムは両立するか

昨年10月、ソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資で設立されたMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ、以下MONET)が今週、本田技研工業と日野自動車の出資を受けたことを発表するとともに、モビリティイノベーションの実現に向けた『なかまづくり』の一環として、企業間の連携を推進する「MONETコンソーシアム」を設立しました。

「MONETコンソーシアム」は、次世代モビリティサービスの推進と移動における社会課題の解決や新たな価値創造を目的としており、多様な業界・業種の企業の参加により、自動運転を見据えた車両やサービスの企画、データ連携、自治体とのマッチングなどMaaS事業開発や、勉強会・情報交換会の実施、課題取りまとめ・提言活動などによるMaaS普及に向けた環境整備を活動の内容とするとのことです。

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コンソーシアムの運営主体でもあるMONETは今年2月に事業を始めたばかりですが、直後に次世代のオンデマンドモビリティサービスの提供に向けて17自治体と連携しており、今月までに愛知県豊田市と神奈川県横浜市でオンデマンドバス、広島県福山市で乗合タクシーの実証実験を始めています。動きの早さに驚かされます。

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このニュースを聞いて、もうひとつの民間企業主体のモビリティコンソーシアムを思い出しました。JR東日本の呼びかけで2017年9月に設立された「モビリティ変革コンソーシアム」です。こちらはJR 東日本が 2016 年 11 月に策定した「技術革新中長期ビジョン」の実現に向けて、モビリ ティを変革する場として創出したもので、交通事業者、国内外メーカー、大学、研究機関などが連携することによって、単独では難しい社会課題の解決に取り組むものです。

鉄道ネットワークを中心としたモビリティ・リンケージ・プラットフォームを構築し、出発地から目的地までの「シームレスな移動」の実現をめざすDoor to Door 推進 WG(ワーキンググループ)、街の特性に応じた利用者の移動機会・移動目的の創出と、駅及び駅周辺の魅力度・快適性を向上することで、駅を核とした新しい街づくりをめざすSmart City WG、サービスの品質向上、JRグループ会社社員の作業安全性向上・作業効率化、メンテナンス業務革新をめざしたロボット活用を進めていくロボット活用 WGがあり、これとは別にアイデアソン、ハッカソン、勉強会なども開催しています。

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先月のブログで紹介した、岩手県陸前高田市のJR東日本大船渡線BRT専用道におけるBRT自動運転の技術実証も、Door to Door推進WGのテーマとして実施されたものです。昨年秋に日立製作所と共同で新開発したスマートフォンアプリ「Ringo Pass(リンゴバス)」の実証実験では、NTTドコモや国際自動車のアプリと連携させ、鉄道やバスだけでなく自転車シェアやタクシーを利用することも可能としています。

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MONETコンソーシアムは発表時点で計88社が参加しており、一方のモビリティ変革コンソーシアムは今年2月現在で運営会員98、一般会員40となっています。注目したいのは前者にJR東日本、後者にソフトバンクが名を連ねていることです。トヨタグループではデンソーや豊田通商などが両コンソーシアムの会員になっており、愛知製鋼は前者のみに所属しています。もちろん他にも片方のみに入っている団体は数多くあります。

展開フィールドとしてはモビリティ変革コンソーシアムのほうが広そうですが、自動運転やMaaSでは重なっていることも事実です。ただしこれまでの実証実験から見る限り、方向性はやや違うと感じています。ゆえに2つのコンソーシアムが対決することも、統合することも望ましい姿ではないでしょう。時に連携しながら良きライバルとして並立し、自動運転やMaaSの普及に取り組んでいくシーンが現実となれば、日本がこの分野の先進国になる可能性はあると思います。

蒸気機関車が走り続けるために

蒸気機関車(SL)を取り上げるのは、このブログで初めてだと思います。今年1月、鉄道専門誌「鉄道ジャーナル」の取材で、関東地方で蒸気機関車を営業運転している東武鉄道と真岡鐵道の整備現場を訪れ、関係者に話を伺いました。その内容は今月21日発売の鉄道ジャーナル5月号に掲載していますが、いま蒸気機関車を走らせるには多くの苦労があることを教えられました。

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まずは独特の構造です。蒸気機関車は石炭などを燃やして水を温め蒸気を作り出し、その蒸気でピストンを動かして車輪を回し走ります。現在の鉄道で使っている電車や電気機関車、ディーゼルカーやディーゼル機関車とはまるで内容が違います。東武鉄道では2年前に蒸気機関車を復活させるにあたり、機関士は経験がある事業者に研修に行ったそうです。整備面でも電気や内燃機関で走る車両とはまったく違う知識と技能が必要とされるので、勉強と訓練は欠かせません。

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手間の掛かる構造であることも分かりました。真岡鐵道では運転の翌日だったこともあり、各部の掃除を行なっていましたが、一週末の運転だけで石炭カスがバケツ一杯になるほど出てくるのに驚きました。これ以外の部分も電気や内燃機関で走る車両とは桁違いのメインテナンスが必要であり、もちろん電子制御など入っていないので、人間の力と技に頼る作業になります。現場の苦労を思い知らされました。

さらに日本で作られた蒸気機関車は、改造で生まれた形式を除けば、第2次世界大戦直後までに製造されています。つまり若い車両でも約70歳です。当然ながら部品の交換は必須になります。東武鉄道ではある部品に亀裂が生じたため、JR北海道が所有する保存機関車の部品と交換したそうです、現在東武鉄道が走らせている機関車もJR北海道から借り受けているのでスムーズに話が進んだとも言えるわけで、会社が異なれば違った結果になったかもしれません。

もうひとつ2つの現場を訪れて感じたのは、企業規模の違いが現場の違いに現れていることでした。東武鉄道は最近になって蒸気機関車を復活したこともあり、検修庫は広くきれいで、真岡鐵道との差を感じました。しかし1両の蒸気機関車に掛かる手間は同等です。他の鉄道車両にも言えることですが、中小事業者のほうが負担は大きいと感じました。

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いま蒸気機関車を走らせるのは、技術遺産の継承とともに観光目的という部分が大きく、モビリティとは直接関係はないかもしれませんが、蒸気機関車の運転によって多くの観光客が訪れ、それが地域活性化につながることは確実であり、東武鉄道も真岡鐵道も運行の理由に挙げていました。しかし中小の事業者ほど、事業運営に占める比重は大きくなるのもまた事実です。

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日本で蒸気機関車を運行している鉄道事業者は、年に一度会合を開き情報交換などを行うそうです。このコミュニティを発展させ、運転士の育成から部品の手配までを一体化してはどうかと思いました。機関車はすべて元鉄道省/国鉄の機種であり、共通項は多いのではないかと想像します。多くの人に感動を与える裏で、並外れた苦労があることを知った今、オールジャパンの体制で支えていっても良いのではないかという気持ちを抱きました。

タクシーとライドシェアの共存を望む

近年、我が国のタクシー業界にいろいろな動きがあることは、このブログでも取り上げてきましたが、今月も2つのニュースがあったので、今回はこの話題を取り上げることにします。

ひとつは3月7日に行われた政府の「未来創生会議」で、地域の移動手段について議論が行われ、地方を中心にドライバーの人手不足が深刻化している中、自家用車による有償運送制度を利用しやすくするため、タクシー事業者との連携を容易にしていく法制度の整備を図っていくとしました。さらにタクシーについてはICT活用も含めた相乗りの導入で、利用者が安価に移動できるようにもするそうです。

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もうひとつはタクシーやバスの運転に必要な2種免許のありかたを検討していた警察庁が、来年度に実験的な教習を行ったうえで、現在21歳以上かつ普通免許を取得してから3年以上となっている年齢要件を引き下げることを検討し、必要な教習の内容を議論した結果、一定の運転教習を受けた者については特例的に引き下げても問題はないとする提言を取りまとめました。

前者については、すでに一部の公共交通空白地域で米国Uberのアプリを活用した自家用車による有償運送を行なっていますが、こうした動きについてタクシーとライドシェアが協力して移動を支えていくことを示したもので、歓迎すべき発表だと考えます。相乗りについても一部の事業者がAIデマンドタクシーなどの名称で実証実験を行なっており、その流れを促進するものであると感じています。

ところが同日、全国から集まったタクシー約400台が経済産業省を取り囲み、ライドシェアで自らの客を奪われることに反対の声を挙げたそうです。多くは営業に困らない大都市部のタクシーではないかと想像します。そこまで抗議するなら自分たちが撤退した公共交通空白地域に再進出して営業してほしいものです。大都市と地方では状況が大きく異なることを踏まえるべきですし、何よりもまず利用者のことを考えて行動してほしいものです。

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一方の2種免許取得年齢引き下げについては、タクシー業界は受験資格を19歳以上かつ普通免許等保有1年以上に引き下げることを要望しているようですが、警察庁では現状の普通2種免許の技能教習28時限、学科教習24時限を技能教習60時限、学科教習18時限にする考えを持っているようで、ただでさえ自動車への興味が薄れている若者が、教習時間の増える免許を取得しようとするのか疑問です。

そもそも日本の運転免許取得は、欧米の自動車先進国と比べて時間も金額も掛かることが知られています。その結果、交通事故の比率が著しく低くなっているかというと、そうではありません。運転手の人材に困らなかった時代であればともかく、現在のように多くの業界でドライバー不足と高齢化が課題となっているのであれば、運転免許取得のハードルそのものを見直すことも必要ではないでしょうか。

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ちなみに昨年秋に訪れたフィンランドでは、 MaaSを含めた公共交通移動促進のプロセスにおいて、タクシーの営業資格を国の主導で規制緩和し、資格を取得すればUberなどのライドシェアも営業が可能となり、MaaSアプリの一部に組み込まれるようになっています。タクシーとライドシェアが対決するという構図は過去のものであり、共存こそが理想であるこというフィンランドの姿勢に共感します。

空港アクセス鉄道を考える

今年2月、国内の2つの空港に乗り入れるアクセス鉄道についてのニュースが立て続けにありました。東京の羽田空港と熊本空港で、羽田はJR東日本が計画していた「羽田空港アクセス線構想」の一部ルートを対象に、東京都環境影響評価条例に基づく環境影響評価手続きの実施に向けた準備を進めることが発表され、熊本は県知事が、県を中心に設立する第3セクターが整備し、JR九州が費用の一部を負担すると発表しました。運行はJR九州が担当することになるでしょう。

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羽田空港は、現在はJR東日本グループの一員である東京モノレールが京浜急行とともに乗り入れており、リムジンバスが首都圏各地に向けて走っています。JRは貨物線を活用することで羽田空港と山手線東側および西側、りんかい線を結び、宇都宮線や高崎線、常磐線などにも乗り入れることで、リムジンバス並みの広範囲のアクセスを改善しようと考えているようです。

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現状でも羽田は交通環境は恵まれている感じもしますが、モノレールは浜松町発着というのがネックです。大阪伊丹空港に乗り入れる大阪モノレールが延伸を発表しているのとは対照的です。一方リムジンバスは、首都高速道路の山手トンネルが開通したこともあって、新宿からでは鉄道より早く着きますが、渋滞によって時間どおりに行けなかったり、乗車定員が少ないので次の便に回されたりすることがあり、鉄道の安定性を実感することが何度かあります。

羽田空港アクセス線が開通すると、東京モノレールの命運が気になるところです。京浜急行についても品川方面のルートは競合になるでしょう。ただ羽田は利用者数が多いので、万一のためも考えて複数のルートを用意しておくことも大切と考えます。ちなみに自分は、リムジンバスは国内線、モノレールと京浜急行は国際線ターミナルから回っていくので、その違いも考えて選びます。マイカーは渋滞に加え駐車場の混雑もあり時間が読めないのでほとんど使いません。

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一方の熊本空港は市電の延伸やモノレールの新設などが検討されてきたようですが、その中で空港の北側を走るJR豊肥本線から線路を伸ばす案に落ち着いたようで、最新情報では懸案に上がっていた3ルートのうち、三里木駅からのルートが有力になっています。滑走路をくぐる必要がないうえに、熊本県民総合運動公園や運転免許試験場の近くを通過するので、空港利用者以外の需要も取り込めることが理由のようです。
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ただし熊本空港は現状では国内線・国際線合わせて1日平均で約40便にすぎません。自分が利用したことがある空港で発着数が同等なのは、国内では広島や北九州、海外ではエストニアのタリン、オーストリアのザルツブルク、フランスのボルドーなどですが、鉄道が乗り入れていたのはタリンだけで、しかもライトレール(トラム)でした。

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熊本県知事はアクセス鉄道の列車は豊肥本線に乗り入れないと明らかにしており、JR熊本駅は中心市街地から離れているので、空港から街の中心まで二度の乗り換えが必要になります。整備費用が少なく都心に直行する市電の延伸のほうが、利用者にとっては楽ではないかという気がします。現状ではオーバースペックという印象は否めず、飽和状態にある福岡空港を肩代わりする形での国際線充実など、空港側の改革も必須ではないかと思っています。

イオン撤退騒動が投げかけたもの

以前からメディアで話題になっていた、佐賀県上峰町にある大型商業施設「イオン上峰ショッピングセンター」が一昨日閉店しました。運営会社のイオン九州が2018年5月の取締役会で、2月28日の閉店を決定していました。現地に行ったことはありませんが、この件は以前から気になって調べたりもしていたので、閉店を機に感じたことを綴りたいと思います。

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同店は1995年に「上峰サティ」としてオープン。当時は佐賀県のみならず福岡県南部や長崎県を含めても最大級の商業施設だったそうです。場所は佐賀市と福岡県久留米市のほぼ中間で、マイカーを使って広範囲から訪れてもらうことを狙ったようです。当初はその狙いが成功し、レストラン街や映画館も設置するショッピングセンターに成長しました。

しかし1998年、大規模小売店舗が事実上の規制緩和となり、目の前にオープンしたドラッグストアをはじめ、周辺に相次いで商業施設が作られました。このうち佐賀市、唐津市、筑紫野市のショッピングセンターはイオン系列でした。中でも佐賀大和店および筑紫野店は、レストランや映画館を含めた総合商業施設になっていました。対照的に上峰店は映画館やレストラン街が閉鎖されるなど衰退していったそうです。

商機のある場所に力を注ぎ、そうでない場所は撤退を含めた見直しを行う。ビジネスとしては当然の結論かもしれません。しかしそこからは地元とのつながりが見えてこないのも事実です。ついでに言えば、営業を続けていても利益の多くは大都市にある会社本部に流れ、地元に落ちるお金が限られることは、地場の商店との違いになります。

高度経済成長時代、郊外に建てた一軒家からマイカーで直行でき、そこへ行けば何でも揃うショッピングセンターは、生活のパートナーとして理想だったかもしれません。しかしその結果、多くの地域で町の中心にあった商店街が廃れたうえに、近年はインターネットショッピングの普及でショッピングセンターも苦境に陥っています。買い物をする場所そのものが失われつつあり、しかも住民は高齢化で運転免許を返納する人が増えているというのが実情です。

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イオン上峰ショッピングセンターのウェブサイト = http://kamimine.aeonkyushu.com

昨年の閉店決定を受けて記者会見した上峰町長は「イオンがあるからこの町に転居してきた人も多い」と発言するなど、ショックは大きかったようです。町はイオン九州に対して土地や建物の無償譲渡を求め、合意しました。町では跡地を含めた中心市街地の再開発を行う予定で、そこにはイオンも関わっていくようです。いずれにせよショッピングセンターに生活機能をおまかせするような姿勢は変えていかなくてはならないでしょう。

上峰町には鉄道駅がないので、佐賀市と久留米市および鳥栖市を結ぶバスを交通の軸と考え、行政施設や病院を跡地に集結させ、デマンドバスやライドシェアで周辺の移動を担うというシーンが思い浮かびます。あのイオンが無償譲渡で撤退したことから悲観的に見る人もいるようですが、個人的にはここまで有名になったことを逆に生かし、各方面からの知見を集めて、同様の立場に置かれた地方の再開発のモデルになっていってほしいと思っています。
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