THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2020年03月

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富山ライトレールの14年間

先週末の3月21日、富山駅の南北に分かれて走っていた路面電車の線路が接続し、直通運転を始めました。私も開通式が行われた前日から取材で現地にいたのですが、そこで気づいたのは「富山ライトレール」という名前が過去のものになっていることでした。今年2月、南側の通称・市内電車を走らせている富山地方鉄道に吸収合併されていたからです。

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そもそも富山の路面電車南北直通は富山ライトレールありきでした。廃止が議論されていたJR西日本富山港線を、北陸新幹線建設に伴う富山駅周辺の連続立体交差化事業補助金などを活用してLRTに転換すると富山市が決断し、第3セクターの富山ライトレールを設立すると、2年後の2006年から日本初の本格的LRTとして運行を始めました。その時配布した資料に、すでに南北直通の計画は載っているからです。

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そこには市内電車の環状線化構想も書いています。富山市はプランどおり、一度は廃止された環状線を2009年に復活すると、2015年の北陸新幹線開通に合わせて、この環状線を含めた市内電車を新幹線ホーム下に乗り入れました。その過程では、環状線が走る中心部にイベント広場のグランドプラザやガラス美術館・市立図書館を建設し、まちづくりと一体での公共交通整備であることもアピールしてきました。

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一連の改革の原動力になったのは間違いなく富山ライトレールの成功であり、5周年や10周年はお祝いムードに包まれていた記憶があります。だからこそ、この名前をあっさり手放したことに驚きましたが、2011年に出した拙著「富山から拡がる交通革命」の取材で森雅志市長は、欧州の都市交通のように、県内の鉄軌道をひとつの経営にまとめるべきと話していたことを思い出し、そのためのプロセスのひとつだと納得しました。

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鉄道の運行期間として14年はかなり短いほうでしょう。しかし最近の日本の鉄道で、経営不振による廃止などではなく、発展的解消を遂げた事例は異例でもあります。森市長は来年春での退任を表明していますが、同氏が推進してきた公共交通を軸としたコンパクトなまちづくりとともに、日本のLRTの歴史に大きな一歩を記した富山ライトレールを、これからも語り継いでいく必要があると感じました。

駅名のつくりかた

春は鉄道会社のダイヤ改正がよく行われます。それに合わせて新駅の開業や駅名変更も実施されたりします。首都圏ではJR東日本山手線・京浜東北線にひさしぶりの新駅「高輪ゲートウェイ」が誕生し、京浜急行では一挙に6つの駅名を変更しました。公募を行ったことも共通しますが、両社の駅名の決め方にはかなり違いがありました。

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高輪ゲートウェイ駅は、車両基地の跡地を使った再開発の一環として計画され、駅以外の建物は現在工事が進んでいます。資料を見ると、駅名の公募を行うはるか前の2015年に、「グローバルゲートウェイ品川」というコンセプトワードを決めており、駅名公募のときの資料にも書いています。条件にこそしませんでしたが、社内にはゲートウェイという言葉を入れたい気持ちが強く、公募で1位だった高輪と組み合わせたのではないかと想像してしまいます。

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しかし批判が続出したこともあり、江戸時代に「高輪大木戸」という門が置かれ賑わっていたという説明をしています。木の質感を生かした建築や明朝体を使った駅名標は、こうした歴史的な側面に合致しているような気がします。明朝体は視覚障害者にとって読みにくいという意見もあるので、地色を濃くして高輪大木戸駅とすればまだ違和感は少なかったかもしれません。

一方の京浜急行は、2018年に創立120周年を迎えたことを機に、沿線の小中学生を対象として実施した「わがまち駅名募集」がベースです。羽田空港に関連する2駅は空港側で呼び名の変更があり、東京モノレールともども変えることが前提になっていたうえに、大師橋駅(旧産業道路駅)は川崎市の都市計画事業で地下化されるのを機に変更を考えていたそうで、品川駅や横浜駅など26駅を除き、子どもの意見を聞くことにしました。



変更の理由などについては昨年「東洋経済オンライン」で記事にしていますので、興味のある方はご覧いただきたいのですが、そこにもあるように子どもの意見をそのまま使ったわけではありません。4駅のみを変更し、10駅については「鮫洲【鮫洲運転免許試験場】」のように副駅名標を掲げることになりましたが、募集から決定までに時間をかけ、票数などは公開せず、最終決定は京浜急行が行っています。

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タイトルで「つくりかた」という表現を使ったのは、駅名もまた、まちづくりの一環と考えているからです。どんなまちにしたいかを、住民や自治体の声を聞きながら短い言葉で表現するのは、大きな影響力があります。その点でいけば、事業者としての先入観は持たず、子どもの意見に耳を傾けたうえで、最終的にはプロの目で冷静に判断した京浜急行のプロセスは、参考にすべき事例ではないかと思いました。

移動者急減にどう対応するか

最初の写真は今週の平日18時頃、東京のJR山手線東京駅近くの車内の様子です。昨年までと比べると、驚くほど乗客が減っています。山手線に限ったことではなく日本全国、いや世界各地でこのような状況になっているでしょう。これに対応して飛行機や新幹線は減便を始めており、事務所の近くを走るバスは臨時ダイヤで運行するようになりました。観光客だけでなく、日常的な移動も激減していることを痛感します。

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ただ首都圏について言えば、もともと朝夕の通勤ラッシュが他の地域より激しかったうえに、昨年の台風上陸時は、計画運休が発表されているにもかかわらず多くの通勤者が運転再開を待って長蛇の列を作るなど、会社に行くことこそ重要と考える人が多く見られました。そのため東京五輪パラリンピックを前にして、リモートワークやフレックスタイムが奨励されていたという経緯もあります。

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そんな状況が新型コロナウィルスの流行で変わりつつあります。もちろん導入できない会社や職種もありますが、これまでさまざまな理由を挙げてリモートワークやフレックスタイムを拒んできた会社が、一転して受け入れはじめている現状は悪いことではないでしょう。またバスについては東京都内でも運転士不足が問題になっており、臨時ダイヤ導入はこの点も関係していると考えています。

しかしながら交通事業者にとっては収入減につながるのもたしかです。欧州ではすでに人員削減を決めた航空会社もあります。日本でもこの状況が長期に渡れば、同様の動きが出てくることは十分に予想されますし、事業者の体力によって差が出てくることも考えられます。

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そこで思い出すのはやはり、欧米のように公共交通を税金や補助金主体で運営する手法です。たとえばフランスの場合、交通事業者の収入に占める運賃の割合は2割ほどで、残りは税金や補助金です。多くを占めるのは交通負担金(交通税)と呼ばれるもので、沿線の事業所から従業員の給与総額に応じて徴収しているので、リモートワークも影響ないことになります。地域で交通を支える姿勢が伝わってくる制度です。

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今回の新型コロナウィルス流行によって、多くの企業がそれまで取り組んでいなかったリモートワークやフレックスタイムの導入に踏み切りました。同様にして公共交通も、公が支える方向への改革を進めても良いのではないかと思い始めています。ピンチをチャンスに変えることもまた大切と考えます。

超小型モビリティ 日仏の思想の違い

毎年春に開催されるジュネーブモーターショーが、新型コロナウィルス感染拡大の影響で中止になったことは前回触れました。ここで公開予定だった新型車の多くはオンラインで公開されましたが、その中で自動車業界のみならず、モビリティ分野の人々も注目している車種があります。昨年自動車づくりを始めて100周年を迎えたフランスのシトロエンが発表した電気自動車「アミ(Ami)」です。

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シトロエンは1960〜70年代の小型車にこの名前を使ったあと、昨年のジュネーブモーターショーでアミワン・コンセプトと名付けたプロトタイプを発表しており、今回発表したアミは量産型になります。全長2.41m、全幅1.39mというコンパクトサイズ、車体前後や左右のドアを共通としたデザイン、ボディをグレーのみとしてアクセントカラーで個性を演出するコーディネートなど、見た目も個性的ですが、超小型モビリティのカテゴリーに属することも注目です。

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欧州の超小型モビリティにはL6eとL7eがあります。L1e〜L5eは2輪車や3輪車となっているので、2/3輪車の延長と考えているようです。軽自動車ベースの認定制度とした日本とは考え方が大きく違います。最高出力や最高速度はL7eが上ですが、代わりに45km/h以下、6kW以下のL6eは運転免許不要で、フランスでは14歳以上、それ以外の多くの欧州諸国でも16歳から運転可能です。アミもこのL6eなので多くの人がドライブできるようになっています。

シェアリング、長期レンタル、購入の3つの乗り方が選べることも画期的です。カーシェアの料金は1分あたり0.26ユーロで、レンタルは最初に2,644ユーロを払うと、その後は月19.99ユーロで利用できる定額制です。販売価格も6,000ユーロからと安価です。申し込みはすべてオンラインで、家電量販店で実車を見たりテストドライブしたりできるそうです。

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実は日本でも超小型モビリティについて動きがあります。昨年秋の東京モーターショーでは複数の企業がコンセプトカーを出展しましたが、その前から国土交通省では新しいルールについて検討を進め、今年2月に公表しました。概要はウェブサイトに出ており、明日までではありますがパブリックコメントを受け付けています。



資料によれば、全長2.5m、全幅1.3m、全高2mを超えない、最高速度60km/h以下の軽自動車について、前面衝突は衝突速度を40km/hとし、横滑り防止装置を義務付けることで側面衝突基準を適用しないなどとあります。これまでは衝突時の乗員保護や歩行者保護などについて、構造要件を満たしていれば衝突試験が免除されていたので、ルール改定によって公道を走れなくなる車両が出てきそうです。欧州のL6e/L7eも衝突試験がないので、シトロエン・アミが日本の道を走るのは難しいと予想しています。

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既存の自動車に近い性能を与えようとする日本と、多くの人に移動の自由を提供しようとするフランス。同じ超小型モビリティでここまで考え方の違いがあることに驚かされましたが、シトロエン・アミは3種類の乗り方を用意したことを含めて、移動をもっと自由にしていきたいという思想が一貫しています。そのあたりが多くのモビリティ関係者に評価されているのではないかと思っています。