THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2020年08月

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東京の人口が減りはじめている

新型コロナウィルスの感染が東京などの大都市周辺で目立つことを受け、東京への一極集中が収まり、地方移住が進むのではないかという予想が、現実になりつつあるようです。総務省が27日に発表した今年7月の人口移動の概況によると、東京都は転出者数が転入者数を大きく上回り、全都道府県でもっとも多い2522人の転出超過となったのです。逆に転入超過が多かったのは北海道の1534人、千葉県の1189人、大阪府の1036人などとなっています。

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このうち北海道と大阪府は昨年の7月も転入超過でしたが、千葉県は昨年7月は転出超過だったのに対し、今年は転入超過になっています。同じように昨年は転出超過だったのに今年は転入超過になったのは、岩手県、茨城県、山梨県、島根県、香川県、長崎県など10県以上あります。逆にプラスからマイナスになった県も東京都以外にいくつかありますが、東京都は昨年は1199人の増加を記録しており、数字の大きさで見ても突出しています。

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東京都が転出超過になったのは、今年は5月に続いて2度目になります。しかしこれまでも転出増加の月があったわけではなく、毎年3月と4月は新生活に合わせて転入が大きく増えるだけでなく、それ以外の月も増加していました。東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)、名古屋圏(愛知県、岐阜県、三重県)、大阪圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県)の3大都市圏の比較でも、東京圏の転入増加数が名古屋圏と大阪圏に比べて大きく落ちています。



出生や死亡もあるので、これだけでは人口そのものが増減したかはわかりません。そこで東京都の人口を見ると、今年5月に初めて1400万人を超えて1400万2973人に達したものの、その後の伸びはなく、7月は1399万9624人となっています。私が事務所を置いている渋谷区の人口を見ても、今年3月に14万人ちょうどになり、翌月は14万1186人に増えたものの、その後は少しずつ減り続けていて、8月1日時点では14万928人になっています。 

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今後、新型コロナウイルスの状況が変われば、この流れにふたたび変化が起こる可能性はあります。しかし私の知人が勤める会社も、テレワークが一般的になったことを受けて来年度からオフィスの縮小を決めたそうで、完全に元に戻ることはないと予想しています。東京の人口は増え続けるというのが多くの人々の共通した認識だったはずであり、この動きは驚くべきものです。

一方で以前から、一極集中の弊害がさまざまな場面で出てもいました。このブログでもたびたび指摘してきました。なのでこの動きは歓迎すべきものだと考えています。そして最初に書いたように多くの県では逆に転入増加となっている、つまり新たに住む人が増えているわけです。5月に「今が一極集中是正の好機」と書きましたが、それが現実になりつつあります。

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とはいえ東京から出て行く人たちが、いわゆる田舎暮らしを望んでいるわけではないことは明白です。人が密集した場所は避けたいが、モビリティを含めた都市機能は欲しいと思っているはずです。5月にも書きましたが、まちづくりをしっかりやっている場所が選ばれるのではないかと思います。もちろん地方もコロナの影響は受けており、その中でのまちづくりは大変ではありますが、ここなら住みたいと思わせる土地を作っていくことが、いままで以上に大事になっていると認識しています。 

新幹線に個室があってもいい

JR各社がお盆期間中(8月7日〜8月17日)の利用状況を発表しました。新幹線はどの路線も昨年の同じ時期の2〜3割の利用率という、かなり衝撃的な数字が出ました。外国人旅行者が皆無に近いのに加え、帰省などを控える人も多かったからでしょう。

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私は旅行は最近していませんが、仕事で新幹線はたまに乗ります。今週も北陸新幹線を使いました。前回5月に乗ったときは1両に2〜3人だったので、今回は自由席にしました。あのときに比べると利用者は増えていましたが、いちばん混む大宮〜高崎間でも3人掛けの座席が空いている場所がありました。旅行客が減ったことに加え、テレワークで出張なども激減していることが関係しているようです。

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お盆期間中は飛行機も利用客が減少しました。先月末の予約状況の発表では日本航空、全日空とも昨年の3〜4割になっていました。しかし機内は新幹線ほど空いていなかったようです。便数を昨年の8割程度に抑えたからでしょう。対する新幹線は基本的に減便をしませんでした。鉄道会社は駅などのインフラも自分たちが運営するので、本数を減らしてもコスト削減にさほど効果がないことが関係しているようです。

JR各社にとっては厳しい状況ではありますが、利用する側にとっては同じ料金で2〜3人掛けを占有できるのですから得をした気分です。それに始発駅では除菌作業を行い、走行中は数分で空気を入れ替えているので感染の心配もほとんどありません。もちろんマイカーやバスと違って渋滞による遅延もありません。皮肉ですが今の状況は新幹線移動の価値を高めているような気もします。

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一方で今後しばらくこの状況が続くのであれば、新しいサービスを提供しても良いのではないかという気持ちになりました。それは個室です。日本では個室を用意した列車は限られていますが、JRの「サンライズ瀬戸・出雲」は多彩な個室を効率的に配置しており、ミサワホームが設計に関わったこともあって心地よい空間を提供していて、根強い人気を維持しているようです。

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個室であれば座席より高めの料金を設定できるはずで、利用者が限られていても収益の改善が期待できます。2〜3時間でも横になって行けることをありがたいと思う人もいるでしょう。これまでの新幹線は高速大量輸送にこだわってきました。その結果、食堂車を廃止するなどサービス面は割り切りが見られましたが、ウィズコロナの新しい生活様式の中で、新幹線にも新しい様式を期待したいところです。

「自家用有償旅客運送」に代わる名前が欲しい

経済産業省と国土交通省の合同プロジェクトという画期的な取り組みとして昨年度に実施した「スマートモビリティチャレンジ」が、今年も行われています。新しいモビリティサービスの社会実装を通じて移動課題解決や地域活性化に挑戦する地域や企業を応援するというコンセプトは従来どおりで、今年度は経産省の先進パイロット地域、国交省の日本版MaaS推進・支援事業合わせて52地域が選ばれました。

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内容を見ると、静岡県伊豆半島や京都府京丹後市など昨年に引き続き選定された地域も多く、このブログで取り上げた「グリスロ潮待ちタクシー」「ちょいソコ」などのサービスも見ることができますが、一方で新規に採択された地域ももちろんあります。このうち地方で目立つのは、鉄道・バスやタクシー、オンデマンド交通に加えて、自家用有償旅客運送を活用した事例です。

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自家用有償旅客運送についてはこのブログで何度か取り上げてきましたが、マイカーなど白ナンバーの車両を使って地域の移動を支えるものです。市町村が運営するものとNPOや商工会などが運営するものがあり、それぞれに福祉目的のものと交通空白地解消目的のものがあります。車両数は年々増えており、近年は企業や学校などが所有する車両の持ち込みが可能となったり、タクシー事業者に運行を委託したりという規制緩和も行われています。

昨年度のスマートモビリティチャレンジで自家用有償旅客運送の使用を明らかにしていたのは、京都府南山城村の1カ所だけでした。ところが今年度は、北海道上士幌町が福祉バス、静岡県湖西市が企業シャトルバス、富山県朝日町がマイカー、浜松市佐久間地区がEVタクシーを使って行うと表明しています。さらに京都府舞鶴市と大阪府池田市は無償輸送を選択していますが、地域の住民が移動を支えるという点は同じです。

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meemo実証実験についてのサイト = https://www.city.maizuru.kyoto.jp/shisei/0000006900.html

このうち舞鶴市はオムロンの子会社や大阪の日本交通と共同で、日本で初めて地域住民による輸送と公共交通を組み合わせたMaaSの実証実験を2020年4〜6月に実施。続いて7〜9月にも実証実験を行っています。いずれも専用開発したMaaSアプリ「meemo」を用いています。一方朝日町ではスズキや博報堂などとともに「ノッカルあさひまち」の名称で今月から来年3月まで実証実験。ウェブあるいは電話で登録や予約を受け付けていくそうです。

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ノッカルあさひまち予約サイト = https://buscatch.jp/nokkaru_asahimachi/

国交省では地域輸送を考えるうえで、まずは道路運送法に定めてあるバスやタクシーの整備や維持から考えてほしいとしています。しかしご存知の方も多いとは思いますが、バスが撤退しタクシーも数台という地域が少なくありません。そこで市町村やNPOなどが道路運送法上の登録を行い、自家用有償旅客運送を走らせる事例が増えているのです。

それが難しい場合は舞鶴市のように、道路運送法上の許可・登録を要しない運送として、無償で移動を提供することになりますが、個人的には移動や物流を担う者に対しては、相応の報酬を利用者あるいは自治体が支払うべきであると考えています。今のルールで言えば、公共交通の維持が難しい地域ではやはり自家用有償旅客運送が適役でしょう。

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スマートモビリティチャレンジではデジタル技術の活用により、事業者の負担を減らしつつ利用者が使いやすいサービスの提供を重視しています。その視点で見ると、このブログでも紹介した京丹後市の「ささえ合い交通」は、日本の地域交通にUberアプリを組み込んだという点でやはり先駆的です。そしてここまで多くの事例が出てきたわけですから、地域ごとの個性的な名前とは別に、国が主導して「相乗り交通」などわかりやすい呼び名を与えてほしいものです。

*来週は夏休みとさせていただきます。次回は8月22日更新予定です。 

カーシェアは今どうなっているか

新型コロナウイルスの流行が続く中、感染防止が期待できる移動手段として注目されているのがマイカーです。とりわけ公共交通が貧弱な地域が多く、生活するうえでマイカーが不可欠という場所が多かった地方は、工場などテレワークが難しい仕事場が多いこともあり、感染防止の観点から自動車通勤を奨励している会社もあるようです。

東京などの大都市でも、人口密集地域ゆえ感染率が高いこともあり、自動車移動に切り替えた人がいるようです。そのためか、いままで以上に渋滞する道路が多くなりました。逆に鉄道やバスなどの公共交通は感染を恐れる利用者が多いことから、大きな落ち込みを示しています。では公共交通と同じように、不特定多数の利用者が使うカーシェアリングはどうなのでしょうか。先月ウェブメディア「現代ビジネス」で記事にしたパーク24を例に紹介します。

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パーク24というとタイムズの駐車場がおなじみですが、カーシェアでも国内市場の約4分の3と圧倒的なシェアを占めます。その動向を見ると、車両台数は昨年12月の2万7236台に対して今年6月は2万7623台、貸出拠点数は1万2762か所に対して1万3034か所と、昨年までのような伸びはないものの、減ってはいないことがわかります。会員数も着実に増加しているとのことで、私の自宅の近くでも台数は増えており、約半数は使用中という状況です。

ところが同社が手がけるタイムズレンタカーは対照的で、昨年末と今年6月を比べると台数は3万634台から1万6977台、拠点数は380か所から364か所と、台数については半減に近い状況です。インバウンドを含めた旅行者の大幅な減少が大きく影響したレンタカーに対し、仕事や買い物など日常的な利用が多いカーシェアは影響が少なかったと言えそうです。



感染を避けてマイカー移動に切り替える動きが出ていることは最初に書きました。しかし先が見えない状況で、購入という大きな決断は下しにくいはずです。特に大都市では駐車場が月数万円になるなどハードルはさらに高くなります。コロナ禍で外出機会が少なくなったのでマイカーは不要と考える人もいるでしょう。とはいえ公共交通の移動は不安と考える人は根強いようで、パーク24が先月発表したアンケート結果では鉄道やバスなどの代わりに使ったという声が多く寄せられています。

もちろん感染対策は大切ですが、それは商店や飲食店を利用する時も同じです。パーク24では感染対策として、車内への除菌スプレー搭載、定期巡回時の清掃消毒作業強化を実施しているとのことです。加えて利用者自身が気をつければ問題はないと考えています。それでも同社では利用者が伸び悩んでいることを踏まえ、これまでにないサービスを提供しています。

8月1日までの期間限定で、通常は18時から翌朝9時まで2640円だった夜間利用サービス「ナイトパック」の料金を480円と大幅に引き下げたのに続き、8月3日から10月1日までは、このナイトパックをタイムズパーキング1回分の駐車料金を含めて880円で利用できるキャンペーンを、東京都世田谷区と大阪府吹田市で実施するそうです。会社の近くで帰宅時にカーシェアを借り、自宅近くの駐車場にひと晩止め、翌朝通勤時にオフィス近くで返却するという使い方ができることになります。

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駐車場付ナイトパックキャンペーンのニュースリリース = https://www.park24.co.jp/news/2020/07/20200731-1.html

日本のカーシェアは借りた場所に車両を返さなければならないルールになっています。本音を言えば欧州のように乗り捨て可能なルールを認めてほしいところですが、逆に言えば現状は目的地で駐車場を使うことになるわけです。現状のルールである限りカーシェアと駐車場の連携は必須であり、今回のキャンペーンは両方を運営する事業者の強みを生かしたものとして注目されそうです。