THINK MOBILITY

モビリティジャーナリスト森口将之のブログです。モビリティやまちづくりについて気づいたことを綴っています

2020年12月

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コロナで打撃の地域交通をどうするか

2020年最後のブログになります。今年はなんといっても新型コロナウイルス感染拡大で多くの人々が影響を受けました。モビリティ分野も例外ではなく、多くの人が外出を控え、テレワークで通勤需要が減ったなどの理由により、公共交通は利用者が激減。当然ながら経営難に陥っている事業者は増えており、タクシー業界では廃業したところさえあります。

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ではどのぐらい打撃を受けているのでしょうか。インターネットメディア「ビジネス+IT」で、路線バスをテーマとした記事を書く際に参考にさせていただいたのが、一般財団法人 地域公共交通総合研究所の代表理事で、岡山県を中心に交通事業を幅広く展開する両備グループ代表を務める小嶋光信氏が11月26日に発表した調査結果です。バス・鉄軌道・旅客船事業に従事する124社が回答というところからも、信頼のおける内容であると思っています。



一部を紹介すると、2020年4~9月で約半数にあたる52%の企業が前年度比で30~50%の輸送人員減少となっており、22%の企業は50~70%、13%の企業は70~90%という壊滅的な減少に見舞われているとのこと。もちろん売上金額も減少しており、結果として9月までに11%が債務超過に転落しており、剰余金を半分以下に減らした企業も39%存在するそうです。

岡山駅前で待機する路線バス

このまま政府などからの補助や支援が得られない場合、19%の企業で今期中に経営維持が困難になり、31%は来期中に経営維持が難しくなるという回答が寄せられました。ただし事業者はすべてを政府に頼る姿勢ではなく、自身の企業努力も行うことを基本とし、そのうえで公的支援を受けながら、公共交通を守るスタンスと報告しています。いずれにせよ国内の公共交通は多くが危機的状況にあることは間違いありません。

この発表が契機になったかどうかはわかりませんが、国も動き始めています。国会では今月2日、改正交通政策基本法が賛成多数で可決、成立しました。人口の減少や大規模災害、コロナに代表される感染症の流行などを踏まえ、公共交通の機能を維持するために国が支援することを明記しています。また15日に閣議決定された第三次補正予算には、国土交通省が緊要な経費として要求した「ポストコロナを見据えた地域公共交通の活性化・継続」が盛り込まれました。



こうした政策によって地域交通の運営が維持されることを期待しますが、一方で以前も書いたように、現状の経営方法では限界に来ていることも実感します。JR東日本が終電繰り上げを発表する際に「需要は元には戻らない」と発表したことは納得できるところであり、欧米のように公共交通は原則として1地域1事業者として税金や補助金で支える経営に切り替える、つまり公立学校や図書館と同じような体制への転換を望みます。
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もちろんその中で経営努力をしていくことは大切ですが、ベースとしての資金が安定していれば車両やインフラのバージョンアップ、自動運転やMaaSなどのテクノロジーの導入がスムーズにいくはずで、乗務員の待遇改善もできるでしょう。写真はフランスの小都市オルレアンのLRTとアンティープのバスです。このように欧州の公共交通は地方であっても美しく、乗りたいという気持ちの原動力になります。

南仏アンティーブの路線バス

コロナ禍では郊外や地方への移住が進んでいます。東京都の人口は今年6月から6か月連続で減少しています。ではどこに移り住むのでしょうか。これも以前ブログで触れたことですが、大都市で暮らしてきた人々は公共交通での移動が習慣になっているので、街選びの段階でもそのあたりの利便性を重視する可能性は十分にあります。いまこそ地域交通が重要であると考えています。

*次回の更新は2021年1月9日となります。良いお年をお迎えください。

新幹線の安定感を物流に生かしたい

今週は北海道や東北・北陸で12月としては記録的な大雪となり、関越自動車道で長時間の立ち往生が発生するなど、交通も大きな影響を受けました。大雪の原因として、この時期としては強い寒気が上空に流れ込んだことに加え、日本海の海水温度が平年より1〜2度高いことも挙げられています。水温が高いので海水が蒸発しやすくなり、雪雲が発達したとのことです。

海水温度の上昇は、昨年夏に台風が勢力を弱めないまま相次いで日本列島に上陸し、大きな被害をもたらした原因のひとつでもあったことを思い出します。日本政府は10月、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを目標に掲げました。この発表については賛否両論ありますが、いままで以上に異常気象が頻発している以上、1人ひとりが地球に優しい生活を心がけることが大切だと改めて思いました。

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そんな中で運転を続けていたのが新幹線です。このブログを書いている19日夜も、上越新幹線や北陸新幹線をはじめ全線が時刻通りに運行しています。在来線で長年大雪の影響を受けてきた経験を生かし、人・車両・インフラのすべてにおいて最大限の対策を行ってきたことが効果を発揮しているのでしょう。

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高速道路もインフラについては新幹線並みの設備が可能かもしれません。しかしドライバーや車両の冬装備は各自に任されています。特にトラックは空荷の状態では接地力が確保できないのでスタッドレスタイヤだけでは駆動力が不足気味で、チェーンを装着しないと発進や登坂ができない場合がありますが、関越自動車道の関越トンネル内はチェーン禁止となっていることから、万全な対策をせずに走っているドライバーがいると想像しています。こうした状況では新幹線並みの運行は到底無理でしょう。

新幹線が新型コロナウィルスの影響を受け、乗車率が低迷していることは以前も紹介しました。あのときは個室を提案しましたが、物流を担当してはどうかとも思っています。日本の物流におけるトラックの分担率はなんと91%(トンベース)。今回のような立ち往生が発生すると、物流のほとんどがストップしてしまいます。しかも立ち往生の間エンジンは回し続けており、環境面でも好ましくありません。それなら速くて正確な新幹線に物流の一部を担ってはどうかと考えるのが自然ではないでしょうか。

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そう思った理由のひとつはJR東日本が昨日、来年3月のダイヤ改正に関連して、現在唯一の2階建て新幹線であるE4系を来年秋までに引退させると発表したからです。最高速度が他の形式より劣ることなどを理由に挙げているそうですが、貨物列車であればさしたる欠点とはならず、大きな車内空間は貨物輸送に適したパッケージングになり得ると思っています。

もちろん旅客から貨物への転換に際しては車両の改造だけでなくインフラの整備も行う必要がありますが、新規に車両を開発するよりはコストが抑えられるはずです。物流の安定化はもちろん、モーダルシフトとして環境対策にも寄与するでしょう。トラック1本足打法と言える現在の日本の物流体制の改革案のひとつとして提案したいと思います。

鉄道の電化と自動車の電動化の違い

先週のブログで取り上げた自動車の電動化という言葉を聞いて、個人的に思い出すのが鉄道の電化です。ただし似ているのは字面だけで、鉄道の電化の場合は線路に架線などを張って、電車や電気機関車の運行を可能にすることを言います。車両とインフラの両方に関係する言葉であるわけで、家庭の電化とも意味が異なります。

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電化路線を走る車両がすべて電車あるいは電気機関車になるわけではありません。たとえばJR東日本東北本線の仙台と仙石線石巻あるいは石巻線女川を結ぶ仙石東北ラインは、東北本線が交流電化、仙石線が直流電化で、両線をつなぐ短絡線は電化していないため、ディーゼルハイブリッド方式の車両が架線の下を走っています。

逆に電化していない路線を電車が走ることもあります。同じJR東日本では宇都宮と烏山を結ぶ烏山線がそのひとつで、バッテリーに蓄えた電気で走る、電気自動車のような方式の車両が走っています。充電は両端の駅、および宇都宮周辺の東北本線乗り入れ区間で行なっています。

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海外ではこのようなハイテク車両は珍しいですが、電化しているのにディーゼルカーやディーゼル機関車が走る例は多くあります。フランスのグルノーブルからリヨンへの移動は、全線電化していたにもかかわらずディーゼルカーでした。さらに列車の本数が少ないローカル線では、費用対効果が薄いこともあり電化しません。これは日本も共通です。電化が進んでいて非電化が遅れているとは一概に言えません。

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つまり鉄道の場合、国や自治体の政策として電化が推進される場合もありますが、架線を張るか否か、電車を走らせるか否かは、多くが事業者の判断です。コストが見合わない場合は非電化やディーゼルカーという選択をし、非電化であっても沿線の環境対策が必要であればバッテリー電車などを導入しています。前回のブログで、自動車の電動化は利用者や事業者など使う側の判断を尊重すべきと書いたのは、こうした鉄道の状況を知っていたからでもあります。

ただ鉄道が自動車より、はるかに環境負荷が低いことは頭に入れておく必要があります。国土交通省の2018年度のデータでは、ひとり1kmあたりのCO2排出量は乗用車133gに対し、鉄道はわずか18gにすぎません。これはディーゼルカーなども含めた数字です。しかもJR東日本は自前の発電所を2つ持っており、運行に使う電力の約6割、首都圏に限れば約9割の電力を賄っています。うちひとつは再生可能エネルギーとして扱われる水力発電所です。

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国家や企業の戦略的な部分も大きいエンジン車販売禁止を強行するより、移動の一部を鉄道に切り替えるほうが、手軽に温暖化対策できることを改めて認識します。特に大都市周辺に住んでいる人たちにとっては鉄道イコール電車なわけですから、各自が日々の移動に鉄道を積極的に組み込めば、それだけで電動化になります。電車移動の比率が高まれば、電気自動車に乗り換えるより、結果的にはエコになるかもしれません。

エンジン車禁止の流れをどう考えるか

欧米を中心に目立っている「◯◯年からエンジン車禁止」の流れ。日本でも地球温暖化対策の一環として、2030年代半ばにガソリン/ディーゼルエンジンだけで走る自動車(ここでは以下エンジン車と書きます)について事実上、国内での新車販売を禁止する動きがあるという報道がありました。今回はこのテーマに触れます。

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この種のニュースでよく使われるのが「電動化」という表現です。自分の記憶ではこの表現はスウェーデンのボルボカーズ(商用車のボルボとは別会社)が使いはじめたと記憶しています。これは全車を電気自動車にすることではなく、マイルドハイブリッドを含めたハイブリッド車も電動化になります。しかし当初はマスコミでさえ電動化=電気自動車化と誤解する人がおり、いまなお同じような解釈をしている人がいるようなので注意が必要です。

日本はトヨタ自動車を筆頭にハイブリッドカーを数多く市場化してきており、電気自動車についても日産自動車がリーディングカンパニーのひとつになっています。マイルドハイブリッドについては軽自動車でも採用車種があるほどです。なので今回、2030年代中盤にエンジンだけで走る自動車の新車販売を禁止するというルールになっても、さほど困らないのではないかという気がしています。

ではなぜ欧米は電動化戦略を推進しているのか。2つの理由があると考えています。ひとつはゲームチェンジを画策していることです。欧州の自動車業界は、日本製ハイブリッド車の人気を快く思わず、クリーンディーゼル車で対抗する姿勢を明確にしましたが、フォルクスワーゲンの不正行為が明るみに出たことで、戦略の見直しを余儀なくされました。そこで新たにターゲットに据えたのが電動化であると理解しています。

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https://www.swissinfo.ch/jpn/進む氷河の融解_消えゆくスイスの氷河-2018年の異常気象で更に縮小/44490606

もうひとつは温暖化の影響が日本以上に深刻であることです。我が国でも近年、異常気象が頻発していますが、欧州ではアルプスの氷河減少やヴェネツィアの浸水など、より明確な形で影響が出ています。さらにコロナ禍での対応にも違いがあります。日本は一度現状に戻してから改革を始めようという考えが主流なのに対し、海外はコロナ禍を改革の好機と捉えているというマインドが目立ちます。このあたりは民族性の違いもあるので、どちらが良いと決めつけることはできません。

モビリティ、つまり移動のしやすさは移動する人、乗り物を走らせる人の判断が第一であり、企業や国家の戦略を押し付けるべきではないと考えています。ただ都市内の移動でエンジン車が効率面でも環境面でも好ましくないのは自分の経験からも明らかであり、このブログでも何度か提案したように、自動車についても使い分ける時期に来ているのではないかと思っています。

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新幹線と路面電車の車両はデザインもメカニズムも明らかに違います。それと同じように、都市内の移動は電気自動車のシェアリングをメインとして、郊外や地方に出かけるときにマイカーに乗るような使い分けが好ましいのではないでしょうか。将来的には前者は自動運転のシェアカーになっていくでしょう。ドアtoドアの魅力は手放すことになりますが、自ら操る楽しさはそのほうが満喫できると考えています。