今年1月、JR北海道が、昨年度の路線別営業成績を公表しました。札幌近郊区間を含め、全線区が赤字という衝撃的な結果でした。今月、北海道で仕事があったので、いくつかの路線を利用してみました。そこで見たのは、苦しい経営状況の中、自然の厳しさに対峙して移動を提供しようとしている必死な姿でした。

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新千歳空港で飛行機を降りた私は、まず千歳線で札幌に向かいました。ところが発車後間もなくトンネル内で停止。隣りの駅で、列車に付着した氷が落下してポイントに挟まったとのことでした。40分ほど停車したあと、札幌に向かいましたが、当初の予定では札幌から特急になって旭川へ向かう予定が、札幌で運転を打ち切ってしまいました。

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札幌から40kmほど離れた岩見沢付近が集中豪雪に見舞われ、列車に遅れが出ているためでした。札幌駅のホームは、遅れた列車を待つ人たちでごった返していました。 千歳や札幌は晴れていたので、俄かには信じられませんでしたが、 その後札沼線(学園都市線)に乗って北へ向かうと、状況が把握できました。

札沼線は、 途中の北海道医療大学駅までは6両編成の電車が走り、一部は複線となっているなど、東京や大阪の通勤路線を思わせます。ところがそれ以北は一転して、ディーゼルカーが1両で終点の新十津川までを結びます。100円の利益を出すために必要な経費を示した営業係数は、北海道医療大学駅以南を含めた札幌圏が107円なのに対し、同駅〜新十津川駅間は2162円に跳ね上がります。
 
この日は北海道医療大学駅に近づく頃から天気が急変し、雪になりました。岩見沢と同じ集中豪雪の地域に入ったようです。レールは見えず、列車は雪を踏みしめながら進みます。日中ということもあり、乗客は数人でした。途中の石狩月形駅で降り、逆方向の列車で引き返しました。こちらは学校帰りの生徒が大勢乗ってきました。運転免許のない彼らにとっては、雪の日の唯一の移動手段であることが理解できました。

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北海道の人口密度は約65人/㎢で、言うまでもなく全都道府県中最低です。しかも全人口の35%以上が札幌市に住むという、日本における東京以上の一極集中となっています。札幌圏外の鉄道経営が厳しいことは、この数字からも容易に想像できます。さらに札幌市内には地下鉄や路面電車が走っており、近距離輸送のかなりの部分を担当しています。よって200万人近い住民を抱えながら、この圏内のJRが赤字となるのでしょう。

経営が苦しくなれば、当然ながら人員削減を含めたコストカットを目指すことになります。しかし北海道は今回のように、冬になれば大雪への対策で膨大な人員や費用が必要とされます。コストダウンを進める中で、積雪対策を含めた安全対策ができるのか。この状況が近年の事故の頻発に関係しているのではないかと想像しています。

東京に住む人の中には、そこまで赤字で運行に苦労するなら廃止すべしという意見を持っているかもしれません。しかし鉄道などの公共交通は、すべての人に移動の機会を与える重要なインフラです。人間にとって移動とは本能であり、フランスなどでは人間の基本的な権利として認められています。安易な廃止はすべきでないと考えます。また現在残っているJR北海道の路線の多くは貨物輸送も担っており、隣国に近いことから非常時には防衛にも寄与することが考えられます。

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30年近く前の国鉄分割民営化の手法は、はたして正しかったのかという疑問を抱きます。リニア中央新幹線を建設できるほどの力を持つJR東海と、日々の運行に苦労しているJR北海道の差はあまりに大きいと感じるからです。高速道路を管理していた日本道路公団の民営化のほうが、三大都市圏をベースにした分割としており、まだ理解できます。

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日本同様、人口減少に悩む国が多いヨーロッパの鉄道は、国営・民営にかかわらず一国一事業者が一般的です。JR北海道など現行の会社を残したままで解決を目指すなら、上下分離方式を導入し、保線などの整備を切り離し、各社からの使用料や国の補助をベースに全国一括で面倒を見る手法があるのではないでしょうか。

同じ道内の移動を賄う飛行機は、一部キャリアが拠点を札幌の丘珠から新千歳に移行しています。道外や国外からの観光客も念頭に置いたネットワークを構築しているのでしょう。この転換は参考になりそうです。またJR九州のように、速さ以外の魅力を持つ列車を走らせても良いかもしれません。残された時間はそう長くないと認識しています。