先日、都市計画を専門とする大学の先生と話をする機会がありました。先生は主として北米・南米を研究しているので、先月ポートランドでライトレールなどに乗ってきたことを話すと「ガラガラだったでしょう。でもやっていけるんですよね」と返されました。その後、欧米と日本の公共交通運営の違いでしばらく盛り上がりました。

ポートランドの公共交通はトライメット(TRIMET)という公共組織が運行しています。それまでバラバラだった交通事業者はこのトライメットに一元化され、まちづくりの一部としての整備が始まりました。その原資は地域住民の所得税が中心です。これは欧州の多くの都市交通と共通するところです。資料を見ると、2016年度の収入のうち運賃収入は約2割に留まり、税金収入が半分以上を占めていました。

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一方日本の公共交通は、単一都市圏でも複数の事業者が存在するパターンが多くなっています。そのひとつ、広島都市圏で鉄軌道やバスなどを運行する広島電鉄の2015年度の鉄軌道部門を見ると、収益の9割以上を旅客運輸収入で占めています。収支で見ればトライメット、広島電鉄の鉄軌道部門ともにやや赤字ですが、内容は大きく異なるのです。

欧米と日本の公共交通の大きな違いがここにあります。欧米の公共交通は税金主体で運行しており、黒字経営を目指すこと以上に、より良い公共サービスを提供することを重視しています。公立学校や図書館は税金で運用され、道路も税金で作られているわけですから、違和感はありません。逆になぜ日本の公共交通が民間企業的な運営を強いられているのか、不思議に感じます。

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またポートランドでは、路面電車やバスは道路交通とみなされるそうです。よって都心部への高速道路乗り入れが争点となった1970年代の市長選挙で反対派が当選すると、高速道路のための財源をライトレールをはじめとする公共交通整備に回すことができたというのです。道路と公共交通が別の管轄になっている日本とは、この点も大きく違います。

都市交通に限った話ではありません。昨年春に訪れた、フランスのニースから山間部へと伸びるローカル線、プロヴァンス鉄道もそうでした。この鉄道については記事にしているので興味がある方はお読みいただきたいのですが、日本では私鉄と紹介されているこのローカル線の実態は、第2次世界大戦前には地方自治体が経営に参加しており、現在は公営交通として運行されているのです。

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プロヴァンス鉄道の記事=http://toyokeizai.net/articles/-/118362

日本の公共交通改革は、先人たちが主として欧州の状況を伝え、富山市など一部の都市がそれを導入するという形で進んできました。しかし、上記のとおり欧米と日本では内部構造が大きく異なるので、多くの都市で改革がなかなか進まないというのが現状です。

公共交通は学校や道路と同じように公共サービスとして位置づけ、都市交通は単一事業者に統合し、まちづくりと連携して整備を進めていく。JR北海道をはじめ、日本各地で公共交通の危機が叫ばれている今こそ、表面を変えることより、内側から生まれ変わらせることが重要です。そのうえで日本ならではの企業努力を盛り込めば、世界一素晴らしい公共交通が生まれるかもしれないと、先生は話していました。