下の写真は私が海外で使った公共交通の乗車券です。カード式が多いうえに、1日乗車券やプリペイド式乗車券を使う機会が多かったので手元に残っているようです。こうして海外で公共交通を使っていると、日本とくに東京との違いがよく分かります。少し前に東洋経済オンラインの記事にまとめたので、興味のある方はご覧ください。

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東洋経済オンラインの記事=http://toyokeizai.net/articles/-/176049

そこでも触れたのですが、 東京の鉄道が多くの事業者によって分割運営されていることは、1日乗車券を含め、国内外からの観光客にさまざまな悪影響を及ぼしています。その最たるものが、地下鉄の運営事業者が東京メトロと都営地下鉄の2つあることでしょう。駅へ行くと自分の路線網の料金表が中心に据えられ、もうひとつの地下鉄への乗り換えは連絡乗車券扱いになるというのは、なんとも理解しにくいものです。

海外にも複数の交通事業者が都市交通を運営する例はあります。そのひとつがシンガポールで、地下鉄に相当するMRT(マス・ラピッド・トランジット)と新交通システムのLRT(ライト・ラピッド・トランジット)が、SBSトランジットとSMRTトレインズの2社で運行されています。しかし運賃体系はひとつで、通常のきっぷで相手の鉄道会社の駅に行けます。フランスのパリもフランス国鉄とパリ交通公団が地下鉄や路面電車などを走らせていますが、運賃は一元化されています。

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東京メトロの山村明義社長が昨日の社長就任会見で、2020年をめどに都営地下鉄との運賃の一元化について協議していることを明らかにしました。お互いの路線を乗り継いだ際に発生する2度目の初乗り運賃をなくし、単純に距離に応じた料金とする方式が有力とのことです。その理由として外国人利用客などから「分かりにくい」との声が上がっていたことを挙げています。

東京の地下鉄一元化については、猪瀬直樹元都知事が積極的に取り組み、九段下駅の東京メトロ半蔵門線と都営地下鉄新宿線の間の壁を撤去するなどの実績を残しました。しかしその後の舛添要一都知事は問題に触れることもないまま辞任。小池百合子現都知事も東京メトロ社長の発言を受け、「効果や経営面への影響など分析を進めながら検討する必要がある」と言及するにとどめています。

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東京地下鉄一元化に慎重な立場を取ってきた東京メトロの新社長がこの問題に触れたのは、動かない自治体に業を煮やしたためもあると思っています。都市交通を前に進めるには自治体の力が重要であることは、国内外の多くの事例が証明してます。東京都が主導して問題解決を進めてほしいところですが、残念ながら明日投票が行われる東京都議会議員選挙で、この件に触れた候補者はほとんどいないようです。