このブログでも何度か紹介した栃木県宇都宮市・芳賀町のLRT計画(以下宇都宮LRT)について、鉄道ジャーナル9月号に記事を掲載させていただきました。5年前からこの地に何度か通い、さまざまな関係者に話を伺いつつ沿線となる地域を訪ね歩いた記録をまとめたものです。
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宇都宮LRTのこれまでの道のりは雑誌にくわしく書いたので、ご興味のある方は読んでいただきたいのですが、 2012年の宇都宮市長選挙で現職の佐藤栄一氏が、以前から計画にあったLRT導入を争点に掲げて大差で三選。まず宇都宮駅東側の優先整備と芳賀町への延伸、公設型上下分離方式の導入を決めました。

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ところがその直後から反対派の声が目立つようになりました。当初は260億円としていた宇都宮駅東側の整備費が450億円以上に増大したことを問題視したのです。昨年の市長選でも佐藤氏は当選したものの、LRT反対を訴えた対立候補との票差は僅差と呼べる状況になっていました。

自治体の首長を決める選挙で交通が争点になることは良くあります。それ自体は問題ではありません。しかし昨年の選挙では、対立候補がLRT整備費用1000億円という数字を掲げました。実際には宇都宮駅西側を含めても整備費は700億円以内で収まり、すべてが宇都宮市の支出ではありません。一方対立候補のウェブサイトに1000億円の内訳についての説明はなく、「一説には」という表現に留めていました。

1000億円というインパクトのある数字が効いたとも言えますが、逆に現職側がLRTのメリットをしっかり説明しなかったことも辛勝につながったと見ています。

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そもそも宇都宮LRTは市の東部や芳賀町などに展開する工業地帯への通勤輸送として計画されました。当初の予定ルート図を見れば一目瞭然です。当時の宇都宮市の関係者は、通勤輸送だけで黒字になると説明し、沿線への公共施設誘致や住宅整備などには言及していませんでした。これでは多くの市民の支持はもちろん、興味も得られないはずです。

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しかし昨年から風向きが変わり始めました。ウェブサイトにLRTを説明するパンフレットや動画を相次いでアップし、6月に現地を訪れた際には県庁でLRTのオープンハウスを開催していました。市長選での辛勝を受けて、工業団地への通勤輸送から市民のための路線へ考えを改めたのでしょう。最新の予定ルート図から工業団地が消えていることでも、それは伝わってきます。

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宇都宮LRTは政治に揺り動かされつつ、結果的にはその揺れによって、市民路線という好ましい方向に絞り込まれつつあると感じています。交通と政治は密接な関係にあることを、今回の事例は教えてくれました。しかしそこに党利党略を持ち込むべきではないと考えます。すべての人に安全快適な移動を提供すること。これが交通分野における政治の使命だと思っています。