2年ぶりに審査委員を務めたグットデザイン賞が10月4日に発表されました。2017年度は審査対象数4495件のうち1403件がグッドデザイン賞を受賞。うち私が属したモビリティユニットからは78件が選ばれ、グッドデザイン・ベスト100には10件が入りました。

結果についてはグッドデザイン賞のウェブサイトに紹介してありますので、そちらをご覧いただきたいのですが、それを見ながら今年のモビリティシーンを振り返るとき、印象に残っているジャンルのひとつにクルーズトレインがあります。ともにグットデザイン・ベスト100を受賞したJR東日本の「TRAIN SUITE四季島」とJR西日本の「TWILIGHT EXPRESS瑞風」です。

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グッドデザイン賞のウェブサイト=http://www.g-mark.org

2つの列車が2013年に走り始めたJR九州の「ななつ星in九州」に似ていると思う人は多いでしょう。しかし関係者に話を伺うと、四季島は2011年の東日本大震災が誕生のきっかけ、瑞風は1989年から走り続けていた豪華寝台列車トワイライトエキスプレスの世代交代という位置付けであり、いずれもななつ星の登場前からプロジェクトは始まっていたそうです。

ななつ星は欧州のオリエントエクスプレスを参考にしたようですが、移動ではなく周遊という新しい列車の旅のかたちを提案した点は独自です。しかも車両や旅程に日本の文化を絶妙に盛り込んでいることも特徴で、列車を降りて食事や宿泊をするなど、これまでの鉄道にはない楽しみ方も盛り込んであります。これらが国内外の旅行者から人気を集めている理由のひとつでしょう。

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TWILIGHT EXPRESS瑞風のウェブサイト=http://twilightexpress-mizukaze.jp/index.html

個人的に注目しているのは地方活性化です。クルーズトレインのメインステージは地方だからです。大都市中心という傾向が強い日本のモビリティでは希少な存在です。列車に乗りながら沿線の風景や名産を体感することで、次回は別の手段で同じ地方に訪れることが期待できますし、沿線の人々にとってもこうした列車を迎えることは特別な体験になるでしょう。それが活性化につながればと思っています。

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TRAIN SUITE四季島のウェブサイト=http://www.jreast.co.jp/shiki-shima/

四季島は和モダン、瑞風はアール・デコと、デザインの方向性がまったく違うことにも好感を抱いています。景色の考え方も、オープンデッキや大きな窓で開放感を表現した瑞風、窓枠を額に見立てて絵画のような車窓を提供した四季島と対照的です。日本の乗り物は個性が弱いと言われることが多かっただけに、同じ年に同じ目的で走り始めた列車がここまで違う仕立てで登場したことは新鮮な驚きでした。

新幹線の速さや通勤電車の正確さなど、これまで日本の鉄道は機能性を自慢としてきました。しかしクルーズトレインはそれとは違う部分で魅力をアピールしています。これは自動車の世界におけるレクサスのラグジュアリークーペLCなど、他の乗り物にも見られる動きです。アジアの交通先進国にふさわしい、付加価値で魅了する移動体の出現。日本らしさの新しい表現として歓迎したいところです。

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四季島も瑞風も、私のような庶民は乗ることはできませんが、すでに各地で同様のおもてなしを手の届く予算で堪能できる列車がいくつも誕生しています。日本の乗り物が速さや安さ、正確さといった物理的な価値だけでなく、独自の文化を反映した精神的な価値を身につけていくことができるか、注目していきたいと考えています。