信用乗車という言葉をご存知でしょうか。ワンマン運転のLRT(路面電車)などで、運転士などの乗務員が乗車券の確認をせず、利用者が運賃を支払って乗車していると信用することで、複数の扉での乗り降りを認める方式です。他にも呼び名があるようですが、ここではもっともよく使われている信用乗車という言葉を使います。

欧州の都市交通では一般的になっていますが、日本では乗車時あるいは降車時に乗務員が運賃収受やICカードの確認を行う方式を踏襲しています。しかしこの方式では、乗降の扉が限定してしまうので混雑時に時間が掛かるという欠点があります。特に車両が長く扉数が多い近年のLRT車両は、信用乗車を前提とした設計と言えるでしょう。

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こうした流れを受けて、日本では広島電鉄で数年前、ICカードのみ全扉での乗降を認める試験運用が行われたのに続いて、昨年10月からは富山ライトレールで降車のみ導入されています。富山ライトレールは後ろ側の扉から乗り、乗務員がいる前側の扉から降りる方式ですが、カード利用者に限り降りるときも後ろ側の扉を使うことができるようになりました。

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先月富山ライトレールに乗ったのは週末の午前中という混んでいない時間帯でしたが、当然のように後ろ側の扉からカードをタッチして降りる利用者が多く見られました。 乗務員の目の届かない場所で乗り降りができるので無賃乗車も可能ですが、朝のラッシュ時には以前から導入していたことに加え、他の乗客の目があることもあり、大きな問題にはなっていないようです。

前述のように欧州では全扉での乗降が可能です。写真はル・マン(フランス)のLRTですが、扉付近に乗車記録を行う端末を取り付けてあり、切符の場合は乗車時に挿入、カードの場合は乗車時と降車時にタッチすることで、所定の運賃を支払ったことになります。

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ただし不定期で乗車券の確認を行う係員が乗車しているとのことで、無賃乗車が見つかった場合は高額の罰金を取られます。カードの場合も係員が持つ端末で瞬時に分かるそうです。下の写真のフランクフルト(ドイツ)の場合は60ユーロと、最大で通常の乗車券の約20倍にも相当します。これを抑止力としているのです。

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実はここに日本での信用乗車導入が難しい理由のひとつがあります。日本の法律では無賃乗車に対する罰金は乗車券の2倍以内と定められているそうなのです。つまり富山ライトレールの場合は340円(カード利用時)であり、自動車で交通違反をした際に支払う反則金を考えれば、比べるべくもないほどの少額です。

日本ではローカル線のワンマン車両も同様の乗降スタイルを使っていますが、長い車両に2〜3駅だけ乗る場合など、走行中に後方から前方に移動しなければならず不便です。ワンマン方式が当然であり、将来的には無人運転も考えられるわけですから、早急に信用乗車を前提とした法整備をすべきでしょう。