今回はまず、1月に富山で行なったセミナーで使ったスライドからお見せします。「自動運転ですべて解決、ではない」というタイトルの下に4つの乗り物の写真があり、脇に数字が書かれていますが、何を意味しているかお分かりでしょうか。

IMG_1601

数字は自転車、軽自動車、無人運転バス(イージーマイルEZ10)、LRT車両 (富山ライトレール)の乗車定員を示したものです。ここで取り上げるLRT車両の全長は18.4mですが、これと同じ人数を運ぶとするとEZ10では7台・27.4m、軽自動車では20台・67.9mにもなります(自転車はサイズがまちまちで幅がかなり狭いので比較は避けます)。

最近一部のメディアで、自動運転が実用化されれば公共交通は不要になるという論調を目にすることがあります。しかし私はそもそもこの両者を比べることが誤りだと考えます。理由は東京の新交通システムゆりかもめなど、公共交通にはすでに自動運転を実用化しているものがあり、現在実験中の自動運転・無人運転の多くはバスやライドシェアなど公共交通としての利用を目的としているからです。

ライドシェアは現状では個人所有の乗用車を使っているので、パブリックとパーソナルの中間と言えそうですが、 ドライバーがいなくなれば運行業者がコントロールすることになるので、公共交通の一種になります。今月5日から日産自動車とDeNAが実証実験を開始する「イージーライド」については日産が開発した自動運転乗用車を使っていますが、同社では交通サービスと呼んでいます。

IMG_0320
イージーライドについてはこちらもご参照ください=https://news.mynavi.jp/article/20180302-easyride/

自動運転と公共交通を対立軸に置く人は、おそらく自動運転は乗用車、公共交通は鉄道に代表される大量輸送機関をイメージしたのではないかと思われます。正確な言葉を使ってほしいものですが、それでも両者は比較相手にはならないと考えます。理由が最初に挙げた数字です。

場所や時間によって移動する人の数は異なります。過疎化が進む農村部では乗用車で間に合うでしょうが、地方都市でも富山の中心部であればLRTレベルの車両が必要になります。これをすべて乗用車で賄えば、多くの道が大渋滞になるでしょう。自動運転になっても車両の大きさは変わらないのですから。東京で暮らす人は東日本大震災が発生した日の夜を思い出してください。あのときも鉄道がストップしたことで多くの人が自動車で移動した結果、大渋滞となりました。

自動運転乗用車が普及するとコンパクトシティの考えが必要なくなるので、大量輸送機関が必要なくなるという人もいます。しかしコンパクトシティは交通の集約化が目的ではありません。7年前に富山市長の森雅志氏からお聞きした「除雪の費用が大変」という言葉は今も忘れられません。水道やガスなどインフラの長さも違ってきます。コンパクトシティは行政サービスの効率化が最大の目的であり、そのためのツールとして公共交通を活用しているのです。

IMG_9630

このブログで自動運転・無人運転の実験現場を何度も報告してきたことで分かるとおり、私は自動運転推進派です。しかしすべての乗り物が自動運転の乗用車に置き換わることは、インフラのキャパシティなどから鑑みて無理だと思います。モビリティの問題解決のための選択肢がひとつ増えたとするのが自然だと考えています。