神戸市の鉄道会社、神戸高速鉄道が今年4月で開業50周年を迎えました。といっても関西に住む人以外にはピンとこない話題かもしれません。車両を持たないインフラ保有会社であることが大きいのではないでしょうか。ただしこの神戸高速、市内に点在していた私鉄のターミナルを結びつけて相互乗り入れを実現し、地方鉄道で話題になることが多い第三セクターや上下分離方式をいち早く導入するなど、先駆的な取り組みを実施したことは事実です。

IMG_2198
 
昨年この鉄道に関する記事を東洋経済オンラインに掲載させていただきました。半世紀にわたる歴史は記事の中で解説していますので、興味のある方はご覧いただきたいのですが、路線は変わらないものの、阪神・淡路大震災や村上ファンドによる阪神株買収などの出来事も影響して、開業当初とは経営形態や運行形態が大きく変わっています。そして沿線の状況も変わりつつあるようです。

今週関西での仕事があったので神戸高速を再訪し、高速神戸駅と新開地駅を利用して感じたのは、150万人級の大都市の中心部とは思えない閑散とした雰囲気でした。高速神戸〜新開地間にある地下街「メトロこうべ」は良く言えば昭和時代の面影を濃厚に残す、時間が止まったような空間になっていました。三宮周辺に高層ビルが林立するのとは対照的です。

IMG_4582
東洋経済オンラインの記事=https://toyokeizai.net/articles/-/192480 

実は神戸市、日本のメガシティの中では人口減に悩む稀有な存在でもあります。神戸新聞によれば、2005年には阪神・淡路大震災直前のレベルを超えたものの、2012年をピークに減少に転じているそうです。三宮がある中央区や大阪に近い灘区・東灘区は人口が増えているのに対し、市の西部や北部で減少が目立っているようです。神戸においても一極集中と都心回帰が進んでいるのかもしれません。

昨年秋の記事では今後の神戸高速の動きとして、阪急と神戸市営地下鉄西神・山手線の乗り入れの可能性について書きました。すると直後に行われた神戸市長選挙で乗り入れを公約に掲げた久元喜造市長が再選。市長が早急な検討を口にすると、阪急側も協議を加速させていきたいと表明しました。

IMG_2152

西神・山手線沿線には西神ニュータウンや須磨ニュータウンなどが広がっていますが、住民の減少に悩んでいるそうです。神戸市全体の人口減に歯止めをかける対策のひとつとして、これらのニュータウンの活性化を考え、そのために市営地下鉄と阪急の乗り入れを推進したいと考えているのでしょう。

一方の阪急は村上ファンドの一件を契機にライバルだった阪神と合併しており、大阪〜神戸間で競争をする必要はありません。すでに神戸高速への乗り入れは新開地までとなり、当初行なっていた山陽への乗り入れは阪神に一任しています。地下鉄との接続点がどこになるか不明ですが、もし三宮周辺となるなら、三宮〜高速神戸間の路線を新開地止まりとなっている神戸電鉄に譲ってはどうかと提案しました。

IMG_2148

神戸市西部を抜けて三木市や小野市に至る神戸電鉄の粟生線は乗客減少に悩んでいます。神戸市の中心である三宮まで乗り換えなしで行くことができれば、少しは状況が変わるかもしれません。神戸に限った話ではありませんが、都市は生き物であり、鉄道はそれに柔軟に対応していくことが求められます。神戸高速の次の50年が、この街の繁栄につながる系譜になることを期待しています。