以前から何度も話題に上がっていた、東京日本橋の上を走る首都高速道路の地下化構想が、ここへきて急に進展しはじめました。昨年11月に国土交通省などにより設置された「首都高日本橋地下化検討会」の第2回会合が今週22日に開かれ、周辺約1.2kmを地下化するルート案を決めたとのことです。

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国土交通省「首都高日本橋地下化検討会」のウェブサイト=http://www1.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/exp-ug/index.html

国土交通省などの発表によれば、都心環状線から八重洲線が分岐する神田橋ジャンクションと、都心環状線から1号上野線および6号向島線が分岐する江戸橋ジャンクションの間を地下化するそうで、現在日本橋や日本橋川の上に架かる高架橋を撤去する代わりにトンネルを掘り、八重洲線と向島線をつなげる計画とのことです。

この区間の首都高速は前回の東京五輪が開催される前年の1963年に開通しました。五輪までに主要区間を開通させたいという当時の状況から、用地確保が容易な河川の敷地を活用。日本橋川は残されましたが、銀座と築地を隔てる築地川などは埋め立てられ、道路に転用されました。

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風向きが変わったのは2001年、当時の扇千景国土交通大臣の「日本橋は首都東京の顔であり首都高速に覆われた景観を一新したい」という提案が契機になり、「東京都心における首都高速道路のあり方委員会」が設立されました。その後、組織は何度か変わりましたが少しずつ前進を続け、今回の発表に至ったようです。

しかし世界を見渡せば、このような取り組みは各所に見られます。有名なのは米国オレゴン州ポートランドでしょう。ダウンタウン脇を流れるウィラメット川沿いに作られた高速道路を撤去し、公園に作り替えたプロジェクトで、ウォーターフロントという言葉はこの転換から生まれたとも言われます。驚くのはこの決定が、日本橋の上に首都高速が開通した6年後の1969年に決まったことです。ポートランドの先進性に感心します。

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鉄道に目を転じれば、日本にもいくつか実例があります。写真は東京急行電鉄目黒線武蔵小山駅付近で、地上にあった線路を地下に移したことで踏切撤去による安全性向上、渋滞減少が実現できただけでなく、線路跡の一部は緑道に変わっていて、住民の憩いの場所になっていました。欧米でも一部の都市で、路面電車をライトレールへ転換する際に都心部を地下化するなどの動きがあります。

つまり日本橋周辺の首都高速地下化は、現在の世界的な流れに即した動きと言うことができます。工事が始まるのは2020年以降、完成はその20年後と、「首都高速のない日本橋」を見ることができるのはかなり先の話ですが、東京都心でこのような動きが出てきたことは好ましいと思っています。