高齢者の移動にまつわる問題では、先月末に神奈川県茅ヶ崎市で起きた90歳女性運転の乗用車による死亡事故で、ふたたび議論が高まるようになりました。そんな中、私も会員になっている「日本福祉のまちづくり学会」の地域交通を専門とするメンバーが昨日集まり、他の組織とともに議論を行いました。

この席でまず話題になったのが超小型モビリティです。我が国では2013年に国土交通省が超小型モビリティ認定制度を発表しましたが、5年経った今も独自規格が作られず、伸び悩みという状況に陥っています。しかし超小型モビリティの小さく軽く遅いという特性は、20世紀の自動車の価値基準では短所でしたが、環境問題や高齢化問題などに直面する現在では逆に長所だと考えています。

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日本福祉のまちづくり学会ウェブサイト=http://www.fukumachi.net

現在の道路交通の流れに乗れることは、複数の車両に乗って確認済みです。しかし高速道路は走行できないので、過剰な力は備えていません。仮に操作ミスで暴走しても勢いはほどほどです。しかも重量は現在の軽自動車の半分以下なので、衝突時の衝撃も抑えられます。欧州では地方の高齢者が超小型モビリティを利用していますが、この特性を理解したうえでの選択であれば、素晴らしい見識だと思います。日本でも今一度このカテゴリーに注目すべきではないでしょうか。

もうひとつ、超小型モビリティは高速道路を走行しないので、衝突安全基準がさほど厳しくありません。ゆえに自由なデザインが可能となります。たとえばIT先進国エストニアで開発されたレトロデザインの三輪電気自動車「Nobe」は、デザイナーが欧州の昔の超小型モビリティをヒントにしたと言っており、このクラスを前提として作られたことが想像できます。

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Nobeのウェブサイト=https://www.mynobe.com

昨日の席では茅ヶ崎の死亡事故で女性が運転していた20年以上前の日産プリメーラも注目されました。このプリメーラは2Lエンジンを積みながら5ナンバーサイズに収まっています。最近の乗用車はモデルチェンジのたびに車体が大きくなるので、買い替えせずに乗り続ける高齢者が目立つという報告がありました。安全性を高めた車両を発売しても、もっとも必要とされる人々に行き渡らないという状況があるようです。

自転車やライトレールなど小さく軽く遅い乗り物が再評価され、旅客機や高速鉄道の速度競争も一段落している昨今。乗用車だけがより大きく、より速くを是とし続けているように見えます。社会状況の変化に即したビジョンを期待したいところです。もちろんこれ以外にも、高齢者の移動にまつわる問題は山積しています。日本福祉のまちづくり学会では、今年8月に神戸市で開催される全国大会をはじめ、各所でこのテーマについて提言していきたいと考えています。