このブログで何度か紹介してきたパリのEV(電気自動車)シェアリング、オートリブが大きく動くことになりそうです。運営を担当してきたボロレは赤字に悩んでおり、一部の負担を自治体に要求。この話し合いが不調に終わったようで、今月いっぱいでのサービス停止を発表しました。

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パリでは自転車シェアリングのヴェリブも展開していますが、こちらは競合事業者の参入はあるものの、大きな動きなく推移しています。システムやインフラは自転車と自動車で大差はなく、場所はパリ市が協力しています。やはり車両コストが大きく影響しているのでしょう。さらに現地のニュースではライドシェアの台頭によって、利用者が減少していることも理由と報じられています。

オートリブでは最近まで4000台の車両、6200か所の充電施設付き駐車スペースを稼働していました。 このうち後者は従来から他のEVでも利用可能だったので、インフラとしては継続することになりますが、パリを走る電動車両(PHV/プラグインハイブリッド車を含む)の数からすれば過剰になるでしょう。

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それに利用者の側からすれば、たしかにライドシェアは便利かもしれませんが、個人所有の車両ゆえ多くはガソリン/ディーゼル車であり、近年パリが悩んでいる環境対策にはほとんど寄与しません。やはりEVによる移動を提供することが重要ではないかと思われます。そんな中、フランスを本拠とする2つの自動車メーカー、PSAとルノーが動きました。

PSAは7月3日、自身が2016年に発表し10以上の地域で導入しているシェアリングプラットフォーム「Free2Move」を、500台のプジョーおよびシトロエン製EVとともに今年中にパリに導入すると発表。ルノーは翌日、欧州ベストセラーEVであるゾエ、日本でも日産自動車がシェアリングに活用しているトゥイジー、商用車のカングーZ.Eなど2000台を2019年末までに用意するとパリ市とともに発表しました。

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両者のアプローチは微妙に異なっていますが、概要のみの発表なので、将来的に一本化する可能性もあります。ボロレに比べれば車両の用意はさほど負担ではないうえに、自動車メーカーにとって電動化とシェアリングサービスは将来的に大事な分野であり、インフラはすでに整備済みということもあって、一定の需要が見込めるパリへの導入を決断したのではないかと思われます。

一方のボロレはパリ以外に米国インディアナポリス、シンガポールなど7都市でパリのオートリブと同様のサービスを展開しています。これらについては大きな動きはないようです。パリからは撤退しますが、PSAやルノー以外にも複数の自動車メーカーがEVシェアリング参入を発表していることを考えると、ボロレの先見性は十分に評価すべきではないかとも思っています。