先週末から今週初めにかけて西日本の広い地域を襲った豪雨は、200人以上の方が犠牲になるという大災害になってしまいました。この場を借りて、亡くなられた方のご冥福をお祈りしますとともに、被害に遭われた方にお見舞いを申し上げます。

今回の災害では、天候が回復したにもかかわらず大雨で増水していたため池が決壊するなどの二次災害も発生しており、片付けにあたる人々を猛暑が襲うなど、影響は長期にわたりそうです。一方で今日は山陽自動車道が全通しており、復興への動きも少しずつ出始めています。そんな中で個人的に気がかりなのは、JR西日本山陽本線のかなりの区間が不通であることです。

IMG_1239

並行して走る山陽新幹線は大きは被害がなく、雨が弱まった7日夜には運転を再開しており、現在は山陽本線不通区間の乗車券を持っていれば自由席に乗れるという代替輸送も行なっています。しかし貨物については、新幹線で貨物輸送を行なっていない以上、止まったままです。

鉄道には大量輸送という長所があります。JR貨物のウェブサイトによると、山陽本線などを走る高速貨物列車は最大650tの荷物を一度に運ぶことが可能で、これは10t積みの大型トラック65台分に相当します。運転士の数の違いを含め効率の高さは圧倒的です。また貨物1tを1km運ぶ際のCO2排出量は、トラック240gに対し鉄道はわずか11gと、ここでも大差がつきます。加えて定時性でも鉄道は優位に立っています。

d3d8e811-cfe3-4cc4-afd5-761c55a64b51_teaser_original_720x1_5

国土交通省の統計では、国内の貨物輸送の内訳は自動車が50%、船舶が44%で、鉄道は5%にすぎません。一方欧米では環境保護の観点から、自動車から鉄道や船舶へのモーダルシフトが進んでいます。今年初めにはドイツの自動車メーカー、ポルシェが鉄道による物流輸送を進めており、物流部門の年間CO2排出量を3%、CO2の発生を6000t以上削減することを目指すと発表し話題を集めました。

数年前に広島県の山陽本線西条駅を数日間利用した際、昼間は2本に1本ぐらいの割で貨物列車が走っていたことに驚いた覚えがあります。あとで調べてみると、鉄道貨物のメリットを生かした路線でした。それがストップしているわけですから影響は多大です。JR貨物ではフェリーやトラックで代行輸送を始め、日本海側を走る山陰本線への振替も検討しているそうですが、いずれも輸送力が低下し、環境面でも不利になることは確実です。

IMG_1277

このブログでも書いてきたように、現在の日本のトラック輸送業界はドライバー不足と高齢化に悩んでいます。前述の世界的な流れに加え、こうした状況も考えれば、大きな災害に見舞われてもモーダルシフトを推し進めていくことが必須であり、そのためにも山陽本線の早期復旧は重要だと思っています。