東京五輪の開幕まで2年となりました。これから新たに鉄道や道路を作りはじめても2020年には間に合わないでしょう。モビリティに限らず、既存のインフラをどう活用するか、に焦点が移ったのではないかと考えています。すでに交通渋滞を緩和すべく、さまざまな提案がなされていますが、ここでは2020年以降の日本全体のモビリティに役立つであろう2つの点に触れたいと思います。

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ひとつは東京メトロと都営地下鉄、2つの地下鉄の運賃一元化です。この問題は猪瀬直樹元都知事が副知事時代から経営統合を最終目的として取り組んでいましたが、九段下駅の壁の撤去などに留まり、その後の都知事は積極的には関与せず現在に至っています。

残る2年間で経営を一体化することはかなり難しいでしょう。しかし経営母体が別々であっても運賃体系を同一とした例は、世界各地に存在します。東京メトロの前身である帝都高速度交通営団も、2つの会社の統合により生まれています。写真は新宿駅ですが、同じ駅の地下鉄が2つの運賃表を掲げるのは奇妙なシーンであり、外国人には東京の交通が分かりにくい理由のひとつになっているはずです。

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もうひとつは専用レーンです。五輪・パラリンピックのワールドワイドパートナーを務めるトヨタ自動車は今週、東京五輪・パラリンピックを最先端モビリティとトヨタ生産方式でサポートすると発表しました。今年1月に公開したモビリティサービス用電気自動車「e-Palette」などを走らせ、完全自動運転の実証実験・デモンストレーションを行うとしています。

実証実験は将来のサービス実現を視野に入れたものであり、公道を使って大会関係者などの移動を担当することに価値があります。しかし一般公道を他車に混じって完全自動運転車を走らせるのはリスクが大きいと考える人も多いでしょう。専用レーン確保が現実的なソリューションとなるはずです。それ以外でも選手や関係者の移動確保は大会の成功のために必須であり、優先レーンではなく専用レーンが理想だと考えています。

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最初に書いたように、2つの革新は2020年以降の東京以外で役立つと考えています。地下鉄の運賃一元化は、地方交通の運賃体系共通化によるサービス向上の参考事例になると思いますし、専用レーンは完全なるBRT実現に向けて必須となるものです。完全なると書いたのは、今の日本のBRTの多くは連節バス導入が主眼で、本来の目的である定時制・速達性にあまり寄与していないからです。完全自動運転が赤字経営と運転手不足に悩む地方交通の味方になることは言うまでもないでしょう。

地方都市がこれらの施策を他に先駆けて導入するには相当の苦労があります。一方五輪・パラリンピックは、国のバックアップにより革新的な技術やサービスを実現しやすい機会でもあります。2020年の東京での経験を地方の移動に役立たせるためにも、革新的なモビリティが導入されることを期待します。