今週はJR東日本の山手線や東北新幹線などが、自動運転を検討しているというニュースに驚きました。将来的に運転士がいない無人運転を目指すそうです。運営維持に悩む地方のローカル線ではなく、どちらも利用者は多く、収支面で厳しい状況にはない両線の自動化に驚いたのです。

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このニュースについてはニュースサイト「citrus」で記事にしているので、ご興味のある方はお読みいただきたいのですが、鉄道の自動運転そのものは、さほど驚くべき事例ではありません。神戸のポートライナーや東京のゆりかもめなど、新交通システムと呼ばれることが多いAGT(オートメーテッド・ガイドウェイ・トランジット)は、30年以上前から運転士のいない無人運転を実用化しているからです。

また私もよく利用する東京メトロ丸ノ内線をはじめ、一部の地下鉄では、乗務員がボタンを押すだけで発車から停車までを行うATO(オートマティック・トレイン・オペレーション)を導入しています。東京メトロ南北線や福岡市営地下鉄空港線のように、他社の車両の乗り入れを受け入れている線も存在します。海外ではAGTと同じように運転士のいない無人運転の地下鉄もフランスのパリなどにあります。

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これらの路線と比べると、山手線は1か所ですが踏切があり、3年前に信号ケーブルが燃やされるという事件があったように、沿線から線路に立ち入りができそうな場所もあることが気になります。この点をクリアしなければ無人運転は難しいでしょう。逆に東北新幹線の場合は、走行距離が長いので非常停止した際の対応がスピーディに行われるかという懸念があります。

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citrusの記事 = https://citrus-net.jp/article/65881

ではなぜJR東日本は山手線などのいわゆる「ドル箱路線」の自動化・無人化を進めようとしているのか。列車の本数が多いぶん、ワンマン運転とするだけでも将来的な乗務員不足の対策になるうえに、1日に数本というローカル線に比べかなりの人件費が抑えられるからだと想像しています。

JR東日本は新幹線や首都圏の通勤路線だけでなく、東北地方などで赤字ローカル線も走らせています。東日本大震災で被災した路線の一部は、BRTへの転換や三陸鉄道への運行移管が進められており、運営の苦しさが窺えます。その状況を改善するために山手線などの収益率を上げ、赤字路線を支えるという、JR東日本トータルでの経営判断があるのではないかと考えています。

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前回のブログでは東京都心から自動車で約1時間の千葉県市原市が、日々の移動手段維持にも困っている現実をお伝えしましたが、東日本という広い目で見れば東京であっても、自動運転などの省力化を推進する必要に迫られるようです。このまま行くと日本中の公共交通が危機に陥ってしまわないでしょうか。欧米同様、公共交通は公で支えるという仕組みをいち早く構築する必要があると認識したニュースでした。

*来週は夏休みとさせていただきます。