名古屋市の隣、愛知県春日井市にある高蔵寺ニュータウンを訪ねました。日本住宅公社(現UR都市機構)が初めて手掛けたニュータウンで、今からちょうど50年前に入居が始まりました。東京都の多摩ニュータウン、大阪府の千里ニュータウンと並ぶ、日本における大規模ニュータウンの先駆けです。この地でまちづくりに関わっている知人から話を聞き、気になって足を運ぶことにしました。

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高蔵寺ニュータウンはJR中央本線、愛知環状鉄道が乗り入れる高蔵寺駅が最寄り駅となります。しかし多摩や千里のように、駅周辺にニュータウンが広がっているわけではありません。駅からニュータウン中心部までは2km以上あり、上り坂が続きます。歩行や自転車での移動は無理だと思う人がほとんどでしょう。つまりアクセスはバスがメインになります。

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かつては名古屋鉄道小牧駅と桃花台ニュータウンを結ぶAGT(いわゆる新交通システム)、桃花台新交通ピーチラインが高蔵寺ニュータウンを経由して高蔵寺駅に伸びる計画があったようですが、2006年にピーチラインそのものが利用者低迷で廃止されてしまいました。

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バスはニュータウンの地域別に系統が分かれていて、ニュータウン内が終点ではないバスも多く、初めて訪れた人間にとって理解し難いものでした。バス停がニュータウンより一段下にある場合も多く、降りると階段やスロープを使うことになりました。バス停間の距離が長めであることも気になりました。一方ニュータウン内には循環バスが走っており、こちらは停留所をきめ細かく設定しているようですが、駅へ行くには路線バスに乗り換えなければなりません。

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ニュータウン内は大通りをまたぐように歩道橋が縦横無尽に整備してあり、歩車分離がなされているので安全ではあります。しかし端から端まで約4kmと広いことや、バスが上記のような状況ということもあり、多くの住民はマイカーで移動しています。商業施設はもちろん、住宅地域にも駐車場が数多く用意されています。しかし最新報道では高齢化率が30%を超えるそうで、高齢ドライバーによる事故も懸念されます。

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こうした状況を受けて高蔵寺ニュータウンでは最近、電動パーソナルモビリティを使った歩行支援モビリティサービス、自動運転の電動カートや自動車を用いた地域内移動の実証実験を行っており、来年は高齢者向け配車サービスの実証実験も行う予定であるなど、さまざまなトライをしています。この中で個人的に注目したいのは歩行支援モビリティサービスです。前述のように歩道は整備されているので、位置情報や遠隔操作を組み合わせれば、高齢者向けのシェアリングサービスとして有効だと思います。

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高蔵寺ニュータウンのウェブサイト = http://kozoji-nt.com/category/

それとともに駅へのアクセス性向上も望みます。ニュータウンの人口は減少に転じているとはいえ約4.5万人と、春日井市全体(約30万人)の15%を占めているわけですから。これは高齢者だけでなく若者にとっても重要です。最近、団地をリノベーションする若者が目立っていますが、彼らは自動車の所有にあまりこだわりません。先進国都市部の若者のマイカー離れは、先月訪れたヘルシンキでも話題になりました。公共交通で暮らせるまちづくりは高齢者だけでなく若者にとっても価値があると考えています。

高蔵寺駅から名古屋駅まではJRで30分で着きます。都心へのアクセスという点では多摩ニュータウンよりはるかに便利だと思います。ニュータウン内には商業施設や飲食店もあります。モビリティを見直すだけでも、可能性のある街に生まれ変われるのではないかと感じました。