今年に入ってから我が国のタクシーに大きな動きが起こっています。これまで「違法な白タク」として業界から反対されてきた米国Uber Technologiesに代表されるライドシェア会社が、既存のタクシー会社にアプリを活用してもらう形で参入を始めたのです。

この動きと、1か月前に発表されたトヨタ自動車とソフトバンクの提携(モビリティ分野の新会社MONET Technologies設立)は、リンクしていると思っています。両者の提携で、日本のタクシーが良い方向に大変革を起こすのではないかと期待しています。

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まずライドシェアアプリとタクシーの連携では、4月にDeNA(ディー・エヌ・エー)開発の「タクベル」をまず神奈川県横浜・川崎エリアで採用開始し、7月には神奈川県全域に拡大。10月には東京都内の数社との協業を合意しました。一方Uberは7月に兵庫県淡路島で始めた実証実験に続き、9月には愛知県名古屋市周辺で展開開始。6月に中国Didi Chuxing(滴滴出行)とソフトバンクの合弁で設立されたDiDiモビリティジャパンは、9月に大阪エリアでのサービスを開始しました。

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タクベルのウェブサイト = https://taxibell.jp

このうちDiDiモビリティジャパンは10月25日、10月1〜7日の中国国慶節休暇中に大阪を訪れた中国人ユーザーの利用動向を発表。この間の中国人ユーザーの割合は5割以上を占めていたそうで、中国のDiDiアプリがそのまま使え、自動翻訳も可能で、AlipayやWeChatといった現地の決済サービスが利用できるなど、使い勝手を評価するコメントが目立ったそうです。

昨年あたりから問題になっている、ワンボックス車両を使った外国人観光客向けの白タク行為については、中国人利用者が多いと言われています。DiDiモビリティジャパンではアプリの利用促進によって、白タク行為減少にも貢献するだろうとしています。この種の白タクについては、警察による取り締まりは行われているようですが、業界団体からの反対意見はUberのときほど明確ではありません。その防止に違う形で乗り出したのが、Uberと同じライドシェアのDiDiだったというのは興味深いところです。

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DiDiモビリティジャパンのウェブサイト = https://didimobility.co.jp

ところでUberとDidiはともに、ソフトバンクが筆頭株主になっています。シンガポールに本拠を置くGrab、インドのOlaもソフトバンクが筆頭株主です。世界のライドシェア市場はこの4社で90%のシェアを握っていると言われています。一方日本のタクシー配車アプリでは、日本交通などが始めたJapanTaxi(トヨタ自動車のタクシー車両JPN TAXIとは別物)がパイオニアであり最大勢力となっています。このJapan Taxiにはトヨタが出資しています。

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Uberのウェブサイト = https://www.uber.com/

今後、自動運転の普及に合わせて、自動車は所有から共有への移行が進むと多くの人が予想しています。音楽配信サービスなどのように安価で便利なサービスが提案されれば、一気に移行するかもしれません。トヨタはそんな時代を見据え、カーメーカーからモビリティサービス・プラットフォーマーへと転換を目指し、UberやGrabなどに出資を進めています。しかし前述のとおり、いずれもソフトバンクが筆頭株主となっています。両者が手を結んだ理由のひとつはここにあると言われています。

先月の提携発表では、新会社はトヨタが発表した無人運転シャトル「e-Palette」を活用し、移動から物流まで幅広い分野を担い、とりわけ高齢化、買物困難者、運転免許返納、学校統廃合、無医師など、地方の過疎地で問題となっている事象の解決に力を入れていきたいと話していました。タクシーかライドシェアか、乗用車かバスかという既存の枠組みにこだわらず、ゼロから理想のモビリティを構築していこうと考えているようです。

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トヨタ自動車のウェブサイト = https://www.toyota.co.jp/

トヨタとソフトバンクの提携、UberやDiDiとタクシーの協業という状況を見ると、カーメーカーとIT企業が対決したり、タクシー会社とライドシェア会社が対決したりというという構図は、終わりを迎えつつあるのではないかと思っています。今後は両勢力が力を合わせて国内外に山積する移動問題を解決していってほしいと願っています。