警察庁が、静岡県の新東名高速道路と岩手県の東北自動車道のいずれも一部区間で試行している時速110kmの最高速度について、3月1日から120kmに引き上げるというニュースがありました。110kmへの引き上げ試行前と試行開始後のそれぞれ1年間で、人身事故の件数や自動車が実際に走る速度(実勢速度)に大きな差はなかったことを受けての判断だそうです。

120km引き上げ試行の対象区間は、新東名の新静岡IC(インターチェンジ)〜森掛川IC間、東北道の花巻南IC〜盛岡南ICで、これまで110km引き上げの施行を実施していた区間と同じです。今後、少なくとも1年の施行を続けたうえで、安全が確認できれば他の路線への拡大を検討するそうです。

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私はブログの他テレビやラジオをはじめ各メディアでこのテーマを取り扱ってきました。その際は主に欧州の事例を紹介してきましたが、今回は昨年中国・上海近郊の高速道路を移動した際の写真をお見せします。ご覧のとおり最高速度は120kmです。中国では2004年に、それまでの110kmから120kmに引き上げられたそうです。韓国も現在は120kmになっています。

欧州大陸の多くの国の最高速度が120〜130kmであることは以前紹介したとおりです。主要国で数字が揃っているのは、自動車の性能向上と人間の能力向上を考慮すると、最適な上限がこのあたりということなのでしょう。大型トラックの最高速度に乗用車と明確な差をつけていることも、ブレーキ性能などに大きな差があることを考えれば理解できます。

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鉄道でも、日本のJR在来線の最高速度は120〜130kmが上限になっています。かつてはもっと低いレベルにありましたが、ブレーキ性能や安全設備の向上などから、現在の数字に落ち着いているようです。ここからも現在の人間の能力と乗り物の技術で安全が担保できる上限であることが伺えます。

こういう話題を出すと速度無制限のドイツのアウトバーンを挙げる人がいますが、世界的に見ればガラパゴス的政策と捉えるのが自然です。ドイツでは環境保護や事故防止に熱心な人々が速度制限導入を訴え、自動車関連団体が反対の立場を取る状況が続いていますが、最近の選挙では緑の党が躍進しているうえに、温暖化対策が目標どおりに進んでいないという報道もあり、全面規制化に向けて加速していくかもしれません。

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120km化を前に書いておきたいことがあります。ひとつは全区間が120kmにはならないこと。欧州では都市部や山岳部では最高速度を下げるのが一般的です。また遅い車と速い車の速度差が大きくなるので、追い越しをしないのに追い越し車線を走り続ける車両は危険であり、煽り運転につながる可能性もあることから、取り締まりの強化を望みたいところです。実勢速度と制限速度が近づいたわけですから、速度違反の取り締まりも欧州並みに厳格にすべきでしょう。