蒸気機関車(SL)を取り上げるのは、このブログで初めてだと思います。今年1月、鉄道専門誌「鉄道ジャーナル」の取材で、関東地方で蒸気機関車を営業運転している東武鉄道と真岡鐵道の整備現場を訪れ、関係者に話を伺いました。その内容は今月21日発売の鉄道ジャーナル5月号に掲載していますが、いま蒸気機関車を走らせるには多くの苦労があることを教えられました。

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まずは独特の構造です。蒸気機関車は石炭などを燃やして水を温め蒸気を作り出し、その蒸気でピストンを動かして車輪を回し走ります。現在の鉄道で使っている電車や電気機関車、ディーゼルカーやディーゼル機関車とはまるで内容が違います。東武鉄道では2年前に蒸気機関車を復活させるにあたり、機関士は経験がある事業者に研修に行ったそうです。整備面でも電気や内燃機関で走る車両とはまったく違う知識と技能が必要とされるので、勉強と訓練は欠かせません。

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手間の掛かる構造であることも分かりました。真岡鐵道では運転の翌日だったこともあり、各部の掃除を行なっていましたが、一週末の運転だけで石炭カスがバケツ一杯になるほど出てくるのに驚きました。これ以外の部分も電気や内燃機関で走る車両とは桁違いのメインテナンスが必要であり、もちろん電子制御など入っていないので、人間の力と技に頼る作業になります。現場の苦労を思い知らされました。

さらに日本で作られた蒸気機関車は、改造で生まれた形式を除けば、第2次世界大戦直後までに製造されています。つまり若い車両でも約70歳です。当然ながら部品の交換は必須になります。東武鉄道ではある部品に亀裂が生じたため、JR北海道が所有する保存機関車の部品と交換したそうです、現在東武鉄道が走らせている機関車もJR北海道から借り受けているのでスムーズに話が進んだとも言えるわけで、会社が異なれば違った結果になったかもしれません。

もうひとつ2つの現場を訪れて感じたのは、企業規模の違いが現場の違いに現れていることでした。東武鉄道は最近になって蒸気機関車を復活したこともあり、検修庫は広くきれいで、真岡鐵道との差を感じました。しかし1両の蒸気機関車に掛かる手間は同等です。他の鉄道車両にも言えることですが、中小事業者のほうが負担は大きいと感じました。

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いま蒸気機関車を走らせるのは、技術遺産の継承とともに観光目的という部分が大きく、モビリティとは直接関係はないかもしれませんが、蒸気機関車の運転によって多くの観光客が訪れ、それが地域活性化につながることは確実であり、東武鉄道も真岡鐵道も運行の理由に挙げていました。しかし中小の事業者ほど、事業運営に占める比重は大きくなるのもまた事実です。

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日本で蒸気機関車を運行している鉄道事業者は、年に一度会合を開き情報交換などを行うそうです。このコミュニティを発展させ、運転士の育成から部品の手配までを一体化してはどうかと思いました。機関車はすべて元鉄道省/国鉄の機種であり、共通項は多いのではないかと想像します。多くの人に感動を与える裏で、並外れた苦労があることを知った今、オールジャパンの体制で支えていっても良いのではないかという気持ちを抱きました。